臨床的体幹機能検査( FACT )とは?脳卒中患者の体幹評価

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FACT(臨床的体幹機能検査)の要点| 60 秒で把握

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FACT( Functional Assessment for Control of Trunk )は、脳卒中(主に片麻痺)患者の体幹機能を端座位の段階課題で評価するスケールです。座位の静的保持から、骨盤・体幹の動的制御、回旋、上肢運動に伴う姿勢制御までを「できた/できない」だけでなく代償の質まで観察できる点が強みです。

臨床では、初回のベースライン(問題点の当たりを付ける)→ 介入の方向性を決める → 週単位で同条件の再評価、という流れで使うと価値が出ます。点数だけで終わらせず、「どの課題で」「どんな代償が出たか」をメモに残すと、次の一手が速くなります。

FACT とは|治療指向で体幹を評価する

FACT は、体幹を「筋力」や「保持能力」だけでなく、臨床で再現しやすい端座位の課題遂行として捉える評価です。特徴は、評価項目がそのまま介入のヒントになりやすい(治療指向)点で、問題点抽出と介入効果判定に向きます。

一方で、症例によっては上肢・下肢の使い方(支持、反動、代償)で「できたように見える」ことがあるため、点数化と同時に姿勢・代償・安全をセットで観察するのがコツです。

いつ使う?|向いている場面と向かない場面

向いているのは、( 1 )離床が始まった時期の体幹の土台づくり、( 2 )介入の当たり(どこがボトルネックか)を付けたいとき、( 3 )短い間隔で経過を追いたいときです。測定時間が比較的短い点も、臨床で使いやすい理由になります。 [oai_citation:0‡J-Stage](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpts/35/7/35_2023-010/_article)

向かない/注意が必要なのは、端座位が安全に取れない、強い起立性低血圧や疼痛で姿勢が維持できない、指示理解が難しくデモや介助が必須で「最大能力」の評価条件が揃えにくい、といった状況です。安全確保を優先し、実施できないこと自体も所見として残します。

実施前にそろえる測定条件|再現性を上げる

FACT は「最大能力」を測る評価なので、条件のズレが点数の変動につながります。端座位の環境(座面、足底支持、介助位置)と指示の出し方を揃えるほど、経過の解釈が正確になります。

特に足底支持座面の硬さ・高さはブレやすいポイントです。可能なら同じ治療台・同じ高さで実施し、難しい場合は条件を記録して固定します。

FACT の測定条件チェック(成人・脳卒中)
項目 推奨 よくあるズレ 現場での調整
座位姿勢 端座位で、可能な範囲で両足底を床に接地 つま先接地、片脚が浮く、踵が浮く 足台や台位置で足底支持を確保し、左右差も記録
座面条件 一定の硬さと高さ(目安 40–45 cm ) 柔らかいベッド端、沈み込みが大きい 可能なら治療台を使用。難しければ条件をメモして固定
安全管理 ずり落ち・転倒リスクを先に評価し介助位置を決める 見守り不足、疲労で後半に崩れる 介助量を統一し、中止基準(疲労、血圧変動など)も記録
指示の出し方 短く具体的に(必要ならデモ併用) 指示が長く理解が落ちる 要点のみ 1 文で。失語・注意障害はジェスチャー併用

FACT の実施手順|流れと観察のコツ

基本は決められた順序で段階的に進めます。前半は座位の安定性、後半は動的制御・回旋・上肢運動に伴う姿勢制御へと負荷が上がるため、どの段階で破綻するかが問題点の整理に直結します。

最大能力を測る意図を崩さないために、同一課題を複数回行う場合は「最大パフォーマンス」を代表値にします(回数や採用ルールは施設で固定すると経過比較が安定します)。

採点と解釈| 0–20 点を「介入」に接続する

FACT は 10 項目、合計 0–20 点で、得点が高いほど体幹機能が高いことを示します。臨床では「点数が何点か」よりも、ボトルネック課題(止まる段)代償パターンを押さえる方が、介入設計の再現性が上がります。

研究では、歩行自立に関連するカットオフ(例: 9 点)や、退院時の歩行自立を予測するカットオフの検討などが報告されています。 [oai_citation:1‡J-Stage](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpts/35/7/35_2023-010/_article) ただし、カットオフは対象(急性期/回復期、年齢、重症度)で変わり得るため、「当てはめ」よりどの課題が変わったかを追う運用が安全です。

現場の詰まりどころ|ミスを減らす観察ポイント

FACT は簡便ですが、代償が強い症例ほど「できたように見える」落とし穴があります。点数が同じでも、代償が減って動きの質が上がっていることがあるため、所見メモがないと判断がブレやすくなります。

次の表は、臨床で特に頻発する代償と、見落としやすい観察ポイントをまとめたものです。評価のたびに同じ観点でメモしておくと、再評価が強くなります。

FACT 実施時のよくある代償と観察ポイント(成人・脳卒中)
場面 典型的な代償 見逃しやすい観察ポイント 次の一手(介入の当たり)
端座位保持 胸郭挙上・頚部過伸展で「見かけの安定」 骨盤後傾(仙骨座り)、足底支持のロス、左右の座骨荷重差 足底支持の最適化 → 骨盤前傾の誘導 → 呼気で体幹前面を起動
側方/後側方の重心移動 肩甲帯の過活動、上肢支持で“逃げる” 支持側の座骨がずれていないか、骨盤挙上が混ざっていないか 小可動域から段階化し、骨盤主導の動きを先に学習
体幹回旋 肩甲帯だけ回って体幹は回っていない 骨盤固定の安定性、臍〜胸骨レベルの相対運動 骨盤固定で胸郭の分離練習 → 成功範囲を少しずつ拡大
上肢運動に伴う姿勢制御 腰椎伸展・肋骨外反で“挙がった”ように見せる 体幹前面の支持が抜けていないか、肩甲帯の過緊張 呼気と下位胸郭のコントロール → 運動は分割して段階的に増やす

記録の書き方|点数+所見メモで再評価が強くなる

記録は「合計点」だけでは弱く、再評価で迷いやすくなります。おすすめは、( 1 )合計点、( 2 )止まった課題(ボトルネック)、( 3 )代償(姿勢・上肢支持・反動)、( 4 )安全(介助量・中止理由)を 1 セットで残すことです。

この 4 点が揃うと、点数が据え置きでも「質が上がった」「条件が違った」「疲労で崩れた」などの解釈ができ、介入の修正が早くなります。

FACT と TCT と TIS の位置づけ(スクリーニング/介入設計/経過モニタ)をまとめて整理したい場合は、比較記事が早いです。

FACT・TCT・TIS の違い【比較】脳卒中の体幹評価の使い分け

よくある質問(FAQ)

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Q1. FACT は TCT や TIS とどう使い分けますか?

A. 目的で分けると整理しやすいです。短時間で粗く体幹コントロールを把握したいなら TCT、体幹の質(分離や協調)まで含めて「介入の当たり」を作りたいなら FACT、構成概念として体幹障害を捉えたいなら TIS、という考え方が実装しやすいです。施設内で「いつ」「誰が」「どの尺度で」追うかを先に決めると、経過比較が安定します。

Q2. 端座位が不安定で開始できない場合はどうしますか?

A. まず安全を優先し、介助量や環境調整(座面、足底支持、介助位置)を整えたうえで「どこまでなら実施できたか」を所見として残します。できないこと自体が重要な情報なので、中止基準(ずり落ち、強い疲労、血圧変動など)も含めて記録すると次回の比較がしやすくなります。

Q3. 点数が上がらないとき、どこを見直せばいいですか?

A. ( 1 )測定条件(座面・足底支持・指示)が前回と同じか、( 2 )代償が増えていないか、( 3 )ボトルネック課題に対して介入が刺さっているか、の順で確認します。点数が据え置きでも代償が減って動きの質が上がっていることがあるため、所見メモがあると判断がブレにくくなります。

Q4. 「評価用紙」はどこで確認できますか?

A. 原著論文や関連論文に図表として掲載されていることがあります。施設内の運用では、紙面そのものより「条件」「所見」「介入テスト」「変化」を同じ書式で残せる記録フォーマットを整えると、再評価の価値が上がります。

おわりに

FACT は、「安全の確保 → 条件の統一 → 段階課題の実施 → 所見を仮説化 → 小さな介入で再評価 → 記録 → 次回で検証」というリズムで回すと、点数が臨床の意思決定に直結します。

評価の結果を、面談準備(職場の教育体制・症例層・業務負担の見える化)にもつなげたい場合は、面談準備チェックと職場評価シートをまとめた マイナビコメディカル(固定ページ) も活用してください。

参考文献

  1. 奥田 裕, 荻野 禎子, 小澤 佑介, ほか. 臨床的体幹機能検査( FACT )の開発と信頼性. 理学療法科学. 2006;21(4):357-362. doi:10.1589/rika.21.357
  2. Okuda Y, Owari G, Harada S, et al. Validity of functional assessment for control of trunk in patients with subacute stroke: a multicenter, cross-sectional study. J Phys Ther Sci. 2023;35(7):520-527. doi:10.1589/jpts.35.520 / PubMed
  3. Sato K, Maeda K, Ogawa T, et al. The functional assessment for control of trunk ( FACT ): An assessment tool for trunk function in stroke patients. NeuroRehabilitation. 2021;48(1):59-66. doi:10.3233/NRE-201533 / PubMed
  4. Sato K, Ogawa T, et al. Functional Assessment for Control of the Trunk Predicts Independent Walking in Patients with Stroke. JMA J. 2025;8(1):226-233. doi:10.31662/jmaj.2024-0212 / PubMed
  5. Verheyden G, Mertin J, Preger R, et al. The Trunk Impairment Scale: a new tool to measure motor impairment of the trunk after stroke. Clin Rehabil. 2004;18(3):326-334. doi:10.1191/0269215504cr733oa / PubMed
  6. Verheyden G, Nieuwboer A, De Wit L, et al. Trunk performance after stroke: an eye catching predictor of functional outcome. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(7):694-698. doi:10.1136/jnnp.2006.101642 / PubMed

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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