FACT・TCT・TIS は「何を決めたいか」で選ぶと迷いません
脳卒中の体幹評価で迷いやすいのは、どの尺度も「体幹を見る」点は同じでも、得意な役割が違うからです。結論として、早期の成立確認なら TCT、介入の当たりを付けるなら FACT、質と経時変化を追うなら TIS という整理にすると、選び間違いが減ります。
このページで答えるのは「 3 尺度の使い分け」です。採点の細かな手順や原法の詳細は各論記事へ分け、ここでは比較・選択・記録の型に絞って、現場で次に何を使うかを決めやすくします。
まず結論:FACT / TCT / TIS を 1 枚で比較
比較記事で最初に見るべきなのは、点数の細かさではなく「何を決める尺度か」です。ここでは、臨床で迷いやすい 成立確認 / 課題整理 / 経時変化 の 3 軸で整理します。
評価時間や難易度は対象や施設で前後するため、この表では「使いどころ」と「次に何へつなぐか」を中心に見てください。
| 尺度 | まず決まること | 向く場面 | 注意点 | 次の一手 |
|---|---|---|---|---|
| TCT | 成立しているか / 早期の見立て | 急性期〜早期回復期で、まず大まかに揃えたい場面 | 床効果・天井効果が出やすく、質の違いは拾いにくい | 成立確認のあとに、必要なら FACT や TIS を足す |
| FACT | どこで崩れるか / 何を介入するか | 歩行や移乗が伸びず、課題ベースでボトルネックを見たい場面 | 座面・支持・足底条件で点が揺れやすい | 崩れ方を 1 行残して、次回介入の狙いを決める |
| TIS | どの要素が弱いか / 質の変化 | 静的・動的・協調性に分けて、経時変化を追いたい場面 | 観察が上肢中心になると、体幹の解釈がずれやすい | 下位尺度で弱点を分け、介入の優先順位を調整する |
選び方のコツ:迷いを「目的」に言い換えると最初の 1 本が決まります
現場で迷いやすいのは、「全部やるべきか?」と考えてしまうからです。実務では、何を決めたいか を 1 つに絞り、その目的に最短で答える尺度から始める方が、評価も介入も回しやすくなります。
下の早見は、よくある悩みを「目的」に言い換えてから尺度を選ぶ形にしています。
| よくある場面 | 目的に言い換える | まず選ぶ | 次に足すなら |
|---|---|---|---|
| 入院直後で忙しい | 成立確認と早期の大まかな見立て | TCT | 質を追うなら TIS |
| 座位は取れるが歩行が伸びない | 崩れる要素を特定して介入を決める | FACT | 経時変化を追うなら TIS |
| 効果を「質」で示したい | どの要素が改善したかを分けて追う | TIS | 課題整理を足すなら FACT |
| まず予後材料がほしい | 早期に大きく外さず見立てたい | TCT | 歩行や介入の当たりを見るなら FACT |
現場の詰まりどころ:「点数がブレる」を減らす 3 つの原則
どの尺度でも、点数が揺れる原因の多くは「対象の変化」より「条件の変化」です。特に体幹評価は、座面高・足底接地・支持の量が変わるだけで、前回との比較が難しくなります。
失敗を減らす原則は 3 つです。①条件を固定して記録する、②観察の主役を骨盤帯に置く、③点数と一緒に「崩れ方 1 行」を残す。これだけで、再評価の意味が一気に上がります。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
よくある失敗:点数が揺れる原因は “条件” がほとんどです
点数の揺れは「患者さんが悪化した」ではなく、「条件が変わった」「観察の視点が変わった」で起きることが多いです。まずは失敗パターンを共通言語にしておくと、チームでの統一が進みます。
比較記事で覚えるべきなのは、尺度ごとの細かな採点差よりも、前回と比べられる条件を作れているか です。
| 観点 | NG | OK | 記録の一言例 |
|---|---|---|---|
| 座位条件 | 座面高・足底接地が毎回違う | 条件固定(変えたら明記) | 「座面 45 cm/足底接地あり」 |
| 支持 | その場の判断で支持を増減 | 支持条件を固定して明記 | 「支持:骨盤帯に軽介助」 |
| 観察視点 | 上肢の到達だけで判断する | 骨盤帯 → 胸郭 → 頭部で崩れを追う | 「麻痺側荷重回避 → 体幹側屈代償」 |
| 記録 | 点数だけを書く | 条件+崩れ方+次の狙いを残す | 「TIS 12 点/左荷重で戻れず/次回は小さな側方移動」 |
回避の手順:再評価前の 60 秒チェック
再評価の直前に、下の 3 点を確認するだけで「上がった / 下がった」の意味がクリアになります。評価を増やすよりも、まず条件を揃える方が早いです。
- 座面高は前回と同じか(違うなら理由を明記)
- 足底接地は確保できているか(必要なら台を使う)
- 支持の部位と量は前回と同じか(違うなら明記)
配布物ダウンロード:FACT・TCT・TIS 使い分け・記録シート
記事の内容をそのまま現場で使いやすくするために、「何を決めたいか」「条件をそろえたか」「どの尺度を選んだか」 を 1 枚で残せる配布物を用意しました。比較して終わりではなく、選択理由と再評価メモまでつなげたいときに使いやすい形です。
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詳細に入るなら:各尺度のやり方へ
このページは「どれを選ぶか」を決める比較記事です。実際の採点や運用は、選んだ尺度の各論へ進むと迷いにくくなります。
よくある質問( FAQ )
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Q1. 迷ったら、どれを 1 つ選べば良いですか?
A. 最短は「目的」で決めることです。成立確認や早期の大まかな見立てなら TCT、介入の方向づけなら FACT、経時変化を質で追うなら TIS が向きます。時間がない現場ほど、目的を 1 つに絞ると迷いが減ります。
Q2. 同じ患者さんに 3 つ全部やる必要はありますか?
A. 必須ではありません。まず 1 つで目的を満たし、必要になったら次を足す方が実務的です。たとえば、早期は TCT、伸び悩みの整理では FACT、経時変化の追跡では TIS という流れで十分回せます。
Q3. 歩行予後を早めに見たいときは、どれを優先しますか?
A. まずは TCT のように成立を早く揃えられる尺度が使いやすいです。ただし、歩行は体幹だけで決まらないため、予後材料として使ったあとに、必要に応じて FACT や TIS で「どこが足りないか」を補っていくと外しにくくなります。
Q4. 点数が上がったのに歩行が伸びないのはなぜ?
A. 歩行は体幹だけで決まらず、下肢機能、感覚、注意、疲労、循環、痛みなどの影響を受けます。体幹が改善しても別の因子がボトルネックなら歩行が伸びにくいことがあります。点数に加えて「崩れ方 1 行」を残すと原因整理が進みます。
Q5. 評価結果を記録にどう残せば良いですか?
A. 点数だけだと介入に繋がりにくいので、「条件(座面・支持)」「崩れ方」「次の狙い」を 1 セットで残すのがおすすめです。特に条件の記載は、再評価の比較可能性を上げます。
次の一手
- 運用を整える:体幹評価フロー:条件固定でブレを減らす手順(全体像)
- 共有の型を作る:TCT 評価方法:採点( 0・12・25 )と記録のコツ(すぐ実装)
参考文献
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- Verheyden G, Kersten P. Investigating the internal validity of the Trunk Impairment Scale ( TIS ) using Rasch analysis: the TIS 2.0. Disabil Rehabil. 2010;32(25):2127-2137. DOI: 10.3109/09638288.2010.483038 / PubMed: PMID: 20569077
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- Ishiwatari M, Tani M, Isayama R, Honaga K, Hayakawa M, Takakura T, Tanuma A, Kurosu A, Hatori K, Wada F, Fujiwara T. Prediction of gait independence using the Trunk Impairment Scale in patients with acute stroke. Ther Adv Neurol Disord. 2022;15:17562864221140180. DOI: 10.1177/17562864221140180 / PubMed: PMID: 36506941
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


