- CPOT と BPS は「自己申告できない ICU 患者の疼痛」を行動から評価する尺度です
- 先に結論:迷ったら「院内で揃えやすい方」を選びます
- CPOT と BPS の違いは「運用の揃えやすさ」で見ます
- 採用判断は「教育・監査・記録」の 3 点で決めます
- 運用は「安静→刺激→介入後」の 3 点セットで揃えます
- 記録テンプレは「点数+条件+判断」で残します
- 現場の詰まりどころは「疼痛・呼吸苦・恐怖不安」の混同です
- よくある失敗は「高得点=痛みだけ」と決めつけることです
- 導入は 2 週間で「同じ場面を同じ形で記録する」ことから始めます
- CPOT と BPS の個別解説はこちらで確認します
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手
- 参考文献
- 著者情報
CPOT と BPS は「自己申告できない ICU 患者の疼痛」を行動から評価する尺度です
挿管中、意識障害、せん妄、深い鎮静などで患者本人から痛みを聞き取れない場合、疼痛は「不穏」「拒否動作」「人工呼吸器との同調不良」に見えやすくなります。結論として、CPOT と BPS はどちらも有用ですが、現場ではどちらが優れているかよりも、院内で同じタイミング・同じ記録で使えるかが重要です。
この記事では、CPOT と BPS の違いを「採用判断」「測定タイミング」「記録テンプレ」「よくある失敗」の順に整理します。単体の採点方法を細かく解説する記事ではなく、自施設でどちらを使うか、どう記録に落とし込むかを決めるための記事です。
先に結論:迷ったら「院内で揃えやすい方」を選びます
CPOT と BPS は、いずれも自己申告が難しい成人 ICU 患者の疼痛を行動から推定するために使われます。文献上も両者の信頼性・妥当性は示されており、現場での差は「尺度そのもの」より、教育・観察者間のばらつき・記録テンプレ・再評価の仕組みに出ます。
そのため、すでに CPOT が院内で定着しているなら CPOT を深め、これから標準化する段階なら BPS のように導入しやすい尺度から始める選択も実務的です。大切なのは、点数だけを残すことではなく、何をしたときに上がり、何を整えたら下がったかをチームで共有できる形にすることです。
CPOT と BPS の違いは「運用の揃えやすさ」で見ます
CPOT と BPS は、どちらも表情・身体反応・人工呼吸器との同調などを観察して痛みを推定します。ただし、実際の現場では「どの項目があるか」よりも、誰が見ても同じように点数化できるか、鎮静や呼吸苦と混同しないかが重要です。
| 観点 | CPOT | BPS | 現場での見方 |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 自己申告が難しい成人 ICU 患者 | 自己申告が難しい成人 ICU 患者 | 対象は大きく重なる |
| 観察の特徴 | 表情、身体反応、筋緊張、呼吸・発声などを総合して見る | 表情、上肢・体動、人工呼吸器との同調などを中心に見る | どちらも疼痛以外の要因が混ざるため条件記録が必要 |
| 導入しやすさ | 観察の練習とすり合わせが必要 | 比較的シンプルに導入しやすい | 新規導入では教育コストを見て決める |
| 運用で重要な点 | 安静時・刺激時・介入後の測定タイミングを揃える | 尺度より先に「いつ測るか」を固定する | |
| 共通の弱点 | 深鎮静、神経筋遮断、重度の神経学的障害では反応が乏しく過小評価になりうる | 低い点数だけで「痛みなし」と判断しない | |
特に注意したいのは、低い点数=痛みがないとは限らないことです。深鎮静、神経筋遮断薬、重度の麻痺、意識障害がある場合は、行動反応そのものが出にくくなります。この場合は、RASS、呼吸状態、処置内容、鎮痛薬の使用状況をあわせて見ます。
採用判断は「教育・監査・記録」の 3 点で決めます
CPOT と BPS の採用は、論文上の優劣だけで決めるより、院内で継続運用できるかで判断します。次の 3 点を確認すると、導入後の失敗を減らせます。
| 確認項目 | CPOT が向きやすい場面 | BPS が向きやすい場面 |
|---|---|---|
| 教育 | 観察項目をチームで練習できる | まずは短時間で共通言語化したい |
| 監査 | 記録のばらつきを定期的に振り返れる | 監査体制はこれから作る段階 |
| 記録 | 刺激・呼吸・鎮静条件まで記録できる | 最小限の記録テンプレから始めたい |
| 結論 | 運用が成熟している施設で使いやすい | 標準化の初期に導入しやすい |
運用は「安静→刺激→介入後」の 3 点セットで揃えます
CPOT と BPS は、点数そのものよりも測定タイミングを揃えることで価値が出ます。安静時だけ測ると、体位変換・吸引・ROM・離床準備などで痛みが顕在化する場面を見落としやすくなります。
- 安静時:介入前の基準値を確認する
- 刺激時:体位変換、吸引、ROM、ケア場面で疼痛反応を見る
- 介入後:休息、鎮痛、体位調整、環境調整後の変化を見る
点数が高いときは、すぐに「中止」や「鎮静追加」と決めず、刺激量、体位、呼吸状態、不安、分泌物、チューブ違和感などを見直します。高得点は中止の合図というより、条件をそろえて再評価する合図として扱うと安全です。
記録テンプレは「点数+条件+判断」で残します
CPOT と BPS の記録で最も避けたいのは、点数だけがカルテに残ることです。点数だけでは、疼痛で上がったのか、呼吸苦で上がったのか、不安や恐怖で上がったのかが後から判断できません。最低限、刺激・呼吸/鎮静条件・その後の判断をセットで残します。
| 時点 | 点数 | 刺激・場面 | 呼吸・鎮静条件 | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| 安静時 | CPOT __ / BPS __ | 介入前 | RASS __、SpO2 __、同調 __ | 基準値として記録 |
| 刺激時 | CPOT __ / BPS __ | 体位変換/吸引/ROM/離床準備 | 努力呼吸 __、表情 __、同調 __ | 刺激量調整/鎮痛相談 |
| 介入後 | CPOT __ / BPS __ | 休息/体位調整/鎮痛後 | 落ち着き __、呼吸 __、表情 __ | 継続/再評価/中断 |
現場の詰まりどころは「疼痛・呼吸苦・恐怖不安」の混同です
CPOT/BPS が高いとき、疼痛だけでなく、人工呼吸器との同調不良、努力呼吸、恐怖、不安、せん妄、チューブ違和感が混ざることがあります。ここで点数だけを見て鎮静に寄せると、痛みの評価ではなく「反応を消す対応」になりやすいです。
毎回同じところで詰まる場合は、個人の努力不足ではなく、教育体制、共通フォーマット、記録例、相談相手の不足が影響していることもあります。評価・記録・報告の型をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。
評価・記録で詰まりやすい方へ
PT キャリアガイドを見るよくある失敗は「高得点=痛みだけ」と決めつけることです
CPOT/BPS が高いときは、疼痛を疑うことが大切です。ただし、同時に呼吸苦、せん妄、不安、体位不快、分泌物、チューブ刺激も確認します。特に人工呼吸器管理中は、同調不良が疼痛反応のように見えることがあります。
記録では「CPOT 4 点」だけで終わらせず、「体位変換時に表情変化と上肢防御あり。休息と体位再調整後に低下」など、何で上がり、何で下がったかを残すと、次の介入に使える情報になります。
導入は 2 週間で「同じ場面を同じ形で記録する」ことから始めます
最初から完璧な運用を目指すと、観察者間のばらつきで止まりやすくなります。まずは 2 週間だけ、対象場面と記録欄を絞って運用すると定着しやすいです。
- 採用尺度を 1 つ決める:CPOT か BPS のどちらかに統一する
- 測定場面を 3 つに固定する:安静時、刺激時、介入後
- 記録テンプレを統一する:点数、刺激、呼吸/鎮静条件、判断を残す
- 5 例だけ振り返る:点数が割れた場面を共有する
この段階では、細かな解釈の完全一致よりも、同じ場面を同じ型で見られることを優先します。運用が揃ってから、教育資料や監査表を整えると無理がありません。
CPOT と BPS の個別解説はこちらで確認します
- CPOT を詳しく確認する:CPOT の評価と記録
- BPS を詳しく確認する:BPS の評価と記録
よくある質問(FAQ)
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Q1. CPOT と BPS はどちらが正確ですか?
単純な優劣よりも、院内で同じ条件で使えるかが重要です。どちらも自己申告が難しい ICU 患者の疼痛評価に使われますが、深鎮静や呼吸要因の影響を受けます。まずは測定タイミングと記録条件を揃えることが優先です。
Q2. 点数が高ければリハビリやケアは中止ですか?
点数だけで中止を決めるのは避けます。刺激を小さくする、体位を変える、休息を入れる、呼吸状態を整えるなどの調整を行い、再評価して判断します。循環・呼吸の悪化がある場合は安全を優先します。
Q3. 呼吸苦と疼痛の区別がつきません。
人工呼吸器との同調不良、努力呼吸、分泌物、体位不快があると混ざりやすいです。点数だけでなく、刺激内容、呼吸状態、介入後の変化をセットで記録すると、疼痛主因か呼吸主因かを振り返りやすくなります。
Q4. 抜管後や意思表示が可能になったらどうしますか?
自己申告が可能になったら、原則として NRS など本人の訴えを主役にします。CPOT/BPS は補助的に使い、行動反応と本人の訴えが一致しているかを確認する位置づけに切り替えます。
次の一手
参考文献
- Gélinas C, Fillion L, Puntillo KA, et al. Validation of the Critical-Care Pain Observation Tool in adult patients. Am J Crit Care. 2006;15(4):420-427. PubMed: 16823020.
- Payen JF, Bru O, Bosson JL, et al. Assessing pain in critically ill sedated patients by using a behavioral pain scale. Crit Care Med. 2001;29(12):2258-2263. DOI: 10.1097/00003246-200112000-00004.
- Devlin JW, Skrobik Y, Gélinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46(9):e825-e873. DOI: 10.1097/CCM.0000000000003299.
- de Queiróz Pinheiro ARP, et al. Behavioral Pain Scale and Critical Care Pain Observation Tool: A systematic review. Rev Bras Ter Intensiva. 2019;31(4):571-581. PMCID: PMC7008990.
- Birkedal HC, et al. Comparison of two behavioural pain scales for the assessment of procedural pain: A systematic review. Nurs Open. 2021;8(5):2050-2062. DOI: 10.1002/nop2.714.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


