MNA®-SF・MUST・GNRI の違い【比較・使い分け】栄養スクリーニングの選び方

栄養・嚥下
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なぜ比較が必要?(結論→使い分けの基準)

現場には MNA®-SF・MUST・GNRI など複数の栄養評価ツールがあり、対象(高齢者/成人)や必要データ(問診/身体計測/採血)、判定の考え方が異なります。本稿では「目的」「必要データ」「カットオフ」「強み/注意点」を 1 枚の表で横並びにし、どの場面でどのツールを優先するかを最短で決められるように整理します。

実務は、①スクリーニング(高齢者なら MNA®-SF、成人汎用なら MUST )でリスクを拾い、②陽性なら GLIM 基準で低栄養の診断・重症度分類へ進み、③介入設計(栄養 × 口腔・嚥下 × 活動量)につなぐのが基本です。本記事は「入口のツール選択」で迷わないための比較ガイドとして位置づけます。

評価は「選び方」で再現性が決まります。基準を持つと、忙しい日ほど迷いが減ります。 評価 → 介入 → 再評価の臨床フローを見る( #flow )

主要ツールの比較(1 枚表)

ここでは、高齢者の低栄養リスクに使われる MNA®-SF、成人汎用の MUST、入院高齢者で予後・合併症リスクの層別化にも用いられる GNRI を一括で比較します。まずは差分(目的/必要データ/判定軸)を押さえ、施設の対象患者層と採血体制に合わせて組み合わせるのが実務的です。

※表は横にスクロールできます(スマホでは左右にスワイプしてください)。

表 1|MNA®-SF・MUST・GNRI の比較(目的/必要データ/判定の違い)
ツール 位置づけ 必要データ 判定(カットオフ) 強み 注意点
MNA®-SF 高齢者の低栄養リスク
スクリーニング
問診+ BMI または CC(ふくらはぎ周囲長) 12–14=良好/8–11=リスク/0–7=低栄養 所要 5 分前後で回しやすく、体重測定が難しい場面でも CC を使って入口を作りやすい CC 代替の測定条件(姿勢・テープの張力・浮腫)でブレやすいので、施設内で条件固定が重要
MUST 成人全般の栄養状態
スクリーニング
BMI・体重減少率・急性疾患効果(摂取低下の見込み) 総合点 0=低/1=中等度/2 以上=高 入院〜外来〜在宅まで汎用性が高く、チームの共通言語にしやすい 体重減少率の「いつから何 kg 減か」を取り違えやすい。欠測時の代替推定は誤差の影響に注意
GNRI 高齢入院患者の
栄養リスク/予後・合併症リスクの層別
Alb( g/dL )+体重/理想体重(%IBW) GNRI= 14.89 × Alb + 41.7 ×(体重/理想体重)
> 98=なし/92–98=低/82–< 92=中等度/< 82=高度
層別化(誰を優先して手厚く見るか)に使いやすく、研究報告の蓄積も多い 急性期の体液変動や炎症で Alb が動く。採血タイミングと臨床像をセットで読む必要がある

よくある失敗(NG → OK 早見)

表 2|MNA®-SF/MUST/GNRI で起きやすい失敗と対策
よくある失敗(NG) なぜ問題? 対策(OK)
CC の測定条件が人によって違う 数 mm の差が区分や経時変化の判断に影響しやすい 姿勢(膝 90 度など)・部位・テープ張力を「施設ルール」に固定し、記録に条件を残す
MUST の体重減少率の期間を取り違える リスクを過小/過大評価し、介入の優先度がズレる 「いつの体重」と「現在体重」をセットで確認し、期間( 3–6 か月など)も必ず記録する
GNRI を数値だけで結論づける Alb は炎症・体液で動き、急性期ほど解釈が難しい 採血タイミング・浮腫・炎症所見( CRP など)と合わせて読む。層別化の道具として使う

使い分けの指針(現場別)

在宅・外来など測定資源が限られる場面では、高齢者には MNA®-SF を入口にし、体重測定が難しい場合は CC を使って「拾い上げ」を優先すると回りやすいです。成人の入院患者を広くふるい分けたい場合は、 BMI・体重減少・摂取低下の見込みをまとめて評価できる MUST が便利です。

入院高齢者で「誰を優先して手厚く見るか」まで決めたいときは、スクリーニング結果に加えて GNRI を併用し、栄養リスクの層別化に活用します。全ツール共通で重要なのは、陽性のまま放置しないことです(次のアクションと再評価周期を先に固定すると、運用が止まりにくくなります)。

表 3|場面別:まず選ぶならどれ?(迷いを減らす最短分岐)
場面 まずの入口 追加で見るなら
高齢者主体(回復期/施設/在宅) MNA®-SF 入院で層別が必要なら GNRI
成人も混在(一般病棟/急性期の入口) MUST 高齢・長期入院で GNRI を追加
採血が定期で回る入院高齢者 MNA®-SF または MUST GNRI(層別化)+ GLIM(診断)

スクリーニング → 診断(GLIM) → 介入の流れ

各ツールは「診断への入口」であり、それ自体が低栄養の確定診断ではありません。GLIM 基準では、体重減少・低 BMI・筋量減少などの「表現型基準」と、摂取低下/吸収障害・炎症/疾病負荷などの「病因基準」を組み合わせて診断し、重症度を分類します。

現場では、次の 3 ステップで回すと止まりにくくなります(担当者とタイミングを先に決めるのがコツです)。

  1. 拾う:MNA®-SF または MUST でスクリーニング(入院時/初回訪問など)
  2. 確かめる:陽性なら筋量・体重変化・炎症所見などを確認し、GLIM の診断・重症度へ
  3. 変える:栄養(量/経路)+ 口腔・嚥下 + 活動量(離床・運動負荷)を調整し、 1〜4 週ごとに再評価

栄養指標だけで終わらせず、「機能指標(筋力・歩行・ ADL )とセットで追う」形にすると、介入の説明とチーム共有がスムーズになります。栄養スクリーニングの全体設計(複数ツールの位置づけや回し方)は、栄養スクリーニングの使い分け(低栄養アセスメント総論) にまとめています。

現場の詰まりどころ(止まるポイントを先に潰す)

詰まりどころの 1 つ目は、「誰が、いつ、どの患者にやるか」が曖昧なまま運用が始まり、忙しい時間帯に後回しになって評価率が落ちるケースです。入院時のルーチンに入れるのか、特定病棟だけで回すのかを決めておかないと、比較や経時変化も追いにくくなります。

2 つ目は、ツールの役割分担が不明確で、病棟ごとに別の尺度が使われて情報共有が止まるパターンです。急性期は MUST、回復期や高齢者主体は MNA®-SF、長期入院の高齢者は GNRI を追加、など「病期・病棟ごとの標準」をざっくり決めるだけでも、カンファレンスが回りやすくなります。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

MNA®-SF と MUST のどちらを優先して使えばよいですか?

高齢者が中心の病棟や施設では、入口は MNA®-SF に寄せた方が回しやすいことが多いです。一方、年齢層が広い一般病棟や急性期の入口では、 BMI・体重減少・摂取低下の見込みをまとめて扱える MUST が使いやすい場合があります。どちらが「正しい」というより、対象患者の年齢構成と院内の標準フローに合わせて 1 本決め、条件(測定・記録)を固定するのがポイントです。

GNRI はすべての患者に計算した方がよいのでしょうか?

GNRI は採血( Alb )と理想体重の算出が前提なので、全員に一律で実施すると負担が増えます。現実的には「高齢の入院患者」「既に低栄養リスクが疑われる患者」「長期入院・慢性疾患で予後や合併症リスクまで層別したい患者」などに絞って活用することが多いです。採血タイミング(入院時/週次など)とセットで対象条件を決めると運用しやすくなります。

評価結果をリハビリのゴール設定にどう結びつければよいですか?

スコアをゴールにするのではなく、「このリスクなら、何を変えて、いつ見直すか」をゴールにします。例えば高リスクなら、摂取量の確保(経路・補助食品)と離床・運動負荷の下限を先に決め、 1〜2 週で再評価して調整します。中等度なら、筋力・歩行・ ADL の改善目標と並行して体重やスクリーニングスコアの推移を追い、「栄養指標+機能指標」をセットで管理すると臨床的な意味づけがしやすくなります。

次の一手(このあと迷わないための 3 本)

参考文献(一次情報・DOI/PubMed)

  1. MNA® Nutritional Assessment Forms / User Guide. FormsUser Guide
  2. BAPEN. The ‘MUST’ Explanatory Booklet(PDF). PDF
  3. Bouillanne O, Morineau G, Dupont C, et al. Geriatric Nutritional Risk Index: a new index for evaluating at-risk elderly medical patients. Am J Clin Nutr. 2005;82(4):777-783. DOI:10.1093/ajcn/82.4.777PubMed
  4. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. DOI:10.1016/j.clnu.2018.08.002PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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