- 大腿骨近位部骨折のリハ栄養は術後 48 時間で型を作る
- この記事で決めること:術後リハ栄養の流れに絞る
- 実装タイムライン:術後 48 時間 → 週次 → 月次で回す
- A4 記録シート:術後 48 時間から週次再評価まで書き残す
- 術後 48 時間のスクリーニングは最小 4 項目でそろえる
- 必要量は“細かい計算”より不足に気づける形で置く
- 介入は食事調整 → 補食 → ONS → 経路検討の順に上げる
- リハ負荷を上げる前に摂取量・体調・筋のトレンドを合わせる
- 再評価は週 1 ミニ評価と月 1 KPI で迷いを減らす
- 骨粗鬆症の栄養指導は術後回復と分けて考える
- 現場の詰まりどころ:ONS を入れたのに飲めない時は原因に戻る
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手
- 参考文献
- 著者情報
大腿骨近位部骨折のリハ栄養は術後 48 時間で型を作る
大腿骨近位部骨折の術後は、痛み・炎症・活動量低下が重なり、「食べられないのに筋量と筋力が落ちる」状況が起きやすい時期です。この記事では、PT / OT が病棟・回復期で迷いやすいリハ栄養の初期評価、必要量の考え方、補食・ ONS、再評価、記録例を 1 つの実務フローとして整理します。
結論は、リハと栄養を別々に進めないことです。術後 48 時間で摂取量・体重変化・筋力の手がかりをそろえ、食事 → 補食 → ONS → 経路検討の順に段階を上げ、週 1 回のミニ再評価で負荷量と栄養介入を同時に見直します。
この記事で決めること:術後リハ栄養の流れに絞る
このページで答えるのは、大腿骨近位部骨折術後に、いつ何を評価し、どの段階で栄養介入を上げ、どう再評価・記録するかです。栄養スクリーニング尺度の詳細比較や、骨粗鬆症の食事指導そのものは、親記事・兄弟記事に分けて整理します。
| 区分 | このページで答えること | 深掘りしすぎないこと |
|---|---|---|
| 術後早期 | 48 時間以内に見る最小セット | 全スクリーニング尺度の詳細比較 |
| 介入 | 食事・補食・ ONS の段階アップ | 製品選定や詳細な処方設計 |
| 再評価 | 週次で何を見直し、どう記録するか | 骨粗鬆症の栄養指導全体 |
※スマホでは表を横スクロールで確認してください。
実装タイムライン:術後 48 時間 → 週次 → 月次で回す
大腿骨近位部骨折のリハ栄養は、評価項目を増やすよりも、いつ見るかを固定した方が運用しやすくなります。術後 48 時間で初期評価、週 1 回で摂取量と体重・筋力のミニ再評価、月 1 回で ADL / 歩行目標とのズレを確認する流れにします。
A4 記録シート:術後 48 時間から週次再評価まで書き残す
この記事の流れを、そのまま現場で使いやすい A4 1 枚の記録シートにまとめました。術後 48 時間の初期確認、食事・補食・ ONS の段階アップ、週次再評価、次回方針を 1 枚で書き残せます。
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術後 48 時間のスクリーニングは最小 4 項目でそろえる
術後早期は、詳細な栄養評価を完璧にそろえる前に、摂取量・体重変化・筋量/筋力の手がかり・食べられない原因を共通言語にします。「低栄養かどうか」だけで止めず、リハ負荷を上げてよい状態か、補食や ONS が必要かを判断できる形で記録します。
| 項目 | 現場での見方 | 記録ポイント | 次アクション |
|---|---|---|---|
| 摂取量 | 主食・主菜の摂取割合、食事 5 割未満の持続 | 何割食べたか、どの食形態なら入るか | 補食・ ONS の検討 |
| 体重 / BMI | 直近 1〜6 か月の体重変化、BMI、浮腫・脱水の有無 | 単回値より“落ちている傾向”を重視 | 週 1 回の再評価へつなぐ |
| 筋量 / 筋力の手がかり | 握力、下腿周径、起立・歩行の回復速度 | 疼痛、荷重制限、認知面の影響を併記 | 運動量を上げる前の確認材料にする |
| 食べられない原因 | 疼痛、悪心、便秘、せん妄、口腔、嚥下、抑うつ | 「食べない」ではなく原因を言語化 | 原因対応 → 摂取量再確認 |
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必要量は“細かい計算”より不足に気づける形で置く
必要量は、PT / OT が単独で決め切るものではありません。栄養科・主治医の設定を確認したうえで、リハ側では「目標量に対して実際の摂取が届いているか」を追います。とくに高齢の術後患者では、たんぱく質不足が起立・歩行練習の回復を邪魔しやすいため、摂取量と運動負荷を同じタイミングで見直すことが重要です。
| 観点 | 見るポイント | リハ側の使い方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| エネルギー | 食事摂取量が目標に届いているか | 離床量・歩行量を上げる前に不足を確認 | 炎症、心不全、腎機能で調整が必要 |
| たんぱく質 | 食事だけで不足していないか | 筋力低下、起立困難、疲労感と合わせて見る | CKD などは主治医・管理栄養士と相談 |
| 摂取タイミング | リハ前後に食べられる時間があるか | 食事直後の負荷過多、空腹での過負荷を避ける | 悪心・便秘・眠気の時間帯も確認 |
| 到達度 | 食事・補食・ ONS を含めて何割届いたか | 負荷を上げる、維持する、減らす判断に使う | 「処方あり」ではなく「入った量」で判断 |
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介入は食事調整 → 補食 → ONS → 経路検討の順に上げる
術後の栄養介入は、いきなり ONS を足すだけでは安定しません。まず疼痛・便秘・悪心・睡眠・口腔・嚥下など、食べられない原因を確認します。そのうえで食事調整、補食、ONS、経腸・静脈栄養の適応検討へ段階を上げます。
| 段階 | 入る条件の例 | やること | チーム共有の言葉 |
|---|---|---|---|
| 0:原因対応 | 摂取量低下の背景が明確 | 疼痛、便秘、悪心、睡眠、口腔、食形態を調整 | 「何が理由で入らないか」 |
| 1:食事調整・補食 | 食事だけでは不足しそう | 食事形態、間食、高エネルギー食品、タイミング調整 | 「何割まで上がったか」 |
| 2:ONS | 摂取 5 割未満が続く、体重・筋力低下が目立つ | 高エネルギー・高たんぱく ONS を検討 | 「飲めた量」と「飲めない理由」 |
| 3:経腸 / 静脈 | 経口摂取が成立しない、合併症で不足が続く | 主治医・ NST 方針に従い栄養経路を検討 | 「リハ負荷の上限も同時に調整」 |
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リハ負荷を上げる前に摂取量・体調・筋のトレンドを合わせる
栄養が追いつかない状態で運動量だけを増やすと、疲労や筋力低下が前面に出やすくなります。リハ負荷を上げる前に、摂取量、炎症・疼痛・睡眠、体重/筋力のトレンドを短く確認し、負荷量と栄養介入を同時に調整します。
| 順番 | 確認すること | 判断 | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 食事摂取量 | 5 割未満が続くなら負荷増量は慎重 | 食事 4〜5 割、主菜残量多い |
| 2 | 体調・炎症・疼痛 | 発熱、疼痛、便秘、悪心があれば原因対応を優先 | 疼痛 NRS 6、食欲低下あり |
| 3 | 体重・筋力の傾向 | 低下が続く場合は栄養介入と負荷量を再相談 | 握力低下、起立反復で疲労強い |
| 4 | 今日のリハ負荷 | 増量・維持・減量を決める | 歩行距離は維持、補食後に再評価 |
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再評価は週 1 ミニ評価と月 1 KPI で迷いを減らす
リハ栄養で詰まりやすいのは、「評価したけど次に何を変えるかが決まらない」ことです。週 1 回は摂取量・体重/ BMI・筋力の手がかりを短く見直し、月 1 回は ADL / 歩行目標と栄養介入の到達度を確認します。
| 周期 | 確認項目 | 判断すること | 記録の型 |
|---|---|---|---|
| 週 1 回 | 摂取量、体重、便秘・悪心、疼痛、ONS 摂取量 | 補食・ ONS の継続、変更、中止 | 摂取 6 割、ONS 半量。便秘対応後に再確認。 |
| 週 1 回 | 握力、起立、歩行距離、疲労感 | リハ負荷の増量・維持・減量 | 歩行距離は維持。食事摂取改善後に増量検討。 |
| 月 1 回 | ADL、歩行、退院先、家族支援、食事準備 | 退院後も続けられる栄養・運動計画 | 退院後は補食継続、外来で体重と歩行を再確認。 |
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骨粗鬆症の栄養指導は術後回復と分けて考える
大腿骨近位部骨折では、術後回復の栄養と再骨折予防の栄養が混ざりやすくなります。術後早期はエネルギー・たんぱく質確保と摂取量の底上げを優先し、Ca・ビタミン D・ビタミン K などの骨粗鬆症の食事指導は、退院指導や外来フォローで別立てにすると整理しやすくなります。
骨粗鬆症の栄養管理は、骨粗鬆症の栄養管理( PT ガイド )で、食事の 4 本柱、CKD・ワルファリン・ステロイド使用時の注意点、記録シートまで整理しています。
現場の詰まりどころ:ONS を入れたのに飲めない時は原因に戻る
先に実装の失敗パターンを確認したい方は、よくある失敗 3 つ → 立て直しの手順 の順で見ると、チーム共有がしやすくなります。関連:リハ栄養スクリーニングの標準手順
| よくある失敗 | 起きていること | 修正ポイント |
|---|---|---|
| 離床だけ増やす | 食事 5 割未満のまま運動量だけ増える | 摂取量を確認してから負荷増量を判断する |
| ONS を出して終わる | 嗜好・時間帯・便秘・悪心で飲めていない | 「処方」ではなく「飲めた量」を追う |
| 一律指導になる | CKD、心不全、ワルファリン、嚥下面を見落とす | 主治医・管理栄養士・薬剤師へ共有する |
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立て直しは、①食べられない原因を確認する ②補食・ ONS の量とタイミングを調整する ③便秘・悪心・疼痛・口腔の問題を共有する ④リハ負荷を増量・維持・減量に分けて再設定する、の順で行います。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けていることもあります。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1:栄養介入は低栄養と診断された人だけでよいですか?
低栄養と診断された人だけに限定すると、術後早期の摂取不足を見逃すことがあります。大腿骨近位部骨折では、術後の痛み・炎症・食欲低下・活動量低下が重なるため、まずは摂取量、体重変化、筋力の手がかりを短い周期で追い、不足が続く場合に補食・ ONS を早めに検討します。
Q2:ONS はいつから検討しますか?
食事摂取が 5 割未満で続く、体重低下や筋力低下が目立つ、リハ負荷に対して疲労が強い場合は、術後早期から検討します。ただし、ONS を出すだけでは不十分です。嗜好、温度、タイミング、便秘、悪心、疼痛など、飲めない理由を同時に確認します。
Q3:PT / OT はどこまで栄養に関わればよいですか?
詳細な必要量の設定や栄養経路の判断は、主治医・管理栄養士・ NST と連携して行います。PT / OT は、食事摂取量、疲労、起立・歩行の回復速度、体重・筋力の傾向を共有し、「リハ負荷を上げてよいか」「栄養介入を見直すべきか」の判断材料を出す役割が重要です。
Q4:骨粗鬆症の栄養指導も術後早期に全部説明すべきですか?
術後早期は、まず回復のためのエネルギー・たんぱく質確保を優先します。Ca、ビタミン D、ビタミン K などの骨粗鬆症の栄養指導は重要ですが、退院指導や外来フォローで別立てにした方が、患者・家族にも伝わりやすくなります。
次の一手
- 全体像を整える:栄養・嚥下ハブ
- すぐ実装する:リハ栄養スクリーニングの標準手順
- 退院指導につなげる:骨粗鬆症の栄養管理( PT ガイド )
参考文献
- 藤原大, 飯田有輝, 西岡心大, ほか. 大腿骨近位部骨折患者におけるリハビリテーション栄養診療ガイドライン. リハビリテーション栄養. 2018;2(2):268-275. 公式 PDF
- 公益財団法人日本医療機能評価機構 Minds. リハビリテーション栄養診療ガイドライン 2018 年版. Minds 掲載ページ
- Nishioka S, Aragane H, Suzuki N, Yoshimura Y, Fujiwara D, Mori T, et al. Clinical practice guidelines for rehabilitation nutrition in cerebrovascular disease, hip fracture, cancer, and acute illness: 2020 update. Clin Nutr ESPEN. 2021;43:90-103. doi: 10.1016/j.clnesp.2021.02.018 / PubMed
- Volkert D, Beck AM, Cederholm T, et al. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clin Nutr. 2022;41(4):958-989. doi: 10.1016/j.clnu.2022.01.024 / PubMed
- Frederiksen AKS, Beck AM, Luiking YC, Hofstede JM, Knudsen AW, Munk T. Protein intake in hospitalized older patients after hip fracture: Pilot feasibility study evaluating ESPEN guidelines for geriatrics. Clin Nutr Open Sci. 2022;42:148-159. doi: 10.1016/j.nutos.2022.03.001
- Chen B, Zhang JH, Duckworth AD, Clement ND. Effect of oral nutritional supplementation on outcomes in older adults with hip fractures and factors influencing compliance: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Bone Joint J. 2023;105-B(11):1149-1158. doi: 10.1302/0301-620X.105B11.BJJ-2023-0139.R1 / PubMed
- Bell JJ, Mitchell RJ, Harris IA, Seymour H, Armstrong E, Harris R, et al. Oral nutritional supplementation in older adults with a hip fracture: findings from a bi-national clinical audit. Healthcare. 2024;12(21):2157. doi: 10.3390/healthcare12212157 / PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


