
ポジショニングとは?(目的→体位→結果の一貫運用)
ポジショニングは、目的(疼痛緩和・圧迫予防・換気改善・痙縮管理・注意障害への配慮 等)に合わせて、体位・支持・環境を設計し、再現可能な条件で提供・記録・評価までを行う実践です。安全と再現性を最優先に、事前チェック→設定→確認→記録→再評価のサイクルで運用します。
安全チェック(禁忌・レッドフラッグ)
- 皮膚/創部:発赤・水疱・疼痛の新出/増悪。体圧分散の不足。
- 循環・呼吸:SpO₂低下・呼吸困難・チューブ牽引・嚥下リスク。
- 整形的配慮:術後肢位制限・骨折固定・脱臼既往(肩亜脱臼など)。
- 神経所見:痙縮誘発・疼痛誘発・麻痺側に偏った荷重。
※施設プロトコルと主治医指示を優先。疑義があれば実施前に確認。
標準フロー(5ステップ)
- 目的の明確化:例)「右肺換気改善」「仙骨部の圧迫軽減」「肩の牽引回避」。
- 準備:ピロー・タオルロール・足部サポート・体圧分散具・アームトレー等。
- 設定:骨盤・体幹の整列/突出部のオフロード/気道・ラインの保護。
- 確認:皮膚色・呼吸様式・快適度・痛み・ずれ剪断・離床後の再セッティング。
- 記録と再評価:再現可能な条件を数値/語句でテンプレ記載。所見に対して修正。
体位 | リスク部位 | オフロード例 |
---|---|---|
仰臥位 | 後頭部・肩甲部・仙骨・踵 | 後頭部リングは使い過ぎに注意/肩甲部と仙骨の二点支持を回避/踵浮かし |
30°側臥位 | 大転子・外果 | 体幹長軸にロール/膝間クッションで骨接触を回避 |
端座位・車椅子 | 坐骨・仙骨・大腿後面 | 骨盤後傾の是正/坐骨オフロード(前方重心+骨盤支持)/フットサポート調整 |
体位別の要点(現場メモ)
- 仰臥位:骨盤中間/腰椎過伸展を避ける。肩の牽引回避、手関節背屈位・母指外転。
- 30°側臥位:体幹ロールで半側臥を作る/麻痺側肩は前方挙上+前方支持。
- 腹臥位(適応あれば):胸郭・腹部の支点を分散。呼吸状態を観察。
- ファーラー位:骨盤後傾を防ぐ傾斜/座面後方スライドの剪断を抑制。
- 車椅子座位:骨盤ベルト・アームトレー・側方パッドで骨盤→体幹→頭頸を上からでなく下から整える。
片麻痺を伴う場合の注意
- 肩:肩甲帯前方支持・上腕の牽引回避・肘前方支持。上肢は掌上向/母指外転。
- 下肢:外旋・開脚の是正(膝下ロール/足部中間位)。
- 注意障害:無視側に情報提示/環境配置の工夫。
呼吸・循環の狙い(例)
- 換気改善:患側肺上にして含気を促進/ドレナージ位はモニタリング下で短時間。
- 循環:末梢浮腫には下肢挙上(深部静脈血栓の疑いがあれば禁忌)。
記録テンプレ(コピーして編集)
【目的】____(例:仙骨部の圧負荷軽減/右肺換気改善/肩の牽引回避) 【体位】仰臥・30°側臥・ファーラー・車椅子(角度 __°) 【支持】骨盤:__、体幹:__、上肢:__、下肢:__、足部:__ 【装具/クッション】____ 【安全】皮膚所見:__/SpO₂:__%/痛み:__/ライン保護 OK 【効果】呼吸様式:__/快適度:__/疼痛:__ 【留意】体位変換間隔:__ 時間、再設定:__ 時間後、本人・家族への説明:実施
よくあるミスと対策
- 枕を“積むだけ”:支点が増え剪断が悪化。骨盤→体幹→四肢の順に少数要点で。
- 肩の牽引:上肢が下がると亜脱臼リスク。前方・側方から台で受ける。
- 再現性不足:角度・支持部位・クッション種類を語句と数値で固定化。