反応的姿勢制御リハビリ|評価とアプローチ

臨床手技・プロトコル
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反応的姿勢制御とは?(メカニズムと臨床意義)

反応的姿勢制御(反応的バランス)は、予期しない外乱によって 重心( COM )が支持基底面( BOS )から外れそうになった瞬間に、足関節・股関節・ステップ方略で転倒を回避する能力を指します。予測的姿勢制御が「動く前の準備」であるのに対し、反応的姿勢制御は「もう崩れかけた後の踏ん張り」であり、転倒直前の“最後の砦”です。

高齢者・脳卒中・パーキンソン病などでは、この反応的姿勢制御が遅れたり、方向が不適切になったりすることで転倒リスクが増加します。本稿では、反応的姿勢制御のメカニズムを整理しつつ、臨床で使いやすい評価とリハビリアプローチ(訓練デザイン)をまとめます。

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反応的姿勢制御の評価(何で測る?どこを見る?)

反応的姿勢制御の評価では、単に「立てたか・転倒したか」だけでなく、一歩反応の有無・方向・反応時間・ステップ数・上肢保護反応の使い方を系統的に観察することが重要です。Mini-BESTest や Functional Gait Assessment( FGA )は、立位・歩行中の外乱に対する応答を含み、バランス能力と転倒リスクの全体像を把握しやすいツールです。

加えて、改変 CTSIB( mCTSIB )で視覚・体性感覚・前庭入力のリウェイティングを確認すると、「そもそもどの感覚に依存しすぎているか」が見えやすくなります。反応的姿勢制御の評価は、これらのテストで ①どの条件で破綻するか、②破綻前後の一歩反応の質、③患者さんの恐怖・自己効力感をセットで押さえるイメージです。

※この表は横にスクロールできます。

反応的姿勢制御の評価:目的別の選び方
場面 推奨評価 主なチェックポイント 所要時間の目安 コメント
立位での外乱応答 Mini-BESTest(反応的姿勢制御サブスケール) 一歩反応の有無・方向・反応時間・ステップ数 約 15 分 姿勢制御全体の中での位置づけを把握しやすい
歩行中の転倒リスク Functional Gait Assessment( FGA ) 方向転換・速度変化・頭部回旋中の安定性 約 10 分 屋内外歩行での「つまずきやすい場面」を抽出
感覚統合の偏り mCTSIB(改変 CTSIB ) フォーム選択と開閉眼での保持時間・動揺の質 約 5 分 視覚・体性感覚・前庭それぞれへの依存度を推定
心理面(恐怖・自己効力) ABC スケール/ FES-I 転倒への不安・自信低下の程度 約 10 分 「できるのに怖くて動けない」ケースの把握に有用

反応的姿勢制御リハビリのアプローチ(ステップ方略と安全管理)

反応的姿勢制御のリハビリアプローチでは、外乱の強さ・方向・予測可能性を段階づけしながら、ステップ方略と上肢保護反応を鍛えていきます。原則は、小外乱 → 単方向 → 多方向 → タイミングも方向も予測困難の順に進め、常に安全管理(介助者配置・吊り具やセーフティハーネス・環境のクリアランス)を優先します。

  • 前後方向:軽い徒手外乱から始め、弾性バンドやケーブルを用いた「プッシュ&リリース」へと進める。
  • 側方方向:最初は片側のみで練習し、その後左右ランダム提示へステップアップする。
  • 多方向ステップ:前・後・左右・斜めをカード抽選などで無作為提示し、実場面に近い反応を引き出す。
  • 把持戦略の調整:壁・平行棒・手すりへの過度な依存を減らし、下肢主導の反応へ移行する。

トレーニング効果の判定には、Mini-BESTest や FGA を用いて ステップ数の減少・反応時間の短縮・一歩での収束増加などを追うと変化が見えやすくなります。外乱に慣れてくると、同じ強度でも「怖さ」が減り、ステップが素早く適切な方向に出せるようになることが多いです。

デュアルタスクと外乱負荷(転倒場面の再現)

実際の転倒場面では、会話・計算・周囲への注意など、ほとんどがデュアルタスク状況です。そのため、反応的姿勢制御が安定してきた段階で、軽い認知負荷(逆唱・名詞列挙・ 7 の引き算など)を組み合わせると、より実生活に近い条件でのトレーニングになります。

ただし、デュアルタスク負荷を急に高めると、ステップが出なくなったり、恐怖心が増大してしまうことがあります。単一課題で 8 割以上成功する条件から、少量の認知課題を追加するイメージで進めると安全です。評価面では、ABC スケールや FES-I で「動ける自信」の変化も追っておくと、身体機能と心理面のギャップを把握しやすくなります。

現場の詰まりどころ(よくあるつまずきポイント)

  • 評価が「できる/できない」の二択になっている:一歩反応の質やステップ数、反応時間を記録しておかないと、微妙な改善が見えにくくなります。
  • 外乱の強度アップが急すぎる:介入者側が「まだいける」と思っても、本人には恐怖が強く、ステップが固まってしまうケースが多くみられます。
  • 感覚統合の問題を飛ばしている:mCTSIB などで土台を見ずに反応課題だけ進めると、視覚遮断やフォーム変更に耐えられず破綻しやすくなります。
  • 歩行場面への一般化が不十分:その場での一歩反応は良くなっても、方向転換や後退歩行など日常場面に落とし込んでいないと、転倒リスクは高いままです。
  • チーム内共有が足りない:どの程度の外乱まで安全に実施してよいか、看護・介護スタッフと共有されていないと、場面によって対応がばらつきます。

よくある質問(FAQ)

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反応的姿勢制御の訓練は、どのタイミングで始めるべきですか?

立位保持や基本歩行が「介助つきである程度安定」してきた段階で、早めに小さな外乱から導入するのがおすすめです。遅らせすぎると、恐怖や回避行動が固まりやすく、十分な負荷をかけられなくなります。まずは前後方向の軽い外乱で一歩反応を確認し、安全が確保できることをチームで共有してから段階を上げましょう。

高リスクの患者さんには、どの程度まで負荷を上げてもよいですか?

転倒歴・骨粗鬆症・抗凝固療法中などのリスクを踏まえ、「一歩反応は出るが、万が一転倒しても重大な損傷にはなりにくい範囲」にとどめるのが原則です。ハーネスやセーフティバーを用いる環境があれば外乱を強められますが、病棟ベッドサイドでは、あくまで小外乱中心で「方向とタイミングの予測不能性」を工夫する方が安全です。

反応的姿勢制御の改善を、カルテにはどう記録すると伝わりやすいですか?

「外乱条件」と「反応の質」をセットで書くと共有しやすくなります。例えば「軽い徒手後方外乱( 10 回中 )で、一歩反応が 8 回適切に出現。二歩以上のステップは 2 回に減少。反応時間はおおむね 0.4〜0.5 秒」といった形です。経時的に同じ条件で再評価することで、チーム全体で改善のイメージを持ちやすくなります。

おわりに

反応的姿勢制御は、転倒予防のなかでも「最後の踏ん張り」に相当する重要な機能です。予測的姿勢制御や感覚統合の土台を整えつつ、適切に段階づけした外乱課題とデュアルタスクを組み合わせることで、ステップ方略や上肢保護反応の質を高めていくことができます。

一方で、限られた時間や人員のなかでどこまで反応的バランスに時間を割くか、チームでの優先順位づけや評価・訓練フローの設計は悩みどころです。療法士自身が働き方や学び方を整理し、現場での役割をクリアにしておくことが、こうした高度なバランス介入を継続的に実践する土台にもなります。

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参考文献

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  2. Franchignoni F, Horak F, Godi M, Nardone A, Giordano A. Using psychometric techniques to improve the Balance Evaluation Systems Test: the Mini-BESTest. J Rehabil Med. 2010;42(4):323–331. doi:10.2340/16501977-0537. PubMed
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  5. Gerards MHG, McCrum C, Mansfield A, Meijer K. Perturbation-based balance training for falls reduction among older adults: current evidence and implications for clinical practice. Geriatr Gerontol Int. 2017;17(12):2294–2303. doi:10.1111/ggi.13082. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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