関節可動域( ROM )検査のやり方|条件固定・記録・中止基準

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関節可動域( ROM )検査のやり方|条件固定・記録・中止基準

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関節可動域( ROM )検査は、角度を記録するだけの作業ではありません。臨床で本当に必要なのは、同じ条件で測る → 記録する → 比較する型をそろえることです。これができると、可動制限の見立て、介入の優先順位、申し送り、再評価が一気にブレにくくなります。

このページで答えるのは、ROM をどう測るか、どう記録するか、どこで止めるかです。一方で、関節別の詳細一覧や疾患別診断の深掘りは主題にしません。まずは明日から現場で回る「標準手順」に絞って、条件固定、 AROM / PROM 、痛み、 end feel 、中止基準、 A4 記録シートまで 1 ページで整理します。

評価の型は、個人の努力だけで身につくとは限りません。教育体制や相談相手が少ない環境なら、学び方と環境の整え方を先に整理しておくと動きやすくなります。 PT キャリアガイドを見る

ROM 測定の原則(軸・肢位・代償を揃える)

ROM の精度は、ゴニオメーターの読み取りだけで決まるわけではありません。差が出やすいのは、どの姿勢で、どこを固定し、どこまで代償を許したかです。最初にここをそろえるだけで、同じ患者でも担当者間のズレをかなり減らせます。

  • 基本肢位を固定する:背臥位、端座位、立位などを毎回そろえます。
  • 近位固定を先に決める:骨盤、肩甲帯、体幹など、どこを止めるかを明確にします。
  • 代償の扱いを決める:抑えるのか、機能的に許容するのかを目的で分けます。
  • 順番を固定する:右 AROM → 右 PROM → 左 AROM → 左 PROM など、施設で 1 パターンに統一します。

測定前チェック( 30 秒で安全と目的を確認)

測る前に「どの関節を、何のために測るか」が 1 行で言えないと、全関節を埋めても意思決定につながりにくくなります。初回ほど、対象と目的を絞ることが重要です。

ROM 測定前の最小チェック(成人・一般)
確認項目 見ること その場で決めること
目的 歩行・更衣・起き上がり・移乗など 優先して測る関節を決める
痛み 安静時痛、運動時痛、防御性収縮 深追いしない範囲を決める
禁忌・制限 術後制限、医師指示、脱臼肢位など AROM 中心にするか、許容域のみで行うか決める
道具 ゴニオ、メジャー、タオル、クッション 途中で条件が変わらないよう先に配置する

測定手順( AROM → PROM の運用フロー)

AROM は「本人が出せる範囲」、 PROM は「他動で到達できる範囲」です。両者を分けて記録すると、運動制御、痛み、恐怖、軟部組織制限、関節由来の制限を整理しやすくなります。忙しい現場でも、順番だけは固定しておくと再評価が速くなります。

スマホでは表を横スクロールしてご覧ください。

ROM 検査を 5 分で回す最小フロー(成人・一般)
段階 何を見るか その場で決めること
① セットアップ 肢位、支持、固定、痛みの出やすさ どの条件で測るかを固定する
② AROM 代償、動作速度、痛み、恐怖 出せる範囲か、制御の問題が強いかをみる
③ PROM 終末域の抵抗、痛み反応、 end feel 組織学的制限の寄与をみる
④ 再確認 軸、固定、代償の崩れ 値が不安定なら先に条件を修正する
⑤ 即時記録 角度、条件、反応 再評価で比較できる形に残す

記録の型( AROM / PROM ・痛み・ end feel を 1 行で揃える)

数字だけが残ると、次の担当者は「どの条件で出た値か」を再現できません。おすすめは、条件+角度+反応を最小セットで 1 行にする書き方です。これだけで申し送りと再評価の精度が上がります。

ROM 記録で揃える最小セット(成人・一般)
記録項目 書き方(例) ポイント
肢位/固定 背臥位・骨盤固定あり 枕、クッション、ベルトまで同条件にします。
AROM / PROM 右 110°( A )/ 125°( P ) A=自動運動、P=他動運動と欄を固定します。
痛み 終末域で前方痛あり 部位と角度帯が残ると説明しやすくなります。
end feel firm / soft / empty 止まり方が変わると原因仮説が立てやすくなります。
代償 体幹回旋で代償あり 許容したのか抑えたのかも明記します。

参考可動域(“正常値”ではなく“参考値”)の扱い

いわゆる「正常 ROM 」は、年齢、性別、体格、活動量、測定肢位などで変動します。したがって、参考値に届かないだけで異常と決めつけるのではなく、その人の目標動作に必要か炎症や疼痛を悪化させずにどこまで確認するかを分けて考える方が実務的です。

ROM の表示・用語は 2022 年改訂版を基準に確認しておくと、チーム内の言葉のズレが減ります。なお、 2022 年 6 月の修正通知は表記誤りの修正が中心で、数値や定義そのものを大きく変える趣旨ではありません。まずは最新版の表記を基準に、記録様式をそろえると運用しやすくなります。

測定中止の目安(痛み・不安定性・術後制限)

ROM は「最後まで押し込む」評価ではありません。痛みの急増、不安定性、術後制限があるときは、深追いせず、どこで止めたかを記録できれば十分に価値があります。

ROM 測定:中止の目安と対応(成人・一般整形外科領域)
状況 中止の目安 対応
痛みの急激な増悪 表情変化、発汗、防御性収縮、訴えの急増 測定を中止し、安静位で再評価。痛みが出た角度・方向を記録します。
不安定性/クリック 抜ける感覚、キャッチ、強い不安 ストレスをかける測定は避け、痛みのない範囲の観察に切り替えます。
炎症・術後直後 熱感・腫脹の増悪、術式の明確な制限 医師指示・術式プロトコルを優先し、許容域での評価に切り替えます。
神経症状の増悪 しびれ、放散痛、力が抜ける感じ 誘発肢位を避け、別評価へ切り替えて共有します。

ROM 記録シート( A4 PDF /最新版 v2026-03 )

担当交代や経時比較でブレないように、測定条件(肢位・固定)AROM( A )/ PROM( P )、痛み、 end feel 、代償を 1 枚で揃えられる A4 版です。基本情報欄も広めに取り、現場でそのまま書き込みやすい形に整えています。

ROM 記録シート( A4 PDF )を開く

現場の詰まりどころ(迷ったときの立て直しポイント)

まずは よくある失敗立て直し手順 を確認してください。終末域の抵抗や速度条件の切り分けまで迷うときは、被動性検査のやり方 に進むと整理しやすくなります。

よくある失敗( NG → 修正 )

ROM 運用で起きやすい失敗と修正ポイント
NG 何が起きるか 修正
とりあえず全関節を測る 時間だけかかり、意思決定につながりにくい ゴール動作に直結する関節から優先順位をつける
AROM / PROM /痛みが混在する 次回に再現できず比較が崩れる A と P の欄を固定し、条件と反応を一緒に残す
代償を誤差として流す 見かけ上 ROM が改善したように見える 抑えたのか許容したのかを明記する
値がズレても測り直さない 軸・固定の崩れを見落とす 差が大きいときは条件修正を優先する

立て直し手順(迷ったらこの順番に戻る)

  1. 目的に戻る:何の動作のために測るかを 1 行で言い直します。
  2. 条件を戻す:肢位、固定、支持、順番をそろえ直します。
  3. 記録を戻す:A / P 、痛み、 end feel 、代償を最小セットで書きます。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1.時間がないとき、 ROM はどこまで測ればよいですか?

限られた時間では、「ゴール動作に直結する関節」と「拘縮・痛みのリスクが高い関節」に絞るのが実務的です。初回はスクリーニングとして概観し、問題が疑われる部位は 2 回目以降に詳細 ROM を測定すると、負担を抑えつつ精度を確保しやすくなります。

Q2.ゴニオメーターが苦手なスタッフにはどう教えればよいですか?

最初から全関節を正確に測るのではなく、①ランドマーク確認 ②代表関節のモデル測定 ③記録の型をそろえる、の 3 ステップが現実的です。熟練者と同時測定して、「軸」「固定」「代償」のどこがズレたかを一緒に振り返ると上達しやすくなります。

Q3.参考可動域と大きく乖離していても、どう説明すればよいですか?

参考可動域は「そこに届かなければ失敗」という基準ではありません。「一般的な目安」と「その人の生活で必要な範囲」を分け、炎症や疼痛が強い時期は「悪化しない範囲で動かせているか」を重視して説明すると、納得感を得やすくなります。

Q4. 2022 年改訂で、参考可動域の考え方は大きく変わりましたか?

実務上まず押さえたいのは、最新版の表記で記録をそろえることです。 2022 年の修正通知は表記や図の修正を確認する意味合いが強く、現場では「数値だけを暗記する」より「どの条件で測ったか」を残すことの方が再評価に直結します。

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参考文献

  1. 久保 俊一, 中島 康晴, 田中 康仁. 関節可動域表示ならびに測定法改訂について( 2022 年 4 月改訂 ). Jpn J Rehabil Med. 2021;58(10):1188-1200. doi: 10.2490/jjrmc.58.1188
  2. 日本リハビリテーション医学会・日本整形外科学会・日本足の外科学会. 2022 年 4 月改訂、関節可動域表示ならびに測定法の修正について. 2022 年 6 月. PDF

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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