NYHA(心不全 機能分類)の使い方|息切れ・ ADL と強度設定に繋げる
臨床で迷わない「評価 → 介入」の組み方をまとめて見る( PT キャリアガイド )
NYHA( New York Heart Association )機能分類は、心不全の重症度を「日常生活での症状(息切れ・動悸・倦怠感など)」で I 〜 IV に整理する共通言語です。検査値よりも ADL のどこで症状が出るかに焦点が当たるため、リハでは運動強度のスタート地点を決めるのに役立ちます。
一方で NYHA は“主観が混ざりやすい”のが弱点です。そこで本記事では、分類を ADL の具体例で揃えつつ、聞き取り → 判定 → 記録 → 強度調整までを 5 分で回せる形に整えます。関連の整理は 内部障害ハブ にまとめています。
結論・早見(まずこれだけ)
- NYHA は「どの活動で症状が出るか」を I 〜 IV で共有する枠組みです。
- リハでは NYHA を“息切れの出る閾値(しきいち)”として読み替えると運用が安定します。
- ブレを減らすコツは、活動の種類・量・様式(速度 / 休憩 / 手すり)を揃えて聞くことです。
- 強度は NYHA だけで決めず、症状と RPE( Borg )で当日の上限を合わせます。
NYHA で何がわかる?(リハでの使いどころ)
NYHA は、心不全患者さんの「生活の中でのつらさ」を短い言葉で共有できます。たとえば「 NYHA II 」と言えれば、安静は問題ないが、日常より少し負荷が上がると症状が出る状態をチームでイメージしやすくなります。
臨床では、NYHA を“運動処方に入る前の整理”として扱うと失敗が減ります。分類をつけたら終わりではなく、その分類に至った根拠(どの ADL で・どの程度で症状が出るか)を 1 行で残すことが、次回介入の再現性につながります。
NYHA I 〜 IV の目安( ADL で判断を揃える)
NYHA は I と II、II と III の境目でブレが出やすいので、まずは「症状が出る ADL のレベル」を揃えます。下表は、分類の説明を ADL 例とリハでの読み替えに寄せた早見です。患者さんが「息切れ」と言わない場合もあるため、胸部不快・動悸・強い疲労・休憩が増えたも同列に扱います。
| 分類 | 症状と制限 | ADL 例(よくある場面) | リハでの読み替え |
|---|---|---|---|
| I | 日常活動で症状なし | 平地歩行・更衣・整容・入浴動作で息切れなし | “普段の生活レベル”では閾値を超えていない |
| II | 軽度の活動制限(活動で症状) | 早歩き、坂、階段、荷物運搬で息切れ/休憩が増える | “少し負荷を上げると”閾値を超える |
| III | 明らかな活動制限(軽い活動で症状) | 室内歩行・トイレ移動でも息切れ、家事が途中で止まる | “生活の下限”でも閾値に近い |
| IV | 安静でも症状/活動不能 | 安静時に息苦しさ、少し動くとすぐ増悪 | 介入は医師方針と症状モニタに強く依存 |
判定のコツ(ブレやすい境目を整える)
境目の迷いは「情報不足」で起きます。判定は、次の 3 点セットで揃えると安定します。①活動の種類(平地 / 坂 / 階段 / 入浴など)②量(距離・時間・階数)③様式(速度・休憩・手すり使用・荷物)。
たとえば「階段で息切れ」は、何階か、途中で休むか、手すりをどれくらい頼るかで意味が変わります。境目は無理に 1 つへ丸めず、 II〜III のように幅で記録し、根拠(トリガー)を併記する方が、介入と引き継ぎに役立ちます。
強度設定につなげる 5 分フロー(聞き取り → 記録 → 介入)
NYHA は“強度を自動で決める道具”ではありません。NYHA で生活上の閾値をつかんだら、当日は症状と RPE( Borg )で「上げてよい範囲」を合わせます。以下は、現場で回しやすい最短フローです。
- 症状のトリガー確認:どの ADL(平地・坂・階段・入浴・更衣)で、何分 / 何 m / 何階で、休憩が必要か。
- 今日の前提確認:睡眠、食事、むくみ、体重変化、前日からの疲労、内服の変更など(“いつもと違う”を拾う)。
- NYHA を仮置き:I 〜 IV のどこかに置き、境目なら幅(例: II〜III )でよい。
- 介入の上限を先に決める:息切れ・胸部不快・動悸・めまいなどの症状と、RPE で「ここまで」を決める。
- 記録を 1 行で残す:NYHA(幅でも可)+トリガー(活動・量・様式)+ RPE(ピーク)+休憩の有無。
現場の詰まりどころ(よくある失敗と対策)
NYHA は“分類を付けること”が目的になると、介入に繋がりません。強度設定に役立てるには、NYHA を入口にしつつ、分類の根拠(トリガー)と当日の反応(症状 / RPE )を必ずセットで残します。
| よくあるミス | 何が起きるか | 対策(質問・記録の型) |
|---|---|---|
| 「階段で息切れ」で止める | II と III が混ざり、強度が毎回変わる | 「何階」「休憩の有無」「手すり依存」をセットで確認 |
| その日の体調差を拾わない | “悪い日”に負荷が過大になりやすい | 睡眠・食事・むくみ・体重・疲労を「いつも比」で 1 行メモ |
| NYHA を確定値として記録する | 境目で議論になり、引き継ぎが不安定 | 境目は幅( II〜III )で記録し、トリガー(活動・量・様式)を併記 |
| 分類と運動処方が繋がらない | 評価はあるが介入条件が残らない | NYHA +トリガー+ RPE(ピーク)+休憩の有無をセットで残す |
よくある質問(FAQ)
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Q1. NYHA I と II の境目は、何を基準にすると揃いますか?
「日常生活で症状が出るか」だけだと曖昧になりやすいので、“少し負荷を上げたとき(早歩き・坂・階段・荷物)”で症状が出るかを基準にすると揃いやすいです。量(何 m / 何分 / 何階)と、様式(休憩・手すり)まで確認すると、同じ患者さんでも評価者間のズレが減ります。
Q2. 入院中で活動量が落ちている場合、NYHA はどう扱うと良いですか?
入院環境では“日常生活”の負荷が小さくなり、症状が出にくく見えることがあります。この場合は、NYHA を決め打ちせず、病棟内で実際に行っている ADL(トイレ移動、洗面、室内歩行距離)を材料として幅で記録し、運動時は症状と RPE を優先して上限を合わせるのが現実的です。
Q3. II と III の境目が毎回ブレます。記録はどう残すのが良いですか?
境目は無理に 1 つへ丸めず、幅( II〜III )+症状トリガーで残す方が臨床に役立ちます。例として「室内 30 m は可、 50 m で休憩」「整容は可、入浴で息切れ」など、次回の介入条件が 1 行で再現できる形がゴールです。
Q4. NYHA を強度設定に使うとき、最小限押さえるポイントは?
①息切れが出る ADL のレベル(トリガー)②当日の体調差(いつも比)③運動中の反応(症状 / RPE )の 3 点です。NYHA は“入口”なので、最終的な上限は症状と RPEで合わせ、記録は「 NYHA(幅でも可)+トリガー+ RPE 」をセットにするとブレにくくなります。
まとめ
- NYHA は心不全の重症度を症状による活動制限で I 〜 IV に整理します。
- リハでは「分類名」より、息切れの出る閾値( ADL のどこで出るか)を押さえると強度設定に繋がります。
- 判定は種類・量・様式を揃えて聞き取り、境目は幅で記録すると運用が安定します。
- 当日の強度は NYHA だけで決めず、症状と RPEで上限を合わせ、再現できる 1 行記録を残します。
参考文献
- Heidenreich PA, Bozkurt B, Aguilar D, et al. 2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure. Circulation. 2022;145(18):e895-e1032. doi: 10.1161/CIR.0000000000001063. PubMed: 35363499.
- McDonagh TA, Metra M, Adamo M, et al. 2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure. Eur Heart J. 2021;42(36):3599-3726. doi: 10.1093/eurheartj/ehab368. PubMed: 34447992.
- Raphael C, Briscoe C, Davies J, et al. Limitations of the New York Heart Association functional classification system and self-reported walking distances in chronic heart failure. Heart. 2007;93(4):476-482. doi: 10.1136/hrt.2006.089656. PubMed: 17005715.
- American Heart Association. Classes and Stages of Heart Failure. (Accessed 2025 ). https://www.heart.org/
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


