NYHA分類とは?心不全I〜IVの目安・II/IIIの違いと記録例

評価
記事内に広告が含まれています。

NYHA分類とは?心不全I〜IVとII・IIIの違い

NYHAは、心不全症状による身体活動の制限をI〜IVで共有する分類です。

心不全リハ実務ハブを見る

NYHA(New York Heart Association)機能分類で迷いやすいのは、IIとIIIの境界です。基本は、IIは「通常の身体活動」で症状が出る、IIIは「通常未満の身体活動」でも症状が出ると整理します。

ただし、「階段で息切れするからII」のように、特定の活動だけで機械的に決めることはできません。その人が普段どの程度の活動をしているか、どの活動・量・条件で症状が出るかまで確認することが重要です。

この記事では、NYHA I〜IVの基本、特に迷いやすいII・IIIの違い、判定できないときの考え方、カルテに残す記録例まで整理します。判定根拠と再評価条件を1枚にまとめられるA4記録シートも用意しています。

結論|NYHA IIとIIIは「通常の活動を下回るか」で分ける

NYHA分類は、心疾患に伴う症状によって身体活動がどの程度制限されているかをI〜IVの4段階で表します。IIとIIIを分けるポイントは、症状が出る身体活動が「通常の身体活動」なのか、それより軽い「通常未満の身体活動」なのかです。

  • NYHA I:通常の身体活動で症状が出ない
  • NYHA II:安静時は症状がなく、通常の身体活動で症状が出る
  • NYHA III:安静時は症状がなく、通常未満の身体活動でも症状が出る
  • NYHA IV:安静時にも症状があり、身体活動で症状が増悪する
NYHA分類I〜IVの目安とII・IIIの境界、判定の視点を整理した図
NYHA I〜IVの目安。IIとIIIは「症状が出る活動が通常の身体活動を下回るか」を中心に、活動・量・条件を合わせて判断します。

図のADL場面は分類を理解するためのイメージです。特定の歩行距離、階段数、ADLだけを一律の判定基準にはしません。

NYHA IIとIIIの違い|活動・量・条件の3点で確認する

IIとIIIで迷ったときは、「息切れするか」だけではなく、活動・量・条件の3点を具体化します。NYHAでは症状が出る活動レベルが重要だからです。

  1. 活動:平地歩行、坂、階段、更衣、整容、入浴、トイレ、家事など
  2. 量:距離、時間、階数、連続して行えた量、休憩回数など
  3. 条件:速度、手すり、歩行補助具、荷物、介助の有無など

たとえば「階段で息切れ」という情報だけでは、IIかIIIかを十分に判断できません。1階分を休まず昇れるのか、途中で休憩するのか、平地歩行でも症状があるのか、その人が普段どの程度の活動をしているのかによって意味が変わります。

IIとIIIを分ける中心

II:通常の身体活動で症状が出る
III:通常より軽い身体活動でも症状が出る

距離や階段数だけを固定した境界にせず、その人の普段の身体活動と症状が出る状況をセットで確認します。

IIとIIIで迷いやすい場面

たとえば、安静時には症状がなく、坂道や階段で呼吸困難が出る一方、普段の平地歩行は保たれている場合は、通常の身体活動との関係からIIを考える材料になります。

一方、短い平地歩行、更衣や整容、トイレ移動など、普段より軽い身体活動でも呼吸困難や強い疲労が出る場合は、IIIを考える材料になります。

ただし、これらは「階段=II」「トイレ移動=III」という固定基準ではありません。患者ごとの生活背景と活動水準を確認したうえで分類します。

IIかIIIか判断できないときは「暫定判定+根拠」で残す

NYHAはI〜IVの4クラスへ分類するため、IIとIIIで迷ったときに「II〜III」という別のクラスを作る必要はありません。

情報が不足している場合は、現時点の暫定判定、判断した根拠、まだ確認できていない情報、再評価する条件を分けて記録すると、次回の評価につなげやすくなります。

特に入院患者では、病棟生活そのものが入院前より低い活動量になっていることがあります。病棟内を短距離しか歩いていない状態で症状が出なかったとしても、それだけで普段の身体活動に制限がないとは判断できません。

本人や家族から、入院前の屋外歩行、階段、買い物、入浴、家事などを聞き取り、活動拡大後の反応も合わせて再評価します。

記録例

NYHA III(暫定)。病棟内50m歩行で呼吸困難、立位休憩1回。入院前の屋外歩行・階段昇降は未確認。家族聴取後に再評価。

「暫定」はNYHAの新しい分類を意味するものではなく、現時点では情報が十分でないことを記録上明確にするための表現です。

NYHAの記録は「分類+判定根拠+再評価」を残す

カルテに「NYHA II」だけを記録すると、次の評価者には、なぜIIと判断したのかが伝わりません。再評価できる記録にするには、分類+症状が出た活動・量・条件+必要に応じた再評価条件をセットで残します。

NYHAの記録で残したい項目
項目 記録する内容
NYHA判定 I〜IV。情報不足なら暫定判定であることを明記する
症状 呼吸困難、疲労、動悸、胸部不快など
活動 平地歩行、坂、階段、更衣、入浴、家事など
距離、時間、階数、連続可能量、休憩回数など
条件 速度、手すり、歩行補助具、荷物、介助など
再評価 未確認事項、次に確認する活動、再評価時期など

カルテに残す1行記録例

  • 例1:NYHA II。安静時症状なし。平地歩行では症状なく、階段1階昇降で呼吸困難あり。途中休憩なし。
  • 例2:NYHA III。安静時症状なし。病棟内50m歩行で呼吸困難が出現し、立位休憩1回を要する。
  • 例3:NYHA III(暫定)。トイレ移動で呼吸困難あり。入院前活動量は未確認のため、家族聴取と活動拡大後に再評価する。

Borgスケール、心拍数、血圧、SpO2などを測定した場合は、運動時の反応として併記できます。ただし、これらの値そのものはNYHA I〜IVを決める分類基準ではありません。

NYHA分類 記録シートPDF|判定根拠と再評価を1枚で整理

NYHAの聞き取りから記録までをそろえやすいように、A4縦1ページの「NYHA分類 記録シート v2」を用意しました。

I〜IVの早見に加えて、症状、活動、量、条件、暫定判定、未確認事項、再評価時期、運動時反応、1行記録まで1枚で整理できます。

NYHA分類 記録シート v2(A4・1ページ)

NYHA分類 記録シートPDFを開く

PDFを記事内でプレビューする

このシートでは、IIとIIIで迷った場合も「II〜III」という独立した分類にはせず、現在の暫定判定+根拠+未確認事項+再評価条件を残せる構成にしています。

NYHAの限界|主観性があるため他の評価で補完する

NYHAは簡便で、多職種間でも患者の機能的な重症度を共有しやすい一方、分類が大まかで、判断の基準となる活動内容が明確でないため、細かな症状変化や客観的な運動耐容能を十分に表せないことがあります。

そのため、NYHAだけですべての身体活動能力を評価しようとせず、目的に応じてSAS(Specific Activity Scale)、6分間歩行試験、心肺運動負荷試験などを組み合わせて評価します。

特にSASは、症状が出る身体活動をMETsと関連づけて定量化することで、NYHAで曖昧になりやすい活動内容を補完するための評価です。

NYHAだけで運動強度や中止基準を決めない

NYHAは現在の症状と身体活動制限を共有する分類であり、単独で運動処方やリハビリテーションの中止基準を決定するものではありません。

運動療法を検討するときは、心不全の病態が安定しているかを確認したうえで、症状、運動耐容能、心拍数、血圧、必要に応じてSpO2や心電図、自覚的運動強度などを組み合わせて判断します。

実務では、NYHAで「生活のどのレベルから症状が出るのか」を把握し、運動時の生理学的反応や自覚症状は別の評価として確認すると役割を分けると整理しやすくなります。

NYHAとACC/AHA Stageの違い

NYHAとACC/AHA Stageは、どちらも心不全で使われますが、分類している対象が異なります。

NYHAとACC/AHA Stageの役割の違い
分類 主に見るもの 実務上の整理
NYHA その時点の症状による身体活動制限 治療や状態変化に伴ってクラスが変化し得る
ACC/AHA Stage 心不全発症リスクから進行した心不全までの病期 A〜Dで心不全の進展段階を整理する

NYHAは「今どの程度の活動で症状が出るか」、Stageは「心不全が病期としてどの段階にあるか」と整理すると混同しにくくなります。

NYHA判定でよくある4つの失敗

NYHAの判定をそろえるには、分類名を付けることよりも、なぜその分類になったのかを再現できる情報として残すことが重要です。

NYHA判定で起こりやすい失敗と対策
よくある失敗 問題点 対策
「階段で息切れ」だけでIIとする その人にとっての通常活動が分からない 平地歩行や普段の生活範囲、活動量も確認する
歩行距離だけでII・IIIを決める 速度、休憩、補助具などの条件が反映されない 活動・量・条件の3点をセットで記録する
入院中の活動だけで確定する 活動量が低いため症状が表面化しないことがある 入院前の生活や活動拡大後の反応を確認する
IIかIIIか迷うため「II〜III」とだけ残す 正式な分類と評価者の不確実性が混在する 暫定判定、判断根拠、未確認事項、再評価条件を分ける

NYHA分類でよくある質問

NYHAの運用で特に迷いやすい、II・IIIの境界、入院中の評価、Borgとの違いを整理します。

Q1. NYHA IIとIIIの一番大きな違いは何ですか?

IIは通常の身体活動で症状が出るのに対し、IIIは通常より軽い身体活動でも症状が出る点が大きな違いです。特定の歩行距離や階段数だけではなく、その人の普段の身体活動と比較して判断します。

Q2. IIかIIIか迷ったら「II〜III」と記録してよいですか?

NYHA自体はI〜IVの4クラスで分類します。十分な情報がなく判断が難しい場合は、「II〜III」を独立した分類のように扱うより、現在の暫定判定、判断根拠、未確認事項、再評価条件を記録しておくと次回の評価につなげやすくなります。

Q3. 入院患者ではNYHAをどう判定しますか?

入院中は活動範囲が狭く、普段なら症状が出る活動をしていないことがあります。現在の病棟ADLだけでなく、入院前の屋外歩行、階段、買い物、入浴、家事などを本人や家族から確認し、現在の活動時症状と合わせて判断します。

Q4. Borgが高ければNYHA IIIやIVになりますか?

Borgの値そのものからNYHAを決めることはできません。NYHAは身体活動による症状と活動制限を分類するもので、Borgは運動時などの自覚症状や自覚的運動強度を評価する指標として別に扱います。

次の一手|心不全評価を全体へつなげる


参考文献

  1. 日本循環器学会, 日本心不全学会. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン. 2025. 日本循環器学会.
  2. American Heart Association. Classes and Stages of Heart Failure. Updated May 21, 2025. American Heart Association.
  3. Heidenreich PA, Bozkurt B, Aguilar D, et al. 2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure. Circulation. 2022;145(18):e895-e1032. doi: 10.1161/CIR.0000000000001063. PubMed: 35363499.
  4. McDonagh TA, Metra M, Adamo M, et al. 2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure. Eur Heart J. 2021;42(36):3599-3726. doi: 10.1093/eurheartj/ehab368. PubMed: 34447992.
  5. Makita S, Yasu T, Akashi YJ, et al. JCS/JACR 2021 Guideline on Rehabilitation in Patients With Cardiovascular Disease. Circ J. 2022;87(1):155-235. 日本循環器学会.
  6. Raphael C, Briscoe C, Davies J, et al. Limitations of the New York Heart Association functional classification system and self-reported walking distances in chronic heart failure. Heart. 2007;93(4):476-482. doi: 10.1136/hrt.2006.089656. PubMed: 17005715.
  7. Caraballo C, Desai NR, Mulder H, et al. Clinical Implications of the New York Heart Association Classification. J Am Heart Assoc. 2019;8(23):e014240. doi: 10.1161/JAHA.119.014240. PubMed Central: PMC6912957.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)のアイコン

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

運営者プロフィール編集・引用ポリシーお問い合わせ