ARAT評価方法|0〜3点の採点基準・2点と3点・PDF

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ARATの評価方法|0〜3点の採点基準

ARAT(Action Research Arm Test)は、19課題を0〜3点で採点し、上肢の機能的な課題遂行を0〜57点で評価する尺度です。採点で特に重要なのは、「課題を完了できた=3点」ではないことです。Yozbatiranらの標準化手順では、3点には5秒未満での完了に加え、課題ごとに定められた姿勢・手・上肢の運動要素を満たすことが求められます。

この記事では、ARATの0〜3点の境界、特に迷いやすい2点と3点を先に整理し、ショートカット規則、セットアップ、実施方法、再評価時の記録、MCIDの注意点まで解説します。記事後半には、配点と条件を記録できる自作A4記録シートPDFも掲載しています。

ARATの0〜3点|標準化手順に基づく採点の基本
点数 基本的な判定 確認ポイント
3点 課題を正常に5秒未満で完了する 時間に加え、課題ごとの姿勢・手・上肢の運動要素を満たす
2点 課題は完了するが、5〜60秒を要する、または大きな困難を伴う 手・上肢の運動要素や姿勢に明らかな問題がないか確認する
1点 60秒以内に課題の一部のみ遂行する 課題に必要な動作が部分的に成立しているか確認する
0点 60秒以内に課題の一部も遂行できない 開始できない場合を含む
ARATの0点・1点・2点・3点の採点基準と、2点・3点の違いを示した図
ARATでは「できた」だけで3点とは限りません。5秒、姿勢、手・上肢の運動要素を確認して2点と3点を分けます。

重要:上表はYozbatiranらが提案したARATの標準化手順に基づく整理です。3点で求められる「正常な運動要素」は課題ごとに異なるため、時間だけで機械的に採点せず、使用する標準化手順・マニュアルの各課題の要件も確認してください。

ARATの2点と3点の違い|「できた」だけでは3点にならない

2点と3点を分けるときは、「完了したか」だけでなく、時間と動作の質をセットで確認します。5秒未満で終わっても、明らかな代償や課題で求められる手・上肢運動の異常があれば、標準化手順上は3点とはなりません。

ARATで2点と3点を分けるときの確認順序
確認 3点を考える条件 2点を考える条件
課題完了 完了している 完了している
時間 5秒未満 5〜60秒
手の運動 課題で求められる運動要素を満たす 把持方法などに明らかな異常がある
上肢の運動 課題で求められる運動要素を満たす 必要な肘・前腕・肩の運動などに明らかな異常がある
姿勢 標準化された姿勢を保つ 体幹などを上肢運動の代わりに使う明らかな代償がある

つまり、「5秒未満なら必ず3点」でも、「代償が少しでもあれば必ず2点」でもありません。どの運動要素を正常遂行の条件とするかは課題ごとに定められているため、課題別の要件と照合して判断します。

物品を落としたら自動的に減点する?

Yozbatiranらの標準化手順では、採点はbest performance(最も良い遂行)を基準とし、評価物品を落として再び持ち上げたという事実だけで自動的に減点するわけではないとされています。落下の有無だけを見るのではなく、最終的な課題遂行と採点条件を確認します。

1点の「部分遂行」はどこまで?

1点は、60秒以内に課題の一部を遂行できた場合です。特にGrasp・Grip・Pinchでは、単に対象物へ手を近づけたり、手背で押して移動させたりするだけではなく、課題に必要な手の動きを開始し、対象物を保持・持ち上げる方向へ部分的に遂行しているかを確認します。

ARATとは?|19課題・4サブテスト・57点満点

ARATは、上肢の機能的な課題遂行を観察して数値化する評価です。19課題をGrasp、Grip、Pinch、Gross Movementの4サブテストに分け、各課題を0〜3点で採点します。片側の総得点は0〜57点で、高得点ほど良好な上肢機能を示します。

ARATの構成と配点
サブテスト 課題数 主にみる内容 満点
Grasp 6 対象物の把持・持ち上げ・移動 18点
Grip 4 把握を伴う操作・移動 12点
Pinch 6 指と母指を使ったつまみ動作 18点
Gross Movement 3 手を頭部・顔面付近へ運ぶ粗大上肢運動 9点
合計 19 上肢の機能的課題遂行 57点

標準化手順では、階層的なショートカット規則を利用すると、ARATの実施時間はおおむね5〜15分とされています。実際の所要時間は障害の程度や指示理解などでも変わるため、再評価では時間だけでなく同じ実施条件を再現できることが重要です。

ショートカット規則|最難課題と最易課題から省略できる

ARATには、すべての課題を毎回実施しなくてもよい階層的なショートカット規則があります。Grasp・Grip・Pinchでは、各サブテスト内の難易度順を利用して、最初の課題と次の課題の結果から残りを省略できる場合があります。

  1. 最も難しい課題から実施:ここで3点なら、そのサブテストの残りも3点として終了します。
  2. 最難課題が3点未満なら最も易しい課題を実施:最難課題が0点で、最易課題も0点なら、残りも0点として終了します。
  3. 上記以外:そのサブテストの残りの課題も実施して採点します。

Gross Movementは例外です。標準化手順では最初の課題が3点ならサブテストを9点、0点なら0点として終了し、1点または2点の場合に残りの課題へ進みます。

ショートカット規則は単なる時短ではなく、ARAT本来の階層構造を利用した実施方法です。再評価時に担当者が変わっても同じ運用になるよう、省略規則を適用したことも記録しておくと確認しやすくなります。

ARATの準備とセットアップ|条件を固定して再評価する

ARATは、姿勢や物品配置が変わると採点に影響する可能性があるため、セットアップの標準化が重要です。「前回も同じくらいの位置だった」ではなく、再評価時に同じ条件を作れる情報を残します。

ARAT実施前に揃えておきたい条件
項目 標準化手順のポイント 記録するとよいこと
椅子・姿勢 背もたれがあり肘掛けのない椅子で座位をとり、体幹を背もたれに接触させる 座位条件、支持の有無
足部 足部を床へ接地する 足底接地条件
テーブル 高さは腹部中央付近を目安とし、標準化手順では椅子との高低差約30cmが示されている 椅子・テーブル条件
身体とテーブル 標準化手順では体幹前面からテーブル前縁まで約15cmとしている 身体とテーブルの位置
物品配置 課題ごとの開始位置・目標位置・棚の位置を揃える 配置変更があれば理由も残す

また、ARATでは使用する物品の大きさ・材質や配置も標準化の対象です。施設独自の物品へ置き換えると過去データや文献値との比較に影響する可能性があるため、使用物品と評価条件を揃えて継続することが基本です。

ARATの実施手順|説明・練習・採点を分ける

実施では、課題の理解を確認してから本採点へ進みます。「原則1回だけ」と固定するのではなく、標準化手順では、指示理解のための視覚的デモや練習が認められています。

  1. 実施条件を確認する:座位、体幹、足部、テーブル、物品配置を揃えます。
  2. 課題を口頭で説明する:指示理解が難しい場合は、必要に応じて視覚的デモを行います。
  3. 理解のための練習を行う:課題を理解できていることを確認します。練習は採点のための反復訓練とは分けて考えます。
  4. 課題を実施する:1課題の上限は60秒とし、該当する場合はショートカット規則を適用します。
  5. 0〜3点を採点する:完遂、時間、手・上肢の運動要素、姿勢を確認します。
  6. 採点根拠を残す:特に2点では、時間延長なのか、運動要素・姿勢の問題なのかを短く記録します。

Yozbatiranらの標準化手順では左右上肢を別々に評価し、各サブテストで非麻痺側またはより良好な側から行ったあと、麻痺側を評価する方法が示されています。左右を評価する場合も、再評価では同じ順序を維持すると条件を揃えやすくなります。

ARAT記録シート|A4印刷用PDF

採点結果だけでなく、再評価時に必要な条件や根拠も残せる自作記録シートです。尺度の課題文を逐語掲載せず、配点構造と記入欄を中心に作成しています。現在は、採点欄の罫線を調整したv6を掲載しています。


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ARATスコアの解釈|MCIDは1つの数字に固定しない

ARATは0〜57点の総得点だけでなく、同じ条件で再評価したときの変化を追うことが重要です。一方で、「何点変われば臨床的に意味があるか」は対象集団や病期によって異なるため、MCIDを一律の閾値として扱わないようにします。

ARATの変化量を解釈するときに参照される報告例
報告 示された値 解釈時の注意
van der Leeら 5.7点 臨床的に意味のある差として報告されている値。すべての病期・対象へ一律適用する値ではない
Langら 12点/17点 発症早期の脳卒中を対象とした推定値で、麻痺側が優位側か非優位側かによって値が異なる

したがって、施設内で根拠なく「○点以上なら改善」と独自の閾値を設定するより、対象者の病期・重症度・研究対象を確認したうえで文献値を参照し、個人内変化や他の評価結果と合わせて解釈する方が適切です。

また、同じ総得点でも「どのサブテストが変わったのか」「時間が短縮したのか」「代償が減ったのか」で臨床的な意味は異なります。総得点だけでなく、採点根拠のメモを残しておくと介入との対応を振り返りやすくなります。

ARATとFMA-UEの違い|何を知りたいかで使い分ける

ARATとFMA-UEは関連しますが、同じものを測る尺度ではありません。FMA-UEは脳卒中後の上肢運動障害を詳しく捉えるのに対し、ARATは物品操作などを含む上肢の機能的課題遂行を捉えるため、目的に応じて使い分けます。

ARATとFMA-UEの使い分け
比較 ARAT FMA-UE
主に確認すること 上肢を使った機能的な課題遂行 上肢の運動障害・運動回復
向いている問い 「物を扱う能力がどの程度変わったか」 「麻痺や選択的運動がどの程度変わったか」
併用する意味 運動障害の変化と、機能的課題遂行の変化を別々の視点から追いやすい

ARATとFMAの得点には高い関連が報告されていますが、尺度の目的は同一ではありません。介入前後で「麻痺の変化」と「上肢課題の遂行変化」を分けて確認したい場合は、併用すると整理しやすくなります。

再評価で残す記録|点数だけにしない

ARATを経時的に使うなら、点数と一緒に「なぜその点数だったか」を残します。特に2点は、同じ2点でも時間延長なのか、手の使い方なのか、上肢運動なのか、姿勢代償なのかで次の介入が変わります。

ARATの再評価で残したい情報
記録項目 記録例 再評価で見ること
実施条件 椅子・テーブル・物品配置・支持条件 前回と条件が一致しているか
時間 5秒未満/5〜60秒など 同じ点数でも遂行時間が変化していないか
2点の理由 時間延長/手の運動/上肢運動/姿勢 どの問題が改善・残存したか
省略規則 ショートカット適用あり 前回と同じ方法で採点できているか
実施上の問題 疼痛、疲労、指示理解など スコア以外の条件が変化していないか

疼痛や疲労が強い場合の扱い

疼痛や全身状態などにより安全に標準条件を維持できない場合は、点数を取ることを優先して無理に続行しません。ARAT固有の医学的中止基準として一律の数値を設定するのではなく、通常の臨床判断に基づいて中断し、中断理由と実施できた範囲を記録します。

安全上の理由で実施できなかった課題を、単純に「できなかったから0点」と扱うかどうかは、尺度の採点条件と実施状況を分けて考える必要があります。後日の再評価では、中断理由や実施条件を確認できる状態にしておきます。

ARATのよくある質問

ARATで5秒未満なら必ず3点ですか?

いいえ。Yozbatiranらの標準化手順では、3点には5秒未満での完了だけでなく、適切な姿勢と、課題ごとに求められる手・上肢の運動要素を満たすことも含まれます。5秒未満でも明らかな異常な運動要素や姿勢代償があれば、3点とはなりません。

ARATで物品を落としたら2点以下になりますか?

落としたことだけでは自動的に減点しません。標準化手順では最も良い遂行を基準に採点し、物品を落として持ち直した場合も、それだけを理由に減点しないとされています。最終的な課題遂行と採点条件を確認します。

ARATのショートカット規則は使ってよいですか?

はい。ARATはサブテスト内の難易度階層を利用した省略規則を持つ尺度です。最難課題が3点なら残りを3点、最難課題と最易課題がともに0点なら残りを0点として省略できる場合があります。Gross Movementには例外的な運用があるため、本文のショートカット規則も確認してください。

ARATは何点変われば「意味のある改善」ですか?

すべての患者に共通する1つの値はありません。5.7点や、発症早期の脳卒中を対象とした12点・17点などが報告されていますが、対象や病期が異なります。研究対象を確認したうえで参照し、個人内変化や他の評価結果と合わせて判断します。

次に確認したい上肢評価

ARATだけで上肢評価を完結させず、知りたい情報に応じて評価を組み合わせます。上肢評価全体の組み立てを確認する場合と、運動障害を詳しく追う場合で次のページを使い分けてください。


参考文献

  1. Lyle RC. A performance test for assessment of upper limb function in physical rehabilitation treatment and research. Int J Rehabil Res. 1981;4(4):483-492. DOI: 10.1097/00004356-198112000-00001
  2. Yozbatiran N, Der-Yeghiaian L, Cramer SC. A standardized approach to performing the Action Research Arm Test. Neurorehabil Neural Repair. 2008;22(1):78-90. DOI: 10.1177/1545968307305353 / PubMed: 17704352
  3. van der Lee JH, De Groot V, Beckerman H, Wagenaar RC, Lankhorst GJ, Bouter LM. The intra- and interrater reliability of the action research arm test: a practical test of upper extremity function in patients with stroke. Arch Phys Med Rehabil. 2001;82(1):14-19. DOI: 10.1053/apmr.2001.18668 / PubMed: 11239280
  4. Lang CE, Wagner JM, Dromerick AW, Edwards DF. Measurement of upper-extremity function early after stroke: properties of the action research arm test. Arch Phys Med Rehabil. 2006;87(12):1605-1610. DOI: 10.1016/j.apmr.2006.09.003 / PubMed: 17141640
  5. Lang CE, Edwards DF, Birkenmeier RL, Dromerick AW. Estimating minimal clinically important differences of upper-extremity measures early after stroke. Arch Phys Med Rehabil. 2008;89(9):1693-1700. DOI: 10.1016/j.apmr.2008.02.022 / PubMed: 18760153
  6. Fernández-Solana J, Del Olmo-Martínez E, López-López JA, et al. Psychometric properties of the Action Research Arm Test (ARAT) scale in post-stroke patients-Spanish population. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(22):14918. DOI: 10.3390/ijerph192214918 / PubMed: 36429637

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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