FMA評価のやり方・採点|上肢66点・下肢34点の見方【PDF】

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FMA評価とは?上肢66点・下肢34点をどう使うか

Fugl-Meyer Assessment(FMA)は、脳卒中後の感覚運動障害を定量化する評価です。とくに運動機能はFMA-UE 66点、FMA-LE 34点で評価し、各課題を原則0〜2点で採点します。重要なのは合計点だけではなく、共同運動・分離運動・手指など、どの段階で動きが止まっているかを見ることです。本記事では、2026年に公開された国際合意マニュアルを基準に、実施条件、採点に迷う境界、点数の解釈、記録と再評価まで整理します。

FMA評価の全体像。FMA-UE 66点、FMA-LE 34点、0・1・2点の採点、点数の見方、次の介入につなげる流れを示す図版
FMAは合計点だけでなく、どの領域で動きが止まっているかを確認し、記録・解釈・再評価へつなげます。図版は全体像の簡略化であり、各項目の詳細な採点基準は公式マニュアルで確認してください。

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FMAの構成と配点|まず運動100点を押さえる

臨床で運動麻痺の経過を追う場合は、まずFMA-UE 66点とFMA-LE 34点の合計100点を押さえると整理しやすくなります。一方、FMA全体には感覚、バランス、関節可動域、関節痛の領域も含まれます。

FMAの主なドメインと最大点
ドメイン 最大点 主な役割
上肢運動(FMA-UE) 66 上肢の共同運動、分離運動、手関節・手指、協調性などの運動障害を追う
下肢運動(FMA-LE) 34 下肢の共同運動、分離運動、協調性などの運動障害を追う
感覚 24 触覚・位置覚を整理する
バランス 14 座位・立位でのバランスを整理する
関節可動域 44 可動域制限の影響を整理する
関節痛 44 他動運動時の疼痛を整理する
全ドメイン 226 感覚運動障害を広く評価する

FMA-UEとFMA-LEは、必要な領域を選んで運用できます。上肢の回復を追うことが目的ならUE、上下肢の運動障害を追うならUE+LEというように、評価目的を先に決めます。毎回異なる範囲を測るのではなく、経時比較では評価範囲と条件をそろえることが重要です。

University of Gothenburgでは、FMA-UE・FMA-LEのプロトコル、日本語版プロトコル、2026年国際合意版マニュアル、実施動画が公開されています。本記事は項目文や採点文を転載せず、実務で迷いやすいポイントを整理しています。詳細な開始肢位、許容される支持、各項目の採点条件は、University of GothenburgのFugl-Meyer Assessment公式ページで確認してください。

2026年国際合意マニュアルに沿った採点ルール

FMAの採点をそろえるには、単に「0=できない、1=部分的、2=できる」と覚えるだけでは不十分です。2026年国際合意マニュアルでは、実施姿勢、説明とデモ、試行回数、代償、ROM制限、採点に迷った場合の扱いまで整理されています。

FMA-UE・FMA-LE|採点をそろえる基本ルール
観点 2026年マニュアルの要点 記録で残すこと
説明・デモ 評価者が動作を説明し、実演して理解を確認する 通常と異なる説明や条件を使った場合は残す
理解を助ける誘導 失語、失行、無視などで理解が難しい場合は、正しい動作を理解してもらうためのphysical guidanceを使用できる 理解支援と、採点対象となる能動運動への介助を区別する
試行 反復は少数の1〜3回とし、試行間で成績が変動する場合は最良の成績を採点する 通常と異なる試行条件があれば残す
介助・支持 能動運動中は原則として介助しない。支持や介助が許容される条件は項目ごとの規定に従う 支持・介助を用いた位置と理由を残す
代償 体幹など他部位の代償運動を「できた」扱いにしない どの代償が採点に影響したか残す
採点に迷う 2つの採点レベルで迷う場合は低い方を選ぶ 1点とした根拠など、迷った理由を短く残す
ROM制限 最大点に十分な自動ROMが必要な項目では、先に他動ROMを確認する 拘縮・疼痛など採点へ影響した要因を残す
実施不能 疼痛、切断、失行など別の問題で特定動作を評価できない場合は「not testable」とし、0点として理由を記録する 単なる運動麻痺による0点と区別して理由を残す

0・1・2点の具体的な条件は項目ごとに異なります。「1点=いつでも部分的」と一律に判断するのではなく、各項目の規定を確認してください。反射項目のように1点を使用しない項目もあります。

準備物|UEとLEで必要なものを分ける

準備物は評価する範囲によって異なります。2026年国際合意マニュアルの運動評価では、UEとLEで必要物品が分けて示されています。

FMA運動評価の主な準備物
評価 主な準備物
FMA-UE 肘掛けのない椅子、反射ハンマー、鉛筆、紙、小型の円筒物、テニスボール、ストップウォッチ
FMA-LE ベッドまたは診察台、椅子、反射ハンマー、ストップウォッチ

物品の形状や大きさ、開始肢位などは採点条件に関係するため、院内で独自に置き換える前に公式マニュアルを確認してください。感覚など運動以外のドメインまで実施する場合は、該当するプロトコルに合わせて追加物品を準備します。

FMA-UE 66点|どこで運動が止まるかを見る

FMA-UEでは、共同運動に依存した段階から、共同運動への依存が少ない運動、手関節・手、協調性へ進む過程を評価します。66点という合計点だけを見るのではなく、どの領域で得点が伸びにくいかを確認することが実務上重要です。

FMA-UEの構成と解釈の視点
領域 見るポイント 解釈で残すこと
肩・肘・前腕 共同運動内の随意運動から、共同運動への依存が少ない運動まで どの段階で運動が不十分になるか
手関節 近位肢位を変えた条件での手関節運動 近位の影響を受けずに遠位を制御できるか
手指の随意運動と把持 近位は改善していても手で停滞していないか
協調性・速度 振戦、測定障害、運動時間など 得点上限付近でも残る運動障害がないか

たとえば同じFMA-UE合計点でも、共同運動の段階で停滞している場合と、近位は改善して手指で得点を失っている場合では、残っている問題が異なります。「合計点+どの領域で止まったか」をセットで記録すると、経時変化を説明しやすくなります。

なお、FMAは運動障害を評価する尺度であり、FMAの点数だけで介入内容が自動的に決まるわけではありません。実際の上肢使用、巧緻性、活動能力、患者目標などを組み合わせて介入方針を決めます。

FMA-LE 34点|共同運動から分離運動まで追う

FMA-LEでは、股・膝・足関節を中心に、共同運動内の運動、共同運動から離れた運動、協調性・速度を評価します。「歩けるかどうか」だけでは捉えにくい下肢の運動障害を、34点で経時的に追えることが特徴です。

2026年国際合意マニュアルでは、LEの標準姿勢として臥位・座位・立位が項目に応じて用いられます。座位・立位ではバランス保持のための支持が許容される一方、採点対象となる能動運動への介助は原則として行わず、項目ごとの規定に従います。

立位ができない、標準姿勢を取れないなどの理由で正確に採点できない場合は、「できない運動麻痺」と「条件上not testable」を区別して記録することが重要です。

感覚・バランス・関節可動域・疼痛はどう扱うか

FMA全体を使用する場合、運動点だけでなく感覚、バランス、関節可動域、関節痛も評価できます。運動点の変化だけでは説明できない場合に、背景要因を整理する材料になります。

  • 感覚:感覚障害が運動や課題遂行へ影響していないか確認する
  • バランス:姿勢保持や姿勢制御の問題を運動麻痺と分けて考える
  • 関節可動域:運動麻痺だけでなく、拘縮などの機械的制限が得点へ影響していないか確認する
  • 関節痛:疼痛によって能動運動や評価自体が制限されていないか整理する

とくに運動項目の最大点に十分な関節運動が必要な場合、2026年マニュアルでは採点前に他動ROMを確認するよう示されています。関節拘縮による著明な制限がある場合や、疼痛などで評価できない場合は、理由を記録したうえで項目ごとの規定に従って採点します。

FMAの点数の見方|重症度cut-offとMCID

FMA-UEには、全患者へ共通して使える1つの公式な重症度cut-offはありません。2026年国際合意マニュアルのレビューでも、重度・中等度・軽度の区切りは研究によって異なると整理されています。FMA-LEについては、同レビューで重症度カテゴリーを示した研究は確認されていません。

FMA-UEの重症度|代表的な研究例

慢性期脳卒中を対象としたWoytowiczらのクラスター解析では、FMA-UEを次の3群に分類しています。これは代表的な研究上の分類であり、FMA共通の公式cut-offではありません。

FMA-UE重症度の報告例|Woytowiczら 2017
分類 FMA-UE 使い方
重度 0〜28点 慢性期脳卒中を対象とした研究上の分類。患者の機械的な線引きには使わず、対象・病期・目的を確認して解釈する。
中等度 29〜42点
軽度 43〜66点

他の研究では異なるcut-offが報告されています。そのため、経過を見るときは「重度から中等度になった」という分類だけでなく、同じ条件で何点変わったか、どの下位領域が変わったかまで確認してください。

MCIDは病期・対象によって変わる

MCID(minimal clinically important difference)は、臨床的に意味のある変化を考えるための目安ですが、FMAに1つの共通値があるわけではありません。2026年の国際合意論文では、原法に沿った研究について次のように整理されています。

FMAのMCIDに関する報告の整理
尺度 病期 報告された範囲・値 注意点
FMA-UE 早期〜亜急性期 4〜13点 対象者の重症度やアンカーによって異なる
FMA-UE 慢性期 4〜7点 主に中等度〜軽度の運動障害を対象とした報告
FMA-LE 慢性期 6点 別のFMAプロトコルを用いた研究であり、適用には注意が必要

したがって、院内で「FMAは○点上がれば改善」と単一値を固定するのではなく、UEかLEか、病期、対象者の重症度、使用したプロトコル、どの領域が変化したかを確認して解釈する方が安全です。

採点で迷いやすい場面|0・1・2点をそろえる記録方法

FMAで採点差が生じやすいのは、点数そのものよりも「何をできたとみなしたか」が記録されていない場合です。開始姿勢、代償、ROM制限、支持、実施不能の理由を残すと、再評価や複数検者での比較がしやすくなります。

FMA|迷いやすい境界と記録ポイント
場面 判断 記録例
1点か2点か迷う 項目の詳細基準を確認し、それでも採点レベル間で迷う場合は低い点を選ぶ 「終末域まで不十分のため1点」など、判断根拠を残す
体幹を使えば動く 他部位の代償を、目的動作が完全にできた扱いにはしない 「体幹側屈あり」など代償を記録する
指示理解が難しい 正しい動作を理解してもらうための説明・デモ・physical guidanceを検討する 失語など、理解支援が必要だった背景を残す
試行ごとに結果が違う 反復は少数にとどめ、1〜3回の中で成績が変動する場合は最良成績を採点する 必要なら成績変動があったことを補足する
拘縮で動かせない 他動ROMを確認し、著明な制限が採点へ影響する場合は項目別規定に従う 「他動ROM制限あり」など原因を明記する
疼痛などで評価できない not testableとして0点とし、理由を明記する 「疼痛のためnot testable、0点」など運動麻痺による0点と区別する

ここでいう記録例は、公式採点文の代替ではありません。公式基準で採点したうえで、次回も同じ判断条件を再現するための補足記録として使用してください。

FMAスコア記録シート(A4・PDF)

本記事では、FMAの配点構造と集計欄を整理したA4スコア記録シートを配布しています。公式項目文や詳細な採点基準は掲載していないため、University of Gothenburgの公式プロトコル・マニュアルと併用してください。

FMAスコア記録シート(A4・PDF)

配点構造と集計欄を使って、評価範囲と経時変化を記録できます。

FMAスコア記録シートを開く

再評価では、点数だけでなく評価範囲、体位、支持、装具、疼痛、通常と異なる実施条件も残しておくと比較しやすくなります。印刷時はA4、ヘッダ・フッタ非表示を推奨します。

FMAを再評価へつなげる運用プロトコル

FMAは1回採点して終えるのではなく、同じ評価範囲と条件で経時変化を追うことで価値が高まります。チーム導入では、次の4段階に固定すると運用しやすくなります。

  1. 目的と範囲を決める:UEの回復を追う、UE+LEを追うなど、今回評価する範囲を明確にします。
  2. 条件をそろえて採点する:標準姿勢、説明、支持、物品、試行条件を公式マニュアルに合わせます。
  3. 合計点と止まった領域を記録する:「FMA-UE ○点」だけでなく、どの領域で得点を失ったかを残します。
  4. 同条件で再評価する:点数の変化、下位領域の変化、活動上の変化を照合し、次の評価・介入を検討します。

複数検者で運用する場合は、迷いやすい項目を実際に同時評価し、なぜ0・1・2点としたかを確認しておくと、独自の採点基準を増やさずにチーム内の判断をそろえやすくなります。

FMAの点数を次の一手へつなげる

FMAの点数だけから治療方法を決めるのではなく、残っている運動障害を特定するために使います。そのうえで、活動能力や実際の上肢・下肢使用、患者目標など別の情報を組み合わせます。

FMAの結果を次の評価・介入へつなげる考え方
結果の見え方 次に確認すること
共同運動への依存が強い どの関節・運動成分で分離が難しいか、代償を含めて整理する
近位は改善しているが手で停滞 手指の随意性に加え、把持・物品操作など活動能力を確認する
運動点の変化が乏しい ROM、疼痛、感覚、理解、評価条件の違いなどを再確認する
FMAは高いが実生活で使えない 活動能力や実生活での使用状況を別の評価で確認する
合計点は同じだが内訳が変化 改善した領域と低下・停滞した領域を分けて経過を読む

FMAは主として心身機能レベルの運動障害を捉えるため、必要に応じてARATなどの上肢活動評価、歩行・バランス指標、ADL評価などを組み合わせ、impairmentの変化が実際の活動へつながっているかを確認します。

FMA評価でよくある質問

Q1. FMAは上肢の66点だけでも評価できますか?

A. はい。上肢運動を追う目的ならFMA-UE 66点、下肢ならFMA-LE 34点のように、目的に応じて評価範囲を決められます。経時比較では、毎回の評価範囲と条件をそろえてください。

Q2. FMAで1点か2点か迷ったらどうしますか?

A. まず項目ごとの詳細な採点基準を確認します。そのうえで2つの採点レベル間で不確実な場合、2026年国際合意マニュアルでは低い方の点数を選ぶよう示されています。迷った理由も記録しておくと再評価で比較しやすくなります。

Q3. 疼痛や拘縮で課題を実施できない場合も0点ですか?

A. 状況を分けて考えます。疼痛、切断、失行など別の問題で特定動作を評価できない場合、2026年マニュアルでは「not testable」として0点とし、その理由を記録します。関節拘縮など著明なROM制限がある場合は、他動ROMを確認したうえで項目ごとの規定に従います。

Q4. FMA-UEには重度・中等度・軽度の公式基準がありますか?

A. 全患者へ共通する1つの公式cut-offはありません。2026年国際合意論文でも研究によって区切りが異なると整理されています。本記事では、慢性期脳卒中を対象としたWoytowiczらの0〜28点、29〜42点、43〜66点という3群分類を代表例として紹介しています。

Q5. FMAのMCIDは何点ですか?

A. 1つの共通値ではありません。2026年のレビューでは、原法に沿ったFMA-UEの研究で早期〜亜急性期4〜13点、慢性期4〜7点が報告されています。FMA-LEでは慢性期6点の報告がありますが、別プロトコルを用いた研究であるため適用には注意が必要です。

次の一手|FMAとBRSをどう使い分けるか

FMAで運動障害を細かく定量化する必要があるのか、BRSで回復段階を簡潔に共有したいのかによって尺度の役割は変わります。両者の違いと併用方法は、BRSとFMAの違い|比較・使い分け・併用で整理しています。


参考文献

  1. Fugl-Meyer AR, Jääskö L, Leyman I, Olsson S, Steglind S. The post-stroke hemiplegic patient: I. A method for evaluation of physical performance. Scand J Rehabil Med. 1975;7(1):13-31. PubMed
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  3. Sullivan KJ, Tilson JK, Cen SY, Rose DK, Hershberg J, Correa A, Gallichio J, McLeod M, Moore C, Wu SS, Duncan PW. Fugl-Meyer assessment of sensorimotor function after stroke: standardized training procedure for clinical practice and clinical trials. Stroke. 2011;42(2):427-432. doi:10.1161/STROKEAHA.110.592766
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著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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