上前腸骨棘(ASIS)はどこ?触診方法と記録例

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上前腸骨棘(ASIS)は骨盤前方をそろえる基準点です

上前腸骨棘(ASIS)は、骨盤の前上方で触れやすい骨性ランドマークです。臨床では、骨盤の左右差を確認したいとき、棘果長を測りたいとき、股関節前面の痛みを整理したいときの起点になります。この記事では、新人PT・OT向けに、ASISの位置、触診の順番、よくある失敗、記録例までを実務で使える形でまとめます。

ASISは「触れたかどうか」だけで終わらせず、体位・触れ方・左右比較・次に行った評価までそろえると、再評価や申し送りに使いやすくなります。骨性ランドマーク全体の位置づけは、理学療法士が押さえる骨性ランドマーク【部位別早見】で確認できます。

ASISとはどこ?腸骨の前上方にある突出です

ASISは、骨盤前方で触れる腸骨の前上方の突出です。英語では anterior superior iliac spine と表記され、日本語では上前腸骨棘と呼ばれます。

細かな解剖を一度に覚えるより、まずは「骨盤前方で最初に基準にしやすい骨の目印」として押さえると、臨床で迷いにくくなります。ASISは骨盤の観察だけでなく、ASIS〜内果を測る棘果長の起点にもなるため、触診と形態測定をつなぐ重要なランドマークです。

ASISを押さえると骨盤評価・測定・記録がつながります

ASISを安定して触れると、骨盤前方の基準ができるため、左右差の確認、下肢長測定、股関節前面痛の位置整理がしやすくなります。

臨床では「骨盤がずれている」「股関節前面が痛い」だけでは記録が曖昧になりやすいです。たとえば「背臥位で両ASISを触知、左右差は目立たない」「右ASIS内下方に圧痛あり」のように書けると、再評価やチーム内共有に使いやすくなります。

スマホでは表を横スクロールできます。

ASISを使う場面の早見表
場面 ASISの使い方 記録例
骨盤の観察 前方の左右基準として高さや位置を比較する 立位でASISの左右差は目立たない
下肢長測定 ASIS〜内果の棘果長の起点にする 背臥位でASIS〜内果を測定
股関節前面痛 鼠径部周囲の痛みの位置を具体化する 右ASIS内下方に圧痛あり
姿勢・座位評価 骨盤前後傾や左右差をみる入口にする 座位で骨盤後傾位、ASISは触れにくい

ASISの触診は「面→線→点」の順で探します

ASISは、いきなり1点を押さえにいくより、骨盤前面の広い面から入り、腸骨稜の流れを前方へたどって、最後に突出を確認すると触れやすくなります。

強く押し込めば分かりやすくなるとは限りません。圧が強すぎると防御や不快感が出て、かえって触れにくくなることがあります。新人PTでは、まず軽い接触で骨盤前面を確認し、最後にASISの縁を確かめる流れを固定すると安定しやすいです。

ASISの触診を背臥位から左右比較まで5ステップで示した図版
ASISは、体位をそろえ、骨盤前面から腸骨稜をたどり、前上方の突出を左右で比較すると確認しやすくなります。

5分で確認するASIS触診フロー

  1. 背臥位を基本にして、骨盤前面に触れやすい姿勢を整える。
  2. 左右の骨盤前面に軽く触れ、防御や痛みの有無を確認する。
  3. 腸骨稜を前方へたどる。
  4. 前上方の突出としてASISを確認する。
  5. 反対側と比較し、高さ・触れやすさ・圧痛を確認する。

ASISは背臥位から始めると触診しやすいです

ASISの触診練習は、まず背臥位から始めると安定します。骨盤前面に触れやすく、下肢の位置もそろえやすいため、左右比較がしやすいからです。

立位は姿勢や荷重時の骨盤をみるには有用ですが、筋緊張や姿勢の影響が混ざりやすくなります。臨床では、背臥位でASISの位置を確認し、必要に応じて立位や座位へ広げると整理しやすいです。

ASISはPSIS・大転子・内果と組み合わせると使いやすいです

ASIS単独で結論を出すより、PSIS・大転子・内果と組み合わせると評価に使いやすくなります。

前後の骨盤関係をみるならPSIS、股関節周囲の位置関係を整理するなら大転子、下肢長測定へつなげるなら内果と組み合わせます。特にASIS〜内果は棘果長の区間として使うため、測定条件をそろえることが重要です。詳しい測定条件は、形態測定(四肢長・周径)の測り方で整理しています。

よくある失敗はASISだけで骨盤所見を断定することです

ASISの左右差だけで「骨盤のゆがみ」と断定しないことが大切です。体位、下肢の向き、筋緊張、触診圧によって、ASISの見え方や触れ方は変わります。

実際の現場では、ASISは結論ではなく仮説の入口として使う方が安全です。左右差が気になる場合は、PSIS、大転子、下肢長、姿勢、動作所見と合わせて判断します。

スマホでは表を横スクロールできます。

ASIS触診でよくある失敗と修正ポイント
よくある失敗 起こりやすい問題 修正ポイント
点だけを探す 毎回触れる位置がずれる 骨盤前面→腸骨稜→前上方の突出の順で確認する
強く押しすぎる 防御や不快感が出やすい 軽い接触で輪郭を取り、最後に縁を確認する
左右差だけで断定する 骨盤所見を過大解釈しやすい 体位、下肢位、PSIS、測定値も合わせてみる
体位が毎回違う 再評価で比較しにくい 背臥位・立位・座位のどれで確認したか記録する
痛みの強い部位を先に押す 協力が得にくくなる 少し離れた部位から入り、必要最小限の圧で確認する

ASISの記録は体位・左右差・圧痛を1行で残します

ASISの記録では、「触知可」だけで終わらせず、体位、左右差、圧痛、次に行った評価まで残すと再評価に使いやすくなります。

記録例は「背臥位で両ASIS触知可、左右差は目立たない」「右ASIS内下方に圧痛あり、棘果長を追加測定」「立位で右ASIS低位傾向、動作時の骨盤偏位を追加確認」などです。曖昧な表現を避け、誰が見ても同じ場面を想像できる書き方を意識します。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

ASISはどこから触り始めると分かりやすいですか?

骨盤前面に軽く触れ、そこから腸骨稜を前方へたどると分かりやすいです。いきなり1点を探すより、面→線→点の順で確認すると安定します。

ASISの左右差があれば骨盤のゆがみと考えてよいですか?

ASISの左右差だけで断定しない方が安全です。体位、下肢位置、筋緊張、触診圧でも印象は変わるため、PSIS、大転子、測定値、動作所見と合わせて判断します。

ASISは下肢長測定でどう使いますか?

代表的には、ASIS〜内果を測る棘果長の起点として使います。骨盤の回旋や下肢の回旋位で値がぶれやすいため、体位と肢位をそろえて測定します。

ASISは背臥位と立位のどちらで触るべきですか?

触診練習や左右比較では背臥位が扱いやすいです。立位は姿勢や荷重時の骨盤をみたい場合に使います。目的に応じて体位を選び、記録にも体位を残します。

ASIS周囲に痛みがあるときの注意点はありますか?

痛みの強い部位をいきなり押さず、少し離れた部位から軽く触れます。必要最小限の圧で確認し、防御や不快感が強い場合は無理に触診を続けないようにします。

次の一手

まずは背臥位で、両ASISを同じ順番で10回触る練習から始めると安定しやすいです。骨盤ランドマーク全体に戻る場合は骨性ランドマーク親記事、測定へつなげる場合は形態測定(四肢長・周径)の測り方が次に読みやすいです。


参考文献

  1. Moriguchi CS, Carnaz L, Silva LCCB, Salasar LEB, Carregaro RL, Sato TO, et al. Reliability of intra- and inter-rater palpation discrepancy and estimation of its effects on joint angle measurements. Man Ther. 2009;14(3):299-305. DOI / PubMed
  2. Lee AS, Pyle CW, Redding D. Accuracy of Anterior Superior Iliac Spine Symmetry Assessment by Routine Structural Examination. J Am Osteopath Assoc. 2015;115(8):482-489. DOI / PubMed
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  5. Gajdosik RL, Bohannon RW. Clinical measurement of range of motion. Review of goniometry emphasizing reliability and validity. Phys Ther. 1987;67(12):1867-1872. PubMed

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

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