やる気スコアとは|14項目・0〜42点でアパシー傾向を評価する
やる気スコア(Apathy Scale)は、14項目を0〜3点で採点し、合計0〜42点でアパシー傾向を捉える評価尺度です。高得点ほどアパシー傾向が強いと解釈します。日本語版を脳卒中患者で検討した研究では、16点をカットオフとした場合に感度81.3%、特異度85.3%が報告されています。
この記事では、やる気スコアの実施方法、採点、16点の位置づけ、自己記入と面接方式の扱い、記録・再評価を整理します。点数だけで「本人のやる気がない」と判断せず、評価条件や行動の変化までチームで共有できる形にすることが目的です。
高次脳機能評価を全体から確認する

やる気スコアの採点方法|日本語版では16点を目安にする
やる気スコアは、14項目を各0〜3点、合計0〜42点で採点し、高得点ほどアパシー傾向が強いと解釈します。日本語版を脳卒中患者135名で検討した岡田らの研究では、16点をカットオフとした場合に最も良好な感度81.3%、特異度85.3%が得られました。
| 確認項目 | 内容 | 実務上の扱い |
|---|---|---|
| 項目数 | 14項目 | 設問ごとに回答して合計する |
| 配点 | 各0〜3点 | 合計0〜42点 |
| 点数の方向 | 高得点ほどアパシー傾向が強い | 単回値だけでなく経時変化も確認する |
| 日本語版の目安 | 脳卒中患者を対象とした研究で16点 | 16点以上のみで診断を確定しない |
| 14点との違い | Starksteinらの原版研究で報告された値 | 日本語版脳卒中研究の16点と混同しない |
16点は「診断点」ではなく、評価を深める目安として使う
16点は、日本語版の検討でアパシーの有無を識別するために示されたカットオフです。したがって、16点以上だからアパシーと確定する、16点未満だから問題がない、と機械的に判断する値ではありません。
点数が高い場合は、普段の自発性や活動量、周囲からの働きかけ、抑うつ症状、認知機能、身体状態なども確認し、「なぜ活動が起こりにくいのか」を整理します。特にリハビリテーションへの参加状況を、やる気スコア単独で説明しないことが重要です。
14点と16点は同じ基準として扱わない
14点はStarksteinらによるApathy Scaleの原版研究で報告された値ですが、日本語版の脳卒中患者を対象とした研究では16点が検討されています。14点と16点のどちらを自由に施設で選ぶというより、対象集団と使用している版に対応した根拠を確認することが大切です。
本記事では、日本語版を脳卒中患者に使用する場面を中心に扱うため、16点を主要な目安として整理します。
やる気スコアの実施方法|自己記入と面接・読み上げを区別する
やる気スコアを繰り返し評価する場合は、誰が回答したか、どの方式で実施したか、評価時の状態はどうだったかを残すことが重要です。日本語版の研究では、問診方式と自己記入式との間に良好な相関が報告されています。
実施は4ステップで整理する
- 評価目的を説明する:アパシー傾向やその変化を確認する評価であることを伝えます。
- 実施方式を決める:自己記入か、評価者による面接・読み上げかを明確にします。
- 本人が回答する:評価者が読み上げる場合も、本人が選択肢から回答します。誘導して答えを決めないようにします。
- 方式と評価条件を記録する:再評価時に比較できるよう、実施方式や当日の状態を残します。
「読み上げ」と「代理回答」は分けて考える
NINDSのCommon Data Elementsでは、Apathy Scaleは評価者が質問を読み、患者本人が4つの選択肢から回答する半構造化面接として説明されています。一方、日本語版の研究では自己記入式についても検討され、問診方式との良好な相関が報告されています。
そのため、視力や書字などの理由で評価者が読み上げること自体を「家族やスタッフによる代理回答」と同じ扱いにはしません。読み上げても回答者は本人であり、家族やスタッフが本人に代わって回答した場合とは区別して記録します。
評価時の条件も一緒に残す
点数を経時的に比較する場合は、評価時の状態が大きく異なっていないか確認します。疼痛、眠気や覚醒状態、せん妄などの認知状態、薬剤変更、体調変化などがあれば、点数と一緒に記録しておくと解釈しやすくなります。
条件が大きく異なる評価を、点数だけ並べて「改善した」「悪化した」と判断しないことが重要です。
結果の見方|点数だけで「やる気がない」と判断しない
やる気スコアの役割は、本人の性格や努力不足を判定することではなく、アパシー傾向を一定の方法で捉えて共有することです。高得点だった場合も、その原因や介入方針までスコア単独で決めることはできません。
| 確認すること | 考え方 |
|---|---|
| 16点以上だった | アパシー傾向を疑う目安として、行動や他の症状も確認する |
| 16点未満だった | 点数だけでアパシーを完全に否定しない |
| 前回より点数が変化した | 実施方式や体調が同程度だったか確認してから解釈する |
| リハ参加が乏しい | スコアだけを非参加の理由にせず、身体・心理・環境要因を整理する |
| 抑うつ症状もある | アパシーとうつは重なることがあるため、スコアだけで鑑別しない |
アパシーとうつは重なるが、同じものではない
アパシーでは自発性や興味、目標に向かう行動の低下が目立つ一方、うつでは抑うつ気分、悲観的な思考、罪責感などが前景に立つことがあります。ただし、両者は併存することもあります。
やる気スコアはアパシーを評価するための尺度であり、うつとの鑑別や精神医学的診断を単独で行う検査ではありません。抑うつ症状や急激な行動変化などが気になる場合は、他の評価や主治医を含めたチームでの確認につなげます。
記録方法|合計点・実施方式・評価条件をセットで残す
再評価を活かすには、「○点だった」だけで終わらせず、その点数がどの条件で得られたものかを残します。特に自己記入と面接・読み上げが混在する場合は、実施方式を記録しておくと経時変化を解釈しやすくなります。
| 記録項目 | 残す内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 評価日 | 実施した日 | 2026/8/17 |
| 合計点 | 0〜42点 | 18 / 42点 |
| 実施方式 | 自己記入/面接・読み上げ | 面接・読み上げ、本人回答 |
| 評価条件 | 疼痛、覚醒、認知状態、薬剤変更など | 疼痛あり、薬剤変更なし |
| 行動面 | 点数と合わせて共有したい変化 | 声かけ後は開始できるが、自発的開始は少ない |
| 次回評価 | 再評価する時期・条件 | 介入後、同程度の条件で再評価 |
記録例
記録例:やる気スコア18/42点。面接・読み上げ方式で本人が回答。評価時は覚醒良好、疼痛あり。日本語版脳卒中研究の16点を上回るため、アパシー傾向を示す所見の一つとして共有する。点数のみで判断せず、日中活動の自発的開始や声かけへの反応を継続して確認する。
記録では、16点以上をそのまま「アパシーあり」と確定表現するより、「アパシー傾向を示す所見の一つとして共有する」など、尺度の役割が分かる表現にすると誤解を防ぎやすくなります。
やる気スコア記録用紙PDF|設問本文なし・A4版
やる気スコアを経時的に記録できるA4版の記録・集計用紙です。14項目の設問本文は掲載せず、点数、実施方式、評価条件、解釈、再評価時の情報を残せる構成にしています。
v5では、日本語版脳卒中研究の16点を主要な目安として整理し、自己記入と面接・読み上げを区別できるようにしています。点数だけで診断を確定しないことも用紙内に明記しています。
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よくある誤り|やる気スコアを運用するときの注意点
やる気スコアで最も避けたいのは、点数をそのまま本人の意欲やリハビリテーション参加の理由に置き換えることです。カットオフ、実施方式、評価条件の3点をそろえて解釈します。
| よくある誤り | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 14点と16点を同じ基準として扱う | 対象集団や研究の違いが曖昧になる | 日本語版脳卒中研究では16点と明記する |
| 16点以上を診断とみなす | 尺度単独で状態を確定してしまう | 行動、抑うつ症状、認知・身体状態も確認する |
| 読み上げを代理回答と記録する | 誰が回答したか分からなくなる | 「面接・読み上げ、本人回答」と記録する |
| 評価条件を残さない | 前回との点数差を解釈しにくい | 疼痛、覚醒、認知状態、薬剤変更などを併記する |
| 数点の変化だけで改善・悪化を決める | 測定条件や尺度特性の影響を見落とす | 同程度の条件での推移と行動変化を合わせて見る |
| 高得点をリハ非参加の理由にする | 疼痛、疲労、認知、環境など他の要因を見落とす | スコアは原因の確定ではなく、追加評価と共有の材料にする |
再評価のタイミング|固定間隔より「何を確かめたいか」で決める
やる気スコアの再評価には、すべての患者に共通する「○日ごと」「○週ごと」という固定間隔を当てはめるより、状態や介入の変化を確認したいタイミングで実施する方が目的を明確にできます。
たとえば、活動への働きかけを変更した後、薬剤や全身状態が変化した後、病棟生活で自発性の変化がみられたとき、前回値との経時比較が必要になったときなどが再評価を検討する場面です。
再評価では、可能な範囲で実施方式や評価環境をそろえ、条件が異なる場合はその違いを記録します。何点変わったかだけでなく、実際の行動がどう変わったかまでセットで確認してください。
やる気スコアのよくある質問
各質問をタップすると回答が開きます。
Q1.やる気スコアは何点からアパシーを疑いますか?
日本語版を脳卒中患者で検討した研究では、16点をカットオフとした場合に感度81.3%、特異度85.3%が報告されています。ただし、16点以上だけでアパシーを確定するものではありません。行動や抑うつ症状、認知・身体状態などと合わせて解釈します。
Q2.14点と16点のどちらを使えばよいですか?
14点はStarksteinらの原版研究で報告された値で、日本語版の脳卒中患者を対象とした研究では16点が検討されています。単純にどちらかを施設で選ぶのではなく、使用する版と対象集団に対応した根拠を確認します。本記事では、日本語版を脳卒中患者に使用する場面を中心に16点を目安として整理しています。
Q3.書けない患者さんは評価者が読み上げてもよいですか?
NINDSのCommon Data Elementsでは、評価者が質問を読み、患者本人が選択肢から回答する半構造化面接として説明されています。また、日本語版の研究では問診方式と自己記入式との良好な相関が報告されています。読み上げた場合も回答者は本人であり、家族やスタッフによる代理回答とは区別して記録します。
Q4.再評価は1週間ごとに行えばよいですか?
一律に1週間ごとと決める必要はありません。状態や介入、薬剤、生活場面などが変化し、アパシー傾向やその推移を確認する必要があるタイミングで再評価します。比較するときは、実施方式や評価条件も確認してください。
Q5.数点下がれば改善したと言えますか?
数点の変化だけで臨床的な改善・悪化を断定しない方が安全です。実施条件が同程度だったかを確認し、活動の開始、日中活動、周囲からの働きかけへの反応など、実際の行動変化も合わせて評価します。
次の一手|ほかの意欲評価と使い分ける
やる気スコアは本人のアパシー傾向を捉える尺度です。生活場面の自発性や、リハビリテーション場面への参加状況など、「何を評価したいのか」が異なれば選ぶ尺度も変わります。
参考文献
- 岡田和悟, 小林祥泰, 青木耕, 須山信夫, 山口修平. やる気スコアを用いた脳卒中後の意欲低下の評価. 脳卒中. 1998;20(3):318-323. DOI: 10.3995/jstroke.20.318 / J-STAGE
- Starkstein SE, Mayberg HS, Preziosi TJ, Andrezejewski P, Leiguarda R, Robinson RG. Reliability, validity, and clinical correlates of apathy in Parkinson’s disease. J Neuropsychiatry Clin Neurosci. 1992;4(2):134-139. DOI: 10.1176/jnp.4.2.134 / PubMed: 1627973
- Starkstein SE, Fedoroff JP, Price TR, Leiguarda R, Robinson RG. Apathy following cerebrovascular lesions. Stroke. 1993;24(11):1625-1630. DOI: 10.1161/01.STR.24.11.1625
- Hum S, Fellows LK, Lourenco CB, Mayo NE. Are the Items of the Starkstein Apathy Scale Fit for the Purpose of Measuring Apathy Post-Stroke? Front Psychol. 2021;12:754103. DOI: 10.3389/fpsyg.2021.754103 / PMC: PMC8688540
- International Parkinson and Movement Disorder Society. MDS-Recommended Rating Scales: Apathy Scale (AS). 公式ページ
- National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Common Data Elements: Apathy Scale (AS). NINDS CDE
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

