介護ロボットの移乗支援|装着型・非装着型の選び方と導入手順

臨床手技・プロトコル
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介護ロボットの移乗支援は「何を補助したいか」から選ぶ

介護ロボットの移乗支援では、最初に「どの製品を買うか」ではなく、現在の移乗介助で何を改善したいかを決めます。介助者の身体負担を軽減したいのか、人力での抱え上げや複数人介助を減らしたいのかによって、装着型と非装着型の選択が変わるためです。

本記事では、PT・OTなどのリハビリテーション職と介護職向けに、装着型・非装着型の違い、適応・禁忌を確認するときの考え方、導入前の評価、試用から継続判断までの進め方を整理します。個別製品の使用条件は機種ごとに異なるため、最終的な適応・禁忌は必ず取扱説明書やメーカー情報を確認してください。

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まず整理|移乗支援は「装着」と「非装着」に分かれる

介護テクノロジー利用の重点分野は、2025年4月から9分野16項目で運用されています。そのうち本記事で扱うのは、移乗支援(装着)移乗支援(非装着)です。[1,2]

装着型は介助者が機器を身につけ、移乗介助時のパワーアシストを受ける機器です。一方、非装着型は要介護者を移乗させるときに、介助者の力の全部または一部を機器がアシストします。[1,2]

移乗支援(装着)と移乗支援(非装着)の違い
項目 装着型 非装着型
何を補助するか 介助者の動作・身体負担 介助者による移乗動作
基本的な使い方 介助者が機器を装着する 介助者が機器を操作する
検討しやすい課題 中腰や前屈を伴う介助負担が大きい 人力での抱え上げや複数人介助を見直したい
選定時の主な確認 装着・設定の手間、動作のしやすさ、使用場面 利用者条件、機器寸法、使用環境、操作方法

非装着型の重点分野には、つり下げ式移動用リフトは含まれません。また、本人の歩行や屋内移動を支援する「移動支援」とも別に整理されています。[1,2]

適応・禁忌は製品ごとに確認|共通の「使える・使えない」で決めない

移乗支援ロボットには、すべての製品に共通する適応・禁忌表があるわけではありません。必要な姿勢保持能力、対象となる身長・体重、身体状態、使用環境などは製品によって異なります。

そのため、最初から「座位が不安定だから使えない」「認知機能が低いから禁忌」と決めるのではなく、まず利用者と使用場面を整理し、候補となる製品の使用条件と照合する順番が重要です。[3]

移乗支援ロボットを選ぶ前に確認する6つの観点
観点 確認すること 判断のポイント
製品条件 身長、体重、身体寸法、疾患・身体状態など メーカーが示す使用条件に合っているか
意識・理解 指示理解、協力、機器への不安や拒否 その製品を使用するために必要な協力が得られるか
姿勢・身体機能 座位、立位、体幹支持、関節可動域、疼痛 製品が要求する姿勢を安全にとれるか
医学的リスク 荷重制限、骨折リスク、循環・呼吸状態など 移乗に伴う姿勢・荷重変化を許容できるか
使用環境 ベッド周囲、床面、トイレ、浴室、保管場所 展開・操作・移動・保管に必要な空間を確保できるか
介助者 操作方法、教育状況、装着・設定の負担 日常業務の中で継続して再現できるか

特に安全性に関わる条件は、ブログ記事の一般論ではなく使用する製品の取扱説明書・添付資料・メーカー説明を優先してください。利用者の状態が変化した場合も、同じ条件のまま使い続けず再評価します。

選び方|製品名より「何を改善したいか」で絞る

装着型と非装着型の選択では、利用者の身体機能だけを見るのではなく、現在の移乗介助で起きている問題から逆算すると選びやすくなります。

移乗介助の課題から考える機器選定
現在の課題 候補 導入前に確認したいこと
前屈・中腰が多く、介助者の身体負担が大きい 装着型 装着時間、動作制限、使用する業務、保管場所
人力での抱え上げを減らしたい 非装着型 利用者条件、支持方法、ベッド・車いすとの適合
2人以上で行う移乗を見直したい 非装着型を含めて検討 その製品を1人で使用できる条件と実際の介助工程
機器を導入しても使われない 機種より運用を再評価 対象者、使用場面、置き場、教育、記録方法

非装着型でも、身体を支持する方法、必要な姿勢、移乗の工程は製品によって異なります。そのため、「非装着型ならこの身体機能が必要」と一括りにせず、候補機器ごとに実機で確認することが大切です。

移乗支援ロボットの選び方を課題設定、種類選択、条件確認、現場試用、評価の5ステップで示した図版
移乗支援ロボットは、課題を決めてから種類と使用条件を絞り、現場で試用した結果をもとに継続・条件変更・機種再選定・中止を判断します。

導入判断の5ステップ|対象より先に「課題」を決める

導入は、①課題を決める → ②候補機器を選ぶ → ③使用条件を決める → ④試用する → ⑤評価して見直すの順で進めます。購入を最初のステップにしないことが重要です。[3]

移乗支援ロボット導入の5ステップ
ステップ 決めること 具体的な確認
1. 課題を決める 何を改善したいか 介助者負担、抱え上げ、介助人数、移乗時間など
2. 候補を選ぶ 装着型か非装着型か 目的、製品条件、設置環境、費用など
3. 使用条件を決める 誰が・誰に・いつ・どこで使うか 対象者、担当者、使用場面、保管場所を具体化する
4. 試用する 安全に再現できる条件 操作方法、環境、利用者の反応、介助者の習熟を確認する
5. 評価する 継続・条件変更・再選定 使用状況、安全性、負担、導入目的への効果を確認する

厚生労働省の手引きでも、導入前に「いつ、誰が、誰に、どのように利用するか」を具体化し、評価指標・方法・評価期間を事前に設定する流れが示されています。[3]

試用は「2週間で終了」ではない|まず初回レビュー日を決める

介護ロボットは、操作に慣れていない段階だけで効果を判断すると、本来の使いやすさや負担軽減を評価できない可能性があります。厚生労働省の手引きでは、業務が安定するまでの試用として2週間〜1か月程度、導入検討のための試用評価として2〜3週間程度が例示されています。[3]

そのため、現場では「2週間で導入可否を必ず決める」のではなく、2週間を最初のレビュー地点にすると整理しやすくなります。まだ操作に慣れていない場合は、そこで中止と決めず、問題を修正して試用期間を延ばします。

2週間の初回レビューで確認すること
確認項目 見ること 問題がある場合
使用状況 予定した場面で実際に使えたか 対象者、場面、置き場、準備工程を見直す
操作 担当者が安全に再現できるか 教育・練習を追加する
利用者 不安、拒否、苦痛、姿勢上の問題がないか 設定や機種の適合を再確認する
介助者 身体的・心理的負担がどう変化したか 使用方法や機種選定を見直す
安全 ヒヤリハット、中止、危険な場面がなかったか 効果評価より先に使用条件を修正する

導入効果は4項目で追う|公式の一律KPIではなく目的に合わせる

介護ロボットの評価指標は、すべての施設・製品で同じものを使うわけではありません。厚生労働省の手引きでは、利用回数・時間、利用者への効果、職員の負担、安全性、使いやすさなど複数の評価例が示されています。[3]

本記事では、記録を複雑にしすぎないため、初回レビューでは①使用状況 ②介助者負担 ③安全性 ④導入目的への効果の4項目から始める方法を提案します。これは公的な合格基準ではなく、現場で評価を始めるための実務上の最小セットです。

移乗支援ロボットの初回レビューに使う4項目
項目 記録例 確認すること
使用状況 使用回数・使用できなかった理由 想定した場面で実際に使えているか
介助者負担 Borg CR10など院内で統一した方法 導入前と同じ条件で負担を比較できるか
安全性 ヒヤリハット、中止理由、利用者の不安 新たな危険や負担を生んでいないか
導入目的 介助人数、移乗時間、抱え上げの有無など 最初に設定した課題が改善しているか

例えば「2人介助を減らしたい」が目的なら介助人数、「腰部負担を軽減したい」なら介助者負担を重点的に見ます。使用回数が増えたことだけを成功とせず、最初に設定した導入目的と対応させて評価することが重要です。

装着型の介護支援ロボットについては、模擬移乗場面で腰部の主観的疲労が軽減した研究があります。[6] また、非装着型の移乗支援ロボットを長期使用した介護施設では、複数介助者を必要とする移乗が減少した報告があります。[7] ただし、これらは特定の機器・条件で得られた結果であり、すべての製品にそのまま当てはめることはできません。

使われなくなるときは「機器」より運用を見直す

試用した機器が使われなくなったとき、すぐに「この機器は合わない」と判断するのではなく、使う条件が曖昧になっていないかを確認します。厚生労働省の手引きでも、導入時の環境整備、職員教育、継続的な評価と改善が重要なプロセスとして示されています。[3]

移乗支援ロボットが定着しないときの確認順
詰まり まず確認すること 最初の修正
準備が面倒 保管場所、充電、移動経路 実際に使う場所までの工程を減らす
怖くて使えない 操作教育、製品条件、担当者の習熟 対象者と担当者を絞って再練習する
使う人が限られる 誰が教育するか、手順が共有されているか 試用経験者を中心に教育方法を統一する
効果が分からない 導入目的と評価項目が対応しているか 目的に直結する指標だけを残す

装着型ロボットが日常的に使用されている介護施設を調べた研究では、移乗介助や排泄介助など、実際に使用する業務が具体化されていたことが報告されています。[9] 機器を「誰でも必要なときに使う」とするより、最初は使用場面を絞った方が運用上の問題を見つけやすくなります。

継続・条件変更・再選定|数字だけでなく「なぜ使えなかったか」で決める

初回レビューでは、単純な使用率だけで導入可否を決めません。使えなかった理由を分けることが重要です。

試用後の判断と次の一手
状況 判断 次の一手
安全に使え、目的に対する改善がみられる 継続候補 対象者・担当者を段階的に広げる
効果はありそうだが操作・環境に問題がある 条件変更 教育、置き場、使用場面、設定を修正して再評価する
利用者と製品条件が合わない 機種再選定 別方式の機器を検討する
安全上の問題が解消できない 中止・再検討 使用を続けず、移乗方法そのものを再検討する
まだ職員が操作に慣れていない 評価期間延長を検討 教育を追加し、習熟後に改めて評価する

厚生労働省の手引きでも、試用結果を整理したうえで本格導入を協議し、効果への疑問が解消できない場合や、導入による問題の解消が困難な場合には、機器の再検討や導入を見送ることも選択肢として示されています。[3]

制度・加算は別記事で確認する

介護テクノロジーを施設へ導入するときは、機器の適合性だけでなく、生産性向上の取り組みや介護報酬上の制度を確認する場面があります。本記事では移乗支援ロボットの選定・試用・評価に絞っています。

生産性向上推進体制加算I・IIの違いと実務を確認する

よくある質問

移乗支援ロボットに共通する禁忌はありますか?

すべての移乗支援ロボットへ一律に適用できる禁忌表として整理するのは適切ではありません。必要な身体機能、身長・体重などの条件、使用環境は製品によって異なります。候補となる製品の取扱説明書やメーカー情報で個別に確認してください。

装着型と非装着型はどう使い分けますか?

介助者自身の身体負担を軽減したい場合は装着型、要介護者の移乗動作を機器でアシストし、人力での抱え上げや介助人数を見直したい場合は非装着型が候補になります。最終的には利用者、介助者、使用環境と製品条件を合わせて判断します。

移乗支援ロボットはどのくらい試用すればよいですか?

厚生労働省の手引きでは、業務が安定するまで2週間〜1か月程度使用し、導入検討のための試用評価を2〜3週間程度行う例が示されています。期間を機械的に固定するのではなく、職員が操作に慣れた状態で評価できることが重要です。[3]

導入効果は何を評価すればよいですか?

導入目的によって変わります。本記事では、使用状況、介助者負担、安全性、導入目的への効果の4項目から始める方法を提案しています。介助人数の削減が目的なら介助人数、時間短縮が目的なら所要時間など、目的に直接対応する項目を追加します。

次の一手|移乗支援ロボットが合わない場合は移乗方法そのものを見直す

移乗支援ロボットが利用者や環境に合わない場合、人力介助を続けることだけが選択肢ではありません。特に抱え上げ介助が続いている場合は、移動用リフトを含めて移乗方法そのものを再検討します。

なお、介護テクノロジー利用の重点分野で定義される移乗支援(非装着)には、つり下げ式移動用リフトは含まれません。[1,2]

移動用リフトの導入判断|立位移乗・ボードとの使い分けを見る


参考文献

  1. 厚生労働省. 「介護テクノロジー利用の重点分野」について.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000209634_00013.html
  2. 経済産業省. 介護テクノロジー利用の重点分野の定義. 2024.
    PDF
  3. 厚生労働省. 介護ロボットの効果的な活用のための導入・活用のポイント.
    PDF
  4. Nguyen NC, Saito M. Issues in applications of nursing care robots, and in the training of care workers in their use in Japan. Front Med. 2025;12:1459015. doi:
    10.3389/fmed.2025.1459015
  5. Nakamura K, Saga N. Current status and consideration of support/care robots for stand-up motion. Appl Sci. 2021;11(4):1711. doi:
    10.3390/app11041711
  6. Miura K, Kadone H, Abe T, et al. Successful use of the Hybrid Assistive Limb for care support to reduce lumbar load in a simulated patient transfer. Asian Spine J. 2021;15(1):40-45. doi:
    10.31616/asj.2019.0111
  7. Kato K, Yoshimi T, Aimoto K, Sato K, Itoh N, Kondo I. Reduction of multiple-caregiver assistance through the long-term use of a transfer support robot in a nursing facility. Assist Technol. 2023;35(3):271-278. doi:
    10.1080/10400435.2022.2039324
  8. Kato K, Yoshimi T, Aimoto K, et al. A rise-assisting robot extends life space and improves facial expressions of nursing home residents. BMC Health Serv Res. 2022;22(1):1588. doi:
    10.1186/s12913-022-08952-w
  9. Kato K, Yoshimi T, Tsuchimoto S, Mizuguchi N, Aimoto K, Itoh N, Kondo I. Identification of care tasks for the use of wearable transfer support robots: an observational study at nursing facilities using robots on a daily basis. BMC Health Serv Res. 2021;21(1):652. doi:
    10.1186/s12913-021-06639-2

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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