評価スケールは「目的」と「タイミング」を固定すると迷いません
評価スケールは種類が多く、「どれを使う?」「いつ測る?」「点数をどう解釈する?」で迷いが生まれやすいです。本記事は、臨床でよくある質問を Q&A 20 問にまとめ、判断の軸をそろえます。
結論はシンプルです。迷いを減らすコツは、① 目的(意思決定) ② 測定タイミング ③ 記録の型を固定することです。まずは “施設内で標準化できる最小セット” から始めましょう。
現場の詰まりどころ(評価が増えるほど混乱する原因)
評価が回らない原因は、① 目的が曖昧、② タイミングがバラバラ、③ 記録が羅列、のどれかが多いです。まずは “決めるもの” を決めるだけで、評価は軽くなります。
| 詰まり | 起きやすい理由 | 最初の一手 | 現場での型( 1 行) |
|---|---|---|---|
| どれを使うか決まらない | 尺度が目的と紐づいていない | 意思決定を 1 つに絞る | 退院先判断のために測る |
| 測るタイミングがバラバラ | 節目が定義されていない | 節目を 3 つに固定 | 初回/週次/退院前 |
| 点数の意味が言えない | 解釈が “高い/低い” で止まる | 臨床の行動に翻訳 | 転倒リスクと介助量に落とす |
| 変化が出ない | 尺度が目的に合っていない | 床・天井効果を疑う | 別尺度か観察指標を併用 |
| 記録が長い | 数字の羅列で終わる | 一文テンプレで要約 | 点数→意味→次の一手 |
評価スケールでよくある質問 Q&A 20 選( PT ・ OT 向け)
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A. 尺度の選び方( 6 問)
Q1. 評価スケールは “たくさん測るほど良い” ですか?
結論:多いほど良い、ではありません。意思決定に必要な最小セットが最強です。
理由:尺度は “情報収集” ではなく “次の行動を決める” ために使います。増やすほど、測定負荷と解釈負荷が増えて運用が破綻しやすくなります。
今日やること:「退院先判断」「介助量の見通し」「リスク管理」など目的を 1 つ決め、その目的に直結する尺度を 1 つだけ選びます。
Q2. 尺度は “機能・活動・参加” のどこを測れば良い?
結論:基本は 活動( ADL / 移動)を軸にし、必要に応じて機能と参加を足します。
理由:多くの場面で、退院先・介助量・安全管理は “活動レベル” の情報が最も効きます。機能だけで判断すると、生活での再現が見えにくくなります。
今日やること:まずは ADL か移動の尺度を 1 つ決め、機能系は “意思決定に必要な時だけ” 足します。
Q3. 同じ目的に尺度が複数あるとき、どう選ぶ?
結論:選ぶ軸は ① 所要時間 ② 再現性 ③ 現場で共有しやすいの 3 点です。
理由:良い尺度でも “続かなければ” 意味がありません。現場で回る尺度は、結果としてチームの意思決定に寄与します。
今日やること:候補を 2 つに絞り、まず 2 週間だけ試して “測定の継続率” が高い方を採用します。
Q4. スケールの “合計点” だけで判断して良い?
結論:合計点だけでなく、ボトルネック(落ちている下位項目)を必ず見ます。
理由:合計点が同じでも、つまずく工程が違えば介入は変わります。下位項目を見ると “次の一手” が具体化します。
今日やること:低い下位項目を 1 つだけ選び、「なぜ落ちるか」の仮説を 1 行で書きます。
Q5. “評価が目的化” してしまいます
結論:尺度は 意思決定(何を決めるか)とセットで運用します。
理由:測るだけでは価値が出ません。点数が “臨床の行動” に翻訳されると、評価が生きます。
今日やること:尺度ごとに「点数がこうなら、こうする」を 1 行で決めます(例:見守り条件、練習優先順位)。
Q6. PT と OT で尺度が噛み合いません
結論:共通言語にする尺度を 1 つだけ決めれば OK です。
理由:全てを統一すると破綻します。共通の軸が 1 つあるだけで、カンファや退院支援が進みやすくなります。
今日やること:共通で使う尺度を 1 つ決め、測定タイミングを “初回/週次/退院前” に固定します。
B. いつ測る?( 5 問)
Q7. 初回評価はいつまでに測るのが良い?
結論:可能なら 早期に測り、以後の変化の “基準点” にします。
理由:基準点がないと改善が説明しづらく、チームの意思決定も遅れます。まずは最小セットだけでも早めに押さえるのが有効です。
今日やること:初回は “短時間で測れる尺度” を選び、詳細評価は段階的に追加します。
Q8. 週次で測る尺度と、節目で測る尺度は分けるべき?
結論:分けるべきです。週次は “軽い尺度”、節目は “説明力が高い尺度” にします。
理由:毎週すべてを測ると負担が大きく、継続率が落ちます。節目(退院前など)で情報密度を上げる方が現実的です。
今日やること:週次は 1 つ、節目は 2 つ、のように “本数” を先に決めます。
Q9. 測定タイミングがズレて比較できません
結論:タイミングは “曜日” と “場面” を固定します。
理由:病棟イベントや疲労の影響でスコアはぶれます。曜日と場面が揃うと、変化が読み取りやすくなります。
今日やること:「毎週火曜の午前」「訓練開始前」など、運用ルールを 1 行で決めます。
Q10. 疲労や疼痛でスコアが落ちた日はどう扱う?
結論:スコアだけで判断せず、条件(疼痛・疲労・睡眠)を併記します。
理由:その日の条件が違うと、 “悪化” に見えても臨床的には一過性の揺れの場合があります。条件が残っていると解釈がぶれません。
今日やること:測定日の “いつもと違う条件” を 1 行だけ記録します。
Q11. 退院前は何を優先して測る?
結論:退院前は 生活での再現( ADL / 移動)に直結する尺度を優先します。
理由:退院前は説明責任と意思決定が中心です。生活場面の情報があると、家族説明や連携が進みます。
今日やること:「できること」「必要介助」「リスク」を 1 枚にまとめる前提で、尺度を 1 つ選びます。
C. 点数の読み方( 6 問)
Q12. スコアが上がったけど “意味のある改善” ですか?
結論:まずは “臨床での変化” に翻訳して確認します。
理由:統計的な差と、臨床での差は一致しないことがあります。介助量、転倒、 ADL の再現など、行動レベルで変化を捉えるのが安全です。
今日やること:スコア変化と同時に「介助量が 1 段階下がった」「見守り条件が減った」など、臨床変化を 1 行で残します。
Q13. スコアが動きません。評価が間違い?
結論:まずは尺度の “適合” を疑い、床・天井効果や目的のズレを点検します。
理由:変化が出ない原因は、介入が無効とは限りません。尺度が拾えない領域(難しすぎる/簡単すぎる)だとスコアは動きにくいです。
今日やること:下位項目のどこで詰まっているかを見て、別の観察指標を 1 つ追加します。
Q14. 下位項目のバラつき、どう解釈する?
結論:バラつきは “ボトルネックの特定” に使います。
理由:総合点が同じでも、落ちている工程が違えばリスクも介助も変わります。ボトルネックに介入を集中すると改善が出やすいです。
今日やること:最も低い下位項目を 1 つ選び、練習の狙いを 1 つに固定します。
Q15. “練習したから上がった” と言えますか?
結論:単回では言い切らず、同条件での再評価で確かめます。
理由:評価は日内変動や学習効果の影響も受けます。条件をそろえた複数回の変化で、介入との関連が見えやすくなります。
今日やること:次回は同じ曜日・同じ時間帯で再測定し、臨床変化も一緒に記録します。
Q16. スコアと臨床印象がズレます
結論:ズレたときは “場面” と “条件” を確認し、評価と観察をセットにします。
理由:尺度は切り取った条件での評価です。病棟や生活場面での再現が違えば、印象とズレることは起こり得ます。
今日やること:病棟での同様動作を 1 回だけ観察し、ズレた条件を 1 つ特定します。
Q17. 経過のまとめは、点数をどう書けば伝わる?
結論:型は 「点数 → 意味 → 次の一手」です。
理由:点数だけだと “結局どうするのか” が伝わりません。意味と次の一手があると、チームの行動が揃います。
今日やること:「スコアは ○○、現状は △△、次は □□」の 1 文テンプレでまとめます。
D. 運用・標準化( 3 問)
Q18. 評価者でブレます。どう減らす?
結論:ブレは “手順” と “判定基準” を最小限でそろえると減ります。
理由:現場は忙しく、完璧な統一は難しいです。まずは実施手順(順番)と、迷いやすい判定だけを合わせると効果があります。
今日やること:迷いやすい項目を 1 つだけ選び、判定の目安を 1 行で共有します。
Q19. 多職種に “点数の意味” が伝わりません
結論:点数を “行動” に翻訳して伝えます(介助量・見守り条件・危険場面)。
理由:他職種は尺度名より、ケアの具体が必要です。行動に落ちると、病棟での対応が揃います。
今日やること:共有文は「見守り条件」「危険場面」「介助ポイント」の 3 点から 1 つだけ書きます。
Q20. “施設内の標準セット” はどう作ればいい?
結論:目的を絞り、最小セットから始めて、運用できる範囲で増やします。
理由:最初から理想を目指すと続きません。継続できる運用が、結果としてデータの価値を高めます。
今日やること:目的を 1 つ決め、「週次 1 本」「節目 2 本」など本数を先に決めます。
よくある失敗(先に潰すと運用が安定します)
| 場面 | NG | OK | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 尺度選択 | 有名だから採用 | 意思決定に直結する尺度を採用 | 「何を決めるために測るか」を 1 行で残す |
| 測定頻度 | 毎回すべて測る | 週次と節目で本数を分ける | 初回/週次/退院前を固定 |
| 解釈 | 点数だけ共有 | 点数→意味→次の一手で共有 | 介助量・見守り条件を併記 |
| 再評価 | 条件を記録しない | 疼痛・疲労・睡眠を併記 | 比較条件の一致/不一致を明示 |
導入チェック(最短 5 分)
- 意思決定を 1 つ決めたか(退院先/介助量/リスク)
- 週次 1 本・節目 2 本など本数を決めたか
- 測定曜日と場面を固定したか
- 記録テンプレ「点数→意味→次の一手」を用意したか
- 評価者間で迷う判定を 1 つだけ共有したか
次の一手
- 運用を整える:評価ハブで全体像を確認する(全体像)
- 共有の型を作る:PT 評価の標準手順をそろえる(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- World Health Organization. International Classification of Functioning, Disability and Health (ICF). 2001.
- McDowell I. Measuring Health: A Guide to Rating Scales and Questionnaires. 4th ed. Oxford University Press; 2006.
- Portney LG, Watkins MP. Foundations of Clinical Research: Applications to Practice. 4th ed. F.A. Davis; 2020.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


