ICDSCの評価方法|8項目・点数・4点以上の判定を解説

評価
記事内に広告が含まれています。

ICDSCの評価方法|8項目・点数・4点以上の判定

ICDSC(Intensive Care Delirium Screening Checklist)は、成人ICU患者のせん妄を8つの観察領域から評価するスクリーニング尺度です。評価可能な意識状態であれば、各領域を0点または1点で採点し、合計0〜8点で評価します。日本版・痛み不穏せん妄管理ガイドライン(J-PAD)では、ICDSC 4点以上をせん妄ありとして扱います。

一方、日本語版ICDSCの妥当性研究では、外科系ICU患者82例を対象とした検証から、臨床上高い特異度を確保する目的で3点をカットオフ値として使用することが推奨されています。そのため、「3点=単なる境界域」と考えるのではなく、4点基準と3点カットオフの根拠を分けて理解することが重要です。

この記事では、ICDSCの8項目、評価方法、評価できない意識状態、4点以上と日本語版3点カットオフの違い、CAM-ICUとの使い分けまで順番に整理します。記事内容に合わせたExcel版・PDF版の「ICDSC 評価・記録シート」も用意しています。

意識・鎮静・せん妄評価をまとめて確認

意識・鎮静・せん妄評価ハブを見る

JCS・GCS・RASS・CAM-ICU・ICDSCなど、「何を評価したいか」から尺度を選びたい場合はこちらから確認できます。

ICDSCとは|8項目を0・1点で評価するICUせん妄尺度

ICDSCは、ICUでみられるせん妄の徴候を、ベッドサイドでの観察や診療・看護記録などから拾い上げる評価尺度です。評価可能であれば8領域について0点または1点を付け、合計点を算出します。

ICDSCの基本構造
項目 内容
対象 主に成人ICU患者
観察領域 8領域
各項目 0点または1点
合計 0〜8点
J-PADでの判定 4点以上でせん妄あり
日本語版検証研究 3点カットオフを推奨

正式な日本語版ICDSCでは、それぞれの8時間勤務帯全体、あるいは24時間以内の情報に基づいて評価します。せん妄は時間帯によって症状が変動するため、評価時の一場面だけでなく、夜間の状態や勤務帯による変化を含めて確認できることがICDSCの特徴です。

ただし、ICDSCはせん妄を評価・スクリーニングするためのツールです。ICDSC陽性だけで、せん妄の原因や診断が確定するわけではありません。臨床所見、薬剤、感染、低酸素、疼痛、睡眠、感覚障害なども含めて総合的に評価します。

ICDSCの8項目|何を観察するのか

ICDSCでは、意識、注意、見当識、知覚・思考、精神運動、会話・情緒、睡眠・覚醒、症状の変動という8領域を確認します。まず「どの領域の異常を拾う尺度なのか」を把握し、実際の採点では正式な日本語版ICDSCを確認するのが安全です。

ICDSCの8観察領域と確認ポイント
No. 観察領域 臨床で確認するポイント
1 意識レベルの変化 傾眠、刺激への反応性、過覚醒など、意識レベルの変化を確認します。
2 注意力欠如 会話や指示への注意を保てるか、外からの刺激で容易に注意をそらされないかを確認します。
3 失見当識 時間・場所・人物などについて明らかな誤認がないかを確認します。
4 幻覚・妄想など 幻覚、妄想、現実との整合がとれない知覚・思考や、それに伴う行動がないかを確認します。
5 精神運動の亢進または低下 不穏や過活動だけでなく、活動低下や明らかな精神運動の遅滞も確認します。
6 不適切な会話または情緒 整理されていない・一貫性の乏しい会話や、状況にそぐわない情緒反応がないかを確認します。
7 睡眠・覚醒サイクルの障害 夜間睡眠の短縮や頻回覚醒、日中の過度な睡眠など、睡眠・覚醒リズムの乱れを確認します。
8 症状の変動 上記の徴候や症状が24時間のなかで変化していないか、勤務帯による違いも含めて確認します。

上表は観察対象を理解するための要約です。正式な採点条件や各項目の詳細は、日本語版ICDSC(筑波大学附属病院)を確認してください。

ICDSCの評価方法|評価可能か確認してから8項目を採点する

ICDSCは、いきなり8項目を採点するのではなく、まず評価を続けられる意識状態かを確認します。その後、直接観察だけでなく、勤務帯全体の記録や必要な24時間以内の情報を確認し、8領域を0・1点で評価します。

ICDSCの評価方法。評価可能性の確認、勤務帯と24時間情報、8領域の0・1点評価、合計0〜8点、4点基準と3点カットオフ、共有と再評価の流れを示す図。
ICDSCは「評価可能性を確認→勤務帯・24時間情報を確認→8領域を0・1点で評価→合計点を判定→共有・再評価」の順で整理します。
ICDSC評価の基本的な流れ
順番 行うこと ポイント
1 評価可能な意識状態か確認 評価を妨げる重篤な意識障害では、その先を採点しません。
2 勤務帯の情報を集める 直接観察だけでなく、看護記録や他職種からの情報も確認します。
3 必要な24時間情報を確認 とくに睡眠・覚醒リズムや症状の変動は、一場面だけで判断しません。
4 8領域を0・1点で採点 該当した項目だけでなく、判断した根拠も短く残します。
5 合計0〜8点を確認 4点基準と日本語版3点カットオフを混同せず解釈します。
6 結果を共有・再評価 点数だけでなく、陽性領域・時間帯・症状の変動を共有します。

意識障害が強い場合|評価不能と陰性を分ける

ICDSCで最初に確認する重要な境界が、評価を妨げるほどの意識障害があるかどうかです。

正式な日本語版ICDSCでは、反応がない場合、または何らかの反応を得るために強い刺激を必要とする場合は、評価を妨げる重篤な意識障害と考えます。ほとんどの時間が昏睡または昏迷状態であれば「-」を入力し、それ以上ICDSCの評価を行いません。

重要:評価できない意識状態は、ICDSC 0点や「せん妄陰性」と同じではありません。評価不能と陰性を分けて記録します。

一方、傾眠していて反応までに軽度〜中等度の刺激が必要な場合や、過覚醒がみられる場合は、意識レベルの変化として採点対象になります。鎮静薬の投与・変更がある場合は、鎮静レベルや薬剤との時間関係もあわせて記録すると経時的に解釈しやすくなります。

ICDSCの点数|4点以上と日本語版3点カットオフの違い

ICDSCの点数で最も迷いやすいのが、「4点以上」と「3点」の扱いです。この2つは同じ根拠から示された基準ではありません。

J-PADでは、ICDSCが4点以上の場合をせん妄ありとして扱っています。一方、日本語版ICDSCの妥当性・信頼性を検証した研究では、日本の2大学病院ICUの82例を対象に、精神科医によるDSM-IV-TRの診断を基準としてカットオフ値が検討されました。

この研究では、2点で感度と特異度の和が最大となったものの、3点とした場合により高い特異度が得られました。そのため、高い特異度を確保するという臨床上の理由から、3点をカットオフ値として使用することが推奨されています。

ICDSCの4点基準と日本語版3点カットオフの整理
点数 J-PADの4点基準 日本語版研究を踏まえた見方
0点 4点基準ではせん妄ありではない 所見や経時変化があれば継続して観察
1〜2点 4点基準ではせん妄ありではない 陽性領域・時間帯・変化を確認
3点 4点基準には達していない 日本語版検証研究で推奨されたカットオフに達する
4〜8点 せん妄あり 3点カットオフでも陽性範囲

したがって、「3点はグレー、4点なら診断確定」と理解するのは適切ではありません。どの根拠・施設基準で判定したのかをそろえることが重要です。施設SOPですでにカットオフが定められている場合は、その運用を確認してください。

また、ICDSCが陽性であっても、それだけでせん妄の診断や原因が確定するわけではありません。急な意識変化、循環・呼吸状態の悪化などがある場合は、尺度の採点だけを進めず、安全確認と原因検索を優先します。

ICDSC評価・記録シート|Excel・PDFをダウンロード

ICDSCの評価可否、8観察領域、0・1点、合計点、4点基準と日本語版3点カットオフ、陽性根拠、時間帯、再評価予定を1枚で整理できる「ICDSC 評価・記録シート」を作成しました。

Excel版は、8領域の点数を入力すると合計点を自動集計し、4点基準と3点カットオフの確認に使える構成です。PDF版はA4で印刷し、ベッドサイドや学習時に手書きできる形式にしています。

ICDSC 評価・記録シート

正式なICDSC原票を置き換えるものではなく、評価・記録・再評価を整理するための補助シートです。実際の採点は正式な日本語版ICDSCと施設SOPを確認してください。

PDFプレビューを開く

PDFを表示できない場合は、こちらからPDFを開いてください。

ICDSCの記録方法|点数・陽性領域・時間帯を残す

ICDSCは、合計点だけを記録すると次回評価で変化の理由が分からなくなります。少なくとも、合計点に加えて「どの領域が1点だったか」「どの時間帯にみられたか」「前回から変化したか」を残します。

記録例

ICDSC 4/8点。注意力欠如、失見当識、睡眠・覚醒サイクル障害、症状変動あり。夜間に症状増悪し、日中は改善。次勤務帯で注意・見当識と症状変動を再評価する。

鎮静薬の変更、疼痛、低酸素、発熱、睡眠状況など、評価結果に影響しそうな変化があれば併記します。点数そのものだけでなく、なぜその点数になったのかを次の評価者が追える記録にすることが重要です。

CAM-ICUとICDSCの違い|判定方法と情報の集め方が異なる

CAM-ICUとICDSCはいずれも成人ICUで用いられるせん妄評価ツールですが、評価の構造が異なります。どちらか一方が常に優れているというより、施設の運用や患者の状態に合わせて使用します。

CAM-ICUとICDSCの主な違い
比較 CAM-ICU ICDSC
構造 4つのFeatureを組み合わせて判定 8領域を0・1点で採点
結果 陽性・陰性・評価不能を整理 合計0〜8点で得点化
評価の組み立て 所定のFeatureを順に確認して判定する 勤務帯・24時間以内の観察情報を統合して採点する
特徴 標準フローに沿ってせん妄の有無を判定しやすい 症状の変動や夜間情報を得点へ反映しやすい

CAM-ICUの評価可否やFeature 1〜4の判定方法は、CAM-ICUの評価方法で詳しく整理しています。

ICDSCで間違えやすい5つのポイント

ICDSCでは、8項目を覚えるだけでなく、評価可能性と情報の時間軸をそろえることが重要です。とくに次の5点は混同しやすいため注意します。

  • 評価不能と陰性を同じにしない:重篤な意識障害でICDSCを続けられない状態は、ICDSC 0点や陰性とは別です。
  • 一場面だけで決めない:勤務帯全体や必要な24時間情報を確認し、夜間の状態や症状変動を拾います。
  • 不穏だけでせん妄と決めない:疼痛、低酸素、薬剤、感染、環境など他の要因も確認します。
  • 低活動型を見逃さない:せん妄は激しい不穏だけではなく、精神運動の低下として現れることがあります。
  • 3点と4点を混同しない:J-PADの4点基準と、日本語版検証研究の3点カットオフは根拠を分けて扱います。

PT・OT・STはICDSCをどう活用するか

PT・OT・STにとって、ICDSCは離床の可否を単独で決める尺度ではありません。ただし、注意力欠如、見当識の変化、精神運動の変化、症状の変動などは、指示理解、移乗・歩行時の安全性、ライン管理、課題設定に影響します。

たとえば、夜間に症状が強く日中に改善している場合は、単に合計点を見るだけでなく、「どの時間帯なら指示理解が安定するか」「前日と比較して症状変動が増えていないか」をチームで共有すると、リハビリの実施条件を検討しやすくなります。

一方、ICDSCが高得点だからという理由だけで離床やリハビリを中止するのではなく、循環・呼吸状態、意識、疼痛、安全管理、ライン類、患者の反応を含めて総合的に判断します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ICDSCは何項目で何点満点ですか?

A. ICDSCは8項目で構成され、評価可能な場合は各項目を0点または1点で評価するため、合計0〜8点です。

Q2. ICDSCは何点以上でせん妄と判断しますか?

A. J-PADではICDSC 4点以上をせん妄ありとして扱います。一方、日本語版ICDSCの妥当性研究では、高い特異度を確保する臨床上の理由から3点カットオフが推奨されています。施設SOPで採用している基準も確認してください。

Q3. ICDSCが3点ならせん妄ですか?

A. J-PADの4点基準には達していませんが、日本語版検証研究では3点をカットオフ値として使用することが推奨されています。そのため、「3点=単なる境界域」と固定せず、どの基準で解釈しているかを明示することが重要です。

Q4. 深鎮静や昏睡状態でもICDSCを採点しますか?

A. ほとんどの時間が昏睡または昏迷状態で、評価を妨げる重篤な意識障害がある場合は「-」として、それ以上ICDSCを評価しません。これはICDSC 0点や陰性とは別に扱います。

Q5. ICDSCはいつの情報で評価しますか?

A. 正式な日本語版では、それぞれの8時間勤務帯全体、あるいは24時間以内の情報に基づいて評価します。とくに睡眠・覚醒サイクルや症状の変動は、評価時の一場面だけで判断しないことが重要です。

Q6. CAM-ICUとICDSCはどちらを使えばよいですか?

A. CAM-ICUは4つのFeatureを所定の流れで判定し、ICDSCは勤務帯・24時間以内の観察情報を8領域で得点化します。施設の評価方法や患者の状態に合わせて選択します。

Q7. ICDSC陽性ならせん妄の診断は確定ですか?

A. ICDSCはせん妄を評価・スクリーニングするツールであり、陽性だけで原因や診断が確定するものではありません。臨床所見や原因候補を含めてチームで評価します。

次に確認したい評価

ICDSCを単独で覚えるだけでなく、意識レベル・鎮静・せん妄のどこを評価しているのかを整理すると、RASSやCAM-ICUとの使い分けが分かりやすくなります。

ICUの鎮静・せん妄評価を整理する

RASS・CAM-ICU・ICDSCの使い分けを見る


参考文献

  1. Bergeron N, Dubois MJ, Dumont M, Dial S, Skrobik Y. Intensive Care Delirium Screening Checklist: evaluation of a new screening tool. Intensive Care Med. 2001;27(5):859-864. doi:10.1007/s001340100909
  2. 日本集中治療医学会J-PADガイドライン作成委員会. 日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン. 日集中医誌. 2014;21:539-579. 日本集中治療医学会 PDF
  3. 古賀雄二, 村田洋章, 山勢博彰. 日本語版ICDSCの妥当性と信頼性の検証. 山口医学. 2014;63(2):103-111. doi:10.2342/ymj.63.103
  4. Devlin JW, Skrobik Y, Gélinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46(9):e825-e873. doi:10.1097/CCM.0000000000003299

※本記事および配布シートは、ICDSCの理解・記録を補助する目的で作成しています。正式な日本語版ICDSC、施設SOP、最新の診療指針を確認したうえで使用してください。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について / 編集・引用ポリシー / お問い合わせ