23 Ex は METs × 時間で週合計を出す
23 Ex(週 23 メッツ・時)は、退院後や生活期の運動指導で「どれくらい動けたか」を量として共有するための目安です。計算式はシンプルで、Ex = METs × 時間( h )。分で計算する場合は、Ex = METs × 分 ÷ 60に置き換えるだけです。
この記事では、PT / OT / ST が現場で使いやすいように、1 回 Ex の出し方、週合計の組み立て方、よくある失敗、記録テンプレ、A4 記録シート PDF まで整理します。広い身体活動ガイドの解説ではなく、「23 Ex をどう計算し、どう記録するか」を決めるための記事です。
計算は 3 ステップで決める
23 Ex の計算は、活動の METs、実施時間、週回数の 3 つで決まります。先に 1 回ぶんの Ex を出し、それを週回数で掛けると週合計になります。
| 手順 | やること | 式 | 例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 活動の METs を決める | 参照表や施設内の代表値を使う | 普通歩行 3.0 METs |
| 2 | 1 回 Ex を出す | METs × 分 ÷ 60 | 3.0 × 30 ÷ 60 = 1.5 Ex |
| 3 | 週合計を出す | 1 回 Ex × 週回数 | 1.5 × 5 回 = 7.5 Ex / 週 |
分で出すなら METs × 分 ÷ 60 を使う
臨床や生活指導では「30 分歩く」「15 分を 2 回に分ける」のように、時間を分で扱うことが多くなります。そのため、Ex = METs × 分 ÷ 60で統一すると、患者さんにも説明しやすく、記録のブレも減ります。
例として、4 METs の活動を 20 分行った場合は、4 × 20 ÷ 60 = 1.33 Ex です。現場では小数第 1 位にそろえ、約 1.3 Ex として週合計に入れると運用しやすくなります。
1 Ex は何分?まずは時間感覚をつかむ
1 Ex は「METs × 時間」で決まるため、強度が高い活動ほど短時間で 1 Ex に到達します。細かい計算に入る前に、3〜8 METs の活動で 1 Ex に必要な時間を押さえておくと、指導がスムーズになります。
| METs | 1 Ex に必要な時間 | 活動例 | 現場での使い方 |
|---|---|---|---|
| 3 METs | 20 分 | 普通歩行など | 歩行時間から計算しやすい |
| 4 METs | 15 分 | 速歩、自転車など | 短時間運動の単位にしやすい |
| 6 METs | 10 分 | 軽いジョギングなど | 負荷が高いため対象者を選ぶ |
| 8 METs | 7〜8 分 | ランニング、水泳など | 生活期リハでは安全確認を優先する |
METs は公式ガイドと METs 表から固定する
METs は毎回その場で変えるより、参照元を決めて同じ値で運用する方が実務的です。たとえば普通歩行、速歩、自転車、掃除など、よく使う活動だけ代表値を固定しておくと、記録と再評価の条件がそろいます。
厳密な測定値として扱うより、「同じ活動は同じ METs で比べる」ことが大切です。身体活動ガイドでは歩行の強度は 3 METs に相当すると説明されているため、最初は 3 METs 以上の活動を中心に整理すると混乱が減ります。
早見表:よくある活動で 1 回 Ex を出す
スマホでは横スクロールで確認してください。15 分、20 分、30 分、45 分の目安を入れているため、短時間の小分け運動と、まとまった歩行のどちらにも使えます。
| 活動(例) | 目安 METs | 1 回の時間 | 1 回 Ex | 週 5 回の合計 Ex |
|---|---|---|---|---|
| 普通歩行 | 3.0 | 15 分 | 0.75(約 0.8 ) | 3.75(約 3.8 ) |
| 普通歩行 | 3.0 | 30 分 | 1.5 | 7.5 |
| 普通歩行 | 3.0 | 45 分 | 2.25(約 2.3 ) | 11.25(約 11.3 ) |
| 速歩 | 4.0 | 15 分 | 1.0 | 5.0 |
| 速歩 | 4.0 | 30 分 | 2.0 | 10.0 |
| 自転車 | 4.0 | 20 分 | 1.33(約 1.3 ) | 6.67(約 6.7 ) |
| 階段を含む移動 | 4.0 | 10 分 | 0.67(約 0.7 ) | 3.33(約 3.3 ) |
| 掃除 | 3.5 | 20 分 | 1.17(約 1.2 ) | 5.83(約 5.8 ) |
| 掃除 | 3.5 | 45 分 | 2.63(約 2.6 ) | 13.13(約 13.1 ) |
23 Ex / 週 は生活活動と運動を合算して積む
23 Ex / 週は、すべてを運動だけで稼ごうとすると継続が難しくなります。生活活動、通勤、買い物、家事、散歩、速歩を合算し、不足分を運動で補う形にすると現実的です。
| 構成 | 内容 | 計算 | 週合計 |
|---|---|---|---|
| 歩行中心 | 普通歩行 30 分 × 7 回、速歩 30 分 × 4 回 | 1.5 × 7 + 2.0 × 4 | 18.5 Ex |
| 家事を加える | 掃除 20 分 × 4 回を追加 | 1.2 × 4 | + 4.8 Ex |
| 合計 | 歩行・速歩・掃除を合算 | 18.5 + 4.8 | 23.3 Ex / 週 |
このように、1 つの活動で 23 Ex を達成しようとせず、普段の活動を足し算していくと継続しやすくなります。痛みや疲労が出やすい人では、1 回の時間を伸ばす前に、10〜15 分の小分けを増やす方が安全に調整しやすいです。
現場の詰まりどころ:計算は合っているのに続かない
23 Ex の運用で詰まりやすいのは、計算式そのものではありません。METs の決め方、端数処理、週合計の記録方法が毎回変わることで、前回との比較ができなくなる点です。
( 1 )METs を毎回変える:普通歩行を 3.0 にしたり 3.5 にしたりすると、週合計の比較が難しくなります。対策は、施設内や指導用の代表値を先に決めることです。
( 2 )時間だけ見て強度を見ない:同じ 30 分でも、疲労や痛みでペースが落ちれば実質強度は下がります。対策は、「会話はできるが息は弾む」などの主観的強度も併記することです。
( 3 )記録が細かすぎて続かない:毎日の詳細記録が負担になると、記録自体が抜けます。対策は、まず「活動名・1 回 Ex・週回数・週合計」だけに絞ることです。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、計算力だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
よくある失敗は固定ルールで防ぐ
23 Ex を現場で使うときは、正確さを追い込みすぎるより、同じルールで繰り返し記録できることを優先します。以下の 3 点を固定すると、週ごとの比較が安定します。
| よくある失敗 | なぜ起きるか | 回避策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| METs を毎回変える | 参照表の使い分けが不統一 | 代表活動の採用 METs を固定する | 活動名と METs をセットで記録 |
| 週末にまとめて実施する | 平日の実施機会が設計されていない | 10〜15 分の小分けを先に増やす | 回数を先に追い、時間は後で伸ばす |
| 端数処理が毎回違う | 丸めルールが決まっていない | 小数第 1 位で統一する | 週合計 Ex は同じ桁で管理 |
記録テンプレは週合計だけ残せばよい
最初から細かい日誌にすると続きにくいため、まずは週合計だけ残す最小記録がおすすめです。1 回 Ex と週回数を残せば、増えた理由・減った理由を振り返りやすくなります。
| 活動 | 採用 METs | 1 回の分数 | 1 回 Ex | 週回数 | 週合計 Ex | メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 普通歩行 | 3.0 | 30 | 1.5 | __ | __ | 痛み・疲労・天候など |
| 速歩 | 4.0 | 30 | 2.0 | __ | __ | 息切れ・Borg など |
| 家事(掃除) | 3.5 | 20 | 1.2 | __ | __ | 実施しやすい時間帯 |
| 合計 | — | __ Ex / 週 | 次週に増やす活動を 1 つ決める | |||
23 Ex / 週 記録シート PDF をダウンロード
上の記録テンプレを、A4 1 枚で印刷しやすい PDF にしました。活動名、採用 METs、1 回 Ex、週回数、週合計、メモをまとめて記録できるため、患者さんへの説明や再評価時の比較に使いやすくなります。
PDFプレビューを表示する
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
23 Ex は歩数に換算できますか?
歩数は補助指標として使えますが、Ex は強度( METs )× 時間で決まるため、歩数だけで完全に換算するのは難しいです。運用では、歩数は「活動量が増えているか」、Ex は「週合計が目安に近づいているか」を見る指標として使い分けます。
3 METs 以上は、どのくらいのきつさですか?
目安は、普通歩行またはそれ以上の強度です。主観的には、呼吸が少し速くなるが会話はできる程度を基準にすると説明しやすくなります。高齢者や慢性疾患のある方では、主治医の指示や施設の運用基準を優先します。
家事や通勤も Ex に入れてよいですか?
入れて構いません。身体活動は、生活活動と運動を合わせて扱います。ただし、何を含めるかを毎回変えると比較しにくいため、記録に入れる活動をあらかじめ決めておくことが重要です。
端数は切り捨てた方がよいですか?
切り捨てに固定する必要はありません。現場では小数第 1 位にそろえると、週ごとの比較がしやすくなります。端数の正確さより、同じ丸め方で継続して記録することを優先します。
高齢者や慢性疾患のある方も 23 Ex を目標にしますか?
一律に 23 Ex を当てはめるのではなく、体力、痛み、合併症、主治医指示を踏まえて調整します。高齢者や体力レベルが低い方では、少ない量から始め、痛み・疲労・息切れ・翌日の反応を見ながら段階的に増やします。
次の一手
- 全体像を確認する:退院後の運動量の目安と安全管理
- 実装へ進む:活動量計で 23 Ex を運用するコツ
参考文献
- 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023. 2023. PDF
- 厚生労働省. 身体活動量評価のためのチェックシート. PDF
- 健康・体力づくり事業財団. エクササイズガイド 2006. Web
- Herrmann SD, Willis EA, Ainsworth BE, et al. 2024 Adult Compendium of Physical Activities: A third update of the energy costs of human activities. J Sport Health Sci. 2024;13(1):6-12. doi: 10.1016/j.jshs.2023.10.010
- Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462. doi: 10.1136/bjsports-2020-102955
著者情報
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


