リハビリの個別指導では「起算日・実施時間・計画書」をまず自己点検します
リハビリ部門の個別指導対策では、漠然と「記録を丁寧にする」のではなく、実際に指摘された項目から自院の記録を逆算して確認することが重要です。2026年8月に四国厚生支局が公表した令和7年度の個別指導では、リハビリテーション領域で、疾患別リハの起算日、個別療法の終了時刻、リハビリテーション総合実施計画書の説明、総合計画評価料の算定時期が指摘されています。
この記事では、主任・リーダー・教育担当・算定や記録の標準化を担う療法士向けに、これらの公表事例を「自院では何を確認すればよいか」へ置き換えて整理します。個別指導と監査を同一視せず、2026年度改定後のルールまで確認しながら、日常的な自己点検につなげます。
先に結論:まず確認したいのは、①疾患別リハの起算日、②実際の開始・終了時刻と算定単位、③計画書の説明者・説明記録、④総合計画評価料を算定した時点の4項目です。過去年度の指摘事項は、そのまま現在の要件とせず、2026年度の告示・通知・疑義解釈へ読み替えて確認します。
個別指導で実際に指摘されたリハビリ4項目
最新の公表事例を見ると、自己点検では「書類が存在するか」だけでなく、日付や時刻に根拠があるか、計画書の説明方法が現行ルールと一致するか、多職種評価と算定時点がつながっているかまで確認する必要があります。

図版を見るときの注意:図中の「急性期7日以内・回復期14日以内・慢性期30日以内」という説明時期の表示は、診療報酬上の一律の病期別基準として扱うものではありません。本記事ではこの数値を算定要件として使用せず、2026年度の公式通知・疑義解釈に基づく説明者や記録方法を本文で確認します。
| 指摘領域 | 公表された主な内容 | 自院で確認すること |
|---|---|---|
| 疾患別リハの起算日 | 起算日が医学的に妥当ではない例 | 今回の起算日と、発症・手術・急性増悪・診断・治療開始等の根拠が一致しているか |
| 実施時間 | 個別療法の終了時刻が診療録等に記載されていない例 | 実際の開始・終了時刻、実施内容、算定単位数が追えるか |
| 計画書の説明 | 総合実施計画書の説明方法に関する指摘 | 2026年度改定後の説明者ルールに沿って運用しているか |
| 総合計画評価料 | リハ開始後、評価できる期間に達したとは考えにくい時点で算定した例 | 多職種による評価が実際に行われた時点と算定月が一致するか |
この4項目は、「全国すべての個別指導で必ず同じ4項目が指摘される」という意味ではありません。地方厚生局が公表した実際の指摘事例を、自院の記録や算定を見直す入口として利用します。
個別指導と監査は同じ制度ではありません
個別指導と監査は区別して理解しておく必要があります。個別指導は、保険診療の質的向上と適正化を図るために行われる「指導」の一類型です。一方、監査は、診療内容や診療報酬請求について不正または著しい不当が疑われる場合などに、事実関係を把握するために行われます。
そのため、本記事の中心は「監査で何を追及されるか」ではなく、地方厚生局が個別指導で実際に改善を求めたリハビリの項目から、日常記録を自己点検することです。個別指導、監査、施設基準を確認する適時調査を、すべて同じ意味の「監査」として扱わないようにします。
過去年度の指摘事項は2026年度ルールへ読み替えます
公表された個別指導事例は有用ですが、指導を実施した年度のルールと、現在の診療報酬ルールが同じとは限りません。特にリハビリテーション実施計画書・総合実施計画書の説明については、2026年度改定で取り扱いが変わっています。
| 確認点 | 2026年度の扱い | 自己点検 |
|---|---|---|
| 回復期リハ病棟以外 | 医師の指示を受けた看護師・PT・OT・STによる説明が可能 | 説明担当者が院内で明確になっているか |
| 医師からの指示 | 計画書を作成した医師が、文書または口頭で他職種による説明を指示できる | 誰の指示で説明するかが院内で共有されているか |
| 回復期リハ病棟 | 引き続き医師による説明が必要 | 他病棟と同じ説明者ルールにしていないか |
| 患者等の署名欄 | 2026年度改定で計画書の患者等の署名欄を廃止 | 旧様式の署名の有無だけを点検項目にしていないか |
| 総合計画評価料 | 多職種が共同して評価し、計画書を作成した場合に算定する考え方は継続 | 書類作成だけでなく、多職種評価の実施を確認できるか |
重要:令和7年度の指摘事項には「医師が主として説明していない」という内容がありますが、2026年6月1日以降は説明者の要件が変更されています。過去の指摘文をそのまま現在の必須要件として院内ルールへ転記せず、最新通知へ読み替えてください。
① 疾患別リハの起算日は医学的な根拠まで確認します
起算日の自己点検では、電子カルテへ日付が登録されていることだけでなく、なぜその日が今回の疾患別リハビリテーション料の起算日になるのかを確認します。
四国厚生支局の令和7年度指摘事項では、脊椎疾患等の慢性的な疾患について、発症日を十分に確認しないまま新たな疾患としてリハビリテーションを実施していた例が示されています。慢性疾患の症状が変化したからといって、リハ部門だけの判断で新しい起算日へ変更する運用は避けます。
| 確認するもの | 見るポイント | 迷いやすい場面 |
|---|---|---|
| 医師の診療録 | 発症、手術、急性増悪、診断、治療開始等の記録 | 慢性疾患で症状が変動した場合 |
| リハ指示・処方 | 対象疾患と今回リハを開始した理由 | 以前から存在する疾患への再介入 |
| 院内登録日 | 診療録上の根拠と登録日が一致しているか | 入院日やリハ開始日を機械的に設定した場合 |
| 転院時情報 | 転院前の発症日・手術日等を引き継いでいるか | 自院入院日を新たな起算日にしてしまう場合 |
疾患別リハ5区分で起算日がどのように異なるかは、疾患別リハビリテーション料の起算日で詳しく整理しています。本記事では、個別指導の自己点検として「登録日と医学的根拠が一致するか」の確認に絞ります。
② 開始・終了時刻は実際の実施内容と照合します
実施時間では、予定表に登録された枠ではなく、患者へ実際に提供したリハビリテーションの時刻と内容を確認します。令和7年度の個別指導でも、個別療法の終了時刻が診療録等へ記載されていない例が指摘されています。
特に確認したいのは、検査・処置による中断、疼痛や呼吸苦による短縮、拒否、予定単位数をすべて実施できなかった日です。記録上の時間と算定単位数だけが残り、実際の実施内容が追えない状態を避けます。
| 確認点 | 確認する内容 | 見直したい例 |
|---|---|---|
| 開始・終了時刻 | 実際の時刻が記録されているか | 終了時刻がない、実際と異なる時刻が残っている |
| 実施内容 | その時間に行った訓練内容の要点が追えるか | 「リハ実施」のみで内容が分からない |
| 中断・短縮 | 実施した時間と中断した時間を区別できるか | 検査待ち等の時間まで連続した訓練時間に見える |
| 算定単位 | 実施時間と算定した単位数が整合しているか | 予定単位数のまま記録・算定されている |
短縮・中断・移動など、実施時間の境界で迷う場合は、リハビリ実施時間の記録|短縮・中断時の書き方で具体的な場面を確認できます。
③ 計画書は旧ルールの「署名」だけを点検しません
2026年度改定後の自己点検では、患者・家族の署名があるかだけを中心に確認する運用から離れ、現在の様式・説明者・医師の指示・説明の実施が最新ルールと一致しているかを確認します。
回復期リハビリテーション病棟以外では、計画書を作成した医師が他職種による説明が可能と判断し、文書または口頭で指示した場合、看護師・PT・OT・STが説明できます。この医師の指示については、必ずしも診療録への記載を要しないことが疑義解釈で示されています。
一方、回復期リハビリテーション病棟では、引き続き医師による説明が必要です。病棟や施設の違いを考慮せず、院内すべてを同じ説明者ルールにする運用には注意します。
院内でそろえたい3点
- どの病棟・対象で誰が説明するか
- 医師から他職種への説明指示をどう運用するか
- 説明を行ったことをどの記録で確認するか
なお、図版中にある病期別の「7日・14日・30日」という数値は、2026年度の計画書説明について全国一律に定められた病期別期限として使用しません。実際の計画書作成・説明・交付は、対象となる診療報酬の最新通知と院内運用を照合してください。
④ 総合計画評価料は計画書の作成日だけで判断しません
リハビリテーション総合計画評価料では、多職種が共同して評価し、計画書を作成したことが重要です。計画書が存在するだけでなく、その計画に基づいて行ったリハビリテーションの効果や実施方法等について、多職種が共同して評価した時点を確認します。
令和7年度の個別指導では、リハビリテーション開始後、評価できる期間に達しているとは考えにくい場合に総合計画評価料1を算定していた例が指摘されています。また、2026年度の疑義解釈では、計画書を作成した月と多職種による評価を行った月が異なる場合は、評価を行った月に算定することが示されています。
| 確認点 | 見る内容 |
|---|---|
| 計画書 | 対象となる多職種が共同して評価・作成しているか |
| リハ実施 | 作成した計画に基づくリハビリテーションを実施しているか |
| 評価時点 | 効果や実施方法等を評価できる時点で共同評価しているか |
| 算定月 | 多職種による評価を実際に行った月と算定月が一致しているか |
| 算定区分 | 2026年度改定後の初回・2回目以降の区分を確認しているか |
個別指導の直前ではなく日常記録で4項目を確認します
個別指導への備えは、連絡が来てから過去の記録を書き直すことではありません。その日にしか残せない事実を当日に記録し、定期的な自己点検で記録と算定の不整合を見つける運用にします。
- 当日:起算に関係する状態変化、実際の開始・終了時刻、計画書の説明など、その日に確認できる事実を正確に残す
- 週次:少数例を抽出し、起算日・実施時間・計画書・算定の整合を確認する
- 月次:同じ未達が繰り返されている項目を集計し、記録様式・教育・確認手順を修正する
週次に何件確認するかについて全国一律の件数基準があるわけではありません。部署内の自己点検では、無理なく継続できる件数から始め、エラーが繰り返される項目を重点的に確認します。
月次自己点検は5項目で振り返ります
月次レビューの目的は、チェック欄をすべて埋めることではありません。どの項目で不整合が起きたのか、その原因を翌月の運用変更へつなげることが重要です。
| 項目 | 確認内容 | 未達時に見ること |
|---|---|---|
| 起算日 | 登録日と医学的根拠が一致しているか | 起算日を登録するときの確認元・担当者 |
| 実施時刻 | 開始・終了時刻、実施内容、算定単位が整合しているか | 中断・短縮時の記録方法 |
| 計画書説明 | 対象に応じた説明者・説明方法になっているか | 病棟別の説明担当と医師からの指示方法 |
| 総合計画評価料 | 多職種評価を行った時点と算定月が対応しているか | 計画書作成日だけで算定判断していないか |
| 再確認 | 前回見つかった不整合が改善しているか | 同じ問題が続く場合は様式・教育・手順を見直す |
自己点検は「不整合→原因→修正」まで残します
自己点検をしても、「確認済み」とだけ残して終わると同じ問題が繰り返されます。部署として確認したいのは、どこに不整合があり、なぜ起き、次に何を変えるかです。
| 項目 | 残す内容 | 例 |
|---|---|---|
| 対象 | 確認した期間と件数 | 2026年8月分から20件を抽出 |
| 不整合 | どの確認項目で問題があったか | 2件で終了時刻が未記載 |
| 原因 | どの場面で起きたか | 検査呼び出しによる途中終了時に記載が抜けた |
| 修正 | 翌月から変える運用 | 途中終了時の記録手順を共有し、翌週に再確認する |
この型で残すと、「注意した」「周知した」だけで終わらず、同じ不整合が再発しているかを次回の自己点検で確認できます。
リハビリの個別指導でよくある質問
個別指導と監査は同じものですか?
同じものではありません。個別指導は保険診療の質的向上・適正化を目的とする「指導」の一類型です。監査は、診療内容や診療報酬請求について不正または著しい不当が疑われる場合などに事実関係を把握するために行われます。本記事は主に個別指導で公表された指摘事項を使った自己点検を扱っています。
令和7年度の「医師が説明していない」という指摘は2026年度もそのまま当てはまりますか?
そのままではありません。2026年度改定後は、回復期リハビリテーション病棟以外では、医師の指示を受けた看護師・PT・OT・STが計画書を説明できます。回復期リハビリテーション病棟では、引き続き医師による説明が必要です。
リハビリの開始・終了時刻はどこまで確認すればよいですか?
少なくとも、実際の開始・終了時刻と実施内容、算定した単位数が矛盾していないかを確認します。特に検査による中断、体調不良による短縮、拒否など予定どおり実施できなかった日は、実際に行った内容を追える記録にします。
地方厚生局の指摘事項に載っていない項目は確認しなくてもよいですか?
そうではありません。公表された指摘事項は自己点検の参考になる実例であり、算定要件を網羅した一覧ではありません。実際の保険請求では、最新の告示・通知・疑義解釈、自施設が届け出ている施設基準を優先して確認してください。
次に確認する記事
この記事では、地方厚生局が実際に公表した指摘事項から「自院のどこを見るか」に絞りました。リハ部門の個別指導・監査対策全体を整理したい場合は、リハビリ部門の監査対策|個別指導で見られやすいポイントで、計画書・実施記録・再評価・算定根拠を含めた全体像を確認できます。
参考文献
- 四国厚生支局. 令和7年度に実施した個別指導において保険医療機関(医科)に改善を求めた主な指摘事項. 2026 Aug. 公式PDF
- 四国厚生支局. 個別指導及び適時調査において保険医療機関等に改善を求めた主な指摘事項について. Updated 2026 Aug 17. 公式ページ
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. 2026. 公式ページ
- 厚生労働省保険局医療課. 令和8年度診療報酬改定に係る疑義解釈資料. 2026. 公式PDF
- 厚生労働省. 保険診療における指導・監査. 公式ページ
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

