2026 年のリハ監査・指導対策は「制度理解」より「説明できる運用」で決まります
令和 8 年( 2026 年)の監査・指導で差がつくのは、制度の暗記よりも、現場運用の整合と証跡の残し方です。特に、同意取得、算定根拠、例外対応(中止・短縮)、多職種連携の記録が分断されると、実施していても説明できない状態になりやすいです。
本記事は、監査で問われやすい論点を「部門で回せる型」に落とし込み、今日から運用できるチェックリストとして整理します。最終的なゴールは、指摘ゼロを目指すことではなく、指摘時に根拠を示して説明できる状態をつくることです。
監査・指導で問われる 4 つの論点
監査対応は、細かいルールを増やすほど現場で回らなくなります。まずは「何を見られるか」を 4 つに固定し、部署全体で同じ視点を持つことが重要です。視点が揃うだけで、記録漏れや説明の不一致は大きく減らせます。
実務では、①同意、②算定根拠、③例外対応、④連携記録を同じフォーマットで追える状態が理想です。評価や介入の質だけでなく、「いつ・誰が・何を判断したか」を追跡可能にする設計が監査で強みになります。
| 論点 | よくある抜け | 最低限の証跡 | 担当 |
|---|---|---|---|
| 同意取得 | 説明日・説明者の記載漏れ | 同意日、説明内容、同席者、再説明記録 | 担当療法士+責任者確認 |
| 算定根拠 | 算定理由が定型文のみ | 状態変化、目標、介入必要性、時間根拠 | 担当療法士 |
| 例外対応 | 中止・短縮理由が曖昧 | バイタル、症状、判断時刻、再評価計画 | 担当療法士+当直連携 |
| 多職種連携 | 共有した事実が追えない | 共有先、共有時刻、合意事項、次アクション | チーム全員 |
現場の詰まりどころ
詰まりやすいのは「忙しい日ほど例外記録が飛ぶ」「担当者ごとに書き方が違う」「監査直前に帳尻を合わせる」の 3 点です。ここを放置すると、個人依存が強まり、異動や欠員時に運用が破綻しやすくなります。
まずは、失敗の出やすい場面を共通言語化し、書く項目を固定するだけでも効果があります。詳細は以下から必要箇所だけ先に確認してください。関連:改定全体像を先に押さえる
よくある失敗( NG )と通る書き方( OK )
監査で問題になるのは、実施の有無より「判断根拠が読めるか」です。特に NG になりやすいのは、結果だけを書いて経過が抜ける記録です。判断の連続性が見えないと、後追い説明でも苦しくなります。
以下の比較表を、部署内レビューの基準として共有してください。記録の個人差を減らすだけで、監査対応の再現性が上がります。
| 場面 | NG 記載 | OK 記載 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 中止判断 | 「体調不良で中止」 | 「SpO2 89% まで低下、呼吸苦訴えあり。14:20 に中止。14:35 再評価で 93% 回復、翌日再実施予定」 | 数値・時刻・再計画 |
| 短縮対応 | 「時間短縮」 | 「疼痛 NRS 7/10 に増悪。安全優先で 20 分短縮。疼痛管理後の再介入条件を主治医と共有」 | 短縮理由・共有先 |
| 同意 | 「同意あり」 | 「本人・家族へ目的とリスクを説明し同意取得。説明者:◯◯、同席:◯◯、質問事項:◯◯」 | 説明者・同席者・内容 |
回避の手順(当日・週次・月次)
監査対策は「まとめてやる」より「頻度を分けて小さく回す」が正解です。当日で潰す項目、週次で整える項目、月次で監査目線を入れる項目を分けると、現場負荷を抑えながら精度を上げられます。
最初は完璧を狙わず、月次レビューで同じ指摘が 2 回続く論点から優先的に是正してください。小さな改善を積み上げるほど、監査前の突貫修正が減ります。
- 当日:中止・短縮の理由と時刻、再評価予定を必ず記録する
- 週次:同意と算定根拠の記載漏れを責任者が 10 件抽出で点検する
- 月次:指摘傾向を集計し、テンプレ文言と教育を更新する
月次監査チェックリスト(部門運用用)
このチェックリストは、監査直前対策ではなく「普段から説明できる状態」を保つためのものです。全項目を一度に満点にするより、未達項目を見える化して翌月に改善する運用を推奨します。
実施率だけでなく、未達理由を残すことが重要です。未達理由が記録されていれば、改善計画の妥当性を示しやすくなります。
| 項目 | 確認内容 | 判定 | 未達時対応 |
|---|---|---|---|
| 同意記録 | 説明者・同席者・日付が揃っているか | □ 達成 / □ 未達 | テンプレ修正+翌週再監査 |
| 算定根拠 | 状態変化と介入必要性が書かれているか | □ 達成 / □ 未達 | 記載例共有+個別フィードバック |
| 例外対応 | 中止・短縮の理由、時刻、再計画があるか | □ 達成 / □ 未達 | 当日記録の必須欄を追加 |
| 連携証跡 | 共有先・共有内容・次アクションが追えるか | □ 達成 / □ 未達 | 申し送り様式を統一 |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
監査対策は、まずどこから着手すべきですか?
最優先は「中止・短縮の記録」と「同意の証跡」です。ここは指摘時に説明責任が集中しやすく、抜けがあると他の記録が整っていても弱く見えます。次に算定根拠、最後に連携証跡の順で整えると、短期間で効果が出やすいです。
チェックリストを導入しても定着しません。どうすればよいですか?
項目数を減らして開始してください。最初は 4 項目程度に絞り、週次 10 件抽出レビューを固定化すると定着しやすくなります。定着後に項目を追加するほうが運用負荷を抑えられます。
監査直前だけ強化する運用ではだめですか?
直前強化だけだと、例外対応や連携証跡の整合が取りづらく、記録の一貫性が崩れやすいです。当日・週次・月次の 3 層で小さく回す運用のほうが、監査時の説明力が安定します。
次の一手
- 運用を整える:令和 8 年改定リハハブ(全体像)
- 共有の型を作る:賃上げ支援の実務記事(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Centers for Medicare & Medicaid Services. Review Choice Demonstration for Inpatient Rehabilitation Facility Services. CMS 公式ページ
- 公益社団法人 日本理学療法士協会. 政策・提言関連資料(令和 8 年関連)。公式サイト
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


