医療従事者の賃上げ2026|3.2%はいつ給与に反映?
結論からいうと、2026年6月からのベースアップ評価料では、医療従事者の賃上げを支援する仕組みがすでに始まっています。ただし、「3.2%」は医療従事者一人ひとりの給与が一律3.2%上がることを保証する数字ではありません。勤務先がベースアップ評価料を算定しているか、自分が対象職員か、基本給または毎月固定的に支払われる手当へどう配分するかによって、給与明細での見え方は変わります。
2026年9月時点では制度は施行後の運用・報告段階に入っています。この記事では、PT・OT・STなど医療従事者本人の目線から、3.2%の意味、自分が対象か、給与にはどう反映されるのか、まだ増えていない場合に何を確認すればよいかを厚生労働省の資料に基づいて整理します。
この記事の結論
- 3.2%は「個人の給与を一律3.2%上げる」という意味ではありません。
- 保険医療機関に勤務するPT・OT・STは、ベースアップ評価料の対象職員に含まれます。
- 評価料による賃金改善は、原則として算定開始月から実施します。
- まだ給与に見えていない場合は、算定開始月・賃金改善開始月・遡及予定・給与明細上の名称を確認します。
3.2%とは何の数字?個人の給料が一律3.2%上がるわけではない
令和8年度診療報酬改定では、ベースアップ評価料について、令和8年度に3.2%、令和9年度にさらに3.2%の賃上げを目指す措置が示されています。看護補助者・事務職員については、令和8年度に5.7%、令和9年度にさらに5.7%を目指す設計です。
ここで重要なのは、3.2%が「あなたの基本給を必ず3.2%上げる」という個人別の保証率ではないことです。厚生労働省の疑義解釈でも、3.2%または5.7%のベースアップを達成できない場合でも、ベースアップ評価料の算定は可能とされています。一方、評価料によって得られた収入は、対象職員の賃金改善に使用する必要があります。
つまり、「勤務先がベースアップ評価料を算定している」ことと、「自分の給与が3.2%増える」ことは分けて考える必要があります。
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| 数字・制度 | 意味 | 個人の給与との関係 |
|---|---|---|
| 令和8年度 3.2% | 対象職員のベースアップ実現を支援する目標 | 個人一律3.2%の昇給保証ではない |
| 令和9年度 さらに3.2% | 翌年度も段階的な賃上げを支援 | 施設の算定・賃金改善計画を確認する |
| 看護補助者・事務職員 5.7% | 重点的な賃上げを目指す設計 | 個人一律5.7%を保証する数字ではない |
| 目標率に未達 | 未達でも評価料の算定自体は可能 | 評価料収入は対象職員の賃金改善等へ使用する |
PT・OT・STはベースアップ評価料の対象?
保険医療機関に勤務する理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)は、令和8年度のベースアップ評価料における対象職員に含まれます。令和8年度改定では対象職員の範囲が広がり、保険医療機関に勤務する職員を広く対象とする仕組みになりました。
一方で、「対象職員に含まれる」ことと「全員が同じ金額・同じ率で賃上げされる」ことは同じではありません。実際の賃金改善額や配分方法は、勤務先の賃金規程や賃金改善計画などによって異なります。
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| 職員・働き方 | 2026年度の基本的な整理 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| PT・OT・ST | 対象職員に含まれる | 勤務先での賃金改善額・反映方法 |
| 看護補助者・事務職員 | 対象職員。5.7%を目指す重点的な措置 | 自施設の配分方法 |
| 40歳未満の医師・歯科医師 | 一定の条件のもと対象 | 常勤・非常勤などの条件 |
| 40歳以上の医師・歯科医師 | ベースアップ評価料の対象職員から除外 | 他の処遇改善との混同に注意 |
| 派遣職員 | 一定の条件を満たす場合は対象とすることが可能 | 派遣元との調整・勤務先での扱い |
| 業務委託職員 | 対象外 | 雇用契約か業務委託かを確認 |
非常勤・時短勤務などの場合も、「非常勤だから自動的に対象外」と判断するのではなく、勤務先での対象職員としての扱いや賃金改善方法を確認することが重要です。
給与にはどう反映される?基本給と毎月固定手当が中心
ベースアップ評価料で得られた収入は、原則として対象職員の基本給または決まって毎月支払われる手当の引上げと、それに伴って増える賞与、時間外手当、法定福利費などに使用します。
そのため、給与明細で確認するときは「総支給額が増えたか」だけではなく、基本給が改定されたのか、ベースアップ手当などの固定的な手当が新設・増額されたのかを分けて見ることが大切です。
一時金や賞与だけで配ることを通常の方法として考える制度ではありません。ただし、患者数の変動などで評価料収入にやむを得ず残余が生じ、追加のベースアップが困難な場合などには、例外的に賞与等による賃金改善が認められる場合があります。
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| 反映方法 | 位置づけ | 給与明細で見るところ |
|---|---|---|
| 基本給の引上げ | ベースアップの中心となる方法 | 基本給欄、給与表・賃金規程の変更 |
| 毎月固定的な手当 | ベースアップとして認められる方法 | ベースアップ手当、処遇改善手当などの名称 |
| 賞与・時間外手当等 | 基本給等の引上げに伴う増加分も対象 | 賞与計算基礎、時間外単価への影響 |
| 一時的な支給のみ | 通常のベースアップ方法ではない | 例外的な処理かどうかを確認 |
6月以降も給料が増えていない場合は何を確認する?
2026年6月以降になっても給与明細に変化が見えない場合、すぐに「自分は対象外だった」と判断する必要はありません。まず、勤務先がいつからベースアップ評価料を算定しているのかを確認します。
厚生労働省の疑義解釈では、ベースアップ評価料による賃金改善は原則として算定開始月から実施し、算定している期間は継続する必要があるとされています。一方、条例改正などやむを得ない理由で算定開始月からの賃金改善が難しい場合には、同年度末までに算定開始月などへ遡って賃金改善する取扱いも認められています。

確認するときは、「6月の給料日に増えていなかった」という一点だけではなく、次の4段階で整理すると判断しやすくなります。
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| 順番 | 確認すること | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 1 | ベースアップ評価料を算定しているか | 賃金改善の制度上の入口を確認する |
| 2 | 算定開始月・賃金改善開始月はいつか | いつの賃金から改善対象になるか確認する |
| 3 | 基本給または毎月固定手当のどこに反映するか | 給与明細上の変化を見つける |
| 4 | 未反映の場合、遡及予定・反映月・明細上の名称を確認する | 単なる未反映と対象外を区別する |
ポイント:「診療報酬が病院へ入金されてから職員へ配る」という仕組みではありません。原則は算定開始月から賃金改善を行うため、給与への反映時期が不明な場合は、入金時期ではなく算定開始月・賃金改善開始月・遡及予定を確認してください。
2025年度補正予算の賃上げ支援と2026年6月以降の制度は別
2026年の医療従事者の賃上げを考えるときは、令和7年度補正予算による「医療機関・薬局における賃上げ・物価上昇に対する支援」と、令和8年度診療報酬改定によるベースアップ評価料を混同しないことも重要です。
補正予算の賃上げ支援では、原則として2025年12月から2026年5月までの対象職員のベースアップを実施し、2026年6月1日以降もその水準を維持または拡大することが求められています。一方、2026年6月以降は令和8年度診療報酬改定のベースアップ評価料が新たな制度運用の中心になります。
「2025年度の支援を受けたから、2026年度のベースアップ評価料は関係ない」とは限りません。自分の給与を確認するときは、どの制度を原資とした賃金改善なのかも分けて聞くと整理しやすくなります。
医療分野と介護分野で賃上げの仕組みがどう違うのかを確認したい場合は、医療と介護の賃上げの違いも参考にしてください。
職場で確認する4項目|「いくら?」より先に聞くこと
自分の給与への反映を確認するときは、最初から「結局いくら上がりますか?」と聞くより、算定 → 対象 → 反映方法 → 反映時期の順で確認したほうが状況を整理できます。
人事・総務・管理者へ確認する場合は、次の4項目を押さえておけば十分です。
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| 確認項目 | 分かること |
|---|---|
| 1.ベースアップ評価料はいつから算定していますか? | 賃金改善を確認する起点 |
| 2.自分の職種・雇用形態は賃金改善の対象ですか? | 自分が実際の配分対象に含まれるか |
| 3.基本給と固定手当のどこに反映されますか? | 給与明細で確認する項目 |
| 4.まだ未反映の場合、いつ・どこまで遡及しますか? | 対象月、支給月、遡及予定 |
たとえば、「2026年6月以降のベースアップ評価料について、自分の給与明細への反映を確認したいです。算定開始月、対象職員の扱い、基本給または手当のどこに反映されるか、未反映の場合は遡及予定があるかを教えてください」と聞けば、必要な情報をまとめて確認できます。
確認メモ例:当院は2026年6月からベースアップ評価料を算定。PTは賃金改善の対象。基本給ではなく毎月支給のベースアップ手当で反映予定。6月分から対象で、未反映分は○月給与で遡及予定。給与明細上の名称は「○○手当」。
よくある質問(FAQ)
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Q1.病院で働くPT・OT・STは2026年の賃上げ対象ですか?
保険医療機関に勤務するPT・OT・STは、ベースアップ評価料の対象職員に含まれます。ただし、対象職員であることと、個人の給与が一律3.2%上がることは別です。実際の賃金改善額や基本給・固定手当への配分方法は勤務先で確認してください。
Q2.3.2%と書かれているのに、給料が3.2%増えていないのはおかしいですか?
3.2%は個人一人ひとりへの一律昇給率ではありません。厚生労働省は、3.2%のベースアップを達成できない場合でも評価料の算定は可能としています。ただし、評価料による収入は対象職員の基本給等の引上げなど、定められた賃金改善に使用する必要があります。
Q3.6月から制度が始まったのに、給与明細が変わっていません。
まず勤務先のベースアップ評価料の算定開始月を確認してください。賃金改善は原則として算定開始月から必要ですが、やむを得ない事情がある場合には年度末までに遡及して賃金改善する取扱いがあります。「対象外」と判断する前に、賃金改善開始月、遡及予定、反映する給与月、給与明細上の名称を確認してください。
Q4.ベースアップ手当ではなく、基本給を上げなければいけませんか?
基本給だけに限定されているわけではありません。ベースアップ評価料では、基本給または決まって毎月支払われる手当の引上げが基本です。そのため、毎月固定的に支給されるベースアップ手当などで対応することもできます。
Q5.一時金やボーナスだけで支給されることはありますか?
通常は、基本給または毎月固定的に支払われる手当の引上げが中心です。ただし、患者数の変動などによって評価料収入に残余が生じ、追加のベースアップが困難な場合などには、例外的に賞与等による賃金改善が認められることがあります。
Q6.2025年度補正予算の賃上げ支援とベースアップ評価料は同じ制度ですか?
同じ制度ではありません。令和7年度補正予算の賃上げ支援は、原則として2025年12月から2026年5月までの賃金改善を支援し、6月以降もその水準を維持または拡大する仕組みです。2026年6月以降の診療報酬上の賃上げ措置は、令和8年度診療報酬改定のベースアップ評価料として確認します。
まとめ|3.2%ではなく「自分の給与にどう反映されたか」を確認する
2026年6月以降の医療従事者の賃上げでは、数字だけを見て「自分も3.2%上がる」と考えるのではなく、勤務先の算定状況と給与への実際の反映方法を確認することが重要です。
PT・OT・STは対象職員に含まれますが、個人別の賃上げ率が3.2%に固定されているわけではありません。まず勤務先のベースアップ評価料の算定開始月を確認し、次に基本給または毎月固定手当への反映、まだ見えていない場合は遡及予定と給与明細上の名称を確認してください。
給与制度を確認しても、待遇や今後の働き方への不安が残る場合
賃上げ額だけでなく、基本給、昇給制度、賞与、人員配置、教育環境などを一度まとめて整理すると、現在の職場を続けるかどうかを判断しやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について.2026.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html(参照2026-09-11)
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ・物価対応(賃上げ).2026.https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001701063.pdf(参照2026-09-11)
- 厚生労働省.基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて.2026.https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001686864.pdf(参照2026-09-11)
- 厚生労働省.疑義解釈資料の送付について(その1).2026 Apr 1.https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001695359.pdf(参照2026-09-11)
- 厚生労働省.医療・介護等支援パッケージ(物価・賃金)について.2026.https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001680003.pdf(参照2026-09-11)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信しています。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験があります。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

