SCIM(脊髄障害自立度評価法)とは|脊髄損傷に特化した ADL 評価の使い方
脊髄損傷( SCI )の ADL は、排泄管理や移乗・移動様式など “疾患特有のボトルネック” が多く、汎用尺度だけでは変化が拾いにくい場面があります。SCIM( Spinal Cord Independence Measure )は、脊髄損傷の生活機能に直結する領域を厚く評価できるため、治療効果の判定や目標設定に向きます。
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なお、脊髄損傷の ADL 評価を “全体像( SCIM/ FIM/ BI の使い分け)” で押さえたい場合は、脊髄損傷の ADL 評価(総論)もあわせて読むと、評価→介入→再評価の流れが作りやすくなります。
SCIM とは:脊髄損傷の自立度を 0 〜 100 点で捉える尺度
SCIM は、脊髄損傷の患者に特有の機能的達成(例:呼吸管理、排泄管理、褥瘡予防動作、移乗・移動)を評価するために開発された疾患特異的 ADL 尺度です。開発以降、改訂を重ね、現在は SCIM III が国際的に広く用いられています。Catz A, et al. 1997
臨床でのポイントは「合計点」よりも「どの領域が生活を止めているか」を見抜くことです。例えばセルフケアが伸びても、排尿管理や移乗が詰まると、在宅での自立度は上がりにくくなります。
SCIM III の構成: 3 領域・ 19 項目・ 100 点
SCIM III は 3 領域(セルフケア/呼吸と排泄管理/移動)で構成され、合計 19 項目、総得点 0 〜 100 点です。配点は、セルフケア 20 点、呼吸と排泄管理 40 点、移動 40 点となり、脊髄損傷で重要になりやすい領域(呼吸・排泄・移動)に重みづけがあるのが特徴です。Itzkovich M, et al. 2007
| 領域 | 項目数 | 配点(満点) | 臨床で見たい焦点 |
|---|---|---|---|
| セルフケア | 6 | 20 | 更衣・整容・入浴など “日中の自立度” |
| 呼吸と排泄管理 | 4 | 40 | 呼吸管理、排尿・排便、トイレ動作 |
| 移動 | 9 | 40 | 褥瘡予防、移乗、屋内外移動、車移乗など |
評価のコツ: “点数を付ける前” に条件をそろえる
SCIM は項目ごとに段階(介助量・補助具・環境条件)を踏まえて点数化します。だからこそ、同じ患者でも「評価条件」が揃っていないと、点数差が “能力差” に見えてしまいます。
| 項目 | 決めておくこと | 記録に残す最小セット |
|---|---|---|
| 評価形式 | 観察(実技)か面談か、混在させるか | 観察/面談、評価者 |
| 補助具・装具 | 装具、車いす種別、移乗補助具の使用条件 | 装具名、車いす、補助具 |
| 介助の定義 | 監視・口頭指示・身体介助の線引き | 介助量(監視/一部介助など) |
| 時間帯・疲労 | 午前/午後、訓練直後などの影響 | 評価時間帯、疲労の有無 |
5 分フロー: SCIM を “介入の優先順位” に落とす手順
詰まりやすいのは「点数を付けたのに、次の介入が決まらない」ことです。SCIM を治療計画に接続するなら、次の 5 ステップで十分回ります。
| 手順 | やること | アウトプット |
|---|---|---|
| ① 領域で “低い所” を特定 | セルフケア/呼吸・排泄/移動のどこが落ちているかを見る | 優先順位( 1 位、 2 位) |
| ② 低い理由を 1 行化 | 筋力・持久力/起立耐性/痙縮/痛み/環境のどれが主因か | 「何が変われば上がるか」 |
| ③ 介入を 2 つに絞る | 練習量ではなくボトルネック解除に集中 | 具体介入( 2 つ) |
| ④ 条件つきで記録 | 補助具・介助量・時間帯をセットで残す | 比較できる記録 |
| ⑤ 再評価日を決める | 入退院、装具・車いす変更、 2 〜 4 週など | 再評価の予定 |
現場の詰まりどころ:点数が伸びない原因は “能力” ではなく “運用” のことが多い
SCIM が伸びないときは、まず “評価条件のズレ” と “課題設定のズレ” を疑うのが近道です。よくあるミスを OK/ NG でまとめます。
| NG(よくある) | OK(推奨) | 理由 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 再評価のたびに補助具や介助者が違う | 同条件で比較(変えたら明記) | 条件差が能力差に見える | 評価条件をテンプレ化して固定 |
| 合計点だけ見て介入を決める | 領域→項目で “止めている所” を特定 | 合計は改善点が埋もれる | 優先課題を 1 行で残す |
| 面談と観察が混在して基準が揺れる | 原則を決めて運用(混在ならルール化) | 評価者差が増える | カンファで採点の線引きを共有 |
| 歩行の変化を SCIM だけで追う | 歩行は歩行能力尺度を併用する | 歩行条件(補助具・介助)を別軸で捉えたい | 必要に応じて WISCI II などを併用 |
よくある質問(FAQ)
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SCIM はいつ測るのがよいですか?
最低ラインは「入院時」「条件変更(装具・車いす・導尿方法など)」「退院前」です。介入が集中する時期は 2 〜 4 週ごとの再評価が現実的です。大切なのは “同条件で比較できる形” を先に整えることです。
SCIM は FIM より良い評価ですか?
優劣ではなく役割が違います。脊髄損傷に特有の領域(呼吸・排泄・移動)を厚く拾い、変化を捉えたいなら SCIM が有利です。一方、施設横断の共通言語として全体 ADL を共有するなら FIM などの汎用尺度が便利です。Itzkovich M, et al. 2007
外来や訪問リハでも SCIM は使えますか?
項目によっては病棟外で条件を揃えにくく、評価が難しい場合があります。外来・在宅では、評価条件(補助具、介助量、環境)を明記し、重要項目は観察で裏取りする運用が安全です。自己記入版( SCIM-SR )の報告もあります。Fekete C, et al. 2013
参考文献
- Catz A, Itzkovich M, Steinberg F, Philo O, Ring H. The Spinal Cord Independence Measure ( SCIM ): sensitivity to the functional changes in spinal cord lesion patients. Spinal Cord. 1997. Journal( Nature )
- Itzkovich M, Gelernter I, Biering-Sorensen F, et al. The Spinal Cord Independence Measure ( SCIM ) version III: reliability and validity in a multi-center international study. Disabil Rehabil. 2007;29(24):1926-1933. PubMed / DOI:10.1080/09638280601046302
- Fekete C, Eriks-Hoogland I, Baumberger M, et al. Development and validation of a self-report version of the Spinal Cord Independence Measure ( SCIM III ). Spinal Cord. 2013;51(1):40-47. PubMed / DOI:10.1038/sc.2012.87
- 黒川真希子, 問川博之, 鈴木幹次郎, 内川研, 田中尚文, 里宇明元. 脊髄障害自立度評価法( SCIM )の信頼性と妥当性に関する検討. Jpn J Rehabil Med. 2007;44:230-236. J-STAGE PDF
- 加藤千尋, 植村修. 脊髄損傷患者の ADL 評価. Jpn J Rehabil Med. 2021;58:1013-1020. J-STAGE PDF
- Praxis Spinal Cord Institute. Toolkit for Spinal Cord Independence Measure III ( SCIM ). PDF
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに
SCIM は「条件の統一 → 重点領域の特定 → 段階的な介入 → 条件つきで記録 → 再評価」という “リズム” を作ると、点数がそのまま次のアクションに変わります。面談準備や職場選びの基準づくりに使えるチェックシートもまとめているので、必要なときに こちら(面談準備チェック&職場評価シート) も活用してみてください。

