SCIM とは?脊髄損傷の ADL を捉える「脊髄障害自立度評価法」
SCIM(Spinal Cord Independence Measure)は、脊髄損傷に特有の生活課題を評価する疾患特異的 ADL 尺度です。合計点(0〜100点)だけでなく、セルフケア・呼吸/排泄管理・移動のどこがボトルネックかを特定できるため、介入の優先順位づけに直結します。
本記事は、SCIM III の基本構造と、点数を「次の一手」に変える運用手順を、臨床で再現しやすい形で整理します。
SCIM とは
SCIM は、脊髄損傷者の自立度を「生活に必要な実行能力」として捉えるための尺度です。一般的 ADL 尺度で拾いにくい呼吸管理・排泄管理・移乗/移動の実行面を重視している点が特徴です。
臨床では、合計点のみで判断せず、領域別の停滞ポイントを特定して目標設定・介入順序・再評価計画に反映させる運用が有効です。
SCIM III の構成(3 領域・19 項目・100 点)
| 領域 | 項目数 | 配点 | 臨床での焦点 |
|---|---|---|---|
| セルフケア | 6 | 20 点 | 更衣・整容・摂食など日中の自立度 |
| 呼吸と排泄管理 | 4 | 40 点 | 呼吸管理、排尿/排便、トイレ動作 |
| 移動 | 9 | 40 点 | 褥瘡予防動作、移乗、屋内外移動 |
SCIM と FIM / BI の使い分け
| 尺度 | 強み | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| SCIM | SCI 特異的課題を詳細に捉える | SCI の介入優先順位決定、経時変化の追跡 | 採点条件を揃えないと再現性が落ちる |
| FIM | 多職種で共有しやすい汎用性 | 病棟全体のADL把握、他疾患比較 | SCI 特有課題の感度は相対的に低い |
| Barthel Index | 短時間でスクリーニングしやすい | 導入時の概況把握、簡易評価 | 詳細な介入設計には情報が不足しやすい |
5 分フロー:点数を介入の優先順位に落とす
- 評価前提を固定(時間帯、環境、介助条件、装具)
- SCIM を領域別に採点(合計点だけ見ない)
- 最低得点領域の「阻害因子」を1つ特定
- 1週間で変化が出る目標に分解(行動単位)
- 再評価日を先に決め、同条件で追跡
評価の全体像は 評価ハブ から俯瞰すると、記事間の往復がしやすくなります。
現場の詰まりどころ
SCIM が伸びないとき、能力低下だけが原因とは限りません。条件不一致や記録粒度のズレで、実際の改善が点数に反映されないケースが少なくありません。
よくある失敗
| 失敗 | 起こる理由 | 影響 |
|---|---|---|
| 評価条件が毎回違う | 時間帯・介助者・環境を固定していない | 得点差が「変化」か「条件差」か判別不能 |
| 合計点だけで判断する | 領域別の読み分けを省略 | 介入優先順位がずれやすい |
| 再評価日を決めない | 介入計画と評価計画が分離 | 改善検証が遅れ、方針修正が後手になる |
回避の手順(チェック)
- 評価シートに「実施条件」を明記する(時間帯・装具・介助量)
- 領域別に最下位項目を 1 つだけ抽出する
- 目標を「行為単位」で 1 週間目標に変換する
- 同条件で再評価する日付を先に予約する
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
SCIM は FIM の代わりになりますか?
代替ではなく使い分けが基本です。SCI 特有の生活課題を深く追いたいときは SCIM、病棟全体で共通言語として扱うなら FIM を併用する運用が実務的です。
再評価はどの頻度が目安ですか?
病期や目標により変わりますが、介入の変更単位に合わせて 1〜2 週間ごとに同条件で行うと、方針修正がしやすくなります。
合計点が同じでも内容が違うのは問題ですか?
問題ではありません。むしろ領域配点の違いが臨床判断に有用です。どの領域で詰まっているかを優先して読みます。
次の一手
- 運用を整える:評価ハブで全体像を整理する(全体像)
- 共有の型を作る:ADL 評価スケール比較を院内共有に使う(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Catz A, Itzkovich M, Agranov E, Ring H, Tamir A. SCIM—spinal cord independence measure: a new disability scale for patients with spinal cord lesions. Spinal Cord. 1997;35(12):850-856. DOI: 10.1038/sj.sc.3100504
- Itzkovich M, Gelernter I, Biering-Sorensen F, et al. The Spinal Cord Independence Measure (SCIM) version III: reliability and validity in a multi-center international study. Disabil Rehabil. 2007;29(24):1926-1933. DOI: 10.1080/09638280601046302
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


