FES-I・ABC・MFESの違い|項目数・採点・得点方向を比較

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FES-I・ABC・MFESの違いは「何を測るか」にあります

FES-I・ABC・MFESは、いずれも転倒に関連する本人の認識を評価する尺度ですが、同じものを測っているわけではありません。FES-Iは転倒への懸念(concern about falling)、ABCは活動場面ごとのバランス自信度(balance confidence)、MFESは転倒せず活動できるという自己効力感(falls self-efficacy / confidence)を中心に評価します。

そのため、「転倒関連の尺度だからどれでもよい」と交換可能なものとして扱うのではなく、何を知りたいのか→質問の向き→採点方法→得点方向まで確認して選ぶことが重要です。この記事では、FES-I・ABC・MFESの違いを、項目数・回答形式・得点・欠測時の扱いまで比較します。

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FES-I・ABC・MFESの構成概念・項目数・採点・得点方向を比較した図
図:FES-I・ABC・MFESの違い。FES-Iは転倒への懸念、ABCはバランス自信度、MFESは転倒自己効力感を中心に評価します。

まず比較:FES-I・ABC・MFESは何が違う?

3尺度を比較すると、最も重要な違いは質問している構成概念と得点方向です。FES-Iだけは得点が高いほど転倒への懸念が強くなり、ABCとMFESは高いほど自信が高くなります。

FES-I・ABC・MFESの基本的な違い
項目 FES-I ABC MFES
主にみるもの 転倒への懸念・心配 活動別のバランス自信度 転倒自己効力感
構成概念 concern about falling balance confidence falls self-efficacy / confidence
項目数 16項目 16項目 14項目
回答形式 各1〜4点 各0〜100% 各0〜10点
スコア 16〜64点 各項目の平均として0〜100% 合計0〜140または平均0〜10として報告される
高得点の意味 懸念が強い 自信が高い 自己効力感・自信が高い
代表的な使い方 転倒を心配している生活場面を把握する バランスを必要とする活動への自信を把握する 転倒せず日常活動を遂行できる自信を把握する

特に注意したいのは得点方向です。FES-Iでは点数が上がるほど転倒への懸念が強くなる一方、ABCとMFESでは点数が上がるほど自信が高くなります。経時変化を記録するときは、単に「点数が上がった/下がった」ではなく、その尺度でどちらが改善方向なのかまで確認します。

FES-Iは「懸念」、ABCとMFESは「自信」を評価する

FES-I・ABC・MFESを正しく使い分けるには、尺度名よりも本人に何を尋ねている尺度なのかを理解することが重要です。

FES-I:転倒への懸念を評価する

FES-I(Falls Efficacy Scale-International)は、名称に「Efficacy」が含まれていますが、現在の位置づけではconcern about falling、つまり転倒に対する懸念を評価する尺度です。

日常生活から屋外・社会活動までを含む16項目について、転倒することをどの程度気にしているかを1〜4点で回答します。総得点は16〜64点で、高得点ほど転倒への懸念が強いことを示します。

「怖いから外出を控えている」「転びそうで階段を避けている」など、身体機能だけでは説明しきれない活動制限を把握するときに役立ちます。

ABC:活動ごとのバランス自信度を評価する

ABC(Activities-specific Balance Confidence Scale)は、さまざまな活動を行うときに、バランスを失わず安定して実行できる自信がどの程度あるかを評価する尺度です。

16項目について0〜100%で回答し、高いほどバランスに対する自信が高いと解釈します。屋外歩行、段差、複雑な環境など、比較的難度の高い活動も含まれるため、単純な屋内移動だけでは見えにくい自信の低下を捉えやすい特徴があります。

ABC単体の実施方法や採点を詳しく確認したい場合は、ABCスケールの評価方法で整理しています。

MFES:転倒せず活動できる自己効力感を評価する

MFES(Modified Falls Efficacy Scale)は、原版FESを拡張して作成された14項目の尺度です。屋内活動だけでなく、屋外・地域生活に関連する活動も含め、転倒せずにその活動を遂行できる自信を0〜10点で評価します。

0は自信が低い方向、10は自信が高い方向で、FES-Iとは得点方向が逆です。MFESは「面接を標準化するための尺度」というよりも、転倒関連自己効力感を評価する尺度として理解する方が本来の構成概念に沿っています。

FES-IとMFESは名前が似ていても別の尺度です

FES-IとMFESは、どちらも名称に「Falls Efficacy Scale」が含まれるため混同しやすい尺度です。しかし、臨床で尋ねている内容は同じではありません。

FES-IとMFESの違い
比較項目 FES-I MFES
中心となる問い 転倒することをどの程度懸念しているか 転倒せずに活動できる自信がどの程度あるか
回答方向 懸念が強いほど点数が高い 自信が高いほど点数が高い
項目数 16項目 14項目
各項目の点数 1〜4点 0〜10点

したがって、FES-Iが高値でMFESが低値なら、どちらも「転倒関連の心理面に課題がある」という方向では整合する可能性があります。一方で、両者は構成概念も回答形式も異なるため、FES-Iの何点とMFESの何点が同じ程度という換算はできません。

ABCとMFESはどちらも「自信」を扱うが同じではない

ABCとMFESは、どちらも高得点ほど自信が高い尺度です。ただし、ABCではバランスを保ちながら活動できる自信が中心で、MFESでは転倒せずに活動を遂行できる自己効力感が中心になります。

ABCとMFESの違い
比較項目 ABC MFES
中心概念 balance confidence falls self-efficacy / confidence
中心となる視点 バランスを失わず活動できる自信 転倒せず活動できる自信
回答形式 0〜100% 0〜10点
特徴 活動場面ごとの自信の差を把握しやすい 屋内・屋外の日常活動に対する転倒自己効力感を把握する

両尺度は関連する概念を扱いますが、同一ではありません。実際に転倒関連心理尺度の系統的レビューでも、falls self-efficacy、balance confidence、concern about fallingなどの概念を一括して解釈しないことの重要性が指摘されています。

採点方法と得点方向を確認する

3尺度を扱うときは、尺度名だけでなく何点満点なのか、高得点が何を意味するのかを記録時に確認します。

FES-I:16〜64点、高いほど懸念が強い

FES-Iは16項目を各1〜4点で採点し、すべて回答されていれば単純に合計します。

  • 最低点:16点
  • 最高点:64点
  • 低得点:転倒への懸念が少ない方向
  • 高得点:転倒への懸念が強い方向

FES-IはABCやMFESと逆方向なので、経過表やグラフへ並べる場合は「↑=悪化方向」などの注記を残しておくと誤読を防げます。

ABC:0〜100%、高いほど自信が高い

ABCは16項目について、自信の程度を0〜100%で回答します。一般には各項目の値から平均値を求め、0〜100%で表します。

  • 0%:自信がない方向
  • 100%:十分な自信がある方向
  • 高得点ほどバランス自信度が高い

合計値そのものではなく平均値として扱うため、FES-Iの総得点やMFESの合計値と数字を直接比較しないようにします。

MFES:各0〜10点、算出方法を記録する

MFESは14項目をそれぞれ0〜10点で評価します。高いほど、転倒せずにその活動を遂行できる自信が高い方向です。

MFESについては、文献上、14項目の合計0〜140点として示す方法と、回答項目の平均を0〜10で示す方法がみられます。そのため実務では「MFES 〇点」とだけ記録するのではなく、採用した版・算出方法を明記し、再評価でも同じ方法を用いることが重要です。

欠測項目は3尺度で一括処理しない

欠測が生じたときに「空欄は0点にする」「平均で補う」といった院内独自ルールを3尺度すべてへ適用すると、原法と異なるスコアになる可能性があります。欠測処理は尺度ごとの規定を確認することが基本です。

FES-Iには公式の欠測処理があります

FES-I公式サイトでは、16項目のうち欠測が4項目以下であれば換算スコアを算出可能とされています。

  1. 回答済み項目の合計点を求める
  2. 回答済み項目数で割って平均値を求める
  3. 平均値に16を掛ける
  4. 算出値を次の整数へ切り上げる

欠測が5項目以上の場合は、FES-Iスコアとして使用できません。「欠測はすべて0点」「欠測があっても単純合計」とはしない点に注意します。

ABC・MFESも使用する版の手順を確認する

ABCやMFESについても、空欄が生じた際に自己判断で一律補完するのではなく、使用している正式版・研究・施設手順で定められた算出方法を確認します。

特にMFESでは、活動を行っていない理由によって回答の扱いが変わる運用資料もあります。経時比較を行う場合は、採点方法だけでなく「なぜ回答できなかったのか」も記録しておくと解釈しやすくなります。

総得点だけでなく「どの活動で変化したか」を見る

FES-I・ABC・MFESはいずれも、総得点だけで判断を終えないことが重要です。臨床では、どの生活場面で懸念が強いのか、どの活動で自信が低いのかまで確認すると、その後の評価や介入へつなげやすくなります。

総得点と項目レベルの見方
結果 次に確認したいこと
FES-Iが高い どの活動で転倒への懸念が強いか、実際に活動回避が生じているか
ABCが低い 段差、方向転換、屋外、人混みなど、どの環境でバランス自信度が低下するか
MFESが低い 屋内・屋外のどの活動で転倒せず遂行できる自信が低いか

たとえば歩行速度やTUGが改善していても、屋外活動への懸念や自信が変わっていなければ、身体機能の改善だけでは生活範囲の拡大につながっていない可能性があります。逆に本人の自信が高くても、客観的なバランス能力が十分でない場合は、過信や環境条件を含めて評価する必要があります。

臨床ではFES-I・ABC・MFESのどれを選ぶ?

この記事では3尺度の「違い」を中心に整理していますが、実際の選択は今回の評価で何を明らかにしたいのかから決めます。

評価目的からみたFES-I・ABC・MFESの選択
知りたいこと 候補 理由
転倒をどの程度気にしているか FES-I concern about fallingを直接評価する
バランスを必要とする活動への自信 ABC 活動別のbalance confidenceを評価する
転倒せず活動できる自己効力感 MFES falls self-efficacy / confidenceを評価する

実際には対象者の疾患、歩行能力、生活範囲、評価目的、利用可能な日本語版なども考慮する必要があります。「どれを最初に選ぶか」「客観的バランス評価とどう組み合わせるか」は、転倒関連PROMの親記事で詳しく整理しています。

TUGやBBSなどの客観評価とは役割が違う

FES-I・ABC・MFESはいずれも本人の認識を評価するPROMであり、TUG、BBS、Mini-BESTest、FGA、歩行速度などの客観的な身体機能評価とは役割が異なります。

主観尺度だけで「転倒リスクが高い」「バランス能力が低い」と断定するのではなく、必要に応じて身体機能評価と組み合わせます。

主観尺度と客観評価を並べて考える例
主観 客観評価 考え方の例
懸念が強い・自信が低い 身体機能も低い 身体機能と心理面の両方が活動制限に関与している可能性
懸念が強い・自信が低い 身体機能は比較的保たれる 転倒経験、失敗体験、環境、活動回避などを追加確認する
懸念が少ない・自信が高い 身体機能が低い 自己認識と実際の能力のズレ、安全認識、環境条件を確認する

この「主観と客観のズレ」自体が、追加評価の手掛かりになります。

日本語版を使うときの注意

尺度を日本の臨床で使用するときは、原著を独自翻訳するのではなく、翻訳・文化適応・妥当性検証が行われた版があるかを確認します。

FES-Iについては、University of Manchesterの公式FES-Iサイトで日本語版FES-IおよびShort FES-Iが「Validated」として掲載されています。

ABCについては、日本語版ABC(ABC-J)が作成され、地域在住の発症6か月以上の脳卒中者を対象とした研究で信頼性・妥当性が検討されています。同研究ではABC-J総得点のMDCも報告されていますが、特定集団で得られたMDCやカットオフを、疾患や対象が異なる集団へそのまま適用しないことが重要です。

MFESについても、使用する日本語版の出典、翻訳方法、採点方法、対象集団を確認したうえで運用します。尺度名が同じでも、項目数や採点法が異なる「Modified Falls Efficacy Scale」が報告されているため、MFESという名称だけで同一尺度と判断しないことも重要です。

FES-I・ABC・MFESで間違えやすいポイント

3尺度を運用するときは、次の誤りに注意します。

  • FES-Iを自己効力感尺度としてそのまま解釈する:現在のFES-Iはconcern about fallingを評価する尺度として位置づけられています。
  • FES-IとMFESを同じ尺度の別バージョンとして換算する:項目数・質問内容・採点・得点方向が異なり、単純換算はできません。
  • ABCとMFESを完全に同じ「自信」として扱う:ABCはbalance confidence、MFESはfalls self-efficacy / confidenceを中心に扱います。
  • 3尺度の点数を横並びで比較する:尺度ごとに得点範囲と方向が異なるため、数値そのものの大小は比較できません。
  • 欠測項目を院内独自ルールで0点にする:欠測処理は各尺度の正式な手順を確認します。
  • 一律に「2〜4週後」などと再評価時期を固定する:介入期間、状態変化、対象集団で報告された測定誤差・MDC・MCIDなどを踏まえて再評価時期を決めます。

記録では尺度名・算出法・得点方向まで残す

経時変化を追う場合は、点数だけではなく、少なくとも尺度名・スコア・算出方法・低値または高値となった活動・評価条件を残します。

記録時に最低限残したい情報
尺度 記録のポイント
FES-I 総得点、欠測の有無、換算した場合はその旨、懸念が強い活動
ABC 平均スコア、特に自信が低い活動、使用した日本語版・評価条件
MFES 合計か平均か、回答できなかった項目、自己効力感が低い活動

特にMFESでは、合計値と平均値のどちらを採用したかが分からないと、次回評価者が同じ方法で比較できません。「MFES 7.2/10」など、算出方法が分かる形で残すと再評価しやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. FES-IとMFESは同じFalls Efficacy Scaleではないのですか?

同じものとして扱わない方がよいです。FES-Iは16項目で転倒への懸念を評価し、高得点ほど懸念が強くなります。MFESは14項目で転倒せず活動できる自己効力感・自信を評価し、高得点ほど自信が高くなります。項目数、構成概念、採点、得点方向が異なります。

Q2. FES-IとABCは両方16項目ですが、結果を比較できますか?

数値そのものを比較することはできません。FES-Iは1〜4点の合計16〜64点で転倒への懸念を評価し、ABCは0〜100%でバランス自信度を評価します。ただし、同じ対象者に両者を用いることで「身体活動への自信」と「転倒への懸念」という異なる側面を確認することはできます。

Q3. FES-Iに未回答項目があった場合はどうしますか?

FES-I公式手順では、欠測が4項目以下であれば、回答済み項目の平均点を求めて16を掛け、次の整数へ切り上げて換算スコアを算出できます。5項目以上欠測している場合は、そのFES-Iスコアは使用できません。

Q4. MFESは140点満点ですか、それとも10点満点ですか?

14項目を各0〜10点で評価する点は共通ですが、文献では合計0〜140点として示す方法と、項目平均0〜10として示す方法がみられます。使用している版・算出方法を確認し、記録には合計か平均かが分かるよう明記します。

Q5. TUGやBBSがあればFES-IやABCは不要ですか?

役割が異なります。TUGやBBSなどは主に身体機能・動作能力を評価しますが、FES-IやABC、MFESは本人が転倒をどう捉え、活動にどの程度自信をもっているかを評価します。客観評価と主観評価の結果が一致しない場合、そのズレが追加評価の手掛かりになります。

まとめ

FES-I・ABC・MFESは、いずれも転倒に関連する主観尺度ですが、測定している構成概念は同じではありません。

  • FES-I:転倒への懸念(concern about falling)を評価する。16項目、16〜64点、高いほど懸念が強い。
  • ABC:活動別のバランス自信度(balance confidence)を評価する。16項目、0〜100%、高いほど自信が高い。
  • MFES:転倒自己効力感(falls self-efficacy / confidence)を評価する。14項目、各0〜10点、高いほど自信が高い。

尺度名だけで選ばず、不安・懸念を知りたいのか、バランスへの自信を知りたいのか、転倒せず活動できる自己効力感を知りたいのかを先に決めることが、適切な尺度選択につながります。


参考文献

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  8. University of Manchester. FES-I: Falls Efficacy Scale-International. Available from: https://sites.manchester.ac.uk/fes-i/. Accessed 2026 Sep 11.

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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