運動中の低血糖対応|15/15 ルールと重症時の判断(糖尿病リハ)

臨床手技・プロトコル
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運動療法中の低血糖( Hypoglycemia )対応|PT が迷わない 15/15 ルールと中止基準

臨床の安全管理を “体系” で固めたい方へ。 PT の臨床力ロードマップを見る

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結論:運動中の低血糖は「①運動中止 → ②意識と嚥下の確認 → ③血糖確認(可能なら)→ ④ 15/15 ルール(意識が保たれている場合)→ ⑤重症は他者介助・救急対応」という順で迷いを減らせます。特に PT は、“安全に止める・安全に戻す”(再開条件、記録、再発予防)まで設計できると現場が安定します。

なお、低血糖対応は施設や主治医指示で異なることがあります。現場では院内プロトコルとチーム(医師・看護師・薬剤師・管理栄養士)の方針を優先してください。

低血糖とは?(定義と “3 レベル” )

低血糖は一般に血糖 70 mg/dL 未満を目安に扱われ、重症度は「数値」と「介助の要否」で整理すると安全です。臨床では次の 3 レベルがよく用いられます。

低血糖のレベル分類(成人の目安)|数値と介助の要否で整理
レベル 血糖(目安) 臨床像 まずやること
Level 1 < 70 mg/dL かつ ≥ 54 mg/dL 自覚症状が出やすい(動悸、冷汗、手指振戦など) 運動中止 → 15/15 ルール(嚥下可能なら)
Level 2 < 54 mg/dL 中枢症状が出やすい(集中低下、ふらつき、言動の変化) 介助強化・監視強化 → 15/15 ルール(嚥下可能なら)
Level 3 数値より “介助が必要” 意識障害、けいれん、協力不能など 経口は避ける → 応援要請・救急対応(施設プロトコル)

現場の詰まりどころ|PT が “迷う瞬間” を先に潰す

低血糖対応で詰まりやすいのは、次の 3 つです。

  • 「気分不良=低血糖?」:疲労・起立性低血圧・過換気でも似た症状が出ます。まずは運動を止め、安全姿勢へ。
  • 「すぐ糖を入れていい?」:嚥下が怪しい/意識が落ちているなら経口は危険。重症は “他者介助・救急” へ。
  • 「どのタイミングで再開?」:一度回復しても “再低下” があります。再開条件と監視計画がないと事故が繰り返されます。

まずはここだけ|その場対応の “基本 5 ステップ”

  1. 運動を中止し、転倒しない姿勢(座位・臥位)へ。
  2. 意識レベルと嚥下を確認(会話が成立するか、むせないか)。
  3. 血糖測定(可能なら)。測れない場合でも症状が強ければ低血糖として扱う。
  4. 嚥下可能なら速効性糖質を摂取(次章の 15/15)。
  5. 回復後も 15〜30 分は再評価(症状・歩容・バイタル・再低下)。

15/15 ルール|“ 15 g 摂って 15 分待つ” の型

意識が保たれ、嚥下が安全なら「速効性糖質 15 g → 15 分待つ → 再チェック」を基本にします。これは ADA の患者向け情報でも広く示されている標準的な考え方です。

15/15 ルールの実務フロー|PT が口頭で統一できる短い手順
手順 やること ポイント
運動中止・安全姿勢 立位のまま続けない(転倒リスク)
血糖を確認(可能なら) 症状が強ければ “測定待ち” で遅らせない
速効性糖質 15 g チョコ・菓子パンは吸収が遅いことが多い
15 分待つ 観察(会話、ふらつき、冷汗、手指振戦)
再チェック(血糖 or 症状) まだ低い/症状残存なら “もう 15 g” を検討
回復後のフォロー 次の食事が遠い場合は “持続糖質” を検討(施設方針に従う)
速効性糖質 15 g の例|現場で使いやすい “目安”
カテゴリ 使いどころ 注意
ブドウ糖製剤 ブドウ糖タブレット/ジェル 量が正確で速い 常備できる環境づくりが重要
ジュース 果汁ジュース等(適量で 15 g 相当) 嚥下が安定しているとき “飲める” ことを必ず確認
砂糖 砂糖 1 大さじ程度(目安) 手元にある環境なら代替 誤嚥リスクがある場合は避ける

重症(意識障害・けいれん・協力不能)|“経口 NG” の判断

意識が落ちている/けいれん/指示が通らない場合は、誤嚥・窒息の危険があるため経口摂取は避けます。この状況では、施設の緊急手順に従い、応援要請・救急要請を優先します。

重症低血糖のときの OK / NG|誤嚥事故を防ぐための最重要ポイント
区分 行動 理由 代替
OK 運動中止・安全姿勢、呼吸/意識の確認、応援要請 転倒・誤嚥を同時に防ぐ 院内プロトコル(看護師・医師)へ即時共有
OK (施設手順に従い)グルカゴン等の救急対応を依頼 経口が難しい状況での選択肢 医療者が静注ブドウ糖などを判断
NG 意識障害のある人に飲食させる 誤嚥・窒息リスク “経口以外” をチームで実施
NG 回復確認なしで歩行再開 再低下・ふらつきで転倒 症状と血糖の再評価後に段階再開

入院領域では、血糖 70 mg/dL 未満に対して “すぐ動ける” 低血糖プロトコルを院内標準として整備することが推奨されています(病棟全体の安全管理)。

運動前後の予防|“開始前チェック” と “再低下” の見張り方

運動に伴う低血糖を減らすコツは、「開始前の血糖レンジ」「薬剤・食事・運動のタイミング」をセットで見ることです。目安として、運動前血糖は 90〜250 mg/dLが理想域とする提案があり、開始前が低めなら補食を検討します。

  • 開始前:血糖を確認できる環境なら確認。低めなら補食や強度調整を検討。
  • 運動中:症状(冷汗、震え、言動変化、ふらつき)を観察。長時間・有酸素は低下しやすい傾向。
  • 運動後:回復しても “遅れて下がる” ことがあります。終了後の再評価と注意喚起が重要。

自己管理の領域では、開始前血糖が 100 mg/dL 以下のときに 15〜20 gの糖質を摂ってから運動を開始する、という ADA の一般向け推奨もあります(対象や薬剤で調整が必要です)。

PT 実務チェックリスト|セッション前・中・後の “見落としゼロ”

低血糖を減らす PT チェックリスト|外来・病棟・訪問で共通化
タイミング 確認項目 記録ポイント 次回への打ち手
開始前 食事からの時間、インスリン/血糖降下薬の直近投与、体調、血糖(可能なら) 開始前の状態(症状/血糖/バイタル) 時間帯変更、強度調整、補食の相談(多職種)
運動中 冷汗、手指振戦、顔面蒼白、会話のちぐはぐ、ふらつき “いつ・何の運動で” 出たか 中止基準を明文化、モニタリング頻度を上げる
対応 意識/嚥下 → 15/15 or 重症対応 摂取内容、待機時間、再評価結果 院内プロトコルの共有、教育(本人/家族)
終了後 再低下、歩容、疲労、ふらつき 終了後の状態(症状/血糖/バイタル) 次回の開始前チェックを強化

よくある質問(FAQ)

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Q1. 「なんとなく変」でも低血糖として動いていいですか?

はい。特に運動中は転倒・外傷が先に起きます。血糖が測れない場面でも、冷汗・手指振戦・顔面蒼白・言動の変化があれば、まず運動を止めて安全姿勢へ移し、嚥下と意識を確認したうえで対応します。

Q2. 15/15 で改善したら、そのまま運動を再開していい?

原則は “段階再開” です。回復直後は再低下やふらつきが残ることがあります。症状が消えたこと、可能なら血糖が回復したことを確認し、強度を落として再開します。再発した場合は、そのセッションは中止し、次回の開始前条件を見直します。

Q3. 意識が悪いときに砂糖水を飲ませるのはダメ?

避けてください。意識障害がある場合は誤嚥・窒息の危険があります。院内なら看護師・医師へ即時連絡し、施設の緊急手順に従います。

Q4. 運動前の血糖はどれくらいが安全域?

一つの目安として、運動前血糖は 90〜250 mg/dL が理想域とする提案があります。開始前が低めなら補食や強度調整を検討し、血糖降下薬(特に低血糖リスクがある薬)を使っている人は、より慎重に開始前チェックとモニタリングを行います。

参考文献

  1. American Diabetes Association. Low Blood Glucose (Hypoglycemia). https://diabetes.org/living-with-diabetes/hypoglycemia-low-blood-glucose
  2. American Diabetes Association. Understanding Blood Glucose and Exercise. https://diabetes.org/health-wellness/fitness/blood-glucose-and-exercise
  3. Colberg SR, Sigal RJ, Yardley JE, et al. Physical Activity/Exercise and Diabetes: A Position Statement of the American Diabetes Association. Diabetes Care. 2016;39(11):2065-2079. doi: 10.2337/dc16-1728 / PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27926890/
  4. International Hypoglycaemia Study Group. Glucose concentrations of less than 3.0 mmol/l (54 mg/dl) should be reported in clinical trials: a joint position statement. Diabetologia. 2017;60:3-6. doi: 10.1007/s00125-016-4146-6 / PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27872931/
  5. American Diabetes Association. Diabetes Care in the Hospital: Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1). https://diabetesjournals.org/care/article/49/Supplement_1/S339/163925/16-Diabetes-Care-in-the-Hospital-Standards-of-Care
  6. Joint British Diabetes Societies (JBDS). Algorithm for the Management of Hypoglycaemia in Adults. 2022. PDF
  7. Mayo Clinic. Diabetes and exercise: When to monitor your blood sugar. https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/diabetes/in-depth/diabetes-and-exercise/art-20045697

おわりに

低血糖対応は、中止基準確認 → 安全姿勢 → 15/15(または重症対応)→ 回復確認 → 段階再開 → 記録と再発予防という “安全のリズム” をチームで統一すると、現場の迷いが一気に減ります。

実務では「患者さんの説明」「観察ポイントの抜け漏れ」「次回の条件調整」が成果を分けるので、面談準備チェックと職場評価シートで棚卸しもしておくとスムーズです:/mynavi-medical/#download

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