呼気陽圧療法(PEP)とは?排痰でのやり方・適応・注意点

臨床手技・プロトコル
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呼気陽圧療法(PEP)とは|呼気抵抗を使って排痰を支援する

呼気陽圧療法(positive expiratory pressure:PEP)は、息を吐くときに抵抗をかけて気道内に陽圧を生じさせ、気道の開存を保ちながら分泌物の移動・排出を支援する気道クリアランス手技です。排痰目的で使う場合は、単に「強く吹く」のではなく、無理のない呼気を繰り返し、最後にハフィングや咳へつなげます。

臨床では、通常のPEPと振動を加えるOPEPを区別し、患者の排痰能力、呼吸状態、使用する器具に合わせて方法を選ぶことが重要です。この記事では、PEPとOPEPの違い、適応、開始前の注意点、基本的なやり方、中止・変更判断までをPT・OT・ST向けに整理します。

先に結論:PEPは「何回吹いたか」よりも、適切な呼気抵抗で無理なく呼気を続け、分泌物を移動させてハフィング・咳へつなげられるかを確認します。回数・呼気時間・抵抗設定は器具ごとに異なるため、使用機器の添付文書や処方を優先してください。

PEPとOPEPの違い|アカペラは振動を加えるOPEP

PEPとOPEPの違いは、呼気陽圧に振動を加えるかどうかです。PEPは呼気抵抗によって陽圧を生じさせる方法で、OPEP(oscillating positive expiratory pressure)はそこへ振動を加え、分泌物の移動を補助します。

PEPとOPEPの違い
項目 PEP OPEP
基本原理 呼気抵抗によって呼気時に陽圧を生じさせる 呼気陽圧に振動を加える
排痰支援 気道の開存を保ちながら呼気を行い、分泌物の移動を支援する 陽圧に加えて振動を利用し、分泌物の移動を支援する
器具の例 PEPマスク、PEPデバイスなど アカペラ、Flutterなどの振動型PEP機器

アカペラは、PMDAの添付文書でも「振動型呼気陽圧(PEP)療法」を提供する機器として説明されています。つまり、PEPという大きな枠組みの中に、振動を組み合わせたOPEPがあると整理すると分かりやすくなります。

PEPの適応は「病名」より先に気道クリアランスの必要性を見る

PEPを行うかどうかは、肺炎・COPDなどの病名だけでは決めません。まず、分泌物を自力で十分に移動・喀出できているかを確認し、気道クリアランスを補助する必要があるかを判断します。

2025年のEuropean Respiratory Society(ERS)気管支拡張症ガイドラインでは、気管支拡張症患者へ気道クリアランス手技を指導することを推奨しています。一方で、特定の手技が他より優れているという根拠はなく、患者ごとに個別化することが重要とされています。

PEPを検討するときの考え方
場面 考え方
分泌物貯留があり喀出しにくい 気道クリアランス手技の1つとしてPEPを検討する
自己排痰手技を獲得したい 理解・協力が得られ、器具を安全に扱えるか確認する
咳だけで十分に喀出できる PEPを追加する必要性を再検討する
COPD・肺炎という病名だけで実施する ルーチン実施ではなく、分泌物貯留や排痰困難など個別の必要性を確認する

AARCの気道クリアランス療法ガイドラインでも、単純性肺炎やCOPDに対するルーチンの気道クリアランス療法は推奨されていません。一方、COPDで症候性の分泌物貯留がある場合などは、患者の耐容性や効果を確認しながら検討できます。

PEP開始前の注意点|未治療気胸・喀血・循環不安定などを確認する

PEPでは呼気時に陽圧をかけるため、開始前に陽圧負荷が問題にならないかを確認します。特に、気胸や出血、循環動態、頭蓋内圧、顔面・食道手術後などでは、自己判断で開始せず、医師や呼吸管理チームとの確認が必要です。

重要:以下は「すべてのPEP器具に共通する絶対禁忌一覧」ではありません。ポーテックス・アカペラの添付文書では、PEP療法について絶対的禁忌事項は報告されていないとしたうえで、治療開始判断時に注意する状態が示されています。使用する機器ごとの添付文書を確認してください。

アカペラ添付文書で開始前に注意が必要とされる主な状態
確認項目 具体例
呼吸負荷 呼吸仕事量の増加に耐えられない状態
胸腔内 未治療の気胸
出血 鼻出血、進行性喀血
循環 血圧が不安定な状態
頭部・耳鼻科領域 頭蓋内圧亢進、顔面・口腔・頭蓋の手術や外傷、鼓膜損傷や中耳病変、急性副鼻腔炎
その他 食道手術後、悪心など

「注意事項に該当しない=必ず実施できる」という意味ではありません。開始時の呼吸状態、循環動態、患者の理解・協力、器具の適合性を合わせて判断します。

呼気陽圧療法(PEP)の基本的なやり方

PEPの基本は、安定した姿勢でやや深めに吸い、器具の抵抗に対して無理なく呼気し、その後にハフィングや咳で分泌物を排出する流れです。ただし、息止め時間、呼気時間、回数、抵抗値はPEP全体で統一された1つの基準ではありません。

  1. 姿勢を整える:座位など呼吸しやすく、器具を安全に扱える姿勢をとります。
  2. 器具を確認する:処方された器具、抵抗設定、マウスピースやマスクの装着状態を確認します。
  3. やや深めに吸う:最大吸気まで無理に吸い込まず、通常よりやや大きめの吸気を行います。
  4. 必要に応じて吸気後に短く保持する:息止めを行うか、何秒行うかは使用する器具の説明・処方に従います。
  5. 抵抗に対してゆっくり吐く:強く一気に吹くのではなく、呼気抵抗を感じながら無理なく呼気を続けます。
  6. 規定回数を繰り返す:器具や処方に応じた回数を行い、疲労や呼吸苦が強くなる前に休息を入れます。
  7. ハフィング・咳へつなげる:分泌物が中枢側へ移動したら、ハフィングや咳で喀出を促します。
  8. 反応を再評価する:痰の出しやすさ、呼吸困難感、呼吸状態、SpO2、疲労などを確認します。
呼気陽圧療法PEPのやり方と確認ポイントを示す図
図:呼気陽圧療法(PEP)の基本的な流れと確認ポイント。図中の秒数・回数は流れを理解するための実施例であり、実際には使用機器の添付文書、処方、施設プロトコルを優先します。

アカペラでは回数・呼気時間が添付文書で具体的に示されている

OPEP機器であるポーテックス・アカペラでは、添付文書上、通常より大きく吸うものの肺いっぱいまでは吸わず、吸気後に2〜3秒息を止め、無理のない範囲で呼気する方法が示されています。また、呼気を吸気より長くし、所定回数の呼吸後にハフィングを行う流れが示されています。

これらはアカペラの使用方法であり、すべてのPEP・OPEPにそのまま適用する共通基準ではありません。器具が変われば、必要な呼気流量、抵抗、回数、清掃方法なども変わるため、製品ごとに確認してください。

うまくできているかは「強さ」ではなく呼気と排痰のつながりを見る

PEPは強く吹けばよい手技ではありません。確認したいのは、患者が過度に力まず呼気を続けられ、その後のハフィングや咳によって分泌物の排出へつながっているかです。

PEP実施中に確認するポイント
見るポイント 確認内容
器具の密着 マウスピースやマスクから大きなリークがないか
呼気 一気に強く吹かず、抵抗に対して一定時間の呼気を続けられるか
耐容性 呼吸苦、呼吸仕事量、疲労が増えていないか
分泌物 痰が中枢側へ移動し、ハフィングや咳で喀出しやすくなっているか
終了後 呼吸状態、SpO2、症状が開始前から悪化していないか

「器具を使えた」こと自体を成功とせず、目的だった排痰につながったか、患者が安全に継続できるかまで確認します。

中止・変更・相談する場面|SpO2だけでなく症状と基礎値から判断する

実施中に状態が悪化した場合は、決められた回数を完遂することを優先しません。休息や設定変更で対応できるのか、PEP自体を中止して評価・報告するべきなのかを判断します。

  • 呼吸困難感や呼吸仕事量が明らかに増える
  • SpO2が基礎値から低下し、休息しても回復しにくい
  • 強い疲労、めまい、顔色不良などが出現する
  • 胸痛など新たな症状が出現する
  • 喀血や血痰が新たに出現する、または増悪する
  • 患者が苦痛を訴え、継続できない

SpO2については「○%ならすべて中止」とPEP独自の一律基準を設けるのではなく、開始前の値、酸素療法の条件、疾患、症状、回復性を合わせて判断します。異常が続く場合はPEPを中止し、必要な評価とチームへの報告を行います。

PEPで痰が出ないときは、さらに強く吹かせる前に原因を分ける

PEPを行っても排痰につながらない場合、単純に呼気抵抗や回数を増やすのではなく、手技が合っていないのか、分泌物の状態なのか、咳嗽能力なのかを分けて確認します。

  • 器具・手技:リーク、抵抗設定、呼気時間、姿勢が適切か
  • 分泌物:痰が移動しているか、喀出までつながっているか
  • 咳嗽:分泌物が中枢へ移動しても、咳やハフィングで排出できない状態ではないか
  • 耐容性:呼吸苦や疲労のため、PEPを十分に行えない状態ではないか

ERSの気道クリアランスに関するステートメントやガイドラインでも、1つの手技を全員に固定するのではなく、症状、身体能力、患者の希望や耐容性に合わせて個別化することが重視されています。PEPが合わない場合は、別の気道クリアランス手技へ切り替える判断も必要です。

記録は「器具・条件・反応・次回判断」を残す

PEPの記録では「PEP実施」だけで終わらせず、どの器具・条件で行い、排痰と呼吸状態がどう変化したかを残します。再評価時に同じ条件を再現できる情報が重要です。

PEPで記録しておきたい項目
項目 記録する内容
目的 分泌物貯留・排痰困難など、PEPを選択した理由
実施条件 PEPまたはOPEP、使用器具、姿勢、必要な設定
反応 呼吸苦、疲労、呼吸状態、SpO2などの変化
排痰 痰の移動・喀出の有無、量・性状など必要な所見
次回 同条件で継続するか、設定・手技を変更するか

たとえば「OPEP実施。呼吸苦増悪なく継続可能。実施後にハフィングで喀痰あり。次回も同条件で反応を再確認」のように、実施した事実ではなく次の判断につながる情報を残します。

FAQ

PEPとOPEPは同じものですか?

完全に同じではありません。PEPは呼気抵抗によって陽圧を生じさせる方法で、OPEPはその陽圧に振動を加える方法です。アカペラはOPEPに該当します。

PEPは何回行えばよいですか?

PEP全体に共通する一律の回数で決めません。使用する器具、患者の状態、処方・施設プロトコルに従います。たとえばアカペラでは製品添付文書に具体的な回数が示されていますが、その数値を別のPEP器具へそのまま適用しないことが重要です。

PEP中にSpO2が下がったら中止しますか?

一過性の変動だけでなく、開始前の基礎値、低下の程度と持続、呼吸困難感、呼吸仕事量、回復性を合わせて判断します。低下が持続する、症状が増悪する、休息しても回復しにくい場合は中止して再評価し、必要に応じてチームへ報告します。

次の一手

PEP単体の方法を確認したあとは、患者の状態に応じて気道クリアランス全体の中でどの手技を選ぶかを整理します。


参考文献

  1. Chalmers JD, Haworth CS, Flume P, et al. European Respiratory Society clinical practice guideline for the management of adult bronchiectasis. Eur Respir J. 2025;66(6):2501126. doi:10.1183/13993003.01126-2025
  2. Herrero-Cortina B, Lee AL, Oliveira A, et al. European Respiratory Society statement on airway clearance techniques in adults with bronchiectasis. Eur Respir J. 2023;62(1):2202053. doi:10.1183/13993003.02053-2022
  3. Strickland SL, Rubin BK, Drescher GS, et al. AARC clinical practice guideline: effectiveness of nonpharmacologic airway clearance therapies in hospitalized patients. Respir Care. 2013;58(12):2187-2193. doi:10.4187/respcare.02925
  4. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構. ポーテックス・アカペラ 添付文書. PMDA医療機器情報.

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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