ACBT・PEP・体位排痰の違いと使い分け|併用まで解説

臨床手技・プロトコル
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ACBT・PEP・体位排痰は「3択」ではなく選択と併用で考えます

ACBT・PEP・体位排痰は、どれか1つが一律に優れているわけではありません。まず排痰支援が必要かを確認し、そのうえで患者が実施できる方法、分泌物の状態、耐容性、本人の選好、実施後の反応から主となる気道クリアランス手技(ACT)を選びます。体位排痰はACBTやPEPと競う「第三の選択肢」と考えるだけでなく、必要に応じて追加・併用する視点が重要です。

この記事では、ACBT・PEP・体位排痰の違いを整理し、排痰が必要な患者で「何を主軸にするか」「いつ体位を加えるか」「効果が乏しいとき何を見直すか」までを臨床判断の流れに沿って解説します。

先に結論:ACBT・PEP・体位排痰を診断名だけで固定せず、ACTの必要性 → 実施可能性 → 主となる手技 → 体位の追加 → 実施後の反応の順に決めます。2025年ERS気管支拡張症ガイドラインでも、特定のACTが他より優れているという根拠はなく、治療を個別化する考え方が示されています。

ACBT・PEP・体位排痰の違いを比較します

大きな違いは、ACBTは呼吸パターンとFETを組み合わせる方法、PEPは呼気抵抗を利用する方法、体位排痰は重力や体位を利用して分泌物移送を補助する方法という点です。

ACBT・PEP・体位排痰の違い
比較項目 ACBT PEP 体位排痰
基本的な考え方 呼吸コントロール、胸郭拡張、FETなどを組み合わせて分泌物移送・喀出を促す 呼気に抵抗を加え、呼気流や気道内圧を利用して分泌物移送を補助する 重力や体位による影響を利用し、分泌物が移動しやすい条件を作る
器具 基本的に不要 PEPデバイスを使用 必須ではない。ベッド・枕などで体位を調整する
患者に求められること 呼吸手技やFETを理解し、ある程度再現できること マウスピース等を使用し、設定された方法で呼気を行えること 目的とする体位を安全に保持できること
個別化の主な視点 手技の理解、疲労、呼吸困難、自己管理のしやすさ デバイスへの適応、呼吸困難、負荷感、継続しやすさ 分泌物の局在、体位による反応、疼痛、逆流、循環・呼吸の耐容性
他手技との関係 体位や他のACTと組み合わせることがある 体位やFETなどと組み合わせることがある ACBT・PEPなどの効果を高める追加要素として使える
再評価 痰の出しやすさ、呼吸困難、疲労、酸素化・呼吸状態、患者の受け入れ、継続可能性から見直す

なお、PEPには非振動型のPEPと、呼気抵抗に振動を組み合わせるOPEP(oscillating PEP)があります。ガイドラインや研究で「PEP」と「OPEP」が区別されている場合があるため、使用するデバイスの特徴を確認することが重要です。

最初に「ACTが本当に必要か」を確認します

手技を選ぶ前に、患者が自分の咳で分泌物を十分に排出できているかを確認します。痰があるという理由だけで、全員にACBT・PEP・体位排痰を追加するわけではありません。

AARCのガイドラインでは、COPDにACTをルーチン使用することは推奨されず、症候性の分泌物貯留がある場合に患者の選好、耐容性、効果を踏まえて検討するとされています。また、自力の咳で分泌物を移動・排出できる場合には、ACTをルーチンに追加しない考え方が示されています。

  • 分泌物が残っているか:喀痰量だけでなく、痰を動かしにくい・出し切れないという困難さを見る
  • 咳が出口として機能するか:移送できても最終的に排出できなければ、別の咳嗽支援が必要になる
  • 呼吸状態へ影響しているか:呼吸困難、換気、酸素化、聴診所見などを前後で比較する
  • 実施する目的が明確か:「何となく排痰」ではなく、何を改善したいかを先に決める

排痰困難の原因を「分泌物の移送」「換気」「咳力」まで含めて整理したい場合は、気道クリアランスの評価・選択プロトコルで全体像を確認できます。

重要:神経筋疾患などで「咳そのものが弱い」ことが主な問題の場合、ACBTやPEPを追加するだけでは出口の問題が解決しないことがあります。分泌物を動かす手段と、最終的に喀出する能力は分けて評価します。

ACBT・PEP・体位排痰はこの順番で選びます

選択するときは、最初から「ACBTかPEPか体位排痰か」と考えるのではなく、主となるACTを選んだあと、必要なら体位を加えるという順番で整理すると判断しやすくなります。

ACBT・PEP・体位排痰の選び方と併用の考え方を示したフロー図
ACBT・PEP・体位排痰は、ACTの必要性、実施可能性、体位による反応、実施後の再評価から個別化します。

1.患者自身で手技を実施できるか確認する

ACBTもPEPも、患者が手技をある程度理解し、再現できることが前提です。ただし、求められる動作は同じではありません。

確認したいのは、指示理解だけではなく、呼吸手技の再現、口腔・顔面機能、デバイスを保持・操作できるか、息切れや疼痛によって途中で破綻しないか、といった実際の実施可能性です。

2.ACBTとPEPは「実施しやすさ」と反応で選ぶ

ACBTは器具を必要とせず、呼吸コントロールを挟みながらFETへつなげられることが特徴です。一方、PEPはデバイスを介して呼気抵抗を与えるため、手技の再現性を作りやすい患者もいます。

ただし、「息切れが強いからACBT」「気道が潰れそうだからPEP」と単純に決めるものではありません。患者が理解・継続できること、実際に分泌物を移動・排出しやすくなること、負荷が許容範囲であることを確認して選択します。

ACBTとPEPを選ぶときの確認ポイント
確認すること ACBTを考えやすい状況 PEPを考えやすい状況
器具 器具を使わず自己管理したい デバイスの使用が可能で、器具を用いた方法が受け入れられる
手技の理解 呼吸コントロール、胸郭拡張、FETなどを組み合わせられる 呼気抵抗を利用した呼吸を再現できる
負荷調整 呼吸コントロールを挟みながら自分でペースを調整しやすい デバイスと呼吸方法を調整し、許容できる負荷で実施する
最終判断 どちらが実際に排痰しやすく、症状が悪化せず、患者が継続できるかで判断する

「ACBTとOPEPのどちらか一方が常に優れている」という位置づけではありません。BTS気管支拡張症ガイドラインでは、ACBTまたはOPEPが選択肢として提示され、患者の選好やアドヒアランスも考慮するよう示されています。

3.分泌物の局在や体位反応があれば体位を追加する

体位排痰は、ACBT・PEPと必ずしも排他的に選ぶ必要はありません。BTSでは、禁忌がなければgravity-assisted positioningをACTの効果を高めるために検討することが示されています。

たとえば、画像・聴診・臨床所見から分泌物の局在が考えられ、体位変更によって痰が移動しやすくなる場合には、ACBTやPEPに体位を組み合わせる余地があります。

一方で、逆流、疼痛、呼吸困難、循環症状などによって特定の体位を保持できない場合には、頭低位を含む固定的な体位にこだわりません。修正した体位や座位でのACTなど、患者が安全に続けられる方法へ変更します。体位の具体的な設定は体位ドレナージの方法と注意点で詳しく解説しています。

併用するときは「全部行う」のではなく役割を分けます

ACBT・PEP・体位排痰を併用する目的は、手技の数を増やすことではありません。体位で移送しやすい条件を作る、ACBTやPEPで分泌物を中枢側へ動かす、最後にFETや咳で排出するなど、それぞれの役割を明確にします。

併用を考えるときの基本

  1. 現在どこで排痰が止まっているかを確認する
  2. 主となるACTを1つ決める
  3. 体位で改善が見込める場合のみ追加する
  4. FET・咳までつながって実際に排出できるかを見る
  5. 効果が乏しければ「さらに追加」ではなく組み替える

特に注意したいのは、ACBT+PEP+複数の体位を毎回すべて実施するような固定化です。手技が増えるほど患者負担や時間も増えるため、目的に必要な要素へ絞り込みます。

実施後は「痰が出たか」だけでなく反応を再評価します

ACTの評価は、喀痰量だけでは不十分です。AARCでも、ACTを選択した場合は期待するアウトカムを明確にし、効果が得られなければ継続を見直す考え方が示されています。

実施前後では、次の項目を確認します。

  • 排痰:痰が動いたか、出しやすくなったか、喀出後に残存感があるか
  • 呼吸困難:実施によって軽減したか、逆に増悪したか
  • 呼吸状態:呼吸数、呼吸パターン、努力呼吸、聴診所見などがどう変化したか
  • 酸素化:患者個別の目標値や実施前値と比較して変化を確認する
  • 疲労・疼痛:終了後に過度な疲労や症状悪化が残っていないか
  • 実施可能性:患者自身が再現できるか、継続できる方法か

全患者共通のSpO₂、心拍数、血圧の数値だけでACTの中止を決めるのではありません。実施前の状態、基礎疾患、酸素療法、個別の目標値、症状、実施中の変化、休止後の回復を合わせて判断します。

中断・相談を優先する変化

実施中に新たな胸痛、著しい呼吸困難、意識状態の変化、循環不安定、明らかな酸素化悪化、喀血の増加などがみられた場合は、手技を続けることより原因確認と安全確保を優先します。

軽度の息切れや疲労であっても、休止しても回復しない、実施のたびに同じ症状が再現する、実施後の状態が実施前より悪化する場合には、負荷・手技・適応そのものを再評価します。

実施時間は手技ごとに固定しません

ACBTは5分、PEPは15分というように、すべての疾患・患者へ共通する時間を設定する根拠はありません。実施時間は疾患、分泌物量、患者の疲労、手技の効果、増悪の有無によって調整します。

なお、BTS気管支拡張症ガイドラインでは、気管支拡張症患者のACTについて頻度・時間を個別化したうえで、1回10〜30分を一つのgood practice pointとして示しています。ただし、これは気管支拡張症に対する推奨であり、一般病棟のすべての疾患へそのまま適用する一律基準ではありません。

臨床では「何分実施したか」だけではなく、目的とした排痰が得られたか、患者が疲労していないか、その手技を続ける意味があるかを確認します。

よくある失敗は「固定化」と「やり過ぎ」です

ACBT・PEP・体位排痰で起こりやすい失敗と修正
よくある失敗 問題点 修正
診断名だけで手技を決める 排痰困難の原因や患者条件を見落とす ACTの必要性と患者の反応から選ぶ
ACBT・PEP・体位を完全な3択にする 体位を追加する選択肢が抜ける 主となるACTを決め、必要なら体位を併用する
PEPは強く吹くほどよいと考える 負荷が増え、呼吸困難や手技破綻につながる 使用デバイスの方法を守り、患者が継続できる負荷にする
長く実施すれば効果が高いと考える 疲労が増え、手技の質が低下する 実施時間より目的達成と患者反応を優先する
痰の量だけで効果判定する 呼吸困難や患者負担を見落とす 排痰、症状、呼吸状態、疲労、継続可能性を合わせて再評価する
効果がないと手技を追加し続ける 何が有効だったか分からなくなる 移送・換気・咳のどこが問題かへ戻って組み替える

記録は「手技名」より条件と反応を残します

次回の担当者が同じ判断を再現できるように、何を実施したかだけでなく、なぜその方法を選び、患者がどう反応したかを残します。

ACBT・PEP・体位排痰の記録で残したい項目
項目 記録する内容
実施前 痰の状態、排痰困難、呼吸困難、呼吸状態、酸素条件、疼痛など
方法 ACBT・PEP等の方法、使用デバイス、体位、必要な介助
反応 痰の出しやすさ、喀痰、呼吸困難、呼吸状態、酸素化、疲労・疼痛
次回 継続する方法、変更する条件、追加・中止する要素

たとえば「ACBT実施」だけでは、次回に同じ介入を再現できません。「座位でACBTを実施。FET後に喀出しやすさ改善。呼吸困難増悪なし。次回も同条件で反応を確認」のように、条件・反応・次の方針をつなげると共有しやすくなります。

ACBT・PEP・体位排痰でよくある質問

Q1.ACBTとPEPはどちらが優れていますか?

一律にどちらが優れているとはいえません。2025年ERS気管支拡張症ガイドラインでは、特定のACTが他より優れているという根拠はなく、患者ごとに個別化する考え方が示されています。患者が実施できること、実際の排痰効果、耐容性、選好、継続可能性から選びます。

Q2.ACBTとPEPは併用できますか?

併用することはあります。ただし、毎回すべて行うことを目的にはしません。それぞれを追加する目的を明確にし、実施後の反応から必要性を判断します。FETや咳によって最終的に喀出できるところまで確認します。

Q3.体位排痰はACBT・PEPとは別の手技ですか?

体位排痰そのものも気道クリアランスの方法ですが、ACBTやPEPとの排他的な3択にする必要はありません。BTSではgravity-assisted positioningを、ACTの効果を高める方法として検討することが示されています。分泌物の局在や体位による反応、耐容性を確認して追加します。

Q4.頭を下げる体位を必ず使う必要がありますか?

必須ではありません。逆流や疼痛、呼吸困難などで頭低位を許容できない場合には、modified postural drainageなど体位を調整します。特定の体位を守ることより、安全に分泌物移送を促せる条件を選ぶことが重要です。

Q5.ACBTやPEPは何分行えばよいですか?

全疾患へ共通する固定時間はありません。患者の状態、分泌物、疲労、効果から個別化します。BTSでは気管支拡張症患者について10〜30分を一つのgood practice pointとしていますが、一般病棟のすべての患者へそのまま適用する値ではありません。

次に確認したい記事

実際の手順へ進む場合は、選択した手技ごとに方法を確認します。

参考文献

  1. Chalmers JD, Haworth CS, Flume P, et al. European Respiratory Society clinical practice guideline for the management of adult bronchiectasis. Eur Respir J. 2025;66(6):2501126. DOI: 10.1183/13993003.01126-2025. PubMed: PMID:41016738.
  2. Herrero-Cortina B, Lee AL, Oliveira A, et al. European Respiratory Society statement on airway clearance techniques in adults with bronchiectasis. Eur Respir J. 2023;62(1):2202053. DOI: 10.1183/13993003.02053-2022. PubMed: PMID:37142337.
  3. Hill AT, Sullivan AL, Chalmers JD, et al. British Thoracic Society Guideline for bronchiectasis in adults. Thorax. 2019;74(Suppl 1):1-69. DOI: 10.1136/thoraxjnl-2018-212463.
  4. Strickland SL, Rubin BK, Drescher GS, et al. AARC clinical practice guideline: effectiveness of nonpharmacologic airway clearance therapies in hospitalized patients. Respir Care. 2013;58(12):2187-2193. DOI: 10.4187/respcare.02925. PubMed: PMID:24222709.

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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