I3C(臨界的定着疑い)とは|I3との違いを先に整理する
DESIGN-R®2020のI3C(臨界的定着疑い)は、創面のぬめり、多い滲出液、浮腫性で脆弱な肉芽などから、臨界的定着を疑う区分です。I3CとI3はいずれも3点ですが、同じ状態を表しているわけではありません。
迷いやすいのは、「臭いがあればI3なのか」「治癒が進まなければI3Cなのか」「I3Cと判断した後は様子を見てよいのか」という境界です。この記事では、I3C・I3・i1・I9の違いと、何を根拠に判定して多職種へ共有するかに絞って整理します。
DESIGN-R®2020全体の採点方法を確認したい方へ
I3CとI3の違い|どちらも3点だが判定根拠が違う
I3CとI3はどちらも3点ですが、記号を分けて記載します。I3Cは臨界的定着疑い、I3は局所に明らかな感染徴候がみられる状態です。さらに局所炎症のみならi1、感染による全身的影響があればI9を検討します。

DESIGN-R®2020の炎症/感染(Inflammation / Infection)を、判断に必要な範囲へ絞ると次のように整理できます。※スマートフォンでは表を横スクロールできます。
| 区分 | 点数 | 判断するときの主な所見 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| i0 | 0点 | 局所の炎症徴候なし | 発赤・腫脹・熱感・疼痛などがないか |
| i1 | 1点 | 創周囲に局所炎症がみられる | 発赤・腫脹・熱感・疼痛を確認する |
| I3C | 3点 | 創面のぬめり、多い滲出液、浮腫性・脆弱な肉芽など | 単独所見だけでなく複数の所見を組み合わせる |
| I3 | 3点 | 局所に明らかな感染徴候がみられる | 炎症徴候、膿、悪臭などを含めて判断する |
| I9 | 9点 | 感染による全身的影響がみられる | 発熱など全身状態への影響を確認する |
I3CとI3は合計点だけを見ると区別できません。そのため、「3点だった」だけでなく「I3CなのかI3なのか」と、その根拠になった観察事実を残すことが重要です。
I3Cを疑う所見|ぬめり・多い滲出液・浮腫性で脆弱な肉芽
I3Cを疑うときは、創面のぬめり、多い滲出液、肉芽があれば浮腫性で脆弱という特徴を確認します。日本褥瘡学会のコンセンサス・ドキュメントでは、臨界的定着以外でもみられる所見では特異性が低くなるため、複数の所見を組み合わせることが提案されています。
| 観察する場所 | 確認すること | 記録例 |
|---|---|---|
| 創面 | ぬめりがあるか | 「創面にぬめりあり」 |
| 滲出液 | その時点で滲出液が多いか | 「滲出液多量」 |
| 肉芽 | 肉芽がある場合、浮腫性・脆弱か | 「肉芽は浮腫性で脆弱」 |
「ぬめりがあるからI3C」と1所見だけで決めるのではなく、創面・滲出液・肉芽を合わせて観察すると、判定根拠を共有しやすくなります。
「治癒停滞」「滲出液が増えた」だけではI3Cを決めない
治癒が進んでいないことや、前回より滲出液が増えたことは重要な経過情報ですが、それだけをI3Cの判定所見にはしません。
日本褥瘡学会のコンセンサス・ドキュメントでは、「治癒が遅延している」「滲出液が増加した」など、変化を表す表現を用いると1回の観察では評価できなくなるため避けることが提案されています。
つまり、経過としての治癒停滞と、その時点でDESIGN-R®2020のI3Cを採点するための観察所見は分けて考えるのがポイントです。経過情報は捨てるのではなく、判定根拠とは別枠で記録しておくと整理しやすくなります。
臭いがあればI3?|単独所見だけで機械的に決めない
悪臭はDESIGN-R®2020でI3を判断する所見の1つです。一方で、臭いがあるという1所見だけで機械的にI3へ固定すると、I3Cとの境界を誤る可能性があります。
日本褥瘡学会の練習問題では、創面にぬめりと臭いがあり、肉芽は浮腫性である一方、創周囲に熱感がなく、WBC・CRPの上昇を認めない症例がI3Cとして示されています。
したがって、臭いを認めたときは「臭いがある=I3」と短絡せず、創周囲の炎症徴候、膿、創面のぬめり、滲出液、肉芽、全身状態を合わせて確認します。
| 迷う場面 | 考え方 |
|---|---|
| ぬめりだけがある | 単独所見だけで決めず、滲出液や肉芽など他の所見も確認する |
| 臭いがある | 悪臭はI3所見の1つだが、局所炎症・膿・創面所見・全身状態を合わせて判断する |
| 明らかな局所感染徴候がある | I3を含めて評価する |
| 発熱など全身的影響がある | I9を含めて評価し、速やかに医療チームで共有する |
| 治癒が進まないだけ | 経過情報として扱い、その時点のI3C所見を別に確認する |
I3Cと判断した後|「様子を見るためのラベル」ではない
I3Cを付けたあと、一律に24〜48時間待ってから対応を決めるというDESIGN-R®2020のルールはありません。
日本褥瘡学会のコンセンサス・ドキュメントでは、I3CをI(ラージアイ)に分類する重要な意味として、感染褥瘡に準じた治療を開始することを周知できる点が示されています。
そのためI3Cと判断した場合は、単なる経過観察で終わらせず、院内手順に沿って医師・看護師・皮膚・排泄ケアを担当する専門職などへ所見を共有し、創傷管理の方針を確認します。再評価時期は一律の時間で固定するのではなく、創の状態、実施した治療・ケア、施設の運用に応じて設定します。
理学療法士が関わる場合は、治療薬や創傷被覆材そのものを決定するのではなく、必要に応じて圧迫・ずれ、体位、支持面、座位時間、移乗条件など、創傷治癒を妨げる力学的要因を評価し、多職種へ共有します。
判断のポイント:「I3C → 24〜48時間待つ → 改善しなければI3」という固定フローではなく、I3Cを認識した時点で必要な対応へつなぎ、その後の再評価条件と時期を個別に決めると整理します。
I3Cの記録|判定名より「何を見てそう判断したか」を残す
I3Cの記録では、判定、根拠所見、I3・I9を示唆する所見、共有内容、次回評価を分けると、多職種間で経過を追いやすくなります。
| 記録項目 | 書き方 |
|---|---|
| 判定 | I3C |
| 根拠所見 | ぬめり、滲出液量、肉芽の浮腫性・脆弱性など、実際に確認した所見を書く |
| I3・I9の確認 | 局所炎症、膿、悪臭、発熱などの有無と内容を書く |
| 共有 | 誰へ、どの所見を共有したかを書く |
| 次回評価 | 再評価日時と、次回確認する所見・条件を書く |
記録の型
I3C。根拠:[創面のぬめり/滲出液/肉芽所見]。I3・I9を示唆する所見:[有無・内容]。[共有先]へ共有し、次回は[日時・条件]で再評価する。
配布物:I3C 判断・共有シート(A4・1枚)
I3Cを疑う創面所見、I3・I9の確認、判定根拠、多職種共有、次回評価までを1枚で整理できる記録シートです。再評価時期を一律24〜48時間に固定せず、実際の創状態と院内手順に合わせて記録する構成にしています。
Excel版は院内運用に合わせた記録・編集用、PDF版は印刷・配布用として使い分けられます。
細菌数や培養結果だけでI3Cを決めない
I3Cは細菌数だけで判定するものではありません。日本褥瘡学会のコンセンサス・ドキュメントでは、細菌数は臨界的定着や感染を判断する根拠とはならず、確定診断を目的とした組織中の細菌学的検査も推奨されていません。
一方、バイオフィルムを可視化する方法は補助的な評価方法として示されています。実際のI3C判定では、まず創面の臨床所見を確認し、必要な検査や治療については患者の全身状態も含め、医師や創傷管理を担当する専門職へつなぎます。
I3Cに関するよくある質問
Q1. I3CとI3はどちらも3点なら、区別しなくてもよいですか?
A. 区別します。点数はいずれも3点ですが、I3Cは臨界的定着疑い、I3は局所に明らかな感染徴候がみられる状態です。記録ではI3CまたはI3の記号と、判定根拠を一緒に残します。
Q2. 治癒が停滞していればI3Cですか?
A. 治癒停滞だけではI3Cと判断しません。経過としては重要ですが、その時点のI3C判定では、創面のぬめり、多い滲出液、浮腫性で脆弱な肉芽などを確認し、複数の所見を組み合わせて判断します。
Q3. 臭いがあればI3ですか?
A. 悪臭はI3を判断する所見の1つですが、単独所見だけで機械的に決めるのは避けます。日本褥瘡学会の練習問題には、臭いがあっても、創面のぬめりや浮腫性肉芽を認め、創周囲の熱感やWBC・CRP上昇を認めない症例がI3Cとして示されています。
Q4. I3Cなら24〜48時間待って再評価すればよいですか?
A. I3Cについて、一律に24〜48時間待ってから対応するというDESIGN-R®2020のルールはありません。I3Cを認識した時点で感染褥瘡に準じた対応へつなぎ、再評価時期は創の状態、治療・ケア内容、院内手順に合わせて設定します。
次の一手|DESIGN-R®2020の迷いやすい境界を確認する
炎症/感染のI3Cを整理できたら、深さ(Depth)で迷いやすいDDTIとDUの境界も別の判断軸として押さえておくと、DESIGN-R®2020の採点が安定します。
参考文献
- 一般社団法人日本褥瘡学会.改定DESIGN-R®2020コンセンサス・ドキュメント.2020.日本褥瘡学会公式資料
- 一般社団法人日本褥瘡学会.改定DESIGN-R®2020練習問題.日本褥瘡学会公式資料
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

