圧痕(ゴデットサイン)と Stemmer 徴候|浮腫所見の取り方と記録

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圧痕(ゴデットサイン)と Stemmer 徴候:浮腫の所見をブレなく記録する(結論)

浮腫は「圧痕の深さ・戻り時間・部位」をそろえて書くだけで、評価の質が上がります。 評価 → 記録 → 再評価の流れを復習する( PT キャリアガイド #flow )

浮腫のフィジカル所見は、数字(周径・体積)ほど “型” が共有されず、申し送りでズレやすいです。特に圧痕( pitting edema )は「押し方」「押す場所」「何秒押したか」で印象が変わり、記録が曖昧になりがちです。

結論としては、圧痕は ①押す部位②押す時間③凹みの深さと戻り時間を固定して書くと、再評価や多職種共有に耐える所見になります。加えて Stemmer 徴候を “リンパ系らしさ” の補助所見として組み込むと、鑑別の精度が上がります。 [oai_citation:0‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6635205/?utm_source=chatgpt.com)

浮腫を「評価 → 鑑別 → 測定 → 追跡」までまとめた全体像は 浮腫の評価(親記事) に統一しています(本文内インライン内部リンクは本項のみ)。

圧痕( pitting )とは?

圧痕性浮腫は、皮下に水分が貯留し、指で圧迫すると凹みが残るタイプの浮腫です。臨床では「凹みの深さ」と「戻るまでの時間」で重症度を表現することが多いです。 [oai_citation:1‡EBM Consult](https://www.ebmconsult.com/articles/pitting-edema-assessment?utm_source=chatgpt.com)

圧痕の取り方(ゴデットサイン):手順を固定する

まずは “押し方” を固定します。目標は「毎回同じ条件で、同じ所見を書く」ことです。

  1. 部位を決める(例:足背、内果後方、脛骨前面、下腿内側など)。
  2. 親指で 2〜5 秒、骨の支持がある方向に向けて圧迫します(強さは “白くなる程度” を目安)。
  3. 圧迫を離し、凹みの深さ( mm )戻るまでの時間(秒〜分)を見ます。
  4. 左右差が疑わしい場合は、同じ部位を左右で同じ条件で評価します。

現場の詰まりどころは「押す部位が毎回違う」「押す時間が短い/長い」です。まずは“この患者はここで押す” を固定し、押す秒数も決めて記録すると、再評価が速くなります。

圧痕のグレーディング:深さ+戻り時間で書く

圧痕の代表的なグレード表現は 1+ 〜 4+ です。厳密な閾値は資料により差がありますが、臨床では「深さ」と「戻り時間」をセットで残すと、曖昧さが減ります。 [oai_citation:2‡EBM Consult](https://www.ebmconsult.com/articles/pitting-edema-assessment?utm_source=chatgpt.com)

圧痕( pitting edema )の記録例:深さと戻り時間で表現する
グレード(例) 凹みの深さ(目安) 戻り時間(目安) 記録の書き方(例)
1+ 〜 2 mm 程度 すぐ戻る 「内果後方: 1+(〜 2 mm 、即時回復)」
2+ 2〜4 mm 程度 10〜15 秒程度 「足背: 2+( 3 mm 、 15 秒以内)」
3+ 4〜6 mm 程度 1 分程度 「脛骨前面: 3+( 5 mm 、約 1 分)」
4+ 6〜8 mm 以上 数分( 2〜5 分など) 「下腿内側: 4+(深い圧痕、数分残存)」

ポイントは、グレードだけで終わらせず、「どこで」「何秒押して」「どのくらいで戻ったか」を一緒に残すことです。これだけで、同じ 2+ でも “状況” が伝わります。

解釈のコツ:圧痕は “原因” ではなく “状態”

圧痕があること自体は、原因を確定しません。圧痕の所見は、あくまで「その部位の間質液が増えている状態」の手がかりです。全身性(心・腎・肝など)か、局所性(静脈・炎症・術後など)かは、分布(左右差・末梢優位)や経過、随伴症状と合わせて判断します。 [oai_citation:3‡NCBI](https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK554452/?utm_source=chatgpt.com)

Stemmer 徴候:リンパ系らしさの補助所見

Stemmer 徴候は、足趾(多くは第 2 趾)背側の皮膚を “つまめるか” を見る所見で、つまめない場合を陽性とします。陽性はリンパ浮腫を示唆する所見として用いられます。 [oai_citation:4‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6635205/?utm_source=chatgpt.com)

ただし、陰性だからリンパ浮腫を否定できるわけではありません。臨床では、Stemmer 徴候は分布(足背・手背を含む)皮膚・軟部の変化、周径・体積などの “量” とセットで解釈するとブレにくいです。 [oai_citation:5‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6635205/?utm_source=chatgpt.com)

所見の書き方テンプレ:申し送りでズレない型

最短で “伝わる” 書式は、次の 1 行です。

  • 部位:右/左、どこで押したか(例:右内果後方、右足背)
  • 押し条件: 3 秒圧迫、安静後、圧迫着衣の有無(外してからの時間)
  • 所見: 2+( 3 mm 、 10 秒)など
浮腫所見の記録フォーマット(圧痕+補助所見)
項目 記録例 意図
圧痕(部位・条件) 右内果後方: 3 秒圧迫 再評価で “同じ条件” に戻せます
圧痕(結果) 2+(約 3 mm 、 10 秒で回復) グレードの曖昧さを減らします
分布・左右差 右優位、足背まで腫脹 鑑別の手がかりになります
皮膚・疼痛 熱感(−)、疼痛 NRS 2 炎症・感染などの判断材料になります
Stemmer 徴候 右第 2 趾:陰性(つまめる) リンパ系らしさの補助所見です

よくある失敗と対策(OK / NG)

圧痕・ Stemmer の評価でズレるポイント:失敗パターンと修正
NG 起きること OK(修正)
「 2+ 」だけ書く 別の人が再評価しても比較できない 部位・押す秒数・深さ・戻り時間を併記する
押す場所が毎回違う 所見が “変化” に見える 患者ごとに押す部位を固定(例:内果後方)
Stemmer 陰性=リンパ否定 鑑別が単純化してズレる 分布・皮膚変化・量(周径・体積)と合わせて解釈する
圧痕を “原因” として扱う 所見が治療方針に直結しない 圧痕は状態。原因は分布・経過・随伴所見で判断する

よくある質問(FAQ)

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Q1. 圧痕の押す秒数は何秒がいい?

A. 重要なのは “毎回同じ秒数” にすることです。臨床では 2〜5 秒程度が使われますが、チームで「 3 秒」と決めて統一すると、再評価の比較が成立しやすくなります。 [oai_citation:6‡EBM Consult](https://www.ebmconsult.com/articles/pitting-edema-assessment?utm_source=chatgpt.com)

Q2. 圧痕が強いのに、痛みや熱感が強いのは変?

A. 変ではありませんが、炎症・感染・血栓など “別の問題” が重なっている可能性もあります。圧痕は状態の一部なので、分布・経過・随伴所見(熱感、疼痛、皮膚トラブル、呼吸苦など)をセットで評価して、必要なら速やかに連携してください。 [oai_citation:7‡NCBI](https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK554452/?utm_source=chatgpt.com)

Q3. Stemmer 徴候は、どのくらい当てになりますか?

A. 有用な身体所見の 1 つですが、万能ではありません。陽性はリンパ浮腫を示唆しやすい一方、陰性でも否定できないため、分布・皮膚所見・測定(周径・体積など)と組み合わせて判断するとブレにくいです。 [oai_citation:8‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6635205/?utm_source=chatgpt.com)

Q4. 所見が日によって違うとき、まず何を疑う?

A. まず “条件差” を疑います(時間帯、離床直後、圧迫を外してすぐ等)。同じ部位・同じ秒数で押せているかも再確認し、条件が揃っているのに変化が続く場合は、原因の評価や介入量の調整、必要時の連携を検討します。

参考文献

  1. Goss JA, Greene AK. Sensitivity and Specificity of the Stemmer Sign for Lymphedema: A Clinical Lymphoscintigraphic Study. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2019. PMC
  2. Executive Committee of the International Society of Lymphology. The Diagnosis and Treatment of Peripheral Lymphedema: 2023 Consensus Document. Lymphology. 2023;56(4):133-151. PDF
  3. Pitting Edema Assessment: Physical Exam. EBM Consult. Web
  4. Goyal A, Cusick A. Peripheral Edema. StatPearls. 2023. NCBI Bookshelf
  5. Calzon ME, et al. Quantitative measurement of pitting edema with a novel method and correlation with customary clinical grading. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2023. PMC

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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おわりに

浮腫の所見は、同じ部位で同じ秒数押す → 深さと戻り時間を書く → 分布と補助所見( Stemmer など)を添えるだけで、再評価と共有が一気に楽になります。迷ったら、まず “条件固定” に戻してください。

現場の記録や整理が詰まりやすいときは、面談準備チェックと職場評価シートをまとめた /mynavi-medical/#download も一緒に整えると、行動が止まりにくくなります。

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