- MRIの見方|まずシーケンスを確認し、症状・正式読影と照合する
- 頭部MRIを開いたら最初に確認する6ポイント
- DWIとADC|DWI高信号だけで急性期脳梗塞と決めない
- FLAIR|髄液信号を抑えて病変を確認する
- T2*・SWI|出血性変化や微小出血を確認する
- T1・T2|「白い・黒い」の暗記だけで判断しない
- MRA|血管の描出を確認する
- MRI所見と神経症状を照合する
- MRIだけでリハ実施可否や運動負荷を決めない
- MRIを記録へ反映するときは「正式読影」と「自分の確認」を分ける
- MRIの見方で迷いやすい5つのポイント
- CTとMRIの違いは「どちらが優れているか」ではなく目的で考える
- よくある質問
- 次の一手|画像情報を神経症状へつなげる
- 参考文献
- 著者情報
MRIの見方|まずシーケンスを確認し、症状・正式読影と照合する
頭部MRIを見るときにPT・OT・STが最初に目指すのは、画像だけから診断名を当てることではありません。DWI・ADC・FLAIR・T2*/SWI・T1・T2・MRAがそれぞれ何を示す画像かを確認し、病変の局在や時系列を神経症状、画像診断報告書、医師の治療方針と照合します。特に急性期脳梗塞ではDWI高信号だけで判断せず、ADCやFLAIR、MRAなどを組み合わせて確認することが重要です。本記事では、新人PT・OT・STでも繰り返し使いやすい確認順に絞って整理します。
この記事のポイント:頭部MRIは「撮像日・比較画像 → DWI → ADC → FLAIR → T2*/SWI・MRA → 症状・正式読影との照合」の順で整理すると、各画像の役割を把握しやすくなります。これはPT・OT・ST向けの学習・確認用の整理であり、放射線科医などが行う正式な読影手順を示すものではありません。
画像を確認するときの基本姿勢や、CT・MRIなどに共通する考え方から整理したい場合は、新人PT向け画像読影ガイドも参考にしてください。
頭部MRIを開いたら最初に確認する6ポイント
頭部MRIでは、いきなり病変を探すよりも「いつ撮影された、何の画像を見ているのか」をそろえてから所見を追う方が整理しやすくなります。撮像内容は疾患や施設、検査目的によって異なりますが、PT・OT・STが臨床所見との照合に使う場合は、次の順で確認すると迷いにくくなります。

- 撮像日・比較画像:いつ撮影された画像か、前回画像があるかを確認する
- DWI:高信号域の有無と分布を確認する
- ADC:DWI高信号部でADC低下を伴うか確認する
- FLAIR:病変の広がりやDWIとの信号差を確認する
- T2*/SWI・MRA:磁化率変化と血管情報を確認する
- 症状・正式読影:病変部位と現在の神経症状、画像診断報告書が整合するか確認する
| 画像 | 主に確認すること | PT・OT・STが注意する点 |
|---|---|---|
| DWI | 拡散制限を示唆する高信号域 | DWI高信号だけで急性期脳梗塞と断定しない |
| ADC | 水分子の拡散の程度 | DWI高信号部でADC低下を伴うか確認する |
| FLAIR | 髄液信号を抑えた病変の描出 | DWIとの信号差を時系列情報の一つとして確認する |
| T2*/SWI | 出血性変化、微小出血などの磁化率変化 | 低信号をすべて出血と決めつけない |
| T1 | 解剖・形態や脳萎縮など | 病変の時期をT1だけで判断しない |
| T2 | 水分変化を含む多様な病変 | FLAIRなど他の画像と組み合わせて確認する |
| MRA | 主幹動脈の狭窄・閉塞などの血管情報 | 血管の描出低下だけで狭窄率や閉塞を確定しない |
DWIとADC|DWI高信号だけで急性期脳梗塞と決めない
DWIは急性期脳梗塞で重要な画像ですが、基本的にはADCと組み合わせて確認します。急性虚血に伴う拡散制限では、典型的にはDWIで高信号、ADCで低信号を示します。
DWIが高信号でもADC低下を伴わない場合には、T2 shine-throughなどが含まれる可能性があります。また、拡散制限は脳梗塞だけに特異的な所見ではありません。そのためPT・OT・STが「DWIが白いから新しい脳梗塞」と単独で確定するのではなく、ADC、病変分布、神経症状、画像診断報告書を合わせて確認します。
| DWI | ADC | 確認の考え方 |
|---|---|---|
| 高信号 | 低信号 | 拡散制限を示唆するため、局在・臨床症状・正式読影を確認する |
| 高信号 | 明らかな低下なし | T2 shine-throughなども考え、DWIだけで病変の時期を決めない |
| 明らかな高信号なし | 明らかな低下なし | 画像だけで症状の原因を否定せず、神経所見と正式読影を確認する |
DWIは早期虚血性変化の検出に有用ですが、偽陰性や脳梗塞以外での拡散制限もあります。画像と神経症状が一致しない場合ほど、「画像にないから問題ない」と結論づけず、症状の経過や撮像時点、画像診断報告書を確認することが重要です。
FLAIR|髄液信号を抑えて病変を確認する
FLAIRはT2強調画像を基盤に脳脊髄液の信号を抑えることで、脳室や脳溝に近い病変を確認しやすくする画像です。白質病変、脳血管障害、炎症性病変など幅広い場面で利用されます。
PT・OT・STが脳梗塞例を確認するときは、DWIで認めた病変がFLAIRでどのように見えるかを確認すると、画像の時系列を考える材料になります。ただし、FLAIRの信号だけから個々の患者の正確な発症時刻を決めることはできません。
DWI-FLAIR mismatchは治療選択にも使われる画像情報
DWIでは病変を認める一方、同部位がFLAIRでは明瞭な高信号を示していない状態は、DWI-FLAIR mismatchと呼ばれます。発症時刻不明の急性期脳梗塞では、発症時刻を推定し、再灌流療法の適応を検討する際に利用される画像情報の一つです。
ただし、PT・OT・STがDWI-FLAIR mismatchを見て「発症から○時間」と独自に確定したり、血栓溶解療法などの治療適応を判断したりするものではありません。正式な画像診断と医師の治療方針を理解するための背景知識として位置づけます。
T2*・SWI|出血性変化や微小出血を確認する
T2*強調像とSWIは、血液分解産物や鉄沈着などによる磁化率の変化を捉えやすい画像です。脳出血、脳微小出血、外傷性軸索損傷などを確認する場面で重要になります。
SWIは信号強度だけでなく位相情報も利用することで、T2*強調像より微小出血や細い静脈、鉄沈着などを描出しやすい特徴があります。一方で、画像上の低信号には血管や石灰化、アーチファクトなどが含まれる場合もあるため、黒く見える部分をすべて「出血」と判断してはいけません。
確認ポイント:T2*/SWIで低信号を見つけた場合は、「低信号がある」という観察と、「その低信号が何を意味するか」という診断を分けます。カルテへ反映するときも、画像診断報告書の表現を確認し、自分の画像確認だけで新規出血などの診断名へ置き換えないことが重要です。
T1・T2|「白い・黒い」の暗記だけで判断しない
T1強調像とT2強調像は頭部MRIの基本となる画像ですが、「T1は慢性」「T2は急性」のように病変時期だけで単純化すると誤解につながります。それぞれの特徴を理解し、FLAIRやDWIなど他の画像と組み合わせて確認します。
T1強調像
T1強調像は解剖学的な構造や形態を確認しやすい画像です。脳全体の形態、萎縮、病変の位置関係などを整理するときに役立ちます。造影MRIでは造影前後のT1強調像が重要になる場合もありますが、PT・OT・STが日常的に画像情報を確認する際は、まず「どの構造に病変があるか」を把握する材料として整理すると理解しやすくなります。
T2強調像
T2強調像では水分の多い組織や病変が高信号を示すことが多く、多様な頭蓋内病変の確認に利用されます。ただし、高信号になる原因は一つではありません。T2だけで疾患や病変時期を決めるのではなく、FLAIR、DWI、ADCなどとの関係を確認します。
MRA|血管の描出を確認する
MRAは頭蓋内血管の走行、狭窄、閉塞などを確認するための血管画像です。急性期脳梗塞ではDWIとともに重要で、主幹動脈閉塞などの血管情報を確認するために利用されます。
一方、一般的なTOF-MRAは血流を利用して血管を描出するため、血流が遅い部分や乱流がある部分では信号が低下し、狭窄が実際より強く見えることがあります。そのため「血管が細く見える」「途中で描出されない」という見た目だけで狭窄率や完全閉塞を確定せず、画像診断報告書や他の画像情報を確認します。
MRI所見と神経症状を照合する
リハ職にとってMRIを確認する大きな目的は、画像だけで診断することではなく、画像情報を身体所見や動作所見と結びつけることです。病変部位を確認したら、「この患者に現在みられている症状と説明がつくか」を照合します。
| 画像で確認すること | 臨床で照合すること |
|---|---|
| 病変の左右 | 麻痺、感覚障害、視野・空間認知などの左右差 |
| 病変の部位 | 運動、感覚、言語、認知、嚥下、協調運動などの障害像 |
| 病変の広がり | 単一症状だけでなく複数の神経症状との関係 |
| 前回画像との差 | 新たに出現・増悪した症状があるか |
| 画像診断報告書 | 自分が確認した画像情報と正式読影がどのように対応するか |
たとえば画像上の病変と現在の症状が合わない場合は、「画像の読み方を間違えた」と即断するのではなく、撮像時点と現在の状態が異なる可能性、既存病変、画像だけでは説明しにくい要因なども考慮します。新しい神経症状や明らかな増悪がある場合は、画像の自己解釈を続けるよりも、症状変化を速やかに共有することを優先します。
MRIだけでリハ実施可否や運動負荷を決めない
MRIは重要な臨床情報ですが、画像所見だけからリハを「通常」「軽負荷」「延期」と一律に分類することはできません。リハ実施可否や運動負荷は、診断・病態、治療内容、神経症状、意識状態、循環・呼吸状態、医師の指示などを統合して判断します。
特に急性期脳梗塞では、DWI、FLAIR、MRAなどの画像所見が再灌流療法を含む治療方針に関係する場合があります。PT・OT・STが画像から独自に治療適応や活動許可を決めるのではなく、医療チームで共有された診断・治療方針を確認したうえで評価・介入します。
その一方で、リハ職が画像情報を確認する価値は大きくあります。病変部位と症状を照合すると、「なぜこの動作が崩れているのか」「他に確認すべき神経所見はないか」「前回評価から症状が変化していないか」といった評価の焦点を整理しやすくなります。
MRIを記録へ反映するときは「正式読影」と「自分の確認」を分ける
MRIをカルテ記録へ反映するときは、画像診断報告書に記載された内容と、PT・OT・ST自身が画像を確認して得た情報を区別します。自分が画像上で気づいた所見を、正式な診断名のように記載しないことが重要です。
記録例
頭部MRI画像および画像診断報告書を確認。報告書では左放線冠の急性期梗塞について記載あり。画像上、該当部位のDWI高信号とADC低下を確認した。右上下肢の運動麻痺を認めており、画像情報と神経症状を照合した。評価時、前回から明らかな神経症状の増悪なし。治療方針を確認したうえでリハ評価を実施。
上記は記録方法の一例です。画像所見からリハ実施可否を独自に決定するためのテンプレートではありません。実際の記載方法や用語は、自施設の診療記録ルールや医療チーム内の運用に従ってください。
MRIの見方で迷いやすい5つのポイント
MRIの学習ではシーケンス名を暗記するだけでなく、誤解しやすい部分をあらかじめ区別しておくことが重要です。特に「1枚の画像だけで結論を出さない」ことを共通ルールとして持っておくと、臨床所見との照合につなげやすくなります。
| 迷いやすい考え方 | 整理のしかた |
|---|---|
| DWIが白い=急性期脳梗塞 | ADC、病変分布、症状、正式読影を併せて確認する |
| FLAIRが目立たない=異常なし | DWIなど他の画像との組み合わせで確認する |
| T2*/SWIの黒い点=すべて出血 | 磁化率変化として観察し、意味づけは正式読影を確認する |
| MRAで血管が細い=重度狭窄 | 血流による信号低下なども踏まえて画像診断報告書を確認する |
| MRIで病変が分かれば介入可否も決まる | 画像、症状、全身状態、治療方針を分けて確認する |
CTとMRIの違いは「どちらが優れているか」ではなく目的で考える
MRIは軟部組織のコントラストや拡散、磁化率、血管情報などに強みがありますが、すべての場面でCTより優先されるわけではありません。急性期の脳出血や頭部外傷、検査時間、患者状態、MRI非対応デバイス、骨病変や石灰化の評価など、CTが優先される状況もあります。
X線・CT・MRIそれぞれの特徴や制約を整理したい場合は、X線・CT・MRIの違いと使い分けで確認してください。
よくある質問
Q1. DWIが高信号なら急性期脳梗塞と考えてよいですか?
DWI高信号だけでは確定できません。ADC低下の有無、病変分布、他の画像、神経症状、正式な画像診断報告書を組み合わせて確認します。脳梗塞以外でも拡散制限を認めることがあります。
Q2. DWIとADCはどちらを先に見ればよいですか?
PT・OT・STの学習では、まずDWIで高信号域を確認し、その部位のADCが低下しているかを見ると整理しやすくなります。ただし、これは臨床所見との照合を目的とした確認方法であり、正式な画像診断の読影手順を定めるものではありません。
Q3. DWI-FLAIR mismatchがあれば発症4.5時間以内と判断できますか?
DWI-FLAIR mismatchは発症時刻不明の急性期脳梗塞で発症時刻の推定や再灌流療法の適応検討に利用される画像情報です。ただし、個々の患者についてPT・OT・STが画像だけから発症時刻や治療適応を確定するものではありません。
Q4. MRIを見たあと、リハ職が最も確認したいことは何ですか?
病変名を当てることではなく、正式読影で確認された病変部位と、現在の運動・感覚・言語・認知・嚥下などの神経症状を照合することです。新しい症状や明らかな増悪があれば、画像の自己解釈を続けるより情報共有を優先します。
次の一手|画像情報を神経症状へつなげる
MRIの各画像を見分けられるようになったら、次はシーケンス名をさらに暗記するのではなく、病変部位と神経症状を照合する練習へ進みます。CTを含む画像情報の特徴も合わせて理解すると、画像を理学療法・作業療法・言語聴覚療法の評価へつなげやすくなります。
参考文献
- 日本医学放射線学会. 脳神経領域の標準的撮像法. 画像診断ガイドライン2026. 公開2026年9月2日, 最終更新2026年9月18日.
- 日本医学放射線学会. 急性期脳梗塞患者に対する再灌流療法の適応決定において勧められる画像検査は何か? 画像診断ガイドライン2026. 公開2026年9月6日, 最終更新2026年9月18日.
- Nagaraja N. Diffusion weighted imaging in acute ischemic stroke: A review of its interpretation pitfalls and advanced diffusion imaging application. J Neurol Sci. 2021;425:117435. doi:10.1016/j.jns.2021.117435.
- Thomalla G, Simonsen CZ, Boutitie F, et al. MRI-guided thrombolysis for stroke with unknown time of onset. N Engl J Med. 2018;379(7):611-622. doi:10.1056/NEJMoa1804355.
- Bitar R, Leung G, Perng R, et al. MR pulse sequences: what every radiologist wants to know but is afraid to ask. Radiographics. 2006;26(2):513-537. doi:10.1148/rg.262055063.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

