骨折リスク評価の進め方|FRAX・DXA・転倒をどう見るか

評価
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骨折リスク評価は「骨の脆弱性」と「転倒」を分けて次の評価へ進めます

骨折リスク評価で最初に行うのは、FRAXの計算や骨密度の数値確認だけではありません。脆弱性骨折の既往、骨粗鬆症の評価・治療状況、骨折につながる臨床的危険因子に加えて、転倒歴や歩行・バランス、生活環境を確認し、「次に何を詳しく評価するか」を決めます。

この記事では、PT・OTなどのリハビリ職が初回評価で確認したい情報と、FRAX・DXA・転倒評価・医師への共有をどう使い分けるかを整理します。骨粗鬆症の診断や薬物治療の適否を決めるのではなく、見逃したくないリスクを拾い、必要な評価・連携へつなげることが目的です。

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最初に確認すること|すでに骨折を疑う状態ではないか

将来の骨折リスクを評価する前に、現在すでに骨折を疑う状態がないかを確認します。転倒や軽微な外力のあとに新しい強い疼痛が出た、急に荷重できなくなった、明らかな変形がある、これまで可能だった動作が急に困難になった場合などは、詳細な身体機能評価を進める前に医師へ共有し、画像検査や荷重・運動条件を確認します。

特に骨粗鬆症や骨脆弱性が疑われる患者では、大きな外傷がなくても脆弱性骨折が生じることがあります。「明確な転倒がないから骨折ではない」と決めず、発症状況、疼痛、荷重可否、動作能力の変化を合わせて確認することが重要です。

初回評価では6つの情報を拾います

骨折を疑う緊急性がなければ、次に「どの評価へ進むか」を決めるための情報を整理します。すべてを1つの点数へまとめるのではなく、骨の脆弱性に関する情報と、転倒につながる要因を分けて確認すると整理しやすくなります。

骨折リスク評価の初回に確認する情報
確認領域 確認する内容の例 次につながる評価・対応
骨折歴 成人後の骨折歴、軽微な外力による骨折、椎体・大腿骨近位部などの骨折歴 受傷機転・部位・時期の確認、医師との共有
骨粗鬆症関連情報 骨粗鬆症の診断歴、DXA結果、治療歴、服薬状況 骨密度や治療状況の確認
臨床的危険因子 年齢、低体重、喫煙、飲酒、糖質コルチコイド使用、関節リウマチ、続発性骨粗鬆症に関連する疾患など FRAXなどによる骨折確率評価の検討
転倒歴 転倒の有無・回数、転倒場面、時間帯、直前の動作 転倒要因の多因子評価
身体機能 歩行、バランス、立ち上がり、筋力、疼痛、補助具使用 必要な身体機能評価と転倒対策
栄養・生活環境 食事・栄養状態、活動量、履物、段差、照明、手すり、生活動線 多職種評価、環境調整、生活指導

この6領域は骨粗鬆症の診断基準そのものではなく、リハビリ職が初回情報を整理し、次に必要な評価や連携を選ぶための実務上の整理方法です。

骨折リスク評価の初回判断フロー。骨折を疑う状態の確認、初回に拾う6つの情報、FRAX・DXA・転倒評価・多職種共有、リハ職の対応を示す
骨折リスク評価では、骨折を疑う状態を先に確認し、骨の脆弱性と転倒要因を分けて次の評価・共有へ進みます。

FRAX・DXA・転倒評価は答える質問が違います

FRAX、DXA、転倒評価は、どれか1つを選べばよい評価ではありません。それぞれが答える質問が異なるため、「何を知りたいか」に応じて使い分けます。

FRAX・DXA・転倒評価の役割
評価 主に分かること リハ場面での注意点
FRAX 臨床的危険因子と必要に応じて大腿骨頸部BMDを用いた10年骨折確率 標準入力では転倒回数を直接入力しないため、転倒リスクは別に確認する
DXA 骨密度(BMD) 骨折歴や他の危険因子と合わせて解釈する
転倒評価 転倒につながる身体・薬剤・認知・環境などの要因 単一の身体機能テストだけで転倒リスク全体を判断しない

FRAXは「10年骨折確率」を確認したいときに使います

FRAXは、年齢、性別、身長・体重、骨折歴、両親の大腿骨近位部骨折歴、喫煙、糖質コルチコイド使用、関節リウマチ、続発性骨粗鬆症、飲酒などの臨床的危険因子と、必要に応じて大腿骨頸部BMDを用いて10年以内の骨折確率を推定するツールです。

FRAXモデルの対象年齢は40〜90歳です。入力方法や各項目の扱い、結果の読み方については、FRAXの使い方|入力と読み方で詳しく整理しています。

DXAは「骨密度」を確認したいときに使います

DXA(dual-energy X-ray absorptiometry)は骨密度を測定する検査であり、FRAXとは役割が異なります。すでにDXA結果がある場合は、測定部位やBMD、Tスコア・YAMなどを確認し、骨折歴や臨床的危険因子と合わせて整理します。

骨密度の値だけで骨折リスク全体を決めるのではなく、転倒歴や身体機能、生活環境も別に確認します。結果の読み方は、DXA(骨密度)の結果の見方で詳しく解説しています。

転倒評価は「転びやすさ」を別に確認します

骨折は骨の脆弱性だけでなく、転倒などの外力が加わることで起こります。そのため、骨折予防では「骨が脆弱か」と「転びやすいか」を分けて確認し、最後に両者を統合して考えます。

標準的なFRAXでは転倒回数を直接入力しません。FRAXの値だけを理由に転倒対策の必要性を判断せず、転倒歴、歩行・バランス、筋力、薬剤、認知・注意、視覚、履物、補助具、生活環境などを患者ごとに確認します。

次に何をするかは「何が未確認か」で決めます

初回評価の目的は、独自の「高・中・低」へ分類することではありません。確認できていないリスクを見つけ、必要な評価や医師・多職種との連携へつなげることが重要です。

初回情報から次の評価・対応へ進む考え方
初回で分かったこと 次に確認すること リハビリ職の対応例
骨折を疑う疼痛・荷重困難・動作悪化がある 骨折の有無、画像評価の必要性、荷重・運動条件 負荷を進める前に医師へ共有する
脆弱性骨折歴や臨床的危険因子がある 骨粗鬆症評価歴、FRAXを含む骨折リスク評価の状況 診療情報を確認し、未評価なら医師・チームへ共有する
DXA結果がある 測定部位、結果、既往骨折、治療状況 身体機能や転倒情報と並べて整理する
転倒を繰り返す・歩行が不安定 転倒場面と身体・薬剤・認知・環境などの要因 転倒評価を深め、補助具・介助・環境を調整する
FRAXの値だけでは大きなリスクが示されないが転倒リスクが高い 転倒歴、身体機能、薬剤、生活環境 FRAXだけで評価を終了せず、転倒予防を進める
骨の脆弱性と転倒の両方に懸念がある 骨粗鬆症評価と転倒要因の双方 一方だけに絞らず、多職種で優先課題を共有する

PT・OTは「診断」ではなく、骨折につながる情報を次の判断へ渡します

リハビリ職が確認するのは、歩行・バランス・立ち上がり・筋力などの身体機能だけではありません。問診や診療情報から、骨折歴、転倒歴、骨粗鬆症評価の有無、治療・服薬状況を把握し、評価されていないリスクがあればチームへ共有します。

日本骨粗鬆症学会のOLS PRIME Guideでも、骨折予防に向けたリスク評価として、骨密度・骨質、転倒、栄養、生活環境など複数の領域を確認する枠組みが示されています。リハビリ職はその中でも身体機能や転倒場面を具体化し、骨折予防につながる情報を多職種へ返しやすい立場です。

一方で、骨粗鬆症の診断や薬物治療の開始・変更をリハビリ職だけで決定するものではありません。「何が確認できたか」「何が未確認か」「リハ場面で何が危険か」を分けて共有すると、次の判断につながりやすくなります。

記録は「骨・転倒・次の行動」を分けて残します

記録では、独自の総合点を作るより、確認した事実と次の行動が追える形を優先します。「骨の情報」「転倒の情報」「身体・環境所見」「次に行うこと」を分けると、評価済みの内容と未確認事項が把握しやすくなります。

骨折リスク初回評価の記録例
項目 記録例
骨折・骨の情報 2年前に軽微な転倒で橈骨遠位端骨折。骨粗鬆症の診断・DXA実施歴は本人から確認できず。
転倒情報 過去6か月で2回転倒。いずれも夜間トイレ移動時。
身体・環境所見 方向転換時にふらつきあり。夜間は杖を使用せず、廊下の照明が暗い。
次の行動 骨粗鬆症評価歴を診療情報で確認し医師へ共有。転倒要因を追加評価し、夜間移動方法と環境を調整する。

「骨折リスクあり」だけで終えるのではなく、どの情報を根拠に何を確認し、次に何をするのかまで残すことがポイントです。

再評価は状態変化と評価目的に合わせます

初回評価後は、転倒、新たな骨折、疼痛や活動量の変化、薬剤・治療内容の変更、生活環境の変化などに応じて必要な項目を見直します。すべての患者に「2週間後」など同じ再評価間隔を設定するのではなく、病態、治療計画、リハビリの目的に合わせて設定します。

再評価のタイミングや、変化時に何を確認するかについては、骨折リスク評価の再評価と記録で詳しく整理しています。

よくある質問(FAQ)

FRAXが低ければ骨折予防の介入は不要ですか?

FRAXだけでは判断できません。標準的なFRAXでは転倒回数を直接入力しないため、転倒歴や歩行・バランス、薬剤、生活環境などに問題があれば別に評価します。FRAXは骨折確率を考えるための情報の1つとして扱います。

FRAXとDXAはどちらを先に見るべきですか?

目的が異なるため、一律の順番ではありません。FRAXは臨床的危険因子などから10年骨折確率を推定し、DXAは骨密度を測定します。すでにDXA結果がある場合はその結果も確認し、骨折歴や臨床的危険因子、転倒情報と合わせて整理します。

骨折歴がある場合もFRAXだけを確認すればよいですか?

FRAXだけで完結させません。まず骨折部位、受傷機転、時期、骨粗鬆症の評価・治療状況を確認します。脆弱性骨折が疑われる場合は診療情報を確認し、必要に応じて医師・チームへ共有します。

PT・OTが骨粗鬆症を診断できますか?

骨粗鬆症の医学的診断をリハビリ職だけで行うものではありません。リハビリ職は骨折歴、転倒歴、身体機能、生活環境などを評価し、未確認の骨折リスクや転倒要因を医師・多職種へ共有して、診療や骨折予防につなげます。

次の一手

初回評価で情報を整理したら、「骨の評価を深めるのか」「転倒要因を詳しく見るのか」「変化を追うのか」を決めます。詳細な評価は各記事へ分けることで、同じ説明を繰り返さずに確認できます。


参考文献

  • 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版. 2025. 日本骨粗鬆症学会:ガイドライン一覧
  • 日本骨粗鬆症学会. OLS PRIME Guide. 骨粗鬆症リエゾンサービス. OLS PRIME Guide(2026年9月19日閲覧)
  • Kanis JA, Johnell O, Oden A, Johansson H, McCloskey E. FRAX and the assessment of fracture probability in men and women from the UK. Osteoporos Int. 2008;19(4):385-397. doi:10.1007/s00198-007-0543-5.
  • Centre for Metabolic Bone Diseases, University of Sheffield. FRAX: Fracture Risk Assessment Tool. FRAX公式ツール(2026年9月19日閲覧)
  • Centre for Metabolic Bone Diseases, University of Sheffield. FRAX Frequently Asked Questions. FRAX公式FAQ(2026年9月19日閲覧)

著者情報

rehabilikun のプロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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