歩行速度( gait speed )の評価まとめ| 4 m / 6 m / 10 m を迷わず測って解釈する
歩行速度( gait speed )は、短時間で測れて臨床の意思決定に直結しやすい“移動能力のコア指標”です。本ページでは、病棟・外来・通所でも再現しやすいように、距離( 4 m / 6 m / 10 m )の違いと記録の固定ポイント、カットオフの読み替えを 1 枚で整理します。
結論は、「助走(加速)と減速を分け、計測区間の長さを固定」し、快適歩行( comfortable )と最速歩行( fast )を“同じ手順”で残すことです。小さな変化も追いやすくなり、介入の手応えが記録に乗ります。
評価は「順番」を固定すると、記録と連携が一気に整います。 評価 → 介入 → 再評価の型を 3 分で復習する ※ 非キャリア記事では 1 記事 1 回のみの固定 CTA です。
なぜ歩行速度が“外さない指標”なのか
歩行速度は、筋力・バランス・持久力・注意( dual task )など複数要素の“合成結果”なので、全体像の変化を 1 つの数値で追いやすいのが強みです。転倒・ADL・社会参加の見立てにも接続しやすく、評価の起点になります。
また、歩行速度は“予後の層別化”でもよく使われます。スクリーニングとして使うときは、疾患特異的評価(麻痺・失調・疼痛など)とセットで、どこがボトルネックかを切り分けると臨床が前に進みます。
測り方の基本|距離よりも「助走・減速・合図」を固定する
歩行速度は「距離」よりも、助走(加速)と減速を分けることが再現性のコツです。多くの運用では、加速 2 m +計測区間+減速 2 mを確保し、計測区間だけをタイム計測します。
記録のブレが出やすいのは、①合図( go のタイミング)②計測開始(足が線を“越えた瞬間”)③補助具/装具の条件です。施設内でテンプレ化しておくと、スタッフ間差が一気に減ります。
表は横にスクロールできます(スマホ対応)。
| 固定する項目 | 推奨 | 理由(ブレの原因) | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 計測区間 | 施設で固定(例: 4 m / 6 m ) | 距離が違うと比較が難しい | 「 6 m 区間」 |
| 助走・減速 | 各 2 m 確保 | 加速が入ると“遅く”出やすい | 「 2 m + 6 m + 2 m 」 |
| 歩行条件 | 快適( comfortable )+最速( fast ) | どちらか片方だと介入効果が見えにくい | 「 comfortable / fast 」 |
| 補助具・装具 | 同一条件で固定 | 用具変更で“別物”になる | 「 T 字杖+ AFO 」 |
| 試行回数 | 2 回の平均(条件ごと) | 1 回だと偶然誤差が大きい | 「 2 試行平均」 |
4 m / 6 m / 10 m の使い分け|現場で迷わない決め方
距離選びは「スペース」と「目的」で決めます。病棟で短く安全に回したいなら 4 m 〜 6 m、 10 m 歩行テスト( 10MWT )を“決まった手順”で回せるなら、快適/最速の比較がしやすくなります。
重要なのは、同じ患者は同じ距離・同じ条件で繰り返すことです。距離を変える必要がある場合は、変更した日を境に“系列を分ける”(別トラックとして管理)と誤解釈を防げます。
関連: 10 m 区間で標準化して測る場合は、こちらに手順をまとめました。10 メートル歩行テスト( 10MWT )の測り方と記録のコツ
解釈の早見|まずは「 0.4 / 0.8 / 1.0 m/s 」を読み替える
歩行速度は“厳密な診断”というより、介入優先度とリスクを層別化するための目安として使うと強いです。まずは、臨床でよく出てくる 0.4 / 0.8 m/s(歩行自立度の目安)と、フレイル/サルコペニア文脈でよく出る 1.0 m/sを押さえると判断が速くなります。
ただし、速度は“原因”を示しません。遅い場合は、麻痺・失調・疼痛・呼吸循環・認知など、どこが制限要因かを同時に評価して、介入の優先順位を決めます。
| 歩行速度 | 読み替え(例) | 次に見るべきポイント | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| < 0.4 m/s | 屋内移動が中心になりやすい | 立ち上がり、方向転換、介助量、安全管理 | 「屋内中心、介助量の再設計」 |
| 0.4 – 0.8 m/s | 屋外は制限付きになりやすい | 段差、路面変化、 dual task、疲労 | 「屋外は条件付き、環境調整」 |
| > 0.8 m/s | 屋外移動の選択肢が増えやすい | 耐久性、転倒歴、活動量、目標設定 | 「活動拡大の目標設定へ」 |
| < 1.0 m/s | フレイル/サルコペニア文脈で“低下”の目安 | 筋力・栄養・活動量・併存疾患 | 「身体機能低下のスクリーニング」 |
変化量の目安|“ 0.05 m/s ”と“ 0.10 m/s ”を使う
介入効果の判定は、統計的有意よりも臨床的に意味のある変化( meaningful change )を先に置くと迷いが減ります。歩行速度は、概ね小さな意味のある変化が 0.05 m/s 前後、はっきりした変化が 0.10 m/s 前後という目安がよく引用されます。
実務では、同一条件(距離・補助具・靴・床・合図)で繰り返した上で、“快適”と“最速”の両方が上がるかを確認すると、改善の解釈が安定します。
よくある失敗|タイムがブレる原因はだいたい 5 つ
歩行速度が“使いづらい”と感じる原因の多くは、患者要因ではなく手順の揺れです。特に、計測開始のタイミング(合図と同時に押す等)と、助走を取らずに計測してしまうミスが頻発します。
チームで運用するなら、まずは NG パターンを表で共有し、記録様式に「距離・助走・補助具」を入れておくと再現性が上がります。
| 項目 | NG | OK | 対策( 1 行) |
|---|---|---|---|
| 計測開始 | 「よーいドン」で押す | 足が計測線を越えた瞬間から | 開始ルールを“線越え”で統一 |
| 助走・減速 | 助走なし( 0 m )で計測 | 加速 2 m +計測+減速 2 m | 床マーキングを固定 |
| 補助具 | 毎回違う(杖あり/なし) | 同一条件で固定 | 「用具」欄を記録に入れる |
| 歩行条件 | 指示が曖昧 | comfortable / fast を明確に分ける | 指示文をテンプレ化 |
| 床・靴 | 床や靴が毎回違う | 同じ場所・同じ靴で実施 | 実施場所を固定する |
中止基準と安全管理|“測る前”に確認する
歩行速度は“頑張れば上がる”ため、リスクの見落としが起きやすい指標です。最速歩行( fast )を入れる場合は、バイタル・息切れ・胸部症状・ふらつきを事前に確認し、必要なら comfortable のみで運用します。
安全管理は「実施前の確認 → 実施中の観察 → 実施後の反応記録」の 3 点セットです。中止の言語(例:胸痛、強いめまい、転倒リスク増大)をチームで共有しておくと、運用が安定します。
よくある質問( FAQ )
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Q1. 快適歩行と最速歩行、どちらを優先して測りますか?
A. 迷ったらまずは快適歩行( comfortable )を優先し、同じ条件で繰り返せる運用を作ります。最速歩行( fast )は、転倒リスクや呼吸循環負荷を見て追加します。両方あると“改善の質(余裕が増えたのか、最大が伸びたのか)”が読みやすくなります。
Q2. 距離を 4 m と 6 m で混ぜてしまったら、どう扱いますか?
A. 同じ系列として比較せず、距離が変わった日を境にトラックを分けるのがおすすめです。距離の違いは測定誤差ではなく条件変更なので、同列比較すると誤解釈が起きます。
Q3. 杖や歩行器を使っている人でも測っていいですか?
A. 測って構いません。重要なのは補助具・装具を固定し、記録に明記することです。「杖ありの歩行速度」として追えば、介入での変化が追いやすくなります。
Q4. 歩行速度が遅いとき、次に何を評価すべきですか?
A. 速度は原因を示さないので、麻痺/失調/疼痛/呼吸循環/注意( dual task )のどこが制限かを切り分けます。実務では「立ち上がり」「方向転換」「耐久性」「転倒歴」の順に当たりをつけると整理しやすいです。
参考文献
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- Perera S, Mody SH, Woodman RC, Studenski SA. Meaningful change and responsiveness in common physical performance measures in older adults. J Am Geriatr Soc. 2006;54(5):743-749. PubMed
- Studenski S, Perera S, Patel K, et al. Gait speed and survival in older adults. JAMA. 2011;305(1):50-58. doi: 10.1001/jama.2010.1923(PubMed)
- Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 consensus update on sarcopenia diagnosis and treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. doi: 10.1016/j.jamda.2019.12.012(PubMed)
- Bohannon RW, Andrews AW. Normal walking speed: a descriptive meta-analysis. Physiotherapy. 2011;97(3):182-189. doi: 10.1016/j.physio.2010.12.004(PubMed)
- Bohannon RW. Comfortable and maximum walking speed of adults aged 20-79 years: reference values and determinants. Age Ageing. 1997;26(1):15-19. doi: 10.1093/ageing/26.1.15(PubMed)
- Fritz S, Lusardi M. White paper: “walking speed: the sixth vital sign”. J Geriatr Phys Ther. 2009;32(2):46-49. doi: 10.1519/00139143-200932020-00002(PubMed)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに
歩行速度は、安全の確保 → プロトコル固定 → 速度の記録 → 再評価の“リズム”を作ると、介入の効果が数字で追えるようになります。面談準備のチェックと職場評価シートもまとめて整えるなら、/mynavi-medical/ のダウンロードも活用して、次の一手まで最短でつなげてください。

