脳卒中上肢リハ×ニューロモデュレーション実務総論

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脳卒中の上肢リハ×ニューロモデュレーション実務| tDCS / rTMS / FES-NMES / BCI の使い分け

脳卒中の上肢リハでは、「反復練習はしているのに実用性が上がらない」「随意運動が弱く、反復が回らない」「痙縮・痛みで課題が崩れる」という詰まりが起きやすくなります。ここで重要なのが、ニューロモデュレーションを“機器単体”ではなく、評価 → 反復 → 再評価の流れに組み込む視点です。

本記事は親記事(総論)として、 tDCS / rTMS / FES-NMES / BCI の立ち位置を 1 ページで整理します。まず全体の判断軸を固定し、そのうえで各論記事(子記事)へ進める構成です。これにより、現場での選択と記録のばらつきを減らし、チームで再現しやすい運用に寄せられます。

まずの結論|迷ったらこの 3 点だけ

  • 機器選択より先に「ねらい」を 1 つ固定する:随意、分離、巧緻、使用頻度のどれを上げるかを先に決める。
  • タイミングを固定する:前処置( tDCS / rTMS )か、同時併用( FES / NMES )か、閉ループ( BCI )かを先に決める。
  • 再評価は短く同一条件で行う:成功率・代償・疲労・日常使用を同じ軸で追う。

使い分け早見|4 手段の立ち位置

脳卒中上肢リハにおけるニューロモデュレーションの使い分け(成人・実務の最小セット)
手段 向く局面 主なねらい 相性の良い練習 再評価の軸
tDCS 練習はできるが学習が定着しにくい 学習の土台(興奮性)を整える 刺激後の課題指向型反復 同一課題の成功率、翌週再現性
rTMS 随意運動が弱く反復が成立しにくい 出力の立ち上げ、半球間バランス調整 刺激後の到達・把持・リリース反復 FMA-UE 、 ARAT / WMFT 、代償の質
FES / NMES 随意が弱いが動きは作れる 運動出力補助+求心性入力で反復を成立 課題同時併用(到達・把持・リリース) 反復回数、成功率、疼痛・疲労
BCI 出力は乏しいが運動意図は保たれる 意図とフィードバックの閉ループ形成 MI + FES / ロボ接続、段階的課題化 課題成立率、継続可能性、日常使用

導入判断フロー|総論で固定する 5 ステップ

  1. ねらい設定:今日の目標を 1 つに絞る(例:把持成功率を上げる)。
  2. 局面判定:学習停滞か、出力不足か、反復不足か、重度意図活用かを判定。
  3. 手段選択: tDCS / rTMS / FES-NMES / BCI から 1 つ選ぶ。
  4. 実装設計:前処置か同時併用か閉ループかを固定し、反復課題へ接続。
  5. 短時間再評価:同一課題で成功率・代償・疲労・使用頻度を記録。

1 セッションの共通型|10 分準備 → 20 分実装 → 3 分再評価

上肢ニューロモデュレーション実務の共通セッション設計
工程 時間目安 実務ポイント 記録
準備 5–10 分 疼痛、痙縮、疲労、覚醒、体調を確認 開始可否、目標 1 つ
実装 15–30 分 選択手段を反復課題へ接続(前処置/同時/閉ループ) 回数、成功率、代償
再評価 2–3 分 同一課題で比較、次回難度を決定 改善点、次回の一手

安全管理の最小セット|中止・延期基準を固定する

上肢ニューロモデュレーション安全確認(施設 SOP 優先)
場面 中止・延期の目安 見落としやすい点 記録ポイント
実施前 体調不良、疲労蓄積、強い不安 睡眠不足、脱水、疼痛増悪 可否判断と理由
実施中 不快感増悪、課題崩壊、集中断続 課題難度過多、休憩不足 中断理由、対応内容
実施後 疲労残存が強く翌日に影響 翌日状態の未確認 疲労、疼痛、次回調整

現場の詰まりどころ|先に潰す 3 つの失敗

詰まりは「刺激が弱い」より、設計と記録の未固定で起きます。先に よくある失敗 を確認し、次に 最小記録 を揃えるだけで、再現性は上がります。続けて読む:BCI 実務(重度例の閉ループ設計)

  • 目標を同時に複数追うと、反復が崩れやすくなります。
  • 回数だけ増やすと、代償の固定化を招きます。
  • 機能評価のみだと、日常使用への接続が弱くなります。

よくある失敗と対策|原因→その場の修正

上肢ニューロモデュレーション実務で起きやすい失敗
失敗 原因 その場の修正 次回予防
刺激後に反復が少ない 課題難度が高すぎる 成功 7 割に難度を下げる 易しい版/標準版を事前準備
代償が増えて質が低下 量優先でフォーム崩壊 回数を一時的に減らす 代償チェックを記録固定
翌週に戻る 日常場面へ接続できない 使う場面を 1 つ決める 使用頻度記録を追加

記録テンプレ|1 分で残す最小セット

上肢ニューロモデュレーションの最小記録(チーム共有)
項目 記載例 目的
今日のねらい 把持 → リリース成功率を上げる 焦点の固定
選択手段 rTMS 前処置 → 課題反復 20 分 運用再現性
結果 成功 30 / 45( 67 % ) 量と質の可視化
代償・疲労 肩すくめ軽度、疲労中等度 安全継続
次回の一手 距離 + 5 cm で再試行 段階的難度調整

子記事ガイド|各論に進むときの入口

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

まず 1 つ選ぶなら、どれから始めるべきですか?

局面で決めるのが最短です。学習停滞なら tDCS、出力不足なら rTMS、反復不足なら FES / NMES、重度で意図活用なら BCI から検討します。

効果判定は何を揃えると良いですか?

同一課題の成功率、代償、疲労、日常使用の 4 軸を揃えると、担当者が変わっても比較しやすくなります。

安全面で最も重要なポイントは何ですか?

中止・延期基準を事前に固定することです。体調、疼痛、不快感、集中持続、翌日影響を毎回同じ順で確認します。

総論と各論はどう使い分ければよいですか?

総論は「選び方と運用の軸」を決めるページ、各論は「その手段をどう回すか」を実装するページです。まず総論で軸を固定し、次に各論へ進むと迷いが減ります。

次の一手

教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  1. Butler AJ, Shuster M, O’Hara E, et al. A meta-analysis of the efficacy of anodal transcranial direct current stimulation for upper limb motor recovery in stroke survivors. J Hand Ther. 2013;26(2):162-170. doi: 10.1016/j.jht.2012.07.002
  2. Chen G, Lin T, Wu M, et al. Effects of repetitive transcranial magnetic stimulation on upper-limb and finger function in stroke patients: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Front Neurol. 2022;13:940467. doi: 10.3389/fneur.2022.940467
  3. Loh MS, Kuan YC, Wu CW, et al. Upper Extremity Contralaterally Controlled Functional Electrical Stimulation Versus Neuromuscular Electrical Stimulation in Post-Stroke Individuals: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Neurorehabil Neural Repair. 2022;36(7):472-482. doi: 10.1177/15459683221092647
  4. Cervera MA, Soekadar SR, Ushiba J, et al. Brain-computer interfaces for post-stroke motor rehabilitation: a meta-analysis. Ann Clin Transl Neurol. 2018;5(5):651-663. doi: 10.1002/acn3.544

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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