ADL-D scale( COPD )の使い方|息切れによる ADL 制限を可視化

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ADL-D scale(COPD の「息切れ×ADL」評価)|汎用 ADL では拾えない制限を可視化する

ADL はできているのに、本人は「動くのがつらい」「家事で息が上がる」と訴える。COPD をはじめとする慢性呼吸器疾患では、この“息切れのせいで ADL が細くなる”状態が起こりやすく、Barthel Index や FIM のような汎用 ADL 尺度だけでは変化を拾いきれないことがあります。

ADL-D scale(Activity of Daily Living Dyspnoea scale)は、日常生活動作の場面ごとに「息切れによる制限」を定量化し、介入前後の変化や、患者教育(ペーシング/呼吸法/家事動作の工夫)の優先順位づけに使えるツールです。本記事では、設問の転載は避けつつ、臨床で迷わない“運用の型”をまとめます。

評価は「順番」を固定すると、共有と再評価が一気に安定します。 評価 → 介入 → 再評価の型を 3 分で復習する(PT の実務ガイド)

ADL-D scale とは(何を測る尺度?)

ADL-D scale は、COPD 患者の「日常生活での息切れにより、どれだけ活動が制限されているか」を評価する目的で開発された尺度です。開発研究では、パイロット質問票から臨床的重要性や実施頻度の観点で項目を整理し、最終的に 15 項目のスケールとして提示されています。

ポイントは、介助量(できる/できない)ではなく、“できるけど苦しい”や“避けるようになった”といった、症状負荷を反映しやすい点です。だからこそ、呼吸困難の自己管理(ペーシング、休息の取り方、家事の分割、呼吸法)と結びつけやすくなります。

どんなときに使う?(適応・使いどころ)

ADL-D scale は、次のような場面で特に威力を発揮します。

  • 汎用 ADL は高得点だが、外来・在宅で「動くと息切れ」の訴えが強い
  • 呼吸リハの介入前後で、“生活のしんどさ”が変わったかを追跡したい
  • 退院支援や生活指導で、どの ADL を先に整えるか優先順位を付けたい
  • mMRC の 1 問だけでは粗いので、もう一段、場面別に深掘りしたい

一方で、急性増悪直後や、強い認知機能低下で自己報告の信頼性が担保しにくい場合は、観察評価(動作テスト・家族情報)を優先し、状態が落ち着いてから ADL-D を再導入する方が安全です。

実施の流れ(3 ステップで標準化)

設問文の転載は避けますが、運用は次の 3 ステップに固定するとブレが減ります。

ステップ 1:評価期間を固定する

「過去 1 週間」など、回答の対象期間を最初に固定します。増悪・感染・引っ越し等のイベントがあった場合は、その影響がどこまで混ざるかをメモしておきます。

ステップ 2:場面を具体化して答えてもらう

「家事」「更衣」などの抽象語では、患者さんが想像する動作がバラつきます。実施時は、患者さんの生活に合わせて“同じ場面”を思い浮かべられるように、短い具体例を添えて答えてもらいます(例:階段の段数、買い物の距離、掃除のやり方など)。

ステップ 3:息切れで「避けた/休んだ/速度を落とした」を拾う

ADL-D の価値は、「できるか」よりも「息切れのせいで行動が細くなる」部分を拾える点です。回答が高く出た項目は、そのまま介入の優先順位になります(ペーシング、休息の挿入、動作の分割、環境調整、呼吸法、活動量計画)。

関連:心不全・呼吸器の “症状を加味した ADL 評価” の全体設計は こちら(症状 × ADL の評価設計) にまとめています。

解釈のコツ(点数を“次の一手”に変換する)

ADL-D は、点数の大小だけで完結させず、次の 2 つに落とし込むと臨床で使えます。

  • 生活のボトルネック項目:息切れが強く、生活が細る入口になっている ADL
  • 再現条件:いつ・どこで・どんな速度/休息で息切れが出るか(条件の固定)

同じ点数でも「速度を落として達成した」のか、「途中で休みながら達成した」のかで、指導内容は変わります。記録では、点数とセットで“その人の条件”を 1 行で残すのがおすすめです。

mMRC/CAT/6MWT とどう使い分ける?(早見表)

呼吸器の評価は、単独で“正解”が出るより、役割分担で精度が上がります。ADL-D は「生活場面での息切れ」を深掘りする位置づけです。

COPD でよく併用する評価の役割分担(臨床運用の早見)
評価 主に見るもの 強み 弱み/注意
ADL-D 生活場面での息切れによる ADL 制限 “できるがつらい”を拾い、介入の優先順位に直結 自己報告が前提。状態変動が大きい週は条件メモ必須
mMRC 息切れ重症度(ざっくり) 1 問で速い。スクリーニングに強い 粗い。生活場面の優先順位づけには情報不足になりやすい
CAT 症状負担(QOL 寄り) 総合的に症状を捉えられる “どの ADL が詰まっているか”は直接は分かりにくい
SGRQ 疾患特異的 QOL 研究・比較に強い やや長い。外来の短時間運用には工夫が要る
6MWT 歩行耐久性(パフォーマンス) 客観指標として強い。介入効果の検出に向く “生活のどの場面がつらいか”は質問票で補う必要

現場の詰まりどころ(よくある失敗と対策)

ADL-D を“使える評価”にするための失敗回避
よくある失敗 なぜ起きる? 対策(記録ポイント)
回答の対象期間が毎回バラバラ 増悪や天候で生活が変わるのに、条件を固定していない 「過去 1 週間」など期間を固定し、イベント(感染・入退院)を 1 行でメモ
項目の“動作像”が患者と評価者で違う 「家事」「移動」など抽象語で答えてしまう 段数・距離・作業時間など、本人の生活に即した具体例で同じ場面を想起させる
点数だけ記録し、介入に繋がらない 評価が“結果報告”で止まる 高得点項目を「優先順位 1〜3」に変換し、ペーシング/休息挿入/環境調整をセットで書く

5 分で回すミニ運用(外来/訪問の型)

  1. mMRC:入口の重症度(1 分)
  2. ADL-D:詰まり項目を 2〜3 個だけ深掘り(3 分)
  3. 次回までの宿題:詰まり ADL を 1 つ選び、「速度を落とす/途中休憩を入れる」など 1 つだけ行動目標(1 分)

この型にすると、評価が“生活指導の優先順位づけ”として機能し、再評価も回しやすくなります。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

ADL-D は心不全にも使えますか?

COPD を対象に開発・検証された尺度なので、原則は COPD を中心に運用するのが安全です。心不全で「症状×ADL」を整理したい場合は、NYHA や SAS(活動能力の推定)と、6MWT などのパフォーマンス評価を組み合わせて設計すると臨床判断に直結しやすくなります。

mMRC があれば ADL-D は不要ですか?

mMRC は入口のスクリーニングに強い一方で、「どの生活場面がボトルネックか」は分かりにくいことがあります。ADL-D は“場面別の詰まり”を拾えるので、生活指導や家事動作の工夫に繋げたいときに有用です。

増悪があった週は評価していい?

評価は可能ですが、点数の比較解釈が難しくなります。実施するなら「過去 1 週間の中で増悪(感染・受診・薬変更)があった」ことを明記し、次回の安定期に再評価して“ベースライン”を作るのがおすすめです。

ADL-D の結果は、どう記録するとチームで使えますか?

点数だけでなく、上位 2〜3 項目を「生活のボトルネック」として列挙し、再現条件(段数/距離/作業時間/休息)を 1 行で残すと共有が速くなります。次回はその条件を揃えて再評価できます。

次の一手(関連ページ)

参考文献

  1. Yoza Y, Ariyoshi K, Honda S, Taniguchi H, Senjyu H. Development of an activity of daily living scale for patients with COPD: the Activity of Daily Living Dyspnoea scale. Respirology. 2009;14(3):429-435. doi: 10.1111/j.1440-1843.2009.01479.x / PubMed: 19207122
  2. Mahler DA, Weinberg DH, Wells CK, Feinstein AR. The measurement of dyspnea: contents, interobserver agreement, and physiologic correlates of two new clinical indexes. Chest. 1984;85(6):751-758. PubMed: 6723454
  3. American Thoracic Society. Dyspnea: mechanisms, assessment, and management: a consensus statement. Am J Respir Crit Care Med. 1999;159(1):321-340. doi: 10.1164/ajrccm.159.1.ats898

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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