FIM 認知 5 項目は「介助の種類」で採点する
FIM の認知 5 項目(理解・表出・社会的交流・問題解決・記憶)は、運動項目よりも採点者間で判断が割れやすい領域です。結論からいうと、声かけ・監視・手がかりで本人の行動が成立するなら 5 点を中心に検討し、制止・接触誘導・判断の代行が入るなら 4 点以下を疑うと整理しやすくなります。
この記事では、PT / OT / ST が臨床で迷いやすい FIM 認知 5 項目の採点を、5 分フロー、5 点と 4 点以下の境界、項目別の見立て、記録例までまとめます。FIM 全体の点数構造や 18 項目の位置づけを先に確認したい場合は、FIM 総合ガイドと併用すると、チーム内の言葉をそろえやすくなります。
FIM 認知 5 項目の記録シート PDF
採点時に迷いやすい「介助の種類」「場面」「採点根拠」を 1 枚で整理できる A4 記録シートです。点数だけでなく、声かけ・手がかり・監視・制止・接触誘導・代行のどれが入ったかを残すことで、チーム内の採点差を減らしやすくなります。
印刷して使う場合は、評価日・評価場面・5 項目ごとの点数・根拠メモを記入し、再評価時に前回との差分を確認してください。
採点の入口は「できたか」ではなく「何を介助したか」で決める
FIM 認知項目では、課題の成否だけで点数を決めるとブレやすくなります。見るべき入口は、本人がどこまで自分で判断・理解・表出でき、どの種類の介助が入ったかです。声かけで修正できた失敗と、スタッフが判断を代行した成功は、同じ「できた」に見えても意味が違います。
そのため、採点前に介助を「声かけ」「手がかり」「監視」「制止・接触誘導」「代行」に分けます。ここをそろえると、5 点と 4 点以下の境界だけでなく、次回の再評価やカンファレンスで共有すべき内容も明確になります。
| 介助の種類 | 臨床での例 | 点数の方向性 | 記録に残す語句 |
|---|---|---|---|
| 声かけ | 手順のリマインド、注意喚起、短い再説明 | 5 点を中心に検討 | 「声かけで修正」 |
| 手がかり | 選択肢提示、メモ提示、指差し、合図 | 頻度により 5 点〜 4 点を検討 | 「選択肢提示で可」 |
| 監視 | 危険回避のため目を離せない、近接で見守る | 5 点寄りで検討 | 「近接見守り要す」 |
| 制止・接触誘導 | 危険行動を止める、手を取って方向づける | 4 点以下を検討 | 「制止あり」「接触誘導あり」 |
| 代行 | 判断・選択・手順をスタッフが代わりに決める | 3 点以下も視野 | 「判断は代行」 |
5 分フロー:声かけで済むか、制止・代行まで入るかを先に分ける
採点で迷ったら、最初から 7 段階すべてを当てはめようとせず、まず 5 点と 4 点以下の境界を切ります。最初の分岐は、身体に触れる介入や判断の代行が入ったかです。ここが入ると、単なる声かけではなく、行動そのものへの介入として扱いやすくなります。
次に、声かけや手がかりで本人が課題を再開できたかを確認します。本人の主体性が残り、危険回避も声かけで成立するなら 5 点を中心に検討します。逆に、手順を最後まで導く、判断を代わりに決める、危険行動を止める必要がある場合は、4 点以下の根拠を記録します。
| 順番 | 確認すること | 5 点に寄る所見 | 4 点以下を疑う所見 |
|---|---|---|---|
| 1 | 課題が成立した場面を決める | 更衣・食事・病棟移動など場面が明確 | 場面が不明で採点根拠が説明できない |
| 2 | 介助の種類を分ける | 声かけ・見守り・手がかりで成立 | 制止・接触誘導・代行が入る |
| 3 | 本人の判断が残っているか見る | 声かけ後は本人が選択・再開できる | 選択や手順をスタッフが決めている |
| 4 | 安全管理の強さを見る | 危険場面は注意で修正できる | 危険回避のため手が出る、止める必要がある |
| 5 | 記録の一言に落とす | 「声かけで修正」「メモ提示で可」 | 「制止あり」「判断は代行」 |
5 点は「身体介助なし+監視・促し」で成立する点数帯です
FIM 認知 5 点は、完全自立ではなく、監視・声かけ・準備・手がかりが必要な状態として考えると迷いにくくなります。重要なのは、声かけがあったこと自体ではなく、声かけ後に本人が理解・判断・表出・行動を再開できたかです。
たとえば、問題解決で手順が止まっても、短い声かけで本人が再開できるなら 5 点を中心に検討します。一方で、声かけでは修正できず、手順を最後まで導く、危険行動を止める、意思決定を代行する場合は、5 点に置き続けない方が採点の根拠を説明しやすくなります。
認知 5 項目は「困る場面」と「記録語」をそろえる
認知 5 項目は、同じ声かけでも観察すべき場面が異なります。理解は説明の受け取り方、表出は意思の伝え方、社会的交流は関わり方、問題解決は段取りと危険判断、記憶は予定や依頼の保持を見ます。項目ごとに見る場面をそろえると、採点の再現性が上がります。
記録では、点数だけでなく「どの場面で、どの介助が必要だったか」を残します。次の図で 5 項目の見分けポイントを押さえてから、項目別の記録語を確認すると整理しやすくなります。
| 項目 | 見る場面 | 5 点に寄る場面 | 4 点以下を疑う場面 | 記録の一言例 |
|---|---|---|---|---|
| 理解 | 説明・指示・会話の受け取り | 短文や再説明で理解できる | 説明だけでは成立せず、選択肢提示や誘導が頻回 | 短文で理解、再説明 2 回で可 |
| 表出 | 意思表示・要望・困りごとの伝達 | 時間や質問で意思を伝えられる | 代弁や意思確認の代行が必要 | 語想起遅延あり、質問で補うと成立 |
| 社会的交流 | 病棟・訓練・集団場面での関わり | 注意喚起で修正できる | 制止が必要、逸脱行動で常時介入が必要 | 逸脱あり、注意で修正(制止なし) |
| 問題解決 | 段取り・危険判断・優先順位づけ | 声かけで手順を立て直せる | 判断や手順をスタッフが代行する | 声かけで更衣手順を再開、判断は本人 |
| 記憶 | 予定・依頼・注意点の保持 | メモや手がかりで思い出せる | 重要事項を保持できず、管理を代行する | メモ提示で予定を想起、確認は軽度 |
5 点と 4 点以下の境界は「制止・接触誘導・代行」で判断する
5 点と 4 点以下の境界で最も使いやすいキーワードは、制止・接触誘導・代行です。声かけは情報の補助で、本人の判断や行動が残ります。一方、制止や接触誘導は行動そのものへの介入であり、代行は判断を本人の代わりに進めている状態です。
迷った場面では、「危険回避で手が出たか」「本人の判断が成立せず代わりに決めたか」「手順を最後まで導いたか」を確認します。これらが入っていれば、5 点ではなく 4 点以下の根拠として記録した方が、次回評価で再現しやすくなります。
| チェック項目 | 5 点に残りやすい所見 | 4 点以下を疑う所見 | 記録語 |
|---|---|---|---|
| 制止 | 声かけで危険行動を止められる | 危険回避のため実際に止める必要がある | 制止あり |
| 接触誘導 | 指示・合図で方向転換できる | 手を取る、身体に触れて誘導する | 接触誘導あり |
| 代行 | 本人が選択・判断できる | スタッフが判断や手順を代わりに決める | 判断は代行 |
現場の詰まりどころは「できた/できない」で採点してしまうことです
認知項目でよくある失敗は、結果だけを見て「できたから高い」「失敗したから低い」と判断してしまうことです。実際には、失敗があっても声かけで修正できれば 5 点に残ることがあり、逆に成功して見えてもスタッフが判断を代行していれば、点数は下がりやすくなります。
対策は、採点前に「介助の種類」と「介助が入った場面」を分けることです。更衣、病棟歩行、食事、ナースコール、予定確認など、どの場面で声かけ・手がかり・制止・代行が必要だったかを残すと、点数と介入方針がつながります。
ここまで整理しても毎回同じところで詰まる場合は、個人の努力だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
記録は「項目:介助の種類+場面+根拠」で 1 行にする
FIM 認知項目は、点数だけではチーム内で再現しにくい評価です。記録では、項目名、介助の種類、場面、根拠を 1 行にまとめます。たとえば「問題解決:更衣手順が止まるが、声かけで再開。判断は本人」のように書くと、5 点に置いた理由が伝わります。
点数を下げる場合も同じです。「記憶:予定確認はメモ提示で一部可能だが、服薬管理は代行」など、どこまでは本人ができ、どこから介助者が担ったかを分けます。記録語をそろえるほど、再評価時に点数の変化を説明しやすくなります。
| 型 | 書き方 | 例 | 伝わること |
|---|---|---|---|
| 5 点寄り | 項目:場面+声かけ/手がかり+本人の再開 | 問題解決:更衣で手順停止、声かけで再開。判断は本人 | 介助は情報補助にとどまる |
| 監視あり | 項目:危険場面+近接見守り+制止の有無 | 社会的交流:病棟で逸脱あり、注意で修正。制止なし | 監視の理由と強さ |
| 4 点以下を疑う | 項目:場面+制止/接触誘導/代行+理由 | 記憶:予定確認は困難、服薬管理はスタッフが代行 | 点数を下げる根拠 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
声かけが多いだけで 4 点に下げますか?
声かけの回数だけでは決めません。声かけで本人が理解・判断・行動を再開でき、制止・接触誘導・代行が入らないなら、まずは 5 点の枠で検討します。ただし、声かけが頻回で場面ごとに必要な場合は、頻度と場面を記録してチームで判断をそろえます。
安全のために常に目を離せない場合は 5 点ですか?
監視が必要な状態として、5 点を中心に検討します。ただし、危険行動を止めるために手が出る、身体に触れて誘導する、判断を代行する場面がある場合は、4 点以下を疑います。「近接見守り」「制止あり/なし」を記録に分けて残すと判断しやすくなります。
運動項目は自立なのに、認知だけ低いのはおかしいですか?
おかしくありません。運動能力と、理解・表出・問題解決・記憶の介助量は別の軸です。身体動作はできても、段取り、危険判断、予定の保持で介助が必要な場合は、認知項目の点数が低くなることがあります。
理解と問題解決のどちらで下げるか迷います。
説明そのものを受け取れない、短文や再説明が必要な場合は理解を中心に見ます。説明は理解できるが、段取り・優先順位・危険判断で止まる場合は問題解決を中心に見ます。迷う場合は、どの場面で何に介助が入ったかを 1 行で書いてから点数を検討します。
短時間で評価するコツはありますか?
場面を固定することです。更衣、移乗、病棟移動、食事、予定確認など、日常場面の中で 5 項目をまとめて観察します。毎回違う場面で評価すると点数が揺れやすいため、場面と介助語をそろえて記録するのが効率的です。
次の一手
- 全体像を確認する:FIM 総合ガイド(18 項目 × 7 段階)
- すぐ実装する:FIM 5 点(監視・促し)の判定ポイント
参考文献
- Keith RA, Granger CV, Hamilton BB, Sherwin FS. The functional independence measure: a new tool for rehabilitation. Adv Clin Rehabil. 1987;1:6-18. PubMed
- Hamilton BB, Laughlin JA, Fiedler RC, Granger CV. Interrater reliability of the 7-level functional independence measure (FIM). Scand J Rehabil Med. 1994;26(3):115-119. DOI
- Ottenbacher KJ, Hsu Y, Granger CV, Fiedler RC. The reliability of the functional independence measure: a quantitative review. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77(12):1226-1232. DOI
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


