DN4(神経障害性疼痛)スクリーニングの使い方|採点・解釈・記録テンプレまで
DN4( Douleur Neuropathique 4 )は、しびれ・電撃痛・灼熱感などから神経障害性疼痛が疑われる層を素早く抽出するスクリーニングです。結論から言うと、DN4 は「診断を確定する道具」ではなく、次に何を確認するか(分布の地図化・感覚所見の精度アップ・医師連携)を決める入口として使うと臨床が回ります。
一方で現場では「どのタイミングで取る?」「カットオフの扱いは?」「記録がバラつく」が詰まりどころです。本記事は評価手順( 3 ステップ )→ 解釈の型 → そのまま貼れる記録テンプレの順で、PT/OT/ST がチームで共有しやすい形に落とし込みます。
DN4 とは? 何が分かって、何が分からないか
DN4 は、問診で拾える症状の特徴と、ベッドサイドの簡易感覚所見を組み合わせてスコア化し、神経障害性の可能性が高いかを層別化します。ポイントは「神経障害性疼痛の確度を上げる」ための入口として、疑いをそろえることにあります。
注意点は、DN4 の高スコアだけで原因疾患が確定するわけではないことです。神経障害性疼痛は体性感覚神経系の病変または疾患に起因する痛みと整理され、評価は病歴・痛み分布・感覚異常・補助検査を組み合わせて確度( possible / probable / definite )を上げていく考え方が有用です。
いつ DN4 を使う? まず疑うサインをそろえる
DN4 は、侵害受容性疼痛(炎症・組織損傷)だけでは説明しづらいときに有効です。たとえばしびれを伴う痛み、電撃様・灼熱感、触れただけで増悪する(アロディニア)、分布がデルマトームや皮神経に沿う、などが揃うときは入口として DN4 を取る価値があります。
逆に、明確な外傷直後の局所痛や、荷重・動作で再現性高く増悪する痛みでは、まずは強さ( NRS など)と機能・活動の変化を定点観測し、必要時に DN4 へ進むほうが効率的です。DN4 は「疑わしいときに使う」ことで、チーム内の評価資源(時間と所見)が分散しにくくなります。
評価手順は 3 ステップ|条件固定 → 採点 → 次アクション
運用のコツは、DN4 を単発イベントにせず、同じ条件で反復できる手順にすることです。以下の 3 ステップに固定すると、申し送りと再評価が安定します。
「質問 → 所見 → 解釈」の順番をそろえ、最後に痛み分布(地図)と増悪 / 寛解パターンまで 1 セットで記録します。ここまで残せると、次の介入(運動負荷調整、セルフケア指導、医師連携)に直結します。
| ステップ | やること | 固定する条件 | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 1 | 疑うサインの確認(しびれ、電撃様、灼熱感、分布など) | 評価タイミング(例:リハ前 / リハ後 10 分) | 「どの動作で増悪したか」を 1 行で残す |
| 2 | 問診パート → 簡易感覚所見(触覚・ピン刺激・軽擦での増悪など) | 刺激の種類、左右差の見方、同じ部位で比較 | 所見は「正常 / 低下 / 過敏」を地図化して残す |
| 3 | スコア解釈 → 次アクション(追加の感覚評価、医師へ共有、負荷調整) | 同じ閾値で扱う(施設ルール) | 「次に何を確認するか」を 1 つ決めて書く |
スコアの読み方|カットオフは「疑いの濃さ」をそろえる道具
DN4 はカットオフ(運用の目安)をそろえることで、チーム内の判断がブレにくくなります。たとえば「 4 点以上」を合図に、分布の地図化を強化する、追加の感覚検査を実施する、医師へ共有して病歴・画像・薬物療法の検討につなげる、などの次アクションを決めておくと運用が安定します。
一方で、DN4 が低いからといって神経障害性を完全に否定できるわけではありません。痛みは混合(侵害受容性 + 神経障害性)になり得るため、スコアは確定ではなく層別化として扱い、病歴・分布・感覚異常の整合性を積み上げて確度を上げるのが安全です。
現場の詰まりどころ|DN4 が“効かなくなる”よくある失敗
DN4 は運用が雑だと情報量が落ちます。典型は「評価タイミングが毎回違う」「所見部位が曖昧」「左右比較がない」「分布(地図)が残っていない」です。特に感覚所見は、同じ刺激でも提示の仕方で結果が揺れやすいので、刺激の種類と部位を固定し、チームで表現をそろえるのがポイントです。
記録がバラつく施設では、先に記録枠(テンプレ)を統一しておくと一気に回ります。申し送りの質を上げたい場合は、面談前に「評価の順番」と「残すべき 1 行」をそろえる資料があると便利です。関連:面談準備チェック( A4 )と職場評価シートをまとめて確認する
そのまま貼れる記録テンプレ|DN4 + 分布 + 反応パターン
DN4 はスコア単体よりも、「どこが」「どんな刺激で」「どう変わるか」を残すと介入に直結します。下のテンプレは、カルテやリハ記録に貼って運用しやすい最小構成にしています。
ポイントは「分布(地図)」「増悪 / 寛解パターン」「次アクション」を 1 セットにすることです。これで再評価のたびに、運動負荷・セルフケア・生活指導の調整がしやすくなります。
| 項目 | 記録例(そのまま転記可) | メモ |
|---|---|---|
| 評価タイミング | リハ前 / リハ後 10 分 | 毎回そろえる |
| DN4(合計) | __/10 点( 4 点以上:疑い高) | 閾値は施設で統一 |
| 分布(地図) | 右 L5 デルマトーム優位 / 皮神経領域(簡略図) | 左右差が重要 |
| 簡易感覚所見 | 触覚:低下 / ピン:過敏 / 軽擦:増悪 | 刺激と部位を固定 |
| 増悪 / 寛解 | 長座位 5 分で増悪、歩行後 3 分で軽減 | 動作・温冷・伸張など |
| 次アクション | 温冷差・姿勢変化で再評価、必要時に医師へ共有 | 「次に 1 つ」決める |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
DN4 は PT が単独で実施していいですか?
施設の方針と役割分担が前提ですが、DN4 は「疑いの層別化」と「所見共有」を目的にすると運用しやすいです。診断の確定ではなく、所見(分布・感覚異常)をチームで同じ言葉にそろえる入口として使うと、医師連携や再評価がスムーズになります。
カットオフ 4 点以上はどう扱えばいいですか?
臨床では「 4 点以上=疑いが濃い層」として、分布の地図化、追加の感覚評価、医師への共有などに進む合図にすると迷いが減ります。スコアを“次アクションのトリガー”として扱うと、運用が安定します。
DN4 が低いのに、しびれや電撃痛っぽさがあります
痛みは混合になり得るため、DN4 だけで否定しないのが安全です。病歴・分布・感覚異常の整合性を再確認し、確度を段階的に上げる考え方で見立てると判断が安定します。必要に応じて、条件をそろえて再評価してください。
次の一手(続けて読む)
参考文献
- Bouhassira D, et al. Comparison of pain syndromes associated with nervous or somatic lesions and development of a new neuropathic pain diagnostic questionnaire (DN4). Pain. 2005;114(1–2):29–36. DOI: 10.1016/j.pain.2004.12.010
- Matsuki Y, et al. Reliability and validity of the Japanese translation of the DN4 Diagnostic Questionnaire in patients with neuropathic pain. J Anesth. 2018;32(3):403–408. DOI: 10.1007/s00540-018-2495-7
- Finnerup NB, et al. Neuropathic pain: An updated grading system for research and clinical practice. Pain. 2016;157(8):1599–1606. DOI: 10.1097/j.pain.0000000000000492
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

