MMT 4と5の違い|最大抵抗に耐えられるかだけで決めない
MMT(徒手筋力テスト)の Grade 4 と 5 は、どちらも重力に抗して利用可能な可動域を動かせるため、臨床で判定が揺れやすい範囲です。基本的には、Grade 5 はテスト肢位を最大抵抗に抗して保持できる状態、Grade 4 は強い〜中等度の抵抗には耐えられるものの、Grade 5 に相当する最大抵抗には耐えきれない状態として区別します。
ただし、「4=中等度抵抗」「5=最大抵抗」と機械的に覚えるだけでは十分ではありません。抵抗量には検査者の主観が入りやすいため、標準肢位・近位固定・代償・疼痛・抵抗方向をそろえたうえで、テスト肢位を維持できるかを見ることが重要です。
MMT全体の判定基準を先に確認したい方へ
| 項目 | Grade 4 | Grade 5 |
|---|---|---|
| 重力に抗した運動 | 利用可能な可動域を動かせる | 利用可能な可動域を動かせる |
| 抵抗 | 強い〜中等度抵抗に耐える | 最大抵抗に耐える |
| テスト肢位 | 強い抵抗では保持できても、最大抵抗には耐えきれない | 最大抵抗でも保持できる |
| 判定時の注意 | 疼痛・固定不良・代償による崩れと区別する | 代償で保持している場合は5と判断しない |
MMT Grade 4と5の判定基準|抵抗に対してテスト肢位を保てるか
Grade 4と5を分ける中心は、正しいテスト肢位で抵抗を加えたとき、その肢位をどこまで維持できるかです。Daniels & Worthingham系のMMTでは、Grade 5は最大抵抗に耐えられる状態、Grade 4は強い〜中等度の抵抗に耐えられる状態として整理されます。
そのため、Grade 4と5を判断するときは、最初から「何kg相当なら5」と数値化するのではなく、対象筋ごとの標準的な肢位と抵抗位置を用い、抵抗を加えたときの反応を確認します。
ポイント:MMTの「最大抵抗」は、検査者が全力で押すことを意味しません。対象筋に適した肢位・固定・抵抗位置をそろえたうえで、患者がテスト肢位を維持できる範囲まで抵抗を加えて判断します。
また、同じ「Grade 4」でも実際の筋力の幅は広くなります。特に4〜5の強い筋力帯では、MMTだけで細かな筋力差を区別することには限界があります。そのため、4と5の境界ではGradeそのものだけでなく、どの条件で保持でき、どこで肢位が崩れたかを記録しておくことが重要です。
抵抗のかけ方|方向・固定・代償の3点をそろえる
MMT 4と5の判定を安定させるには、抵抗の強さより先に抵抗方向・近位固定・代償の有無をそろえます。ここが変わると、同じ患者でもGrade 4と5が入れ替わる可能性があります。
抵抗は対象運動と反対方向へ加える
抵抗は基本的に、対象とする運動を妨げる方向へ加えます。ただし、実際の抵抗位置や力の向きは筋群ごとに異なるため、各筋の標準手順に従う必要があります。
抵抗を急激に加えるのではなく、患者がテスト肢位を取ったことを確認してから徐々に増やします。これにより、疼痛や驚きによる反射的な崩れと、筋力によるbreakを区別しやすくなります。
近位固定をそろえる
固定が不十分だと、対象筋ではなく体幹や隣接関節の動きで抵抗に対応してしまいます。肩関節なら肩甲帯や体幹、股関節なら骨盤、膝関節なら大腿部など、検査する筋群に応じて近位部を安定させます。
代償運動を見逃さない
Grade 5に見えても、肩すくめ、体幹側屈、骨盤挙上、股関節回旋などが加わっていれば、対象筋だけで抵抗に耐えているとは判断できません。
| 確認項目 | 見るポイント | 条件がずれた場合 |
|---|---|---|
| 肢位 | 対象筋に適した標準肢位になっているか | 抵抗条件そのものが変わる |
| 固定 | 近位関節・体幹・骨盤が逃げていないか | 対象筋以外の力が混ざる |
| 代償 | 体幹や隣接関節で動きを補っていないか | 実際より強く評価する可能性がある |
| 抵抗 | 位置・方向をそろえ、徐々に強めているか | 評価者間・経時比較で結果が揺れる |
| 疼痛 | 抵抗によって疼痛が誘発されていないか | 筋力ではなく疼痛で出力が制限される |
MMT 4と5で迷ったときの判断フロー
4と5で迷ったときは、いきなりGradeを決めるのではなく、肢位→代償→抵抗→break→判定を妨げる要因の順で確認します。評価時間を「3秒」「30秒」などで固定する必要はなく、対象筋の標準手順を再現することを優先します。
- 標準肢位を作る:対象筋に適した開始肢位・テスト肢位を設定します。
- 近位部を固定する:体幹・骨盤・肩甲帯などの不要な動きを抑えます。
- 代償がないことを確認する:対象運動以外の動きが混ざっていないか観察します。
- 抵抗を徐々に加える:標準的な抵抗位置・方向から抵抗を漸増します。
- テスト肢位が保てるかを見る:最大抵抗まで保持できればGrade 5、強い〜中等度抵抗には耐えるものの最大抵抗には耐えきれなければGrade 4を検討します。
- 疼痛などを確認する:疼痛・恐怖・理解不足・関節可動域制限などがあれば、純粋な筋力低下と分けて記録します。
注意:最大抵抗で肢位が崩れたからといって、直ちにGrade 4と決めるわけではありません。固定不足、代償、疼痛、恐怖心、指示理解などが原因で最大努力を発揮できなかった可能性を先に確認します。
breakが起きたときは「なぜ崩れたか」まで確認する
MMTでは、検査者が抵抗を加えたときにテスト肢位を保持できなくなる反応を、臨床上「break」と表現することがあります。ただし、breakそのものが筋力低下を意味するわけではありません。
たとえば肩外転で抵抗を加えた際、上肢が下がる前に肩すくめや体幹側屈が出た場合、対象筋の純粋な抵抗能力だけを見ているとは言えません。膝伸展でも、大腿部が浮く、骨盤が後方へ移動するなどの反応があれば、まず条件を整え直します。
| 崩れの原因 | 確認例 | 対応 |
|---|---|---|
| 筋力 | 正しい肢位・固定でも抵抗に耐えられない | Grade 4を検討する |
| 固定不足 | 体幹・骨盤・近位関節が動く | 固定を修正して再確認する |
| 代償 | 肩すくめ・体幹側屈・回旋などが出る | 代償を抑えた条件で再確認する |
| 疼痛 | 抵抗を強めると疼痛で力が抜ける | 疼痛制限として記録する |
| 理解・恐怖 | 指示が伝わらない、抵抗に対して力を抜く | 説明や練習後に再評価する |
MMT 4+・5-は使う?|標準Gradeと施設内運用を分ける
MMTでは、Grade 4と5の間を表す目的で「4+」「5-」などの表記が使われることがあります。しかし、標準的な0〜5の6段階評価とは別の補助的な表記として扱う必要があります。
特に4〜5の境界はもともと抵抗量の主観が入りやすく、細かくGradeを分けても評価者間の一致が必ずしも改善するとは限りません。実際に、MRC scaleへ4+を追加しても評価者間の一致が改善しなかったという報告があります。
そのため、4+や5-を施設内で使用する場合は、「どの状態を4+とするか」をあらかじめ統一し、Gradeだけでなく抵抗条件や崩れ方を文章で残すことをおすすめします。
例:「MMT 4+」だけで終わらせるより、「強抵抗まで保持可。抵抗増加で肢位崩れ。疼痛・代償なし」のように、判定根拠を添える方が再評価しやすくなります。
MMT 4と5の記録例|Grade+条件+崩れ方を残す
Grade 4と5では、数字だけを記録すると「前回と今回で何が違ったのか」が分かりにくくなります。経時比較では、Grade+抵抗条件+代償・疼痛+崩れ方を短く記録すると再現性が上がります。
| 場面 | 記載例 | 記録から分かること |
|---|---|---|
| Grade 5 | 右膝伸展 MMT 5。最大抵抗でもテスト肢位保持可。疼痛・明らかな代償なし。 | 5と判断した条件が分かる |
| Grade 4 | 右膝伸展 MMT 4。強抵抗まで保持可能。抵抗増加でテスト肢位崩れ。疼痛なし。 | 4と判断した根拠が分かる |
| 代償あり | 右肩外転 MMT 4。強抵抗で肩すくめ・体幹側屈が出現。固定条件をそろえ再評価予定。 | 純粋な筋力だけで判定していないことが分かる |
| 疼痛あり | 左膝伸展 MMT 4相当。抵抗増加で膝痛出現し最大抵抗は評価困難。 | 疼痛による評価制限を区別できる |
肩外転・膝伸展・足背屈でよくある代償
Grade 4〜5では、筋力そのものより代償によって「強く見える」ことがあります。代表的な3つの運動では、以下のような点を確認します。
| 運動 | 確認する代償 | 記録例 |
|---|---|---|
| 肩外転 | 肩すくめ、体幹側屈 | 抵抗増加で肩すくめ出現 |
| 膝伸展 | 骨盤後傾、大腿部の浮き、体幹後傾 | 強抵抗で骨盤後傾を伴う |
| 足背屈 | 下腿回旋、股関節運動 | 抵抗増加で下腿回旋代償あり |
MMT 4〜5は筋力差を細かく捉えにくい
MMTは特別な機器を使わず短時間で評価できる一方、Grade 4〜5のような強い筋力帯では、細かな筋力差を捉えにくいという限界があります。MRCも、Grade 0〜3の弱い筋力帯と比べて、Grade 4〜5の強い筋力帯では評価精度の課題が大きいことを示しています。
また、MMTでは検査者が加える抵抗量そのものを数値化できません。左右差や小さな経時変化を客観的に追いたい場合は、MMTだけで無理に4・5の差を細分化するより、HHD(ハンドヘルドダイナモメーター)による定量評価を追加する方が適しています。
Grade 4〜5の筋力を数値で追いたい場合
MMT 4と5でよくある誤判定
Grade 4と5では、「強そうだから5」「最大抵抗で少し動いたから4」と感覚的に決めると評価が揺れます。以下のような場面では、一度条件を戻して確認します。
| よくある誤り | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 評価者がいきなり全力で押す | 疼痛や反射的な崩れが混ざる | テスト肢位を確認してから抵抗を漸増する |
| 固定が不十分なまま判定する | 対象筋以外の力が混ざる | 近位部を安定させて再評価する |
| 代償を許容したまま5とする | 実際より強く評価する可能性がある | 主運動と代償を分けて観察する |
| 疼痛による出力低下を4とする | 筋力低下と疼痛制限が混在する | 疼痛の有無と評価可能な抵抗範囲を記録する |
| 4+・5-だけを記録する | 評価者によって意味が変わる | 抵抗条件・崩れ方を文章で補足する |
MMT 4と5の違いでよくある質問
Q1. MMT 4と5の一番大きな違いは何ですか?
A. どちらも重力に抗して利用可能な可動域を動かせますが、抵抗への耐え方が異なります。Grade 5は最大抵抗でもテスト肢位を保持でき、Grade 4は強い〜中等度抵抗に耐えられるものの、Grade 5に相当する最大抵抗には耐えきれない状態として判断します。
Q2. MMT 5の「最大抵抗」は評価者の全力ですか?
A. 評価者が力任せに全力で押すことではありません。対象筋ごとの標準肢位・固定・抵抗位置をそろえたうえで、抵抗を適切に加え、テスト肢位を保持できるかを確認します。
Q3. 最大抵抗で少し肢位が崩れたら必ずGrade 4ですか?
A. 必ずしもそうではありません。固定不足、代償、疼痛、恐怖心、指示理解などで肢位が崩れることがあります。まず評価条件を確認し、それでも最大抵抗に耐えきれない場合にGrade 4を検討します。
Q4. MMT 4+や5-は使ってもよいですか?
A. 施設内の補助的な表記として使うことはありますが、標準の0〜5評価とは分けて考えます。使用する場合は施設内で定義を統一し、Gradeだけでなく抵抗条件や崩れ方も記録する方が再評価しやすくなります。
Q5. Grade 4と5で迷う場合はHHDを使った方がよいですか?
A. 左右差や小さな経時変化を定量的に追う必要がある場合はHHDが有用です。MMTで大まかな筋力レベルを確認し、Grade 4〜5の強い筋力帯を詳しく比較したいときにHHDを追加すると整理しやすくなります。
まとめ|MMT 4と5は条件をそろえて抵抗反応を見る
MMT Grade 4と5は、どちらも重力に抗して利用可能な可動域を動かせます。違いは抵抗への耐え方にあり、Grade 5は最大抵抗でもテスト肢位を保持でき、Grade 4は強い〜中等度抵抗に耐えられるものの最大抵抗には耐えきれないことが基本的な境界です。
ただし、抵抗量だけを見て判定すると評価者間で結果が揺れます。実際の臨床では、標準肢位・近位固定・代償・疼痛・抵抗位置をそろえ、「どの条件で肢位が崩れたか」まで確認することが重要です。
Grade 4〜5で細かな筋力差や経時変化を追う必要がある場合は、MMTの限界を理解したうえでHHDなどの定量評価を組み合わせます。
参考文献
- Avers D, Lott DJ, Brown M. Daniels and Worthingham’s Muscle Testing: Techniques of Manual Muscle and Physical Performance Testing. 11th ed. Elsevier; 2024. 出版社ページ
- Medical Research Council. MRC Muscle Scale. UK Research and Innovation. Updated June 16, 2026. 公式ページ
- Bohannon RW. Manual muscle testing: does it meet the standards of an adequate screening test? Clin Rehabil. 2005;19(6):662-667. doi:10.1191/0269215505cr873oa. PubMed
- Wadsworth CT, Krishnan R, Sear M, Harrold J, Nielsen DH. Intrarater reliability of manual muscle testing and hand-held dynametric muscle testing. Phys Ther. 1987;67(9):1342-1347. doi:10.1093/ptj/67.9.1342. PubMed
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- Fan E, Ciesla ND, Truong AD, et al. Inter-rater reliability of manual muscle strength testing in ICU survivors and simulated patients. Intensive Care Med. 2010;36(6):1038-1043. doi:10.1007/s00134-010-1796-6. PubMed
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rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関・介護福祉施設・訪問リハの臨床経験をもとに、理学療法評価やリハビリテーションに関する情報を、臨床で判断・実践しやすい形に整理して発信しています。
脳卒中や褥瘡・創傷ケアを中心に臨床・教育活動に携わり、評価結果を「測って終わり」にせず、再評価や多職種共有へつなげる視点を重視しています。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハビリテーション、リハビリテーション栄養、シーティング、摂食・嚥下、理学療法評価

