HHD筋力測定の手順|ベルト固定と記録シート付

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HHD 筋力測定の手順|ベルト固定と記録シート

HHD( Hand-Held Dynamometer )は、筋力を数値で扱えるため、左右差や経時変化を説明しやすい評価です。特に MMT の Grade 4〜5 付近では、徒手抵抗だけでは変化を追いにくく、HHD を使うことで再評価の根拠を残しやすくなります。

この記事では、HHD を使った筋力測定の手順、ベルト固定の考え方、測定回数、単位、記録の残し方を実務目線で整理します。まず全体像を確認したい方は 評価ハブ、評価法の使い分けもあわせて整理したい方は 筋力測定( MMT ・ HHD ・ 10RM )の使い分け も参考にしてください。

HHD が向く場面と注意が必要な場面

HHD は「変化を数値で追いたい場面」に向いています。MMT で大まかな筋力低下を把握したあと、重点的に追う筋を HHD で定量化すると、目標設定・介入量・再評価の説明がつながりやすくなります。

一方で、疼痛が強い、急性炎症がある、代償が大きい、禁忌肢位がある場合は、数値だけで判断しないことが重要です。HHD の値は、姿勢・角度・固定・回数・単位がそろって初めて比較しやすくなります。

※ スマホでは表を左右にスクロールできます。

HHD が向く場面・注意が必要な場面(臨床判断の早見)
分類 具体例 ねらい 注意点
向いている MMT が 4〜5、左右差を示したい、経時変化を追いたい 数値で説明し、目標と介入量を決めやすくする 条件(姿勢・角度・固定・回数・単位)を固定する
注意が必要 強い疼痛、急性炎症、強い痙縮、代償が顕著 安全と再現性を優先して評価設計する 痛み・代償・中止理由を併記し、数値だけで判断しない
別評価を優先 指示理解が難しい、最大努力が出せない、測定肢位が取れない 無理に数値化せず、観察・MMT・動作評価へ切り替える 「実施困難」の理由を記録し、再評価条件を整える

測定の原則は「同じ条件」を作ること

HHD の再現性は、特殊なテクニックよりも条件の固定で決まります。毎回違う姿勢・角度・固定で測ると、筋力変化ではなく測定条件の違いを見てしまう可能性があります。

まずは施設内で測定条件をテンプレ化します。最低限、姿勢、関節角度、センサー位置、固定方法、測定回数、休憩時間、単位を固定しておくと、再評価の比較がしやすくなります。

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HHD 測定前に固定する 7 項目
固定する項目 記録のポイント
姿勢 座位、背もたれなし、上肢支持あり 前回と同じ支持条件にする
関節角度 膝 90° 屈曲位 座面高や下腿位置も残す
センサー位置 下腿遠位、内果近位レベル テープやランドマークで位置を統一する
固定方法 ベルト固定、椅子脚を支点 支点・ベルト方向・張りを残す
測定回数 3〜5 秒 × 2〜3 回 練習と本番を分ける
休憩 30〜60 秒 疲労の影響を減らす
単位 kgf または N 施設内で混在させない

5 分フロー:測定前チェックから記録まで

HHD は、測定そのものよりも「測る前の条件づくり」と「測った後の記録」で差が出ます。次の流れを固定すると、担当者が変わっても同じ条件に戻しやすくなります。

下の図版は、実際の臨床で迷いやすい「測定前 → 測定中 → 測定後」の流れを 1 枚で見返せるように整理したものです。まず図版で全体像を確認し、その下の表で記録ポイントを補強してください。

HHD 筋力測定の 5 分フロー図(測定前・測定中・測定後)
図:HHD 筋力測定の 5 分フロー(測定前チェックから記録まで)

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HHD 筋力測定の 5 分フロー(膝伸展を例にした最小手順)
順番 やること 確認すること 記録すること
1 安全確認 疼痛、禁忌肢位、急性炎症、理解度 疼痛 NRS、実施可否
2 条件固定 姿勢、膝角度、センサー位置、ベルト支点 座位、膝 90°、下腿遠位、椅子脚固定
3 練習 1 回 力の入れ方、疼痛、代償 練習時の代償・痛み
4 本測定 3〜5 秒 × 2〜3 回、休憩 30〜60 秒 各試行値、採用値
5 解釈 左右差、前回差、疼痛・代償の有無 条件差、除外試行、次回の再測定条件

HHD 記録シートをダウンロード

HHD は、測定値だけでなく「姿勢・角度・固定・単位・疼痛・代償」をセットで残すことで、再評価時に比較しやすくなります。下の A4 記録シートは、膝伸展を中心に、測定条件と試行値を 1 枚で整理できるように作成しています。

印刷して使用する場合は、初回評価時に測定条件をできるだけ具体的に記入し、再評価時は同じ条件を再現できたかを確認してください。数値の変化だけでなく、疼痛や代償、固定条件の違いも一緒に残すと、解釈のブレを減らせます。

HHD 筋力測定記録シート( A4 ・ 1 枚 )
基本情報、測定前チェック、測定条件、試行値、疼痛・代償、再評価メモをまとめて記録できます。

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ベルト固定のセットアップ(膝伸展)

ベルト固定の目的は、検者の固定力不足による誤差を減らし、同じ条件で反復できる状態を作ることです。膝伸展の座位測定では、固定点を作り、ベルトを直線的に張り、測定中にたわみが出ないようにします。

ポイントは、HHD を強く押さえることではなく、センサー・下腿・固定点の関係を毎回そろえることです。支点が遠い、ベルトがたるむ、センサー位置がずれると、値の比較が難しくなります。

HHD 膝伸展測定のベルト固定支点位置の模式図(座位・膝90度・下腿遠位にセンサー)
図:HHD 膝伸展測定におけるベルト固定と支点位置の例

準備物

  • HHD 本体
  • 固定用ベルト(幅があり、伸びにくいもの)
  • 固定点(椅子脚、ベッド脚など)
  • 必要に応じて滑り止め(座面・足元)

膝伸展の基本セット(座位)

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膝伸展(座位)HHD ベルト固定:セットアップ早見
項目 おすすめ よくある崩れ 直し方
姿勢 座位で体幹を起こす(必要なら上肢支持) 体幹後傾・骨盤後傾で代償 座面高調整/骨盤が立つ支持を作る
膝角度 膝 90° 屈曲位を基本に固定 前回と角度が違う 座面高・下腿位置をメモして統一
センサー位置 下腿遠位(内果近位レベル)を基本 当て位置が毎回ズレる 目印(テープ)で位置を固定
ベルトの支点 椅子脚など硬い固定点に回す 支点が遠く、ベルトがたるむ 支点を近づけ、直線で引ける位置へ
ベルトの張り たわみを最小化(測定前に軽く張る) 測定中にベルトが伸びる 伸びにくいベルトへ変更/巻き直す
代償の監視 体幹回旋・股関節屈曲の代償を観察 「強く出た」が代償の結果 代償が出たら中止して条件を再調整

測定手順は 3〜5 秒 × 2〜3 回に固定する

現場でブレやすいのは、測定回数、努力時間、休憩時間です。まずは 3〜5 秒の最大努力を 2〜3 回に固定し、休憩時間も 30〜60 秒などに統一します。

make test / break test で値の出方は変わり得ます。施設内で方法を統一し、同じ方法で継続測定することを優先してください。本記事では、被検者がセンサーに向かって押す make test を基本運用として整理します。

  1. 説明:「3〜5 秒だけ全力で押してください。痛みが出たら止めます」と伝える
  2. 練習 1 回:最大努力の感覚を合わせる(本番扱いにしない)
  3. 本番:最大努力 3〜5 秒 × 2〜3 回(休憩 30〜60 秒)
  4. 採用:原則は最大値を採用する
  5. 除外:疼痛・代償・ベルトのたるみが出た試行は除外する

記録の型:条件・回数・単位を残す

HHD では、数値だけを残しても再評価に使いにくくなります。次回も同じ条件で測れるように、姿勢・角度・固定・単位・試行回数・疼痛・代償をセットで残します。

特に kgf と N の混在、左右で異なる肢位、前回と違う支点は、比較の妨げになります。記録欄に「固定条件」を入れておくと、チーム内で測定を引き継ぎやすくなります。

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HHD 記録テンプレ(コピペ用):条件・回数・単位を固定する
日付 部位 姿勢・角度 固定(ベルト/支点) 単位 試行 1 試行 2 試行 3 採用値 疼痛・代償
____ / __ / __ 膝伸展(右) 座位、膝 90° ベルト固定あり(椅子脚) kgf / N ____ ____ ____ ____ 疼痛 __ / 10、代償:有/無

単位は kgf と N を混ぜない

機種により表示単位が異なります。施設内で kgf か N のどちらかに統一すると、経時比較が崩れにくくなります。

単位換算(目安):kgf → N
表示 換算式
kgf → N N = kgf × 9.80665 30 kgf ≒ 294 N

解釈は小さな差より条件一致を優先する

HHD には測定誤差が必ずあります。小さな差だけで改善・悪化を判断せず、姿勢・角度・固定・回数・単位が前回と同じかを先に確認します。

SEM(標準誤差)や MDC(最小検出可能変化)は、対象者、筋群、測定方法によって変わります。文献値を機械的に当てはめるより、まずは同一条件で反復測定し、疼痛・代償・条件差を併記する方が臨床では使いやすくなります。

  • 左右差:同じ筋群を同じ条件で比較する
  • 体重正規化:可能なら N / kg や kgf / kg などで残す
  • 条件一致:姿勢・角度・固定・回数・単位が前回と同じか確認する
  • 除外試行:疼痛・代償・ベルトのたるみがある試行は採用しない

現場の詰まりどころは固定・角度・記録のズレ

HHD は「固定」「角度」「記録」の 3 点で詰まりやすい評価です。ここが崩れると、再評価の数値差が筋力変化なのか測定条件の違いなのか判断しにくくなります。

よくある失敗を先に共有しておくと、チーム内の運用が安定します。評価法全体とのつながりを整理したい場合は、筋力測定( MMT ・ HHD ・ 10RM )の使い分け もあわせて確認してみてください。

よくある失敗と対策

HHD の失敗は、測定後に気づくより、測定前にチェックしておく方が修正しやすいです。次の表を使って、値がブレる原因を先に潰しておきます。

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HHD の失敗あるある:原因と対策を固定する
失敗 起きること 対策 記録の一言
固定が弱い 値が伸びない/日によってブレる ベルト固定、支点を近づける、たわみを減らす 「ベルト固定:椅子脚、張り調整済み」
角度がズレる 前回と比較できない 膝 90° など、角度と座面高をテンプレ化する 「座位、膝 90°、座面高 ○○」
単位が混在 数値が比較できない kgf か N に統一し、換算式を固定する 「単位:kgf」
代償が強い 「強く出た」が代償の結果になる 代償が出た試行は除外し、条件を作り直す 「代償あり:体幹後傾、除外」
疼痛が出る 最大努力が抑制され、過小評価になる 中止し、痛みの部位・強さ・誘発条件を記録する 「疼痛 NRS 6、膝前面痛で中止」

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. HHD は何回測るのが基本ですか?

実務では、3〜5 秒の最大努力を 2〜3 回に固定する運用が扱いやすいです。回数を増やすより、姿勢・角度・固定・単位・休憩時間を前回とそろえることを優先します。

Q2. make test と break test はどちらが良いですか?

どちらにも利点はありますが、値の出方が変わる可能性があるため、施設内で統一することが最優先です。本記事では、被検者がセンサーに向かって押す make test を基本にしています。

Q3. ベルト固定ができない環境ではどうしますか?

支点を近づける、肢位と角度をそろえる、代償を抑える、という順で条件を整えます。固定が弱い日は数値を参考値として扱い、疼痛・代償・固定条件を必ず併記します。

Q4. kgf と N はどちらで記録すべきですか?

どちらでも構いませんが、混在させないことが重要です。施設内で単位を統一し、必要に応じて N = kgf × 9.80665 の換算式をテンプレに入れておきます。

Q5. HHD の数値が上がったら筋力改善と判断してよいですか?

すぐに改善と判断せず、測定条件が同じかを確認します。姿勢、角度、固定、回数、単位、疼痛、代償がそろっていれば、経時変化として解釈しやすくなります。

次の一手


参考文献

  1. Martins J, da Silva JR, da Silva MR, et al. Reliability and validity of the belt-stabilized handheld dynamometer in hip- and knee-strength tests. J Athl Train. 2017;52(9):809-819. DOI / PubMed
  2. Hirano M, Katoh M, Gomi M, Arai S. Validity and reliability of isometric knee extension muscle strength measurements using a belt-stabilized hand-held dynamometer: a comparison with the measurement using an isokinetic dynamometer in a sitting posture. J Phys Ther Sci. 2020;32(2):120-124. DOI / PubMed
  3. Katoh M. Reliability of isometric knee extension muscle strength measurements made by a hand-held dynamometer and a belt: a comparison of two types of device. J Phys Ther Sci. 2015;27(3):851-854. DOI / PubMed
  4. Stratford PW, Balsor BE. A comparison of make and break tests using a hand-held dynamometer and the Kin-Com. J Orthop Sports Phys Ther. 1994;19(1):28-32. DOI / PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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