デルマトームと末梢神経領域の違い|神経根と末梢神経の見分け方

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デルマトームと末梢神経領域は「障害部位の階層」が違います

デルマトームと末梢神経領域の違いは、どの高さで感覚経路を区切った地図かです。デルマトームは神経根・髄節ごとの皮膚感覚領域、末梢神経領域は神経叢を通過した正中神経・尺骨神経・橈骨神経などの皮膚感覚支配域を示します。

ただし、しびれの形だけで両者を判定することはできません。本記事ではPT・OTが感覚障害の局在を考えるときに、自覚症状と他覚的感覚低下を分け、分布・筋力・反射・誘発所見の一致度から神経根由来か末梢神経由来かを絞る方法を整理します。

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デルマトームと末梢神経領域の違い

デルマトームは神経根・髄節レベル、末梢神経領域は神経叢より末梢の神経幹・分枝レベルの局在を考える地図です。どちらも皮膚感覚を扱いますが、照合する運動所見や反射が異なります。

※表はスマートフォンでは横にスクロールできます。

デルマトームと末梢神経領域の比較
比較項目 デルマトーム 末梢神経領域
示すもの 1つの脊髄神経根・髄節に対応する皮膚感覚領域 正中・尺骨・橈骨神経など、各末梢神経の皮膚感覚支配域
主に考える局在 神経根、脊髄分節 神経叢より末梢の神経幹・分枝
感覚所見の読み方 複数の代表部位と境界を確認し、隣接髄節と比較する 皮膚支配の重なりが少ない確認点を含め、同じ神経内で複数部位を比較する
合わせて見る所見 筋節に沿った筋力低下、腱反射、頸部・腰部からの誘発所見 支配筋の筋力低下、障害されやすい部位、神経への刺激で生じる症状
判断上の注意 痛みが典型的なデルマトームに一致しないことがある 皮膚支配域には重なりと個人差があり、単一点では決められない
デルマトームと末梢神経領域の違いと感覚検査での見分け方を比較した図
デルマトームは神経根・髄節、末梢神経領域は各神経の皮膚感覚支配域をみます。分布だけで決めず、筋力・反射などとの一致度で判断します。

最初に押さえるポイント:「帯状だからデルマトーム」「指に沿うから末梢神経」と形だけで二分しません。C6〜C8のデルマトームも手指へ分布するため、感覚所見以外の情報が必要です。

神経根か末梢神経かは4段階で見分けます

見分ける順番は、自覚症状を描く → 他覚的感覚低下を確認する → 2つの地図と照合する → 運動・反射で確かめる、です。最初から神経名を決めず、仮説の一致度を段階的に高めます。

  1. 自覚症状の範囲を確認する:患者本人に、しびれ・痛み・感覚の違和感がある範囲と、症状が最も強い部位を示してもらいます。頸部・腰部の運動や肢位で分布が変わるかも確認します。
  2. 他覚的感覚低下を別に調べる:閉眼下で軽い触覚または痛覚を左右比較し、自覚症状と同じ範囲に低下があるか確認します。触覚と痛覚は混ぜず、同じ刺激条件で比較します。
  3. デルマトームと末梢神経領域へ照合する:単一点ではなく、症状の中心、近位・遠位の境界、隣接領域を複数点で確認します。「一致」「部分一致」「一致しにくい」のどれかで整理します。
  4. 筋力・反射・誘発所見を加える:神経根を考える場合は筋節と腱反射、末梢神経を考える場合は支配筋と障害されやすい部位を確認します。分布と他の神経学的所見が同じ局在を示すかをみます。

感覚種別を分けます:振動覚・位置覚は深部感覚として評価するため、触覚・痛覚と同じ方法で皮膚上の境界を描く検査ではありません。この記事の地図選びでは、主に自覚症状、軽い触覚、痛覚の分布を扱います。

C6・C8・L5・S1は感覚以外の所見で分けます

手指や足部はデルマトームと末梢神経領域が重なって見えやすいため、感覚分布だけでは局在を決められません。臨床では、異なる末梢神経に属する筋も同時に弱いか、反射変化があるか、末梢神経の障害部位で説明できるかを追加します。

デルマトームと末梢神経領域が混同しやすい例
迷いやすい組み合わせ 感覚分布の手掛かり 追加して確認する所見 避けたい判断
C6と正中・橈骨神経 C6は橈側前腕〜母指付近、正中神経は手掌側橈側、橈骨神経浅枝は手背橈側が手掛かり 肘屈曲・手関節背屈、上腕二頭筋反射・腕橈骨筋反射、母指対立、手関節・手指伸展 母指のしびれだけでC6または末梢神経に決める
C8と尺骨神経 C8は小指から前腕内側まで広がることがあり、尺骨神経は小指・環指尺側と手部尺側が中心 指屈曲、骨間筋による指の外転・内転、正中神経支配筋を含むC8筋群、肘部・手関節部での症状変化 小指の感覚低下だけで尺骨神経障害と断定する
L5と総・深腓骨神経 L5と腓骨神経領域はいずれも下腿外側〜足背で重なりやすく、深腓骨神経では第1趾間が手掛かり 股関節外転、足関節内反・背屈、足趾伸展、足関節外反。総腓骨神経障害では内反が比較的保たれるかを確認 足背の感覚低下と下垂足だけでL5に決める
S1と腓腹・脛骨神経 S1は足外側〜踵付近、腓腹神経は下腿後外側〜足外側、脛骨神経は足底が手掛かり 足関節底屈、アキレス腱反射、足部内在筋。腓腹神経は感覚神経のため運動麻痺を生じない点も確認 足外側の感覚低下だけでS1に決める

上表は典型例を整理したもので、診断基準ではありません。感覚領域には重なりと個人差があるため、実際に確認した部位と併存所見を記録します。

デルマトーム図は「一致度」で使い、痛みだけでは決めません

デルマトーム図は局在推定に有用ですが、境界線が身体にそのまま存在するわけではありません。研究・教科書間で地図に違いがあり、隣接する神経根の支配は重なります。末梢神経領域にも交通枝や個人差があるため、図との完全一致を求めないことが重要です。1-3

痛みの範囲と感覚低下の範囲は分けて扱います

神経根性疼痛は、必ずしも教科書的なデルマトームに沿って現れません。頸部・腰部から放散する痛みがデルマトームと一致しないからといって、神経根由来を直ちに否定することはできません。反対に、痛みの形が似ているだけで神経根障害と決めることもできません。4

記録では「患者が示した痛み・しびれの範囲」と「検査で確認した触覚・痛覚低下の範囲」を分け、両者が一致するかを残します。

標準化された感覚点と一般的な地図は目的が違います

脊髄損傷の神経学的分類で用いるISNCSCIには、評価条件と主要感覚点が定められています。これは脊髄損傷を一定の方法で評価・分類するための標準であり、一般的なデルマトーム図や神経根症の診断基準と同じものではありません。ISNCSCIを実施する場合は、2026年に公開された第9版を含む最新の公式資料と施設手順を確認します。5,6

目的による感覚点・地図の使い分け
目的 使う考え方 注意点
脊髄損傷の神経学的分類 最新のISNCSCIに定められた主要感覚点と採点手順 一般的な局在推定と混同せず、公式手順に従う
神経根の局在推定 複数のデルマトーム領域と筋節・反射を照合 痛みや単一感覚点だけで神経根を決めない
末梢神経の局在推定 皮膚感覚支配域と支配筋、障害されやすい部位を照合 重なりの多い境界部だけで判断しない

どちらにも合わないときは別の局在を考えます

感覚所見がデルマトームにも単一の末梢神経領域にも合わない場合、無理にどちらかへ当てはめません。分布の特徴から、神経叢、多発末梢神経障害、中枢神経などへ評価範囲を広げます。

  • 神経叢障害を考える所見:複数の末梢神経領域にまたがり、1つの神経根や単神経では説明しにくい感覚・筋力低下
  • 多発末梢神経障害を考える所見:左右対称で遠位ほど強い手袋・靴下型の感覚低下
  • 中枢性を考える所見:顔面を含む半身性、明確な感覚レベル、運動麻痺・視野障害・高次脳機能障害を伴う分布

緊急性を先に判断します

突然出現した顔面・半身の感覚障害、構音・視野・意識の変化、急速に進行する筋力低下、膀胱直腸障害、会陰部の感覚低下などを伴う場合は、地図の照合を続けるより先に医師へ報告し、施設の緊急対応手順に従います。

記録は「刺激・分布・一致度・併存所見」で残します

記録では神経名だけを書くのではなく、実際に確認した所見と推定を分けます。感覚種別 → 左右差 → 境界 → 地図との一致度 → 筋力・反射などの併存所見 → 次の対応の順にまとめると、再評価時に比較できます。

記録テンプレート

[感覚種別]は[部位・境界]で[基準側]より低下。[デルマトーム/末梢神経領域]との一致度は[高い/部分一致/低い]。[筋力・反射・誘発所見]を伴うため[局在仮説]を考える。[再評価・報告・追加確認]を行う。

デルマトーム・末梢神経領域を用いた記録例
場面 記録例 記録のポイント
神経根由来を疑う例 軽い触覚は右橈側前腕〜母指で左比低下。C6領域に部分一致。右手関節背屈筋力低下および腕橈骨筋反射の左右差を伴う。分布・運動・反射を合わせて神経根由来を疑い、経時変化を再評価する。 感覚だけで断定せず、根拠となる運動・反射所見を添える
末梢神経由来を疑う例 軽い触覚は右小指〜環指尺側で左比低下し、前腕内側は明らかな左右差なし。右骨間筋筋力低下を伴う。尺骨神経領域との一致度は高く、肘部の肢位による症状変化を追加確認する。 支配域外が保たれているか、支配筋の所見が合うかを残す
分布が一致しにくい例 右手全体にしびれの訴えあり。軽い触覚低下は一定せず、デルマトーム・単一末梢神経領域とも一致度は低い。刺激条件をそろえて再評価し、症状変動と中枢・神経叢を含む併存所見を確認する。 無理に神経名を付けず、不一致と次の確認事項を書く

よくある失敗は「地図に一致させようとすること」です

地図は所見を整理する道具であり、患者の訴えを地図へ合わせることが目的ではありません。合わない部分も局在推定に必要な情報として残します。

デルマトーム・末梢神経領域を使う際の失敗と修正方法
よくある失敗 問題点 修正方法
痛みの範囲をそのままデルマトームと判断する 神経根性疼痛でも典型分布に一致しないことがある 自覚症状と他覚的感覚低下を別々に記録する
指や足趾の1点だけで局在を決める 隣接する神経根・末梢神経の支配が重なる 近位・遠位と隣接領域を含む複数点を比較する
触覚・痛覚・振動覚を一括して「感覚低下」と書く 感覚種別ごとの所見と経時変化が分からなくなる 感覚種別と刺激条件を分けて記録する
地図と一致しない部分を記録しない 神経叢・多発末梢神経障害・中枢性所見を見落としやすい 一致度と説明できない範囲を明記し、追加評価へつなげる

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップすると回答が開きます。

デルマトーム図によって境界が違うのはなぜですか?

デルマトームには隣接神経根との重なりや個人差があり、作成方法や基になった研究によって図の境界が異なります。1枚の図を絶対的な境界として使わず、採用した地図と実際に検査した部位を記録してください。

C8と尺骨神経は感覚検査だけで見分けられますか?

感覚検査だけで確実に見分けることは困難です。前腕内側まで分布するか、骨間筋だけでなく異なる末梢神経に属するC8筋群も弱いか、肘部や手関節部で症状が変化するかなどを組み合わせます。

触覚と痛覚はどちらから確認すればよいですか?

目的と安全性に応じて選びますが、分布を比較するときは同じ感覚種別・刺激条件で左右差と境界を確認することが重要です。触覚と痛覚で結果が異なる可能性があるため、それぞれを別に記録します。

ISNCSCIの主要感覚点を神経根症の判定にも使えますか?

主要感覚点は一定条件で所見を比較する参考になりますが、ISNCSCIは脊髄損傷を評価・分類するための標準です。神経根症の局在は、一般的なデルマトーム、筋節、反射、誘発所見などを統合して考えます。

次の一手

デルマトームと末梢神経領域のどちらにも当てはまりにくい場合は、感覚だけでなく運動・反射・協調性を含む神経学的評価全体へ戻ります。


参考文献

  1. Lee MW, McPhee RW, Stringer MD. An evidence-based approach to human dermatomes. Clin Anat. 2008;21(5):363-373. doi: 10.1002/ca.20636
  2. Downs MB, Laporte C. Conflicting dermatome maps: educational and clinical implications. J Orthop Sports Phys Ther. 2011;41(6):427-434. doi: 10.2519/jospt.2011.3506
  3. Ladak A, Tubbs RS, Spinner RJ. Mapping sensory nerve communications between peripheral nerve territories derived from spinal nerves. Clin Anat. 2014;27(5):681-690. doi: 10.1002/ca.22285
  4. Murphy DR, Hurwitz EL, Gerrard JK, Clary R. Pain patterns and descriptions in patients with radicular pain: does the pain necessarily follow a specific dermatome? Chiropr Osteopat. 2009;17:9. doi: 10.1186/1746-1340-17-9
  5. Rupp R, Biering-Sørensen F, Burns SP, et al. International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury: Revised 2019. Top Spinal Cord Inj Rehabil. 2021;27(2):1-22. doi: 10.46292/sci2702-1
  6. American Spinal Injury Association. International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury(ISNCSCI)9th Edition 2026. ASIA公式サイト. Accessed September 9, 2026.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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