感覚障害の分布は「5つの障害レベル」で読みます
感覚障害の局在を考えるときは、診断名を急いで当てるのではなく、まずどこに、どのような広がりで、どの感覚が低下しているかを整理します。代表的な候補は、末梢神経・神経根・脊髄・脳幹・大脳/視床の5レベルです。
本記事では、PT・OTがベッドサイドで感覚障害の分布パターンを確認し、疑う障害レベル、次に追加する評価、報告の緊急度まで判断できる形に整理します。感覚所見だけで病変部位や診断を確定するものではなく、発症経過・筋力・腱反射・脳神経症状などを合わせて解釈することが前提です。
感覚検査の手順から確認する
新しく急に出現した感覚障害は、局在推定より先に報告します
突然の半身感覚障害、麻痺、構音・言語障害、視野異常、強い失調、新しい感覚レベル、膀胱直腸障害、急速に上行するしびれや筋力低下を認める場合は、評価を続ける前に施設の緊急連絡手順に沿って報告してください。
感覚障害の分布から5つの障害レベルを考える
最初に見るのは、単一神経領域、デルマトーム、感覚レベル、顔面と身体の組み合わせ、左右対称性です。分布から候補を挙げたうえで、その仮説に合う筋力・反射・脳神経所見を追加確認します。
※表はスマホでは横スクロールで見られます。
| 分布の手がかり | まず疑うレベル | 次に確認する所見 |
|---|---|---|
| 単一の末梢神経領域、または両側遠位優位 | 末梢神経 | 神経走行に対応する筋力、腱反射、左右対称性 |
| 一側のデルマトームに近い分布 | 神経根 | ミオトーム、腱反射、頸部・腰部症状 |
| 体幹の一定位置から下に広がる感覚障害 | 脊髄 | 両下肢所見、錐体路徴候、歩行、膀胱直腸症状 |
| 顔面と身体が左右交叉する分布 | 脳幹 | 眼球運動、嚥下・構音、脳神経、運動失調 |
| 顔面と身体が同じ側にまとまる半身性分布 | 大脳・視床 | 麻痺、視野、言語、半側空間無視、皮質性感覚 |
これらは典型的なパターンです。実際には病変の広がりや複数病変、既往症、検査条件によって分布が不完全になるため、1つの形に無理に当てはめないことが重要です。
局在を考える前に緊急報告が必要な所見を確認する
新規の感覚障害では、詳しいマッピングより発症時刻と随伴症状を優先します。特に突然発症、急速な進行、運動・脳神経・自律神経症状の併存は、早急な医学的評価が必要な病態を示す可能性があります。
| 状況 | 合わせて確認する所見 | PT・OTの対応 |
|---|---|---|
| 突然出現した片側の顔面・上下肢の感覚障害 | 麻痺、顔面左右差、構音・言語、視野、失調、意識変化 | 発症・最終健常確認時刻を押さえ、直ちに報告する |
| 新しい感覚レベルまたは両側下肢症状 | 筋力低下、歩行悪化、腱反射・病的反射、頸背部痛 | 離床・運動をいったん止め、速やかに報告する |
| 会陰部の感覚変化 | 尿閉・失禁、便失禁、両下肢筋力低下、強い腰下肢痛 | 膀胱直腸症状と発症経過を確認し、緊急性を共有する |
| 急速に上行する両側性のしびれ | 筋力低下、腱反射低下、嚥下・呼吸、自律神経症状 | 運動負荷を中止し、呼吸循環を含めて直ちに報告する |
| 転倒・外傷後に増悪する感覚障害 | 頸部・背部痛、筋力低下、意識変化、排尿障害 | 不用意な移動を避け、受傷機転と変化を報告する |
「いつから」「突然か徐々か」「固定しているか拡大しているか」を記録すると、分布だけでは分からない緊急度と病因の推定に役立ちます。
末梢神経と神経根は分布・筋力・反射を組み合わせる
末梢神経障害と神経根障害は、感覚分布だけでは重なって見えることがあります。感覚領域に加えて、筋力低下の組み合わせと腱反射を確認すると、候補を整理しやすくなります。
末梢神経では単神経型と両側遠位優位を分ける
単神経障害では、正中神経・尺骨神経・腓骨神経など、特定の末梢神経領域に近い感覚障害を認めます。ただし、皮膚支配には個人差と重なりがあるため、境界が教科書どおりに明瞭とは限りません。
一方、長さ依存性の多発ニューロパチーでは、一般に足趾から始まる両側対称性・遠位優位の障害が手がかりになります。左右差が大きい場合や一肢だけの場合は、単神経障害、神経根、神経叢、複数病変なども候補に残します。
神経根ではデルマトームだけで決めない
神経根障害ではデルマトームに近い感覚変化が手がかりになりますが、隣接するデルマトームには重なりがあります。また、放散痛の範囲が教科書的なデルマトームと一致しないこともあるため、痛みの場所だけで神経根を決めることはできません。
デルマトームと末梢神経領域の境界は、デルマトームと末梢神経領域の違いで詳しく整理しています。
| 確認項目 | 末梢神経を疑う所見 | 神経根を疑う所見 |
|---|---|---|
| 感覚分布 | 特定の末梢神経領域に近い | デルマトームに近い |
| 筋力低下 | 同じ末梢神経が支配する筋にまとまる | 異なる末梢神経をまたいで同じミオトームに現れる |
| 腱反射 | 障害神経を含む反射弓で低下する可能性 | 対応する髄節の反射が低下する可能性 |
| 関連症状 | 絞扼部位での圧迫・肢位との関連 | 頸部・腰部症状や脊柱運動との関連 |
どの項目も単独では確定所見ではありません。「感覚は神経根らしいが、筋力は末梢神経らしい」など、結果が一致しない場合は両方の候補を残して報告します。
脊髄は感覚レベル・両側性・感覚の種類で疑う
脊髄病変を疑う代表的な手がかりは、体幹の一定位置から下に広がる感覚障害です。感覚レベルに加えて、両下肢の筋力、筋緊張、腱反射、病的反射、歩行、自律神経症状を合わせます。
感覚レベルと病変の高さは同じとは限らない
体幹を上下に比較し、「ここから下で触覚や痛覚が変わる」という境界を探します。ただし、皮膚上で確認した感覚レベルと、画像上の脊髄病変高位が完全に一致するとは限りません。感覚レベルは病変部位の候補を絞る所見であり、特定の椎体高位を断定する所見ではありません。
上限が曖昧な場合は、同じ刺激・テンポ・教示で上下を往復し、左右別に再確認します。四肢だけでなく体幹を調べることが、末梢神経障害との切り分けに重要です。
解離性感覚障害はモダリティーの組み合わせで記録する
痛覚・温度覚と、振動覚・位置覚の低下に差がある状態は、感覚伝導路を考える手がかりになります。ただし、「痛覚だけ低いから脊髄」と単純には決められません。脊髄、脳幹、末梢神経などでも感覚の種類による差が生じるため、分布と随伴所見を組み合わせます。
記録のポイント:「解離性あり」だけで終わらず、「右下肢で痛覚低下、振動覚・位置覚は比較的保たれる」のように、低下した感覚と保たれた感覚を具体的に残します。
脳幹と大脳・視床は顔面と身体の組み合わせで考える
中枢性の感覚障害では、顔面と上下肢の組み合わせが手がかりになります。典型的には、顔面と身体が左右交叉すれば脳幹、同じ側にまとまれば対側の大脳半球・視床を候補にします。
| 確認項目 | 脳幹を疑う所見 | 大脳・視床を疑う所見 |
|---|---|---|
| 顔面と身体 | 顔面と身体が左右交叉することがある | 顔面・上肢・下肢が同じ側にまとまりやすい |
| 脳神経 | 複視、眼振、眼球運動障害、構音・嚥下障害など | 顔面感覚以外の脳神経所見を伴わない場合もある |
| 運動・協調性 | 四肢・体幹失調、交叉性の運動所見など | 片麻痺、巧緻運動障害など |
| 高次機能 | 通常は主所見になりにくい | 失語、半側空間無視、失行、視野障害など |
| 皮質性感覚 | 典型的な主所見ではない | 立体覚、書字覚、二点識別、消去現象の障害など |
顔面と身体の同側性・交叉性は有用な手がかりですが、脳幹内の病変位置や広がりによって典型像にならないこともあります。また、半身感覚障害には脳卒中以外の原因もあるため、突然発症かどうか、麻痺・言語・視野・失調を伴うかを必ず確認します。
感覚の種類は「表在・深部・皮質性」に分けて読む
分布を確認したら、どの感覚が低下しているかをそろえます。触覚だけで「感覚は正常」と判断せず、症状や動作との不一致があれば、痛覚、温度覚、振動覚、位置覚まで追加します。
| 感覚の種類 | 代表的な検査 | 解釈のポイント |
|---|---|---|
| 表在感覚 | 触覚、痛覚、温度覚 | 左右差、上下の境界、末梢神経・デルマトームとの一致を確認する |
| 深部感覚 | 振動覚、位置覚、運動覚 | 触覚が比較的保たれていても低下することがあり、感覚性失調との関連をみる |
| 皮質性感覚 | 立体覚、書字覚、二点識別、消去現象 | 一次感覚、注意、理解、言語、運動機能が評価可能であることを確認する |
皮質性感覚は一次感覚が保たれていることが前提
立体覚や書字覚が低下していても、触覚・位置覚そのものが低下している場合、物品を操作できない場合、教示を理解できない場合は、皮質性感覚障害と単純に解釈できません。
皮質性感覚を評価するときは、少なくとも以下を確認します。
- 触覚や位置覚などの一次感覚が評価できる
- 物品を保持・操作できる
- 閉眼条件を保てる
- 教示を理解し、言語または別の方法で回答できる
- 注意障害や強い疲労が結果に影響していない
これらの条件が成立しない場合は、「皮質性感覚低下」とせず、評価困難となった理由を記録します。
分布で候補を挙げたら追加所見で確かめる
局在推定の目的は、1回の感覚検査で診断名を決めることではありません。最も疑うレベルと、否定できない候補を整理し、次の評価・報告につなげることが実務上のゴールです。
| 手順 | 確認内容 | 残す情報 |
|---|---|---|
| 1 | 発症経過 | 突然/徐々、発症時刻、拡大・変動、外傷や肢位との関係 |
| 2 | 分布 | 左右差、遠位・近位、単一神経、デルマトーム、感覚レベル、顔面 |
| 3 | 感覚の種類 | 触覚、痛覚、温度覚、振動覚、位置覚の低下と保たれ方 |
| 4 | 随伴所見 | 筋力、筋緊張、腱反射、病的反射、脳神経、高次機能、自律神経 |
| 5 | 対応 | 再検、追加評価、経過観察、医師・看護師への報告 |
結果が仮説に合わない場合は、診断名に寄せるのではなく、刺激条件を固定して再検します。それでも一致しなければ、「末梢神経と神経根のどちらも否定できない」など、不確実性をそのまま共有します。
カルテは所見・解釈・対応を分けて記録する
感覚所見は、事実と推定を分けると誤解が少なくなります。記録は次の順でそろえます。
感覚障害の記録テンプレート
発症・時点 → 検査条件 → 分布 → 感覚の種類と程度 → 随伴所見 → 局在仮説 → 追加評価・報告
| 場面 | 記載例 |
|---|---|
| 両側遠位優位 | 両足趾〜足関節遠位で左右対称に触覚軽度低下、振動覚低下あり。近位部と上肢は比較的保たれ、両側アキレス腱反射は低下。長さ依存性の末梢神経障害を示唆する分布として、既往・筋力・経過を追加確認する。 |
| 神経根と末梢神経で迷う | 右下腿外側〜足背に触覚低下を認める。分布のみではL5神経根と末梢神経領域の切り分けが困難。足関節背屈・外反・内反、母趾伸展、腰部症状、腱反射を追加評価する。 |
| 新規の半身性障害 | 本日○時頃から左顔面・左上肢・左下肢の触覚低下が新規出現。左上肢保持低下と構音不明瞭を伴う。評価を中止し、発症時刻と所見を看護師・医師へ直ちに報告した。 |
| 皮質性感覚を評価できない | 左手の立体覚は、表在感覚低下および物品操作困難の影響があり判定困難。皮質性感覚低下とは断定せず、一次感覚と上肢機能の経過を再評価する。 |
「末梢神経障害あり」「脊髄障害と思われる」とだけ書くのではなく、その判断につながった分布と随伴所見を残すことで、他職種が再検しやすくなります。
感覚障害の局在推定で避けたい5つの誤り
感覚所見の誤読は、典型パターンへの当てはめすぎから起こります。特に以下の5点に注意します。
| 誤り | 問題 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 片側遠位の低下を多発ニューロパチーとする | 典型的な両側対称性と合わない | 単神経、神経根、神経叢なども候補に残す |
| 放散痛の範囲をそのままデルマトームとする | 神経根性疼痛は典型的な地図と一致しないことがある | 客観的な感覚低下、ミオトーム、反射を合わせる |
| 皮膚上の感覚レベルを病変高位と断定する | 臨床的な感覚レベルと画像上の病変高位がずれることがある | 筋力、反射、自律神経所見を合わせて報告する |
| 一次感覚を確認せず皮質性感覚を判定する | 表在・深部感覚低下や失語の影響を誤認する | 成立条件を確認し、困難なら理由を記録する |
| 結果がぶれるため正常とする | 刺激条件や注意の影響を見落とす | 道具・刺激量・テンポ・教示・体位を固定して再検する |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。
感覚障害の分布だけで障害部位を確定できますか?
確定はできません。分布は障害レベルの候補を挙げる手がかりです。発症経過、筋力、腱反射、病的反射、脳神経、高次機能、自律神経症状などを組み合わせて判断します。
デルマトームに一致しない場合は神経根障害を否定できますか?
一致しないことだけでは否定できません。デルマトームには個人差と重なりがあり、神経根性疼痛も典型的な地図に一致しない場合があります。ミオトーム、腱反射、頸部・腰部症状を追加確認します。
触覚が正常なら感覚障害はないと考えてよいですか?
触覚だけでは判断できません。振動覚や位置覚などの深部感覚が選択的に低下することがあります。閉眼でのふらつき、足元を見続ける歩行、関節位置の誤認などがあれば、深部感覚を追加評価します。
顔面と身体が同じ側にしびれていれば脳卒中ですか?
大脳・視床などの中枢病変を疑う分布ですが、分布だけで脳卒中とは確定できません。ただし、突然出現した場合や、麻痺、構音・言語障害、視野異常、失調などを伴う場合は、評価を続けず速やかに報告します。
感覚レベルがある場合は必ず脊髄障害ですか?
脊髄病変を疑う重要な所見ですが、検査条件や患者の反応によって偽の境界が生じることもあります。同じ刺激条件で再確認し、両下肢筋力、反射、歩行、膀胱直腸症状を合わせて報告します。
まとめ
感覚障害の局在推定では、まず分布から末梢神経・神経根・脊髄・脳幹・大脳/視床の候補を挙げます。その後、感覚の種類、筋力、腱反射、脳神経、高次機能、自律神経症状を追加し、所見が仮説に合うかを確認します。
- 単一神経領域または両側遠位優位なら末梢神経を考える
- デルマトームに近ければ神経根を考え、ミオトームと反射を合わせる
- 体幹の感覚レベルがあれば脊髄を疑う
- 顔面と身体の交叉性は脳幹、同側性は大脳・視床の手がかりになる
- 分布だけで確定せず、所見・解釈・対応を分けて記録する
- 突然発症や急速な進行、運動・脳神経・自律神経症状を伴う場合は先に報告する
局在を1つに決め切れない場合でも、候補と次に確認する所見を共有できれば、感覚評価は臨床判断につながります。
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関・介護福祉施設・訪問リハの現場経験に基づき、臨床で使える評価方法、判断基準、記録例を発信しています。脳卒中・褥瘡などをテーマとした講師登壇経験があります。
理学療法士として、脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、リハ栄養、シーティング、摂食・嚥下を中心に学習と実践を継続しています。評価名の解説だけで終わらず、「何を確認し、どう判断し、いつ報告・再評価するか」まで臨床へ落とし込める記事作成を心がけています。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

