DGIとFGAの違い|項目・カットオフ・使い分けを比較

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DGIとFGAの違い|まず押さえる比較の結論

DGI(Dynamic Gait Index)とFGA(Functional Gait Assessment)は、どちらも歩行中に外的要求が加わったときの動的バランスを評価する尺度です。大きな違いは、DGIが8項目・24点満点であるのに対し、FGAはDGIを基に修正された10項目・30点満点の尺度であることです。

FGAは単に「DGIより難しい検査」ではありません。DGIの8項目中7項目を引き継ぎ、障害物を回避して歩く課題を除外し、狭い支持基底面での歩行・閉眼歩行・後ろ向き歩行の3課題を追加しています。したがって、「まずDGI、次にFGA」と固定するのではなく、評価目的、対象者の歩行能力、これまで追跡してきた尺度を踏まえて選択することが重要です。

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DGIは8項目、FGAは10項目|違いを早見表で比較

最初に押さえたいのは、FGAはDGIと独立した別系統の検査ではなく、DGIを基に修正・発展した尺度だという点です。共通する部分が多い一方、FGAではより条件の厳しい歩行課題が追加されています。

DGIとFGAの違いと使い分け。DGIは8項目24点、FGAは10項目30点で、7項目が共通。DGIのみの障害物回避と、FGAで追加された狭い支持基底面、閉眼、後ろ向き歩行を比較した図。
DGIとFGAの基本的な違い
比較項目 DGI FGA
正式名称 Dynamic Gait Index Functional Gait Assessment
項目数 8項目 10項目
1項目の得点 0〜3点 0〜3点
合計点 0〜24点 0〜30点
尺度の関係 歩行中の動的バランスをみる評価 DGIを基に修正して開発
DGIとの共通項目 ― DGIの8項目中7項目を継承
特徴 速度変更、頭部運動、方向転換、障害物、階段などを評価 狭い支持基底面、閉眼、後退などの課題が追加されている
高歩行機能例 上限付近では変化を捉えにくくなる可能性がある DGIより床・天井効果が少ないことを示した対象集団がある

DGIとFGAの項目の違い|7項目は共通する

DGIとFGAの違いを理解するうえで、最も重要なのが項目構成です。FGAはDGIの8項目をそのまま10項目へ増やしたわけではありません。DGIから7項目を引き継ぎ、1項目を外し、新たに3項目を加えています。

DGIとFGAの項目構成
区分 歩行課題 臨床で確認しやすい場面
DGI・FGA共通
7項目
平地歩行 基本的な歩行の安定性
歩行速度の変化 加速・減速への適応
水平の頭部回旋を伴う歩行 左右を見る場面での歩行安定性
垂直の頭部運動を伴う歩行 上下を見る場面での歩行安定性
歩行中の方向転換 急な方向転換への適応
障害物をまたぐ 障害物に対するステップ調整
階段 段差昇降時の歩行能力
DGIのみ 障害物を回避して歩く 進路変更を伴う障害物回避
FGAで追加
3項目
狭い支持基底面での歩行 支持基底面を狭めた状態での姿勢制御
閉眼歩行 視覚情報を制限した状態での歩行
後ろ向き歩行 通常とは異なる方向への歩行適応

FGAの開発では、DGIに含まれていた「障害物を回避して歩く」課題は十分な難度ではないとして除外され、狭い支持基底面、閉眼、後退という3課題が加えられました。つまりFGAでは、支持基底面・視覚情報・進行方向といった条件を変えたときの歩行能力を追加して確認できる構成になっています。

DGIとFGAはどちらを選ぶ?評価目的と経時データで決める

DGIとFGAの選択を「初回ならDGI、高機能ならFGA」という一本道にする必要はありません。実務では、何を評価したいのか、対象者が課題を安全に実施できるか、これまでどちらの尺度で経過を追ってきたかを確認して決めます。

DGIとFGAを選ぶときの考え方
状況 考え方 ポイント
すでにDGIで経過を追っている DGIを継続する選択肢がある 同じ尺度を継続すると経時変化を比較しやすい
歩行中のバランスをより広い条件でみたい FGAを検討する 狭い支持基底面、閉眼、後退の課題を含む
DGIが上限に近く差が出にくい FGAへの変更・追加を検討する 尺度変更後の点数をDGIと直接比較しない
神経疾患で歩行中バランスを経時評価したい FGAは有力な選択肢 成人神経疾患のアウトカム指標CPGでも推奨されている
FGAも満点付近になる さらに別の評価を検討する FGAにも天井効果は生じうる

DGIを使っているなら、理由なくFGAへ変更しない

経時評価では、同じ尺度を継続することに意味があります。DGIで十分に変化を捉えられており、過去のデータも蓄積されているのであれば、「FGAの方が新しいから」という理由だけで変更する必要はありません。

一方、DGIが24点に近く、臨床上は変化しているのに合計点へ反映されにくい場合などは、FGAへの変更を検討する余地があります。

高歩行機能例や追加条件をみたい場合はFGAを検討する

FGAには、狭い支持基底面、閉眼、後ろ向き歩行が含まれます。そのため、通常歩行やDGIでは大きな問題がみられない一方で、視覚条件の変化や支持基底面の縮小、通常と異なる方向への移動で不安定になる症例では、FGAが評価候補になります。

脳卒中患者を対象にDGI、4項目版DGI、FGAを比較した研究では、FGAが最も床効果・天井効果が少なく、高い歩行機能を持つ患者の識別に優れていました。ただし、この結果をすべての疾患・病期へそのまま当てはめることは避けます。

DGIとFGAのカットオフ|19点・22点は誰に使う値か

DGIでは19点付近、FGAでは22点以下という値を目にすることがあります。しかし、カットオフは尺度そのものに普遍的に設定された「正常・異常の境界」ではありません。研究対象、転倒の定義、疾患、年齢などによって値は変わります。

DGI・FGAで代表的に引用される転倒関連の値
尺度 代表的な値 主な対象 読み方
DGI 19点付近 地域在住高齢者など 転倒リスクとの関連を検討した研究で引用される。研究によって境界の表記が異なるため、対象集団を確認する
FGA 22 / 30点以下 地域在住高齢者 転倒リスクの分類・将来の転倒予測に用いられた代表的な値の1つ

Wrisleyらは60〜90歳の地域在住高齢者35名を対象とした研究で、FGA 22 / 30点以下が転倒リスクの分類および将来の転倒予測に有用であることを報告しています。ただし、対象者数は限られており、この22点を脳卒中、パーキンソン病、前庭障害などへ一律に適用することはできません。

カットオフの実務ポイント:
「DGIが19点だから転倒する」「FGAが22点以下だから高リスク」と単独で断定せず、転倒歴、歩行補助具、歩行速度、認知・注意、環境、各項目での失点内容などと合わせて判断します。

天井効果と変化の捉えやすさ|FGAが常に優れるわけではない

FGAを選ぶ理由として「DGIより天井効果が少ない」「変化を捉えやすい」と説明されることがあります。この方向性には研究上の根拠がありますが、対象集団を限定して解釈する必要があります。

脳卒中患者を対象とした研究では、FGAはDGIより床効果・天井効果が少なく、高い歩行機能を持つ患者の識別能力に優れていました。また、バランス障害・前庭障害患者326名を対象とした研究では、反応性の指標であるstandardized response meanはDGI 0.72に対しFGA 1.25でした。

一方、この研究では治療終了時に高得点へ達する対象者も多く、FGAにも天井効果は起こり得ることが示されています。そのため、「高機能なら必ずFGA」と決めるのではなく、FGAでも上限に近い場合は、評価したい構成概念に応じて別の尺度や歩行課題を検討します。

変化量を読むときに報告されている代表値
対象 DGI FGA 注意点
バランス・前庭障害患者 MDC95:4点 MDC95:6点 測定誤差を超えた変化の目安。別集団へそのまま適用しない
地域在住高齢者 ― MCID:4点の報告 臨床的に重要な変化量として報告された値であり、疾患横断の基準ではない

DGIからFGAへ変更するときは点数を直接比較しない

DGIは24点満点、FGAは30点満点であり、項目構成も完全には同一ではありません。したがって、たとえば「DGI 21点からFGA 25点へ4点改善した」といった比較はできません。

尺度を変更する場合は、次のように考えると整理しやすくなります。

  1. 変更理由を明記する:DGIが上限に近い、より難しい条件を確認したい、施設の標準評価を変更する、など。
  2. 可能なら移行時点で両尺度を確認する:DGIでの最終値とFGAでの新しい基準値をそれぞれ残します。
  3. 以後は同じ尺度を継続する:FGAへ変更した後は、原則としてFGA内の変化として追います。
  4. 実施条件も残す:補助具、装具、介助・見守り、歩行条件など、解釈へ影響する情報を併記します。

特に再評価では、尺度名だけを同じにしても十分ではありません。補助具や装具、歩行条件などが変われば、得点差が介入効果だけを表しているとは限らないためです。

合計点だけでなく「どの課題で失点したか」を確認する

DGIとFGAは、合計点だけを見るよりも失点した課題と、そのときに起きた現象を合わせて確認すると臨床につながりやすくなります。

DGI・FGAの失点から次の評価へつなげる例
失点しやすい課題 観察すること 次に確認したい内容の例
歩行速度の変化 加速・減速時の歩幅、ふらつき、停止 歩行速度、推進力、下肢筋力、予測的姿勢調整
頭部運動 頭部を動かした瞬間の偏倚、速度低下、症状 前庭機能、視線安定性、頸部運動、感覚依存
方向転換 歩数増加、すくみ、外側への動揺 方向転換能力、予測的姿勢制御、パーキンソニズム
障害物またぎ 足部クリアランス、接触、停止、支持側の不安定性 下肢運動機能、視覚情報、支持脚機能、歩行調整
閉眼歩行 偏倚、歩隔変化、速度低下 視覚依存、体性感覚、前庭機能
狭い支持基底面 側方動揺、ステップアウト 側方バランス、足部配置、体幹・股関節制御
後ろ向き歩行 歩幅減少、支持性、後方への不安定性 後方ステッピング、下肢運動戦略、恐怖感

ここで重要なのは、失点項目から原因を断定しないことです。たとえば閉眼歩行の低下だけで前庭障害と判断することはできません。「どの条件で崩れたか」を仮説生成に使い、必要な追加評価へつなげるのが実務的です。

DGIとFGAでよくある3つの誤解

1.「DGIをしてからFGAへ進む」が標準手順だと思う

DGIとFGAは、必ず順番に実施する検査ではありません。初回からFGAを選択することもあります。成人神経疾患で歩行中バランスの改善を目標とする場合には、FGAを経時評価として用いることを推奨したClinical Practice Guidelineもあります。

2.FGAはDGIの完全な上位互換だと思う

FGAはDGIを基に修正された尺度ですが、DGIで蓄積された経時データや施設内で統一された運用には意味があります。また、FGAでも高機能者では天井効果が起こる可能性があります。「FGAならすべて解決する」とは考えません。

3.カットオフだけで転倒リスクを決める

DGI 19点付近やFGA 22点以下という値は便利ですが、対象集団を限定した研究結果です。転倒歴、歩行速度、補助具、認知・注意機能、実生活環境などを含めて評価する必要があります。

本記事ではDGIとFGAの「違い」と「選択」に焦点を当てています。実際に評価する際は、歩行路、指示、各項目の採点基準まで統一して実施してください。

DGIとFGAのよくある質問

DGIとFGAはどちらが難しいですか?

FGAにはDGIにはない狭い支持基底面での歩行、閉眼歩行、後ろ向き歩行が追加されており、DGIの天井効果などへの対応を意図して修正されています。ただし、単純に「DGI=簡単、FGA=難しい」とだけ捉えるのではなく、評価したい歩行条件の違いとして理解する方が適切です。

DGIとFGAは両方実施した方がよいですか?

毎回両方実施する必要はありません。評価目的に合う尺度を選び、経時評価では同じ尺度を継続する方が比較しやすくなります。DGIからFGAへ変更する場合など、移行時点で両方を確認することには意味があります。

DGIが高得点ならFGAへ変更すべきですか?

DGIが上限に近く、臨床上の変化を得点で捉えにくい場合にはFGAを検討できます。ただし、自動的に変更する必要はありません。過去の経時データ、評価目的、FGAで追加される課題を確認したいかを踏まえて判断します。

FGA 22点以下なら転倒リスクが高いと判断してよいですか?

22 / 30点以下は地域在住高齢者を対象とした研究で報告された代表的なカットオフです。すべての疾患・年齢へ共通する値ではありません。転倒歴、歩行能力、認知・注意、環境などと合わせて解釈してください。

補助具や装具が変わった場合、前回と点数を比較できますか?

条件が変わった場合は、単純な前後比較に注意が必要です。補助具・装具・介助条件などの変更内容を記録し、得点変化に条件変更が影響している可能性を踏まえて解釈します。

まとめ|DGIとFGAは「順番」ではなく目的で選ぶ

DGIは8項目・24点満点、FGAは10項目・30点満点です。FGAはDGIを基に修正され、DGIの8項目中7項目を引き継ぎ、障害物を回避する課題を除外して、狭い支持基底面での歩行、閉眼歩行、後ろ向き歩行を追加しています。

臨床では、「まずDGI、その後FGA」と固定するのではなく、評価目的、対象者の歩行能力、天井効果、過去の経時データを踏まえて選択することがポイントです。尺度を変更した場合はDGIとFGAの点数を直接比較せず、以降は同じ尺度・できるだけ同じ条件で変化を追います。

また、DGI 19点付近やFGA 22点以下などのカットオフは、対象集団を確認したうえで参考値として扱い、合計点だけでなくどの歩行課題で失点したかまで確認すると、追加評価や介入方針につなげやすくなります。


参考文献

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床で迷いやすい評価・リハビリテーションの実務情報を発信しています。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験があります。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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