DGI と FGA の違い【比較・使い分け】
DGI( Dynamic Gait Index )と FGA( Functional Gait Assessment )は、歩行中の動的バランスを評価し、転倒リスクや介入優先度を整理する代表的な尺度です。どちらも「合計点」だけでなく、課題ごとの破綻パターンを見つけることで、転倒場面の再現とプログラム設計につながります。
本記事は「どっちを選ぶ?」「施設でどう移行する?」に特化した比較ページです。結論・早見表・症例別の使い分け・導入のコツまで 1 ページで整理し、最後に各手順記事へ最短でつなげます。
結論:迷ったときの最短ルール
結論:初回は DGI で全体像(外的要求に対する適応)を掴み、活動性が高い/改善を追いたい症例は FGA で“天井”を避けると回ります。忙しい現場ほど「まず 1 本決める → 条件固定 → 再評価」で迷いが減ります。
以下の早見で、まず「どちらを先に取るか」を固定してください(例外はありますが、運用上のブレを減らす目的のルールです)。
| 目的 / 症例像 | まず取る | 理由(臨床での利点) | 次に足すなら |
|---|---|---|---|
| 転倒リスクの初期スクリーニング | DGI | 外的要求(速度変更・頭部運動・障害物・段差)を短時間で一通り拾える | 活動性が高いなら FGA |
| 活動性が高く、変化を感度よく追いたい | FGA | DGI の天井効果を避け、難度が高い課題で“伸びしろ”を残せる | DGI は移行期のみ併用 |
| めまい / 前庭障害で頭部運動が鍵 | FGA | 頭部運動下の歩行・狭路・後退など、破綻パターンが出やすい | 必要に応じて DGI |
| スタッフ間で採点を揃えたい(教育・標準化) | DGI | 項目数が少なく、導入しやすい。まず“運用の型”を固めやすい | 慣れたら FGA に拡張 |
DGI と FGA の違い(比較表)
両者は似ていますが、項目数と課題の難度が違います。現場での選び方は「誰に」「何を見たいか」を固定すれば決まります。
| 観点 | DGI | FGA | 臨床での使い分け |
|---|---|---|---|
| 項目数 / 合計 | 8 項目 / 0〜24 点 | 10 項目 / 0〜30 点 | まず回しやすいのは DGI、難度を足すなら FGA |
| 設計意図 | 動的歩行の“外的要求への適応”を広く拾う | DGI を拡張し、天井効果を抑えて感度を上げる | 活動性が高いほど FGA の出番が増える |
| 難度が高い課題 | (施設によっては難度が頭打ちになりやすい) | 狭路、後ろ向き歩行、階段などで“差”が出る | 「改善を追いたい」「高機能でも差が欲しい」→ FGA |
| 所要時間(目安) | 10〜15 分 | 10 分前後 | 現場の導入コストは大差なし(条件固定が鍵) |
| 解釈のコツ | 合計点+“落ちる課題の型”で転倒場面を推定 | 合計点+項目別の低得点が介入設計に直結 | どちらも「項目別」が主役。合計点は入口 |
| 注意点 | 活動性が高い症例では天井効果が出やすい | 恐怖感(閉眼・頭部運動・階段)で実力より低く出ることがある | 恐怖と不安定の切り分け(段階づけ・安全確保) |
症例別の使い分け(よくある場面)
実務では「この人に何を見たいか」を 1 行で言えると、迷いが消えます。以下は、現場で迷いやすいパターンを“先に言語化”した例です。
地域在住高齢者:転倒の入り口は DGI、伸びを追うなら FGA
初回は DGI で「速度変更・頭部運動・障害物・段差」のどこで破綻するかを拾うと、転倒場面の推定が速いです。活動性が高く、合計点が上限に近づいてきたら、FGA に切り替えて“伸びしろ”を残します。
パーキンソン病:方向転換と複雑課題が主戦場なら FGA
方向転換、狭路、後退、階段などでの破綻が主テーマなら FGA が噛み合います。合計点に加えて、低得点の項目を起点に「どの条件でフリーズ/小刻み/歩幅低下が出るか」を具体化すると、介入の的が絞れます。
めまい / 前庭障害:頭部運動下の不安定が鍵なら FGA
頭部運動や閉眼での不安定は、恐怖感と症状誘発が混ざりやすい領域です。FGA を使う場合は、安全確保を前提に「できるが怖い」と「実際に破綻する」を分けて記録すると、チーム共有がスムーズになります。
脳卒中:まず“条件固定”を優先し、同条件で再評価
片麻痺や失調がある場合、補助具・介助量・歩行路条件の違いが点数差を作りやすいです。DGI / FGA のどちらを選ぶ場合でも、初回に条件を固定し、再評価で同条件を守ることが最重要です。
施設導入・移行のコツ(ブレを減らす手順)
新規導入の失敗は「尺度の選定」よりも「条件と説明の不統一」で起こります。結論として、最初は 1 本に寄せて運用を固め、必要な場面で FGA を追加するほうが回ります。
| ステップ | やること | 記録に残すポイント |
|---|---|---|
| 1 | まず 1 本決める(例:初回は DGI ) | 対象 / 目的(転倒リスク、介入優先度、効果判定) |
| 2 | 条件固定(歩行路、障害物、段差、合図) | 歩行路の長さ、用具の寸法、実施場所 |
| 3 | 採点の基準を共有( 2 点のイメージを揃える) | “どこで 2 点になるか”の言語化 |
| 4 | 高機能例だけ FGA を追加(移行期は両方) | 追加した理由(天井回避、難度追加) |
| 5 | 再評価は同条件( 2〜4 週など施設ルール化) | 合計点+項目別スコア+所見(転倒場面) |
現場の詰まりどころ(よくある失敗と対策)
比較ページで一番大事なのは「選べること」ではなく、選んだあとにブレずに回せることです。ここが崩れると、点数が“変化”なのか“条件差”なのか分からなくなります。
- 条件が毎回変わる:歩行路の長さ、障害物の高さ、段差の条件が変わると再評価で比較できません。初回に条件を決め、評価シートに固定項目として残します。
- 採点の 2 点が揃わない:「安全だが軽度不安定」という中間の基準が曖昧だと、検者間差が増えます。まず 2 点の例をスタッフ間で共有してから運用に入るのが近道です。
- 補助具・介助の記載漏れ:杖・歩行器、介助量の違いが点数差を作ります。「常用している補助具のみ」など施設ルールを決め、種類と介助量を必ず残します。
- 教育の型がない:導入期は“説明文”と“記録テンプレ”を先に配っておくと、立ち上がりが速いです。見学・面談時の抜け漏れ防止にも使えるチェックの型は こちら も参考になります。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
忙しい病棟では DGI と FGA のどちらが回しやすいですか?
結論としては、まず DGI を 1 本にして条件固定と採点共有を固めると回りやすいです。そのうえで、活動性が高い症例や改善を感度よく追いたい症例に FGA を追加すると、運用の混乱が少なくなります。大事なのは「どちらを選ぶか」より「同条件で再評価できるか」です。
天井効果が気になるのはどんなときですか?
活動性が高い高齢者や、回復が進んだ症例で合計点が上限に近づくと、DGI は変化を拾いにくくなることがあります。その場合は FGA に切り替えると、難度が上がった課題で“差”が出やすく、介入効果を追いやすくなります。
点数は合計点だけ見ればよいですか?
合計点は「入口」として有用ですが、主役は項目別の低得点です。例えば、速度変更で崩れるのか、方向転換で止まるのか、頭部運動で蛇行するのかで、介入の焦点が変わります。カンファでは「落ちた課題 → 具体的な転倒場面 → 次の介入」をセットで共有すると伝わりやすいです。
前庭障害やめまいが強い場合、FGA は実施してよいですか?
有用ですが、頭部運動や閉眼課題は恐怖感や症状誘発が混ざり、実力より低く出ることがあります。事前説明と安全確保(介助者追加、環境調整)を前提に、条件と実施可否を記録に残すと後日の解釈が安定します。
次の一手(読む順番)
比較で迷いが整理できたら、次は「手順と採点」を 1 本ずつ固定して、現場で回せる状態にします。
- 全体の選び方と関連スケールの整理:歩行・バランス評価ハブ
- FGA を実装する(手順・採点・カットオフ・テンプレ):FGA の評価方法とカットオフ値
- DGI を実装する(手順・採点・解釈):動的歩行指数( DGI )の評価
参考文献
- Shumway-Cook A, Baldwin M, Polissar NL, Gruber W. Predicting the probability for falls in community-dwelling older adults. Phys Ther. 1997;77(8):812-819. DOI: 10.1093/ptj/77.8.812(PubMed: 9256869)
- Wrisley DM, Marchetti GF, Kukulka CG, et al. Reliability, internal consistency, and validity of data obtained with the Functional Gait Assessment. Phys Ther. 2004;84(10):906–918. DOI: 10.1093/ptj/84.10.906(PubMed: 15449976)
- Wrisley DM, Kumar NA. Functional Gait Assessment: concurrent, discriminative, and predictive validity in community-dwelling older adults. Phys Ther. 2010;90(5):761–773. DOI: 10.2522/ptj.20090069(PubMed: 20360052)
- Beninato M, Fernandes A, Plummer LS. Minimal clinically important difference of the Functional Gait Assessment in older adults. Phys Ther. 2014;94(11):1594–1603. DOI: 10.2522/ptj.20130596(PubMed: 24947198)
- RehabMeasures Database. Dynamic Gait Index. SRAlab
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

