肩インピンジメントテスト|Neer・Hawkinsの違いとやり方

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肩インピンジメントテスト|Neer・Hawkinsの違いと使い方

肩の挙上で痛みが出る患者にNeer testやHawkins-Kennedy testを行っても、陽性だけで「肩峰下インピンジメント」と確定することはできません。まず問診とAROM・PROMで症状の特徴を確認し、Neer、Hawkins-Kennedy、Painful Arcなどでいつもの痛みがどの動き・角度で再現されるかを整理して、他の所見と組み合わせて解釈します。

この記事では、NeerとHawkins-Kennedyの違い、実施方法、陽性所見の見方、Painful Arcとの使い分け、診断精度、記録・再評価まで整理します。肩関節の整形外科テスト全体から評価を選びたい場合は、肩関節の整形外科テスト一覧を確認してください。

NeerとHawkins-Kennedyの違い|まずここを整理

NeerとHawkins-Kennedyは、どちらも肩痛を誘発して症状との関連を確認するテストですが、上肢の動かし方が異なります。Neerは上肢を他動的に挙上し、Hawkins-Kennedyは肩関節・肘関節を屈曲した位置から肩関節を内旋して症状を確認します。Painful Arcは、自動挙上中のどの角度帯で痛みが出るかを見る点が異なります。

Neer・Hawkins-Kennedy・Painful Arcの違い
テスト 主な方法 確認すること 記録したい所見
Neer 上肢を他動的に挙上する 挙上によって肩周囲の症状が再現されるか 症状の部位・挙上位置・主訴との一致
Hawkins-Kennedy 肩・肘を屈曲し、肩関節を他動的に内旋する 屈曲位・内旋で肩周囲の症状が再現されるか 症状の部位・強さ・主訴との一致
Painful Arc 自動外転・挙上を行う どの角度帯で痛みが出現・軽減するか 開始角度・終了角度・症状の部位
Neerテスト・Hawkins-Kennedyテスト・Painful Arcの違いと単独で診断しない考え方を示した図
Neer・Hawkins-Kennedy・Painful Arcは、異なる条件で症状再現を確認する。単独陽性で診断せず、問診や他の身体所見と組み合わせて解釈する。

重要なのは「NeerとHawkinsのどちらが正しいか」ではありません。患者が普段訴えている症状が再現されるか、その反応が問診・可動域・筋力など他の所見と整合するかを確認します。

Neer・Hawkins-Kennedyのやり方と陽性所見

Neer・Hawkins-Kennedyでは、単純な陽性・陰性だけでなく、どこに、どの条件で、どのような症状が再現されたかを確認します。検査で生じた痛みが患者の主訴と同じかどうかも重要です。

Neer testのやり方

  1. 患者を座位または立位とし、検査前の肩痛の部位と強さを確認します。
  2. 検者が上肢を保持し、肩甲帯の動きにも注意しながら肩関節を他動的に挙上します。
  3. 挙上中に肩周囲の症状が再現されるか確認します。
  4. 症状が出た場合は、部位、挙上位置、強さ、普段の症状との一致を記録します。

Neer testで肩痛が誘発されても、それだけで特定の組織障害や肩峰下インピンジメントを確定することはできません。患者が普段感じている痛みが再現されたのか、終末域で別の不快感が生じただけなのかを区別して記録します。

Hawkins-Kennedy testのやり方

  1. 患者を座位または立位とし、検査前の症状を確認します。
  2. 肩関節と肘関節を屈曲した位置で上肢を保持します。
  3. 肩関節を他動的に内旋方向へ動かし、肩周囲の症状が再現されるか確認します。
  4. 症状が出た場合は、部位、強さ、主訴との一致、代償や防御反応を記録します。

Hawkins-Kennedyでも「痛い=陽性」で終わらせないことが重要です。例えば、普段訴えている上腕外側痛が再現された場合と、検査時だけ肩前面に別の痛みが出た場合では所見の意味が異なります。

陽性・陰性より「何が再現されたか」を残す

再評価まで考えると、「Neer+」「Hawkins+」だけでは情報が不足します。例えば次のように記録します。

  • Neer:挙上終盤で右上腕外側に普段と同様の疼痛を再現
  • Hawkins-Kennedy:内旋で右上腕外側痛を再現、NRS 5/10
  • Hawkins-Kennedy:肩前面に軽度疼痛あり、主訴とは異なる

「テストが陽性か」と「その所見が患者の症状をどこまで説明するか」は分けて考えると、過大解釈を防ぎやすくなります。

Painful Arc|痛みが出る角度帯を記録する

Painful Arcでは、痛みの有無だけでなく、何度付近から痛みが出て、どこで軽減するかを記録します。NeerやHawkins-Kennedyとは異なり、実際の挙上動作と症状の関係を角度帯として追いやすい点が特徴です。

  1. 患者に肩関節外転または挙上を自動運動で行ってもらいます。
  2. 痛みが出始める角度を確認します。
  3. 痛みが続く範囲と、軽減・消失する角度を確認します。
  4. 症状の部位と肩甲帯挙上・体幹側屈などの代償を記録します。

肩峰下痛に関連するPainful Arcでは、おおむね挙上の中間域に疼痛が生じる所見が知られています。文献や検査条件によって示される角度には幅があり、60〜120°前後などが用いられてきました。図版の70〜120°も代表的な目安であり、固定した角度だけで陽性・陰性や病態を決めるものではありません。

臨床では「Painful Arcあり」だけで終えず、「外転80〜110°で上腕外側痛、110°以降で軽減」のように、その患者で実際に確認した角度帯を残す方が再評価に役立ちます。

診断精度|Neer・Hawkinsは単独で確定診断できない

NeerやHawkins-Kennedyは、陽性だから特定の組織障害が確定するテストではありません。Hegedusらのシステマティックレビューでは、肩峰下インピンジメントを対象とした統合値として、Neerは感度72%・特異度60%、Hawkins-Kennedyは感度79%・特異度59%、Painful Arcは感度53%・特異度76%と報告されています。

Neer・Hawkins-Kennedy・Painful Arcの診断精度の一例
テスト 感度 特異度 解釈
Neer 72% 60% 単独陽性で病態を確定しない
Hawkins-Kennedy 79% 59% 感度寄りだが特異度は高くない
Painful Arc 53% 76% 角度帯と他の臨床所見を組み合わせる

これらは研究対象、参照基準、検査方法などによって変動する値です。そのため、個々の患者にそのまま当てはめたり、「2つ陽性だから確定」と機械的に判断したりするものではありません。

現在の肩痛評価では、古典的な「肩峰下で組織が機械的に挟まる」という説明だけで症状を捉えるのではなく、rotator cuff-related shoulder pain(RCRSP)やrotator cuff tendinopathyを含む臨床像として、病歴と身体所見を統合することが重要です。

結果の組み合わせ方|陽性テストの数で決めない

複数の誘発テストが陽性でも、陽性数が多いだけで診断が確定するわけではありません。テストは、問診と基本評価から立てた仮説を支持するか、別の評価が必要かを考えるために使います。

肩インピンジメントを疑うときの評価の流れ
段階 確認すること 判断のポイント
1. 問診 発症機転、症状の部位、動作、夜間症状、外傷歴など 患者が困っている動作と症状を明確にする
2. AROM・PROM 挙上角度、疼痛、左右差、可動域制限、代償 自動運動と他動運動の違いを確認する
3. 症状誘発テスト Neer、Hawkins-Kennedy、Painful Arcなど 普段の症状がどの条件で再現されるか確認する
4. 必要な追加評価 抵抗運動、筋力、腱板機能、他病態を示唆する所見など 最初の仮説で説明できない所見を確認する
5. 再評価 症状の部位、角度、強さ、代表テスト 同じ条件で変化を比較する

「検査を何個行うか」を先に固定する必要はありません。追加するテストで何を確認したいのかを明確にし、必要な所見だけを組み合わせます。

記録方法|部位・角度・症状再現を残す

Neer+、Hawkins+だけでは再評価に使える情報が少なくなります。症状の部位、角度または実施条件、症状の強さ、主訴との一致、代償まで残すと、介入後や次回評価との比較がしやすくなります。

Neer・Hawkins-Kennedy・Painful Arcの記録例
項目 記録例
症状の主座 右上腕外側
Painful Arc 外転80〜110°で右上腕外側痛、110°以降で軽減
Neer 挙上終盤で右上腕外側に主訴と同様の疼痛を再現
Hawkins-Kennedy 内旋で右上腕外側痛を再現、NRS 5/10
代償 挙上時に肩甲帯挙上と軽度体幹側屈あり
再評価 介入後、Painful Arc 90〜105°、疼痛NRS 5→3

記録の目的はテスト名を並べることではなく、患者の症状がどの条件で再現され、同じ条件で再評価したときに何が変わったかを追えるようにすることです。

Excel・PDF|肩インピンジメントテスト記録・再評価シート

Neer・Hawkins-Kennedy・Painful Arcの結果を、陽性・陰性だけではなく、症状の部位、角度、実施条件、反応、代償、関連所見、再評価まで記録できるシートを用意しました。

固定された「最小セット」をチェックする用紙ではありません。患者ごとに必要な評価を選び、初回と再評価をできるだけ同じ条件で比較することを目的としています。シート内にも、単独テストだけで診断を確定しない旨を記載しています。

肩インピンジメントテスト 記録・再評価シート

入力・編集して使う場合はExcel、印刷して手書きする場合はPDFを利用できます。

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再評価|同じ条件で何が変わったかを見る

再評価では、初回に行ったテストをすべて繰り返す必要はありません。患者の症状をよく反映した項目を選び、体位や動作方向などの条件をそろえて比較します。

例えばPainful Arcを追跡する場合は、疼痛開始角度、疼痛が続く角度帯、疼痛強度、症状の部位、肩甲帯や体幹の代償を比較します。NeerまたはHawkins-Kennedyを代表テストとして残す場合も、同じ症状が同じ程度に再現されるかを確認します。

再評価でそろえたい条件
項目 確認すること
体位 座位・立位など初回と同じ条件か
運動方向 外転・屈曲など同じ動作で比較しているか
症状の部位 同じ場所の症状を比較しているか
角度 Painful Arcの開始・終了角度がどう変化したか
疼痛強度 NRSなど同じ方法で比較しているか
代償 肩甲帯挙上や体幹側屈が変化していないか

介入前後の即時変化を見る場合も、経時的な変化を見る場合も、条件が異なれば単純比較はできません。新しい記録・再評価シートには、再評価時に同条件で行えたかを確認する欄も設けています。

よくある失敗|テスト結果を過大解釈しない

肩の誘発テストで避けたいのは、検査結果をそのまま病名や原因組織へ置き換えることです。特にNeerやHawkins-Kennedyは特異度が高い検査ではないため、陽性所見だけで原因を決めることはできません。

肩インピンジメントテストで避けたい使い方
避けたい使い方 問題点 修正方法
Neer陽性=インピンジメントと確定する 単独テストの診断精度には限界がある 問診・ROM・筋力・他所見と統合する
痛みが出ればすべて同じ陽性所見にする 患者の主訴とは異なる痛みも含めてしまう 部位・誘発条件・普段の症状との一致を確認する
検査数を増やせば確実になると考える 同じ症状を繰り返し誘発するだけになる場合がある 追加検査で何を判断したいかを先に決める
Painful Arcを「あり・なし」だけで記録する 再評価時に変化を比較しにくい 実際に疼痛が出た角度帯を記録する
代償を記録しない 次回と実施条件が変わっても判断できない 肩甲帯・体幹の動きも併記する

所見が合わないとき|他の病態も再検討する

NeerやHawkins-Kennedyが陽性でも、患者の臨床像と一致しなければ最初の仮説を見直します。強い筋力低下、明らかな外傷、著しい可動域制限、不安定感、肩鎖関節部に限局した痛みなどが目立つ場合は、別の評価が必要です。

例えば、筋力低下や保持困難が目立つ場合は腱板機能、肩前面の症状が中心であれば上腕二頭筋長頭腱など、臨床像に応じて追加評価を検討します。肩関節テストを病態別に選び直したい場合は、肩関節の整形外科テスト一覧で次の評価を確認してください。

よくある質問

NeerとHawkins-Kennedyはどちらを優先しますか?

どちらか一方を常に優先するのではなく、問診とAROM・PROMから立てた仮説に応じて選びます。NeerとHawkins-Kennedyは異なる肢位で症状を誘発するため、「どちらが陽性か」だけでなく、患者が普段感じている症状がどの条件で再現されるかを確認します。

NeerとHawkins-Kennedyが両方陽性ならインピンジメントと診断できますか?

両方陽性でも、それだけで診断を確定することはできません。問診、AROM・PROM、筋力、Painful Arc、必要な追加所見などと組み合わせ、患者の臨床像全体として解釈します。

Painful Arcは何度なら陽性ですか?

肩峰下痛に関連するPainful Arcでは、おおむね挙上の中間域で疼痛が生じる所見が知られ、60〜120°前後などが目安として用いられてきました。ただし、角度のみで病態を確定することはできません。図版の70〜120°も代表的な目安として示したもので、臨床では「外転80〜110°で疼痛」のように、その患者で実測した角度帯を記録します。

次の一手|肩関節テスト全体から必要な評価を選ぶ

Neer・Hawkins-Kennedy・Painful Arcは、肩痛評価の一部分です。結果が患者の症状を十分に説明できない場合は、同じ誘発テストを増やすのではなく、腱板、不安定性、肩鎖関節、上腕二頭筋長頭腱など、臨床像に応じて次の評価を選択します。

肩関節の整形外科テスト一覧|症状から必要なテストを選ぶ


参考文献

  1. Hegedus EJ, Goode A, Campbell S, Morin A, Tamaddoni M, Moorman CT 3rd, Cook C. Physical examination tests of the shoulder: a systematic review with meta-analysis of individual tests. Br J Sports Med. 2008;42(2):80-92. doi:10.1136/bjsm.2007.038406
  2. Hegedus EJ, Goode AP, Cook CE, Michener L, Myer CA, Myer DM, Wright AA. Which physical examination tests provide clinicians with the most value when examining the shoulder? Update of a systematic review with meta-analysis of individual tests. Br J Sports Med. 2012;46(14):964-978. doi:10.1136/bjsports-2012-091066
  3. Alqunaee M, Galvin R, Fahey T. Diagnostic accuracy of clinical tests for subacromial impingement syndrome: a systematic review and meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2012;93(2):229-236. doi:10.1016/j.apmr.2011.08.035
  4. Lewis JS. Rotator cuff related shoulder pain: Assessment, management and uncertainties. Man Ther. 2016;23:57-68. doi:10.1016/j.math.2016.03.009
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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