TIS は「体幹の質」を分けて見て、次の介入まで決める尺度です
TIS( Trunk Impairment Scale )は、脳卒中後の体幹機能を端座位で評価し、静的・動的・協調性の 3 つに分けて読める尺度です。この記事で答えるのは、「 TIS をいつ使うか」「どこを見て採点するか」「点数をどう介入につなげるか」の 3 点です。
結論として、 TIS は体幹の弱点を下位尺度で分けて追い、同条件で再評価して変化を読むときに最も使いやすい尺度です。定義や点数だけで終わらせず、条件固定 → 下位尺度の読み方 → 次の一手まで、現場で迷いにくい形に整理します。
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 何がわかる? | 体幹機能を 静的・動的・協調性 に分けて読めます。 |
| 向く場面 | 端座位がとれ、体幹の弱点や経時変化を下位尺度で追いたい場面です。 |
| 向かない場面 | まず成立の確認だけを急ぎたい場面や、座位自体が安全に作れない場面です。 |
| 読むコツ | 合計点だけでなく、どの下位尺度で止まったかを見ます。 |
| 次に何をする? | 条件を固定して再評価し、点数+崩れ方 1 行+次の狙い 1 行で残します。 |
TIS は「成立確認」より「質の分解」と「再評価」に向きます
体幹評価は、何を決めたいかで使う尺度が変わります。 TIS が得意なのは、「座位がとれるか」をざっくり見ることより、座位の質がどこで崩れるかを下位尺度で分け、介入後に同条件で追い直すことです。
そのため、 TIS を使う場面では「体幹が弱い」で止めず、静的が弱いのか、動的の戻りが弱いのか、協調性の分離が弱いのかを決めるのが重要です。比較や尺度選択そのものは、比較記事側で深掘りする前提にしておくと、このページの役割がぶれません。
TIS は 3 つの下位尺度で「何が止まっているか」を見ます
TIS は一般に、静的座位バランス・動的座位バランス・協調性の 3 下位尺度で読みます。臨床で使いやすいのは、合計点よりもどの下位尺度がボトルネックかを先に決められる点です。
観察は上肢の到達距離だけでなく、骨盤帯 → 胸郭 → 頭部の順で崩れ方を見た方が解釈がぶれにくくなります。特に、骨盤後傾固定、麻痺側荷重回避、頭部だけ先に回る代償は、次の介入を決める材料になります。
| 下位尺度 | 見たい要素 | 観察の焦点 | 代償の例(よくある) |
|---|---|---|---|
| 静的 | 骨盤中間位の維持、左右対称性 | 骨盤帯の保持と崩れの始点 | 骨盤後傾固定、支持への依存、肩甲帯挙上 |
| 動的 | 重心移動と戻り、左右荷重、前後移動 | 移動量より「戻れるか」「減速できるか」 | 体幹ごと倒す、麻痺側荷重回避、過剰な胸郭屈曲 |
| 協調性 | 回旋・分離運動の質とタイミング | 骨盤と胸郭の相対運動(分離) | 回旋が出ず側屈で代償、頭部だけ回す、骨盤が固定される |
評価方法のコツは「条件を固定して再評価できる形」にすることです
TIS は端座位で実施するため、最初に決めるべきなのは点数ではなく条件です。座面高、足底接地、上肢支持、介助の入り方が毎回違うと、介入効果ではなく条件差を拾ってしまいます。
実務では、座面・足底・支持条件を固定して記録に残すだけで再評価の意味が大きく上がります。介助が必要な場合も、体幹近位で最小限の誘導にとどめ、変えた条件はそのまま書き残します。
| 確認項目 | 見ること | 記録の型 |
|---|---|---|
| 座面 | 背もたれ・肘掛けなし、座面高が前回と同じか | 「座面 45 cm」など数値で残す |
| 足底 | 両足底が接地しているか、左右差が強くないか | 「足底接地あり/右やや不十分」 |
| 支持 | 支持なしで行うか、軽介助を入れるか | 「支持なし」または「骨盤帯に軽介助」 |
| 安全 | 恐怖心、疼痛、循環変動で無理がないか | 中止や修正理由を 1 行で残す |
採点と解釈は「合計点」より「止まった下位尺度」から決めます
TIS の合計点は全体像をつかむのに便利ですが、介入を決める材料として強いのは下位尺度ごとの弱点です。静的が低いなら支持性と骨盤中間位、動的が低いなら小さな重心移動と戻り、協調性が低いなら回旋と分離運動を主役にすると、次の一手が決めやすくなります。
図版のように、TIS は静的・動的・協調性のどこで止まるかを分けて読むと、介入の優先順位が整理しやすくなります。合計点だけでなく、代償の出方や戻りの質まで合わせて見るのが実務的です。
また、急性期脳卒中では、入院早期の TIS と退院時の歩行自立との関連が報告され、 ROC 解析で cut-off 12 点が示されています。ただし、歩行は下肢機能、感覚、注意、疲労などの影響も受けるため、点数だけで歩行を断定せず、体幹の要素を読む材料として使うのが実務的です。
| 下位尺度 | 点が落ちやすい場面 | まず狙うこと(優先) | すぐできる介入例 | 再評価の見どころ |
|---|---|---|---|---|
| 静的 | 端座位の保持が不安定/左右非対称が強い | 骨盤中間位の「型」を作る | 足底接地の調整 → 骨盤帯の支持量を最小化しながら保持反復 | 崩れの始点(骨盤 → 胸郭)と保持の安定 |
| 動的 | 前後・左右の重心移動で戻れない/減速できない | 小さく動いて確実に戻る | 前方 → 側方の小さなリーチ課題 → 戻りを止める練習 | 移動量より「戻りの質(減速)」が改善しているか |
| 協調性 | 回旋が出ない/側屈や頭部だけで代償する | 骨盤と胸郭の分離を出す | 回旋位保持 → 体幹回旋+上肢課題(小さく) → 速度を上げる | 側屈代償や頭部先行が減っているか、左右差が縮んだか |
補足として、同じ「 TIS 」という名前でも、Verheyden 版とFujiwara 版の別尺度があります。さらに Verheyden 版では Rasch 解析に基づく TIS 2.0の提案もあります。臨床で一番大切なのは、どの版を使っているかを混ぜないことです。
現場の詰まりどころ(ここで迷う)
TIS が回らない原因の多くは、対象の変化そのものより条件の変化です。座面や支持が揃っていないと、点数の差を「改善」と読めなくなります。まずは迷いを減らす導線を固定します。
下の 3 本だけ押さえると、再評価の比較がかなり安定します。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方は、こちらも参考になります。
よくある失敗:点数がブレる 4 つの典型
臨床で多いのは、①座面高が毎回違う、②足底接地が不十分、③支持の量が毎回違う、④観察が上肢中心になる、の 4 パターンです。いずれも、「介入で変わったのか」「条件が変わっただけか」を曖昧にします。
対策はシンプルで、条件固定+崩れ方の 1 行メモです。合計点に加えて、左右荷重の偏り、骨盤後傾固定、回旋の代償(側屈・頭部だけ回す)などの質を残すと、次回の介入設計が速くなります。
ブレを減らすチェック( OK / NG )
| 場面 | NG | OK | 記録フレーズ例 |
|---|---|---|---|
| 座位条件 | 座面高・足底接地が毎回違う | 条件を固定し、変えたら明記する | 「座面 45 cm/足底接地あり」 |
| 支持 | その場の判断で支持を増減する | 支持条件を固定し、必要なら明記する | 「支持:骨盤帯に軽介助」 |
| 観察 | 上肢の到達だけを見て採点する | 骨盤帯の崩れ方を主に観察する | 「麻痺側荷重回避 → 体幹側屈代償」 |
| 解釈 | 合計点だけで介入を決める | 下位尺度ごとの弱点で優先順位を付ける | 「協調性が低い → 回旋課題を追加」 |
再評価・比較記録シートを使うと、前回との差分が残しやすくなります
TIS は合計点だけでなく、下位尺度ごとの変化・条件固定・代償の質を一緒に残すと、次の介入が決めやすくなります。そこで、前回と今回を並べて比較しやすい記録シートを使える形で用意しました。
座面高、足底接地、支持条件、崩れの始点、代償、次回の確認点まで 1 枚で書ける構成です。まずは同条件で 2 回ほど使ってみると、点数のブレと解釈のブレを分けやすくなります。
TIS 再評価・比較記録シートのプレビューを開く
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. TIS はいつ使うのが実務的ですか?
A. 端座位が作れ、体幹の弱点を静的・動的・協調性で分けて見たい場面で使いやすいです。特に、座位は取れるのに移乗や歩行へつながりにくい症例で、どこが止まっているかを整理しやすくなります。
Q2. 点数がブレる一番の原因は何ですか?
A. 患者さんの変化より、座面高・足底接地・支持量などの条件差でぶれることが多いです。合計点と一緒に「条件」と「崩れの始点」を 1 行残すだけでも、再評価の比較がしやすくなります。
Q3. 座位が不安定で怖がる患者さんでも測れますか?
A. 安全が担保できない場合は無理に実施しません。まずは座位セットと最小限の支持で成立を作り、恐怖が軽くなったタイミングで導入します。実施した場合は、支持の量と条件を必ず記録します。
Q4. 12 点の cut-off はどう使えばよいですか?
A. 急性期脳卒中では、退院時歩行自立との関連をみた研究で cut-off 12 点が報告されています。ただし、歩行は下肢機能や注意、疲労などの影響も大きいため、単独で断定せず「体幹要素の見立て材料」として使うのが実務的です。
Q5. TIS 2.0 や別の TIS とは何が違いますか?
A. 同じ TIS という名前でも、 Verheyden 版と Fujiwara 版の別尺度があります。また Verheyden 版には Rasch 解析に基づく TIS 2.0 があります。大切なのは、施設で採用している版を統一し、途中で混ぜないことです。
次の一手
- 全体像を整える:体幹評価フロー(条件固定の総論)
- 使い分けを固定する:FACT・ TCT・ TIS の違い【比較】
参考文献
- Verheyden G, Nieuwboer A, Mertin J, Preger R, Kiekens C, De Weerdt W. The Trunk Impairment Scale: a new tool to measure motor impairment of the trunk after stroke. Clin Rehabil. 2004;18(3):326-334. DOI: 10.1191/0269215504cr733oa / PubMed: PMID: 15137564
- Fujiwara T, Liu M, Tsuji T, Sonoda S, Mizuno K, Akaboshi K, et al. Development of a new measure to assess trunk impairment after stroke ( Trunk Impairment Scale ): its psychometric properties. Am J Phys Med Rehabil. 2004;83(9):681-688. DOI: 10.1097/01.PHM.0000137308.10562.20
- Ishiwatari M, Tani M, Isayama R, Honaga K, Hayakawa M, Takakura T, et al. Prediction of gait independence using the Trunk Impairment Scale in patients with acute stroke. Ther Adv Neurol Disord. 2022;15:17562864221140180. DOI: 10.1177/17562864221140180 / PubMed: PMID: 36506941
- Verheyden G, Kersten P. Investigating the internal validity of the Trunk Impairment Scale using Rasch analysis: the TIS 2.0. Disabil Rehabil. 2010;32(25):2127-2137. DOI: 10.3109/09638288.2010.483038 / PubMed: PMID: 20569077
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


