ULTT 1(上肢神経ダイナミクス)| “ 感度側 ” のテストとしてクラスタに組み込む
ULTT 1 は、上肢の肢位操作で神経組織の機械的感受性を評価するテストです。頸椎神経根症の文脈では、Spurling のような特異度寄りのテストと対になる “ 感度側 ” の道具として使いやすく、単独で確定せず、組み合わせで判断します。システマティックレビューでは、ULTT は感度が高めで特異度が低めとされ、陰性で可能性が下がりやすい一方、陽性は他要因でも起き得ます。
本記事は、① 5 分フロー →② 手順(再現性)→③ 感作( sensitizing )→④ 偽陽性回避 →⑤ 記録テンプレの順で固定します。([turn0search7](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2200707/) [oai_citation:3‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2200707/?utm_source=chatgpt.com))
同ジャンルで回遊して、判断を速くする(親へ戻る)
まずはここから:ULTT 1 を “ いつ・何と一緒に ” 使うか( 5 分フロー )
ULTT 1 を “ やったのに迷う ” 原因は、判定基準(何を陽性とするか)が曖昧なまま実施することです。最初に目的をクラスタ内の 1 ピースに固定します。
- 問診:首の肢位や上肢挙上で、しびれ・放散・脱力感が変化する
- 神経所見: dermatomal な一致がある(または疑いが濃い)
- 最小セット:ULTT 1 + Spurling + Distraction(牽引で軽減)
- 再評価:毎回は 1〜3 個(ULTT は同じ順序と角度で比較)
手順:順序を固定して “ 比較できる ” にする
ULTT 1 は順序が崩れると別物になります。まずは “ 形 ” を固定し、強い症状が出る場合は終末域まで入れず、段階的に止めます。
| ステップ | 操作 | 見たい反応 | 中止/注意 | 記録テンプレ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 肩甲帯の固定(肩下制) | 上肢症状の変化 | 過度な下制で局所痛が強い場合は調整 | 「肩下制あり/なし」 |
| 2 | 肩外転+外旋 | 放散の再現/増悪 | 肩関節痛が主なら注意 | 「外転角度」 |
| 3 | 前腕回外+手関節/手指伸展 | 末梢側の症状変化 | 手根管など末梢要因が混ざる | 「手関節伸展で増悪」 |
| 4 | 肘伸展 | “ いつ・どこで ” 出るか | 強い疼痛が出たら終末域に入れない | 「肘伸展で C6 しびれ」 |
感作( sensitizing ):頸部側の操作で変化するかを確認する
ULTT の価値は「上肢を動かしたら痛い」ではなく、頸部側の操作で症状が変化することを確認できる点です。代表は、頸部の側屈( contralateral / ipsilateral )での変化です。
- 頸部で変化する:神経組織由来らしさが上がる(ただし確定ではない)
- 頸部で変化しない:末梢要因(肩・肘・手関節)や局所痛の混在を再確認
偽陽性を減らす:混ざりやすい 3 つを先に疑う
ULTT 1 は “ 陽性が出やすい ” ぶん、偽陽性も混ざります。陽性扱いの前に、症状の質と部位が “ 神経っぽいか ” を言語化します。
- 肩関節由来:外転・外旋で肩前方痛が主、頸部操作で変化しにくい
- 末梢神経障害:手根管など末梢でのしびれが主、頸部所見と一致しない
- 筋・筋膜痛:牽引感や局所痛が中心で、 dermatomal な一致が薄い
記録の型: “ どのステップで ” “ 何が ” 出たかを 1 行化
ULTT は「陽性/陰性」より、どのステップで、どこに、どんな症状が出たかが価値です。再評価で同じ順序を踏めば、変化が追えます。
テンプレ:「 ULTT 1:{ステップ} で {部位/質} 出現、頸部 {側屈} で {増悪/軽減} 」
例:「 ULTT 1:肘伸展で C6 しびれ、頸部左側屈で増悪、解除で軽減 」
現場の詰まりどころ=解決の三段(よくある失敗 → 回避チェック → 同ジャンル 1 本)
よくある失敗
| 失敗 | 何が起きる | 修正 | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| 順序が毎回違う | 比較不能 | 手順を固定(表どおり) | 「表の順序で実施」 |
| 陽性基準が曖昧 | “ 何でも陽性 ” になる | 部位/質+頸部操作で変化を確認 | 「頸部側屈で増悪」 |
| 肩痛を神経症状扱い | 誤った仮説 | 肩由来/末梢由来を再確認 | 「肩前方痛が主」 |
回避の手順/チェック
- “ 陽性 ” は、頸部側の操作で変化するまで確認する
- 順序と角度を固定して、再評価で比較できる形にする
- ULTT 単独で確定せず、Spurling / Distraction と組ませる
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
ULTT 1 が陽性なら、神経根症と考えてよいですか?
陽性は可能性を上げますが、単独で確定はできません。ULTT は感度が高めで特異度が低めとされ、偽陽性も混ざります。頸部操作での変化や、Spurling / Distraction との整合で判断します。([turn0search7](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2200707/) [oai_citation:4‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2200707/?utm_source=chatgpt.com))
どの反応を “ 陽性 ” と記録しますか?
「どのステップで」「どこに」「どんな症状が」出たか、そして頸部側の操作で “ 増悪/軽減 ” が起きるかまで残すと、臨床で比較できる形になります。
ULTT の診断精度はどの程度ですか?
研究では、ULTT を含む上肢神経ダイナミクステストの診断精度が検討されており、臨床では単独ではなく組み合わせ(クラスタ)で使う前提が現実的です。([turn0search2](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34298491/) [oai_citation:5‡PubMed](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34298491/?utm_source=chatgpt.com))
次の一手
ULTT 1 は “ やり方 ” より “ 比較できる型 ” が価値です。親記事の最小セットに戻って、今日追う 1〜3 個を決め、同条件で再評価してみてください。
- 運用を整える:頸部の整形外科テスト(親)
- 共有の型を作る:NDI(頚部の生活障害)
- 環境の詰まりも点検(無料チェックシート)
教育体制・人員・記録文化など “ 環境要因 ” を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に「続ける/変える」の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
PT キャリアナビを読む
参考文献
- Rubinstein SM, Pool JJM, van Tulder MW, et al. A systematic review of the diagnostic accuracy of provocative tests of the neck for diagnosing cervical radiculopathy. Eur Spine J. 2007;16(3):307-319. DOI: 10.1007/s00586-006-0225-6 / PubMed
- Grondin F, et al. Diagnostic accuracy of upper limb neurodynamic tests in the diagnosis of cervical radiculopathy. Musculoskelet Sci Pract. 2021;55:102427. DOI: 10.1016/j.msksp.2021.102427 / PubMed
- Wainner RS, Fritz JM, Irrgang JJ, et al. Reliability and diagnostic accuracy of the clinical examination and patient self-report measures for cervical radiculopathy. Spine. 2003;28(1):52-62. DOI: 10.1097/00007632-200301010-00014 / PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


