- Spurlingテストは「普段の上肢症状が再現するか」で陽性を判断する
- Spurlingテストの陽性は上肢への放散症状の再現でみる
- 実施前にSpurlingテストを行ってよい状態か確認する
- Spurlingテストのやり方|肢位と軸圧の条件をそろえる
- Spurlingテストの感度・特異度|陽性は絞り込み、陰性だけでは除外しない
- Spurling単独ではなく神経所見・Distraction・ULTTと統合する
- JacksonテストとSpurlingテストを同じ手技として固定しない
- 記録は陽性・陰性だけでなく肢位・症状・解除後の変化を残す
- Spurlingテストで迷いやすい3つのポイント
- よくある質問
- 次の一手
- 参考文献
- 著者情報
Spurlingテストは「普段の上肢症状が再現するか」で陽性を判断する
Spurlingテストは、頸部を症状側へ誘導し、必要に応じて軸圧を加えたときに、上肢の放散痛やしびれが再現するかを確認する誘発テストです。重要なのは、頸部の局所痛が出ただけで陽性としないことです。普段訴えている上肢症状が再現され、感覚・筋力・腱反射などの神経所見とも整合するほど、頸椎神経根症の仮説は強まります。
一方、Spurlingテストが陰性でも神経根症は否定できません。この記事では、理学療法士など医療従事者に向けて、Spurlingテストのやり方、陽性判定、感度・特異度、陰性の限界、ULTT 1やDistractionとの所見統合、再評価できる記録方法まで整理します。
Spurlingテストの要点
- 陽性の中心は、普段に近い上肢の放散痛・しびれの再現です。
- 頸部局所痛だけなら、神経根症の陽性とは分けて記録します。
- 陰性だけで頸椎神経根症を否定せず、神経所見や他テストと統合します。
Spurlingテストの陽性は上肢への放散症状の再現でみる
Spurlingテストで最初に判断したいのは、「痛みが出たか」ではなく、患者が普段感じている神経根性の上肢症状が再現されたかです。頸部や肩甲帯周囲だけの局所痛は、頸椎神経根症を支持する陽性所見とは分けて扱います。
| テスト時の反応 | 解釈 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 普段に近い上肢の放散痛・しびれを再現 | Spurling陽性として、頸椎神経根症の可能性を高める所見 | 感覚・筋力・腱反射、Distraction、ULTT 1との整合 |
| 頸部・肩甲帯の局所痛のみ | 神経根症の陽性とは分けて「局所痛再現」と記録 | 頸椎局所組織、筋・筋膜性疼痛、肩疾患など |
| 上肢症状を再現しない | Spurling陰性。ただし神経根症は単独では否定できない | 問診、神経所見、ULTTなど他の評価 |
放散症状が出た場合も、「上肢に症状が出た」という情報だけでは不十分です。普段の症状と同じ部位・質なのか、感覚低下、筋力低下、腱反射の変化などと解剖学的に整合するのかを確認します。

実施前にSpurlingテストを行ってよい状態か確認する
Spurlingテストは頸部への機械的刺激によって症状を誘発する検査です。そのため、手技を始める前に、通常の神経根症評価よりも医師への相談や精査を優先すべき所見がないか確認します。
特に、急性外傷後で頸椎損傷や不安定性が疑われる場合、頸髄症を疑う明らかな中枢神経所見、急速に進行する筋力低下、感染・悪性腫瘍など重篤な病態が疑われる場合には、安易に頸椎へ圧迫を加えるべきではありません。
| 確認事項 | 例 | 対応 |
|---|---|---|
| 急性外傷・不安定性 | 転倒・交通外傷後、骨折や脱臼が疑われる | 誘発テストより精査を優先する |
| 頸髄症を疑う所見 | 歩行障害、手指巧緻動作低下、病的反射など | 神経根症だけで説明せず医師と共有する |
| 進行する神経障害 | 短期間で筋力低下が進む、症状範囲が拡大する | 評価継続より原因精査を優先する |
| 重篤な病態を疑う背景 | 発熱、感染徴候、悪性腫瘍を疑う病歴など | 医師への相談・精査につなげる |
実施可能と判断した場合も、強く押して症状を出すことを目的にせず、開始時の症状を確認してから段階的に負荷を加えます。
Spurlingテストのやり方|肢位と軸圧の条件をそろえる
Spurlingテストには複数の実施方法が報告されており、頸部側屈、伸展、回旋、軸圧をどの順序・組み合わせで行うかは完全には統一されていません。したがって、特定の角度や一つの方法だけを唯一の標準手技として扱うより、実際に行った頸部肢位と刺激条件を記録することが重要です。
| 手順 | 実施内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 1.開始時症状を確認 | 座位などで体幹・頭部を安定させる | 頸部痛、上肢痛、しびれの部位と質 |
| 2.頸部を症状側へ誘導 | 症状側への側屈を基本に、実施法に応じて伸展・回旋を組み合わせる | 頸部肢位だけで普段の上肢症状が再現するか |
| 3.必要に応じて軸圧 | 頭部から頸椎長軸方向へ穏やかに圧を加える | 放散痛・しびれの部位と質が普段の症状に近いか |
| 4.刺激を解除 | 軸圧と頸部肢位を解除する | 症状が軽減するか、強い症状が残存しないか |
頸部肢位だけで普段と同じ放散症状が十分に再現している場合、それ以上強い軸圧を追加して症状を増悪させる必要はありません。検査の目的は最大限の痛みを引き出すことではなく、症状の再現性を確認することです。
また、再評価時には「前回もSpurlingを行った」という名称だけで条件をそろえるのではなく、側屈・伸展・回旋の組み合わせ、軸圧の有無、再現した症状を確認します。
Spurlingテストの感度・特異度|陽性は絞り込み、陰性だけでは除外しない
Spurlingテストは、頸椎神経根症を疑う症例で診断仮説を絞り込むために用いられる代表的な誘発テストです。ただし、診断精度は研究や実施方法によって異なります。
2025年のシステマティックレビュー・メタ解析では、8研究を統合したSpurlingテストの感度は0.53、特異度は0.92でした。感度が十分高いとはいえない一方、特異度は高く、臨床的には「陽性なら神経根症の可能性を高めるが、陰性でも否定できない」という読み方が基本になります。
さらに2026年の更新レビューでは、5研究で少しずつ異なるSpurlingテストが評価され、感度は0.38〜0.98、特異度は0.84〜1.00と幅がありました。このレビューでは、身体診察テスト全体についてエビデンスの確実性が非常に低いことも指摘されています。
| 結果 | 臨床での意味 | 避けたい解釈 |
|---|---|---|
| 陽性 | 病歴・神経所見と整合すれば頸椎神経根症の可能性が高まる | 「陽性だから神経根症で確定」とする |
| 陰性 | 神経根症の可能性は残るため、他の神経学的評価を続ける | 「陰性だから神経根症ではない」と除外する |
| 局所痛のみ | 頸椎への機械刺激で局所痛が再現した所見として扱う | 上肢への放散がなくても神経根症陽性とする |
感度・特異度は検査そのものの固定値ではありません。対象患者、基準となる診断方法、Spurlingの実施方法によって変わるため、「感度53%・特異度92%だからこの患者も同じ」と機械的に当てはめないことが重要です。
Spurling単独ではなく神経所見・Distraction・ULTTと統合する
頸椎神経根症の評価では、Spurlingテストだけで判断せず、病歴、感覚、筋力、腱反射、頸部運動による症状変化などを統合します。Spurlingが陽性でも、再現された症状と神経学的所見が全く整合しない場合には、別の原因も再検討します。
代表的な組み合わせとして、WainnerらはSpurlingテスト、cervical distraction、ULTT 1、症状側への頸部回旋60°未満の4項目からなるクラスタを報告しています。
2026年には、この2003年のクラスタについて独立した検証研究が報告され、診断値は原研究と同程度でした。ただし、4項目すべてを固定の必須セットとして機械的に行うのではなく、病歴や神経所見から必要な検査を選択し、それぞれの結果が同じ診断仮説を支持するかを見ることが大切です。
| 評価 | 見ること | Spurlingとのつながり |
|---|---|---|
| 問診 | 頸部運動と上肢症状の関係、症状の分布・質 | Spurlingで「普段の症状」が再現したか判断する土台 |
| 感覚 | 左右差、症状分布との一致 | 放散症状と神経根レベルの整合を見る |
| 筋力 | 筋力低下の分布 | 疼痛による出力低下だけでなく神経学的整合を確認する |
| 腱反射 | 左右差、低下の有無 | 他の神経所見と合わせて神経根障害の仮説を検討する |
| Distraction | 頸椎牽引による上肢症状の軽減 | 圧迫で増悪し、減圧で軽減するかを確認する |
| ULTT | 神経組織への負荷による症状反応と構造的分化 | Spurling陰性時を含め、別方向から神経系の関与を確認する |
JacksonテストとSpurlingテストを同じ手技として固定しない
JacksonテストとSpurlingテストは、いずれも頸椎への機械的刺激によって神経根症状を誘発する目的で使われる近縁の検査です。一方で、資料によって名称や頸部肢位、圧迫方法の使われ方には違いがあります。
さらに、Spurlingテスト自体にも、側屈+軸圧、側屈+回旋+軸圧、伸展+軸圧、伸展+側屈+軸圧、伸展+回旋+軸圧など複数のバリエーションが報告されています。
そのため、臨床記録では「Jackson/Spurling陽性」と名称だけを残すより、どの頸部肢位で、軸圧を加えたか、どの症状が再現したかを残す方が再現性があります。本記事では、JacksonとSpurlingを完全な同義語として固定せず、実際の実施条件を重視します。
記録は陽性・陰性だけでなく肢位・症状・解除後の変化を残す
Spurlingテストの記録を「Spurling+」だけで終えると、次回に同じ条件で再評価できません。少なくとも、頸部肢位、軸圧の有無、症状の部位・質、普段の症状との一致、解除後の変化、神経所見との整合を残します。
記録の型
Spurling:{頸部肢位}、{軸圧の有無}で{症状部位・症状の質}を再現。普段の症状との一致は{あり/なし}。解除後{変化}。神経所見は{整合/不整合}。
記録例:Spurling:頸部伸展+右側屈、軽い軸圧で右前腕橈側〜母指の普段と同様のしびれを再現。圧迫解除後に軽減。右C6領域の感覚低下と整合。
頸部だけが痛む場合は、「Spurling陽性」と記載せず、「右側屈+伸展+軸圧で右頸部局所痛を再現。上肢への放散なし」のように書き分けます。
陰性の場合も「Spurling−」だけではなく、「伸展+右側屈+軽い軸圧で普段の右上肢症状は再現せず」のように条件を残しておくと、再評価や他職種との共有で解釈しやすくなります。
Spurlingテストで迷いやすい3つのポイント
Spurlingテストで判定がぶれやすいのは、手技そのものよりも「何を陽性としているか」が評価者間で揃っていない場合です。特に次の3点は区別しておきます。
| 迷いやすい場面 | 問題 | 整理方法 |
|---|---|---|
| 首が痛くなった | 局所痛を神経根症陽性と誤認しやすい | 上肢への放散の有無を分けて記録する |
| 上肢症状が出たが普段と違う | 非典型な誘発症状を過大評価しやすい | 部位・質・普段の症状との一致を確認する |
| Spurlingが陰性だった | 神経根症そのものを除外しやすい | 神経所見やULTTなど別の情報を統合する |
つまり、Spurlingテストでは「陽性か陰性か」よりも、何が、どこに、どのように再現されたかを言語化することが重要です。
よくある質問
Spurlingテストが陽性なら頸椎神経根症で確定ですか?
確定ではありません。普段に近い上肢の放散痛やしびれが再現すれば頸椎神経根症の可能性を高める所見になりますが、病歴、感覚、筋力、腱反射、他の誘発・軽減テストと統合して判断します。
Spurlingテストが陰性なら神経根症を否定できますか?
陰性だけでは否定できません。2025年のメタ解析では感度0.53と報告されており、神経根症があってもSpurlingテストが陰性になる症例があります。陰性時も神経所見やULTTなどを含めて評価します。
首だけが痛い場合もSpurlingテスト陽性ですか?
頸部局所痛だけの場合は、頸椎神経根症を支持する陽性所見とは分けて扱います。「頸部局所痛再現、上肢放散なし」のように記録すると、所見の意味が明確になります。
JacksonテストとSpurlingテストは同じですか?
完全な同義語として固定しない方が安全です。いずれも頸椎への機械的刺激によって神経根症状を誘発する目的で使われますが、資料によって名称や頸部肢位、圧迫方法の説明が異なります。テスト名だけでなく、実際の実施条件を記録することが重要です。
次の一手
Spurlingテストで重要なのは、強く圧迫して症状を出すことではなく、普段の上肢症状が再現するか、その所見が神経学的評価と整合するかを確認することです。
- 頸部症状に対してどの整形外科的テストを選ぶか整理したい場合は、頸部の整形外科テスト一覧で全体像を確認してください。
- 神経ダイナミクスを追加して確認したい場合は、ULTT 1のやり方と陽性判定へ進んでください。
参考文献
- Lin LH, Lin TY, Chang KV, Tzang CC, Wu WT, Özçakar L. Diagnostic performance of Spurling’s test for the assessment subacute and chronic cervical radiculopathy: a systematic review and meta-analysis. Am J Phys Med Rehabil. 2025;104(8):717-723. doi:10.1097/PHM.0000000000002707. PubMed
- Thoomes EJ, Arvanitidis M, van Geest S, et al. Diagnostic accuracy of physical examination tests for painful cervical radiculopathy: update of a systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2026;27(1):338. doi:10.1186/s12891-026-09551-0. PubMed
- Grondin F, Cook C, Hall T, et al. An independent validation of a clinical prediction rule for the diagnosis of cervical radiculopathy with radicular pain. Braz J Phys Ther. 2026;30(3):101581. doi:10.1016/j.bjpt.2026.101581. PubMed
- Wainner RS, Fritz JM, Irrgang JJ, Boninger ML, Delitto A, Allison S. Reliability and diagnostic accuracy of the clinical examination and patient self-report measures for cervical radiculopathy. Spine. 2003;28(1):52-62. doi:10.1097/00007632-200301010-00014. PubMed
- American Physical Therapy Association. Spurling Test, Maximal Cervical Compression Test, Foraminal Compression Test, Neck Compression Test, Quadrant Test. APTA Tests & Measures. APTA
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

