- せん妄リスク因子の確認と対策|入院前〜入院後 3 日以内に “回る運用” を固定する
- 結論:チェックは “最小セット” 、対策は “非薬物の束ね” 、記録は “ 1 か所” に寄せる
- リスク因子の最小セット|“院内チェックリスト” を作るときの骨格
- いつやる?|入院前〜入院後 3 日以内 → ハイリスクは “確認後すぐ”
- ハイリスクの対策メニュー|“非薬物を束ねて” 実装する
- 記録の型|“確認日・対策日・担当・期限・結果” を 1 行で追える
- よくある失敗|チェックはしたのに “対策が実装されない”
- セルフチェック|この 4 つが揃えば “監査にも強い”
- 現場の詰まりどころ|解決の三段(ボタン無し)
- よくある質問
- 次の一手|運用を整える → 共有の型を作る → 環境も点検する
- 参考文献
- 著者情報
せん妄リスク因子の確認と対策|入院前〜入院後 3 日以内に “回る運用” を固定する
せん妄は「起きてから対応」だと手戻りが増えます。ポイントは、入院前または入院後 3 日以内にリスク因子を確認し、ハイリスクには速やかに対策を実施して、記録が一貫して残る形にすることです。認知症ケア加算でも、アセスメントと対応方策にせん妄のリスク因子の確認/せん妄対策を含める運用が求められています。
本記事は、病棟でブレやすい「誰が/いつ/何を/どこに残すか」を、チェックリスト → 対策メニュー → 記録テンプレの 1 本にまとめて固定します。
回遊の三段(同ジャンル):親ハブ → 親記事 → 子記事で “全体像” を揃えると、運用が崩れません。
- 親記事(総論):認知症ケアチームの施設基準と運用フロー
- 代表の子記事:身体的拘束は所定点数の 40%(判断と記録)
結論:チェックは “最小セット” 、対策は “非薬物の束ね” 、記録は “ 1 か所” に寄せる
運用を安定させる結論は 3 つです。①チェックは項目を増やさず最小セットで回す。②対策は単発ではなく、見当識・水分・離床・疼痛・睡眠・薬剤・家族説明を束ねる。③記録は分散させず、確認日/対策日/担当/次回評価が追える形で 1 か所に寄せます。
この 3 点が揃うと、「やっているのに説明できない」状態が消え、現場の手戻り(申し送り・記録探索・カンファ再調整)が減ります。
リスク因子の最小セット|“院内チェックリスト” を作るときの骨格
チェックリストは各施設で作成し、様式例を参考にします。病棟で回すなら、まずは “リスク因子” を次の最小セットで固定すると崩れにくいです(スマホは左右にスクロールできます)。
| 区分 | 例 | 現場の書き方 | 詰まりやすい点 |
|---|---|---|---|
| 高齢 | 70 歳以上 | 該当ならチェック | 年齢確認が遅れる |
| 脳器質的障害 | 脳血管障害、外傷など | 既往/現病歴から確認 | 診療情報が分散 |
| 認知症 | 診断/疑い | “疑い” も拾う | 「未診断」で抜ける |
| アルコール多飲 | 飲酒歴 | 入院時問診で統一 | 聞き取りが曖昧 |
| せん妄の既往 | 過去入院で発症など | 家族情報も活用 | 既往が取れない |
| リスク薬剤 | ベンゾ系など | 薬剤師と連携 | “誰が見るか” が未固定 |
| 全身麻酔手術 | 術後/予定 | 予定が入った時点でチェック | 術前に拾えない |
いつやる?|入院前〜入院後 3 日以内 → ハイリスクは “確認後すぐ”
運用の肝はタイミングです。チェックが遅れると、対策も遅れます。おすすめは “入院時ルーチン” に埋め込むことです。
- リスク因子の確認:入院前または入院後 3 日以内
- せん妄対策:リスク因子の確認後、速やかに実施
- 早期発見:ハイリスクは定期的に観察し、兆候があればすぐ共有
ハイリスクの対策メニュー|“非薬物を束ねて” 実装する
対策は単発より “束ね” が効きます。以下をテンプレ化しておくと、担当が変わっても品質が落ちにくいです。
| 領域 | 具体策 | 担当の置き方 | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| 見当識 | 日付・場所・予定の提示、眼鏡・補聴の確認 | 看護が主、家族も協力 | 見当識支援を実施 |
| 水分 | 脱水予防、摂取状況の見える化 | 看護+栄養/薬剤と連携 | 水分摂取を調整 |
| 離床 | 早期離床、日中活動量の確保 | PT / OT が設計 | 離床メニューを実施 |
| 疼痛 | 疼痛評価(主観+客観)と調整 | 医師+看護+ PT | 疼痛要因を評価 |
| 睡眠 | 日中覚醒、夜間刺激の整理、非薬物で入眠促進 | 病棟全体で統一 | 睡眠環境を調整 |
| 薬剤 | リスク薬剤の見直し(漸減/中止の検討) | 薬剤師が主導 | 薬剤を再評価 |
| 説明 | 本人・家族へ、せん妄と対応の説明 | 医師/看護で連携 | 家族へ情報提供 |
記録の型|“確認日・対策日・担当・期限・結果” を 1 行で追える
記録が散ると、チーム運用が止まります。おすすめは、せん妄の欄をラウンド/カンファのテンプレに統合し、次回で回収できる形にすることです。
| 欄 | 書く内容(最小) | 例 |
|---|---|---|
| リスク因子確認日 | 入院前/入院後 3 日以内 | 入院 1 日目 |
| 該当(要因) | チェック項目 | 70 歳以上、認知症疑い、リスク薬剤 |
| 対策実施日 | 確認後すぐ | 確認当日 |
| 対策(束ね) | 見当識/水分/離床/疼痛/睡眠/薬剤/説明 | 離床 2 回、睡眠環境整理、薬剤レビュー依頼 |
| 担当 | 主担当+フォロー | 看護 A、 PT B、薬剤師 C |
| 期限(次回回収) | 24–72 時間で短期 | 48 時間で再評価 |
| 結果(評価) | 変化の有無+次の打ち手 | 夜間覚醒が減少、次は排泄タイミング調整 |
よくある失敗|チェックはしたのに “対策が実装されない”
詰まりはほぼ 3 つです。テンプレの “欄” で防ぐのが最短です。
- 担当が決まらない:対策が “誰の仕事” か曖昧 → 担当欄を必須にする
- 期限がない:次回に回収されない → 期限を 24–72 時間で固定
- 対策が単発:睡眠だけ、離床だけで終わる → 非薬物を束ねて実装
セルフチェック|この 4 つが揃えば “監査にも強い”
| チェック | OK | NG | 直し方 |
|---|---|---|---|
| 3 日以内 | 確認日が入院 3 日以内 | 確認が 4 日目以降 | 入院時ルーチンに埋め込む |
| 速やかに対策 | 対策実施日が確認日と近い | 対策日が空欄 | 対策日欄を必須にする |
| 担当が明確 | 主担当+フォローが書ける | “病棟で対応” など曖昧 | 担当欄を固定 |
| 次回で回収 | 期限が 48 時間など短期 | 期限なし | 次回ラウンドで回収を固定 |
現場の詰まりどころ|解決の三段(ボタン無し)
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
チェックリストは “全部の項目” をそのまま載せた方がいいですか?
運用が止まりやすいので、まずは “最小セット” で回すのがおすすめです。大事なのは、チェックよりも “対策が速やかに実装され、次回に回収できる” ことです。
PT がせん妄対策で貢献できるところは?
離床・活動性(覚醒の維持)と、疼痛・環境要因の仮説化が強みです。対策を “担当+期限” まで残して、次回に結果回収できる形にすると価値が見えます。
認知症ケア加算と、せん妄ハイリスク患者ケア加算は併算定できますか?
改定の方向性として、認知症ケア加算を算定した場合は、せん妄ハイリスク患者ケア加算の算定は不可とされています。運用としては、認知症ケア加算のアセスメントに “せん妄の確認と対策” を含め、病棟の標準手順として固定するのが安全です。
次の一手|運用を整える → 共有の型を作る → 環境も点検する
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
PT キャリアナビ:転職の進め方を確認する
参考文献
- 厚生労働省.令和 6 年度診療報酬改定の概要(認知症ケア加算の見直し).
- 医科診療報酬点数表.A247 認知症ケア加算(令和 6 年).
- 医科診療報酬点数表.A247-2 せん妄ハイリスク患者ケア加算(令和 6 年).
- 厚生労働省.別紙様式 7 の 3(せん妄ハイリスク患者ケア加算に係るチェックリストを含む資料).
- NICE. Delirium: prevention, diagnosis and management (CG103).
- Burton JK, et al. Non-pharmacological interventions for preventing delirium in hospitalised patients. Cochrane Database Syst Rev. 2021.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


