退院前カンファの議題8項目|進め方・記録例

制度・実務
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退院前カンファは「議題8項目→合意→担当・期限」で整理する

退院前カンファで重要なのは、情報をたくさん出すことではなく、本人・家族の意向、病状、ADL、退院後の支援条件を整理し、最後に「何が決まり、何が未決で、誰がいつまでに動くか」まで共有することです。

この記事では、退院調整に関わるPT・OT・ST向けに、退院前カンファで確認したい議題を8項目に整理し、当日の進め方、リハ職が伝える内容、決定事項・未決事項の残し方まで解説します。記事内の8項目は全国共通の必須様式ではなく、公的な退院支援資料を参考に、臨床で使いやすい形へ整理したものです。

退院支援全体の時系列や制度上の期限ではなく、「カンファ当日に何を話し、何を決めるか」に絞って確認していきます。

退院前カンファの議題は8項目で整理すると抜けを減らしやすい

最初に確認したいのは、退院先の結論だけではありません。本人・家族が望む生活と現在の状態を共有し、その生活を成立させる条件を整理したうえで、役割・日程・未決事項まで決めます。

東京都退院支援マニュアルでは、退院前カンファレンスの議題例として在宅生活への希望、病状、薬剤、医療機器、介護体制、緊急時対応、今後の検討事項などが示されています。また、厚生労働省委託事業の資料に掲載された実践例でも、経過・治療、ADL・ケア、本人・家族の希望、退院後のケアや日程などを順に確認する構成が紹介されています。

これらを踏まえ、本記事では退院前カンファの確認事項を次の8項目に整理します。

退院前カンファで確認したい8項目
順番 議題 主な確認内容 最後に残すこと
1 本人・家族の意向 希望する退院先、大切にしたい生活、家族が担える支援、不安・懸念 本人・家族が希望する生活像
2 病状・見通し 現在の状態、治療方針、医師からの説明、退院後も確認が必要な事項 退院後に継続して確認する医学的課題
3 ADL・リハ状況 移動、移乗、排泄、更衣、食事、介助量、補助具、認知・コミュニケーション、嚥下 できること・介助が必要なこと・できる条件
4 医療・ケア継続 服薬、処置、栄養、嚥下、呼吸管理、創傷管理、家族指導、受診・訪問看護 退院後も継続する医療・ケア
5 退院後リスク・安全条件 危険場面、転倒などのリスク、見守り、用具、環境、介助方法 最大リスクと、それに対応する安全条件
6 住環境・サービス 家屋、動線、福祉用具、住宅改修、介護サービス、家族支援、緊急連絡 退院までに整える環境・サービス
7 役割・日程 家屋確認、福祉用具、サービス調整、家族指導、退院日など 誰が・何を・いつまでに行うか
8 決定事項・未決事項 今日決まったこと、まだ確認が必要なこと、次回確認 決定/未決、担当、期限
退院前カンファの議題8項目を本人・家族の意向から決定事項・未決事項、担当・期限・次回確認まで整理した流れ
退院前カンファの議題8項目。退院先を先に決めるのではなく、本人・家族の意向と生活を成立させる条件を整理し、合意形成につなげます。

ポイント:この8項目は「全部を同じ長さで話すため」のチェックリストではありません。すでに共有済みの情報は短くし、本人・家族の意向と退院後の生活を成立させるために、今回決める必要がある項目へ時間を使います。

当日は「共有→意向→課題→支援→合意」の順で進める

退院前カンファは、所要時間を一律に固定するより、最後に合意形成まで到達できる順番を固定する方が実務で使いやすくなります。

地域や施設によって参加者・進行方法・所要時間は異なります。そのため、本記事では「5分で終える」といった時間を標準化せず、次の5段階で論点を整理します。

退院前カンファ当日の進め方
段階 行うこと 確認するポイント アウトプット
1.共有 病状・ADL・医療ケアを共有する 退院後の判断に必要な変化だけを簡潔にそろえる 現在地の共通認識
2.意向 本人・家族の希望と不安を確認する 「どこへ帰るか」だけでなく「どんな生活を送りたいか」を確認する 目指す生活像
3.課題 退院後に問題となる場面を絞る いつ・どこで・何が起こると危ないかを具体化する 最大リスク・未確認事項
4.支援 生活を成立させる条件を決める 介助、環境、福祉用具、サービス、家族支援を組み合わせる 安全条件・必要支援
5.合意 決定事項と次の行動を確認する 未決事項も担当と期限まで決める 決定/未決・担当・期限

会議が長くなったときは、情報をさらに増やす前に「今日この場で何を決める必要があるのか」を確認します。すべてを確定できなくても、未確認事項と担当・期限が決まれば、次の行動へつなげられます。

PT・OT・STは「能力」だけでなく退院後に成立する条件を伝える

リハ職がカンファで伝えたいのは、「歩ける」「食べられる」といった結果だけではありません。どの条件ならできるのか、どこで崩れるのか、どの支援があれば生活場面で成立するのかまで共有すると、退院後の支援へつながりやすくなります。

職種ごとの役割は施設や症例によって重なります。以下は担当範囲を固定する表ではなく、退院前カンファで共有しやすい視点の例です。

PT・OT・STがカンファで共有したい内容の例
職種 共有しやすい視点 「結果」だけで終わらせない伝え方
PT 移乗、歩行、段差、屋内外移動、補助具、介助量、転倒リスク 「歩行可能」ではなく、距離・補助具・見守りや介助・不安定になる条件まで伝える
OT 更衣、排泄、入浴、家事、生活習慣、認知面、環境調整 「ADL自立」ではなく、手順・環境・道具・声かけが変わったときに成立するかまで伝える
ST コミュニケーション、理解・表出、認知コミュニケーション、摂食嚥下 「経口摂取可能」などの結果だけでなく、食形態、姿勢、介助、注意点、意思疎通の方法まで共有する

リハ職の報告は4点に絞ると伝わりやすい

  1. 現在できること:病棟や訓練場面で何ができているか
  2. 成立する条件:補助具、環境、介助、声かけなど何があればできるか
  3. 崩れる条件:夜間、疲労、狭い場所、急ぎ、二重課題など何が加わると難しくなるか
  4. 退院までに確認すること:家屋、家族介助、福祉用具、試験外泊など何を検証するか

たとえば「杖歩行は見守りです」だけでは、退院後の判断には情報が足りません。「屋内平地はT字杖で見守り。方向転換と夜間排泄時にふらつきが増えるため、トイレ動線と夜間の支援方法を確認したい」のように、生活場面へ翻訳すると多職種で共有しやすくなります。

最大リスクは「安全条件」とセットで共有する

リスクだけを並べると「危ないから難しい」で止まりやすいため、最大リスクと安全条件を対応させます。

最大リスクとは、医学的に最も重い問題を機械的に1つ選ぶという意味ではありません。退院後の生活を考えたときに、発生しやすさや影響の大きさから、今回の支援調整で優先して扱う場面を明確にするための整理です。

最大リスクと安全条件の整理例
最大リスク 背景 安全条件として検討すること
夜間トイレ時の転倒 起立直後と方向転換でふらつく 動線、照明、手すり、福祉用具、夜間見守りの可否
入浴時の介助負担 浴槽またぎに介助が必要 入浴方法、福祉用具、家族介助、訪問・通所サービス
食事場面の誤嚥リスク 疲労時に姿勢保持や摂取ペースが崩れる 食形態、姿勢、介助方法、食事環境、再評価条件

「リスクあり」で終わらず、「何が整えば退院後の生活が成立するか」までカンファで共有することが重要です。

結論が出ないときは「未決事項・担当・期限」を残す

退院前カンファは、すべての議題でその場の結論を出す必要はありません。確認材料が足りない項目を無理に決めるより、「何が分かれば判断できるか」を未決事項として残します。

結論が出ないときの残し方
止まりやすい状態 未決事項へ変換する 担当・期限の例
自宅退院できるか判断できない 玄関・トイレ動線と介助方法を確認する PT/○月○日までに家屋確認
家族が介助できるか不明 実際の移乗・排泄介助を家族と確認する 担当療法士・看護師/退院前指導時
サービス量が決まらない 必要な支援時間と家族対応可能時間を整理する MSW・ケアマネジャー/次回カンファまで

次回のカンファで同じ議論を繰り返さないためには、「保留」だけで終わらせず、担当者と確認期限をセットにすることがポイントです。

議事メモは全文ではなく「決定・未決・担当・期限」を残す

実務上の議事メモは、会話を全文記録することより、会議後に誰が動くか分かることを優先します。

患者背景や経過など、すでに診療録やサマリーに存在する情報をすべて書き直す必要はありません。カンファで新たに共有・合意した事項を中心に整理します。

退院前カンファの記録例
記録欄 記載例
本人・家族の意向 本人・家族とも自宅退院を希望。夜間排泄への不安あり。
最大リスク 夜間トイレ時、起立直後と方向転換でふらつきあり。
安全条件 トイレ動線・手すり位置を確認し、夜間見守り方法を家族と調整する。
決定事項 自宅退院を第一候補として住環境確認を進める。
未決事項 夜間の家族支援で安全が確保できるか未確認。
担当・期限 PT:家屋確認を○月○日まで。MSW:サービス利用可否を次回カンファまでに確認。

施設独自の正式な議事録様式や診療録の記載ルールがある場合は、そちらを優先してください。本記事の記録例と配布シートは、情報整理・共有を補助するためのテンプレートです。

退院前カンファ「議題・合意メモシート」をダウンロード

退院前カンファで8項目を順番に確認し、最後に決定事項・未決事項・担当・期限まで1枚で残せるA4シートを作成しました。

Excel版は施設内で項目や記入欄を調整したい場合、PDF版はそのまま印刷して手書きしたい場合に使えます。

退院前カンファ 議題・合意メモシート

本人・家族の意向、病状・見通し、ADL・リハ状況、医療・ケア継続、退院後リスク・安全条件、住環境・サービス、役割・日程、決定事項・未決事項をA4縦1枚で整理できます。

Excel版をダウンロード

PDF版を開く・ダウンロード

シートは「事前→当日→終了前」の3段階で使う

  1. 事前:患者名、開催日、退院予定日、退院先候補など、分かっている情報を記入する。
  2. 当日:8項目を順に確認し、特に最大リスク、安全条件、未確認事項を書き込む。
  3. 終了前:決定事項と未決事項を読み上げ、担当・期限・次回確認日をそろえる。

すべての欄を埋めることが目的ではありません。今回の退院調整に関係しない項目は簡潔にし、合意形成が必要な項目へ記録スペースを使ってください。

退院前カンファで起こりやすい3つの失敗

会議が止まりやすいのは、情報が少ないときだけではありません。情報はそろっていても、判断につながる形へ整理されていないと同じ議論を繰り返します。

退院前カンファで起こりやすい失敗と修正方法
失敗 問題 修正方法
退院先の結論から話し始める 自宅か施設かという意見の対立になりやすい 本人・家族の意向と「その生活が成立する条件」を先にそろえる
職種ごとの報告会になる 情報共有だけで終わり、退院後の行動が決まらない 各報告の最後に「退院後の意味」と「次に必要な確認」を加える
「検討する」で終了する 次回まで誰も動かず、同じ議題が残る 未決事項ごとに担当・期限・判断に必要な情報を決める

よくある質問

退院前カンファはいつ実施するのがよいですか?

全国一律の時期だけで決めるのではなく、退院後の支援内容を調整できる時点で実施することが重要です。本人・家族の意向、現在の状態、退院後に確認すべき課題がある程度見えてきた段階で、施設の退院支援フローに沿って設定します。退院直前まで待つと、家屋・福祉用具・サービスなどの調整時間が不足する場合があります。

退院前カンファには誰が参加しますか?

患者の状態と退院後の支援内容によって異なります。本人・家族に加え、医師、看護師、PT・OT・ST、MSW、ケアマネジャー、訪問看護や在宅サービス担当者など、退院後の療養・生活に必要な関係者から参加者を検討します。すべての職種が毎回そろうことを前提にはしません。

PT・OT・STは何を話せばよいですか?

評価結果を並べるだけでなく、「現在できること」「できる条件」「崩れる条件」「退院までに確認したいこと」の4点へ整理すると伝わりやすくなります。退院後の生活場面で、その所見が何を意味するのかまで共有することがポイントです。

カンファで結論が出なかった場合はどうしますか?

無理に結論を出す必要はありません。「何が分かれば判断できるか」を未決事項として明確にし、確認担当と期限を決めます。次回確認日まで残せると、同じ議論の繰り返しを防ぎやすくなります。

配布シートだけで正式な記録の代わりになりますか?

施設ごとの診療録・議事録・退院支援記録のルールを優先してください。このシートは、議題の整理と合意事項の共有を補助するためのものです。必要な内容は施設の正式な記録へ反映してください。

次の一手

退院前カンファで課題が見えたら、その課題を退院支援全体の流れへ戻し、必要に応じて住環境や生活場面で検証します。

A:退院支援全体の流れを確認する

カンファを退院支援のどこに位置づけるか、退院調整の流れとPTの役割を整理できます。

退院支援の進め方を見る

B:住環境で安全条件を確認する

カンファで家屋・動線・福祉用具の確認が必要になった場合は、退院前訪問指導の流れへ進みます。

退院前訪問指導の流れを見る


参考文献

  1. 東京都保健医療局. 東京都退院支援マニュアル(平成28年3月改訂版). Available from: 東京都保健医療局
  2. 横須賀市健康部地域医療推進課. 横須賀市における在宅医療・介護連携推進の取り組み―最期まで住み慣れた場所で―. 厚生労働省委託事業 在宅医療・介護連携推進支援事業. Available from: 厚生労働省

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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