退院前カンファは「議題固定」と「合意メモ」で短く決める
退院前カンファが長引く原因は、患者背景の複雑さだけではありません。「今日決めること」「話す順番」「誰がいつまでに動くか」が固定されていないと、毎回同じ議論に戻りやすくなります。
この記事では、退院前カンファで使う固定 8 項目の議題テンプレ、5 分進行フロー、議事メモの残し方、家族説明 60 秒台本をまとめます。対象は、病棟・回復期・地域連携で退院調整に関わる PT / OT / ST です。
このページで答えるのは「退院前カンファ当日に何を、どの順番で決めるか」です。退院支援全体の時系列、家屋調査、試験外泊の詳細手順は深掘りせず、必要な箇所だけ関連記事へつなぎます。
退院前カンファの議事メモ PDF
退院前カンファで「最大リスク」「安全条件」「決定事項」「担当」「期限」を短く残せる A4 記録シートです。会議前の準備、当日の議事メモ、次回確認の整理に使えます。
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現場の詰まりどころ:退院先より先に「最大リスク」が決まっていない
退院前カンファで最初に決めるべきなのは、退院先の結論ではなく「退院直後に最も危ない場面」です。最大リスクが決まらないまま退院先を話すと、自宅可否、サービス量、家族負担、試験外泊の要否がすべて曖昧になります。
まずは よくある失敗 と 回避手順 を確認し、必要に応じて 退院支援の記録テンプレ と組み合わせると、カンファ後の記録まで一気に整えやすくなります。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、個人の努力不足ではなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方へ
PT キャリアガイドを見るよくある失敗:退院先の結論から話し始めてしまう
会議が止まる典型は、退院先の正解を先に決めようとする流れです。先に整理すべきなのは、候補ごとの安全条件と未確認事項です。
| ズレ | 起こりやすい場面 | 修正ポイント | 記録で残す一言 |
|---|---|---|---|
| 結論から揉める | 自宅か施設かを先に決めようとする | 候補を複数並べ、安全条件を先に確認する | 「候補:自宅/施設。条件を確認中」 |
| リスクが散る | 危険場面が多く優先順位が決まらない | 退院直後に最も起こりやすいリスクを 1 つに絞る | 「最大リスク:夜間トイレ。次点:方向転換」 |
| 宿題が残らない | 次回も同じ議論になる | 担当・期限・提出物をセットで決める | 「担当:PT。期限:1/20。提出:家屋調査メモ」 |
回避手順:5 分で「現状・最大リスク・次の一手」まで決める
立て直しは、議題を増やすことではなく順番を固定することです。現状、最大リスク、安全条件、退院先候補、役割分担の順に進めると、話し合いが「情報共有」から「合意形成」に変わります。
| 時間 | 進行 | 確認すること | 残すアウトプット |
|---|---|---|---|
| 0〜1 分 | 今日決めることを確認 | 退院先候補、検証日程、家族説明の要否 | 「本日の決定事項」 |
| 1〜2 分 | 現状を短く共有 | 移動・移乗・トイレ・服薬・介護力 | 「できること/介助が必要なこと」 |
| 2〜3 分 | 最大リスクを 1 つに絞る | いつ、どこで、何が危ないか | 「最大リスク 1 文」 |
| 3〜4 分 | 安全条件を決める | 見守り、福祉用具、動線、サービス、家族支援 | 「条件がそろえば可能」 |
| 4〜5 分 | 担当・期限を決める | 誰が何をいつまでに確認するか | 「担当・期限・次回確認」 |
議題テンプレ:固定 8 項目をこの順番で回す
患者ごとに議題を作り替えるより、順番を固定して中身だけ差し替える方が早く、質も安定します。おすすめは、現状→最大リスク→安全条件→退院先候補→必要支援→役割分担→日程→合意事項です。
特に重要なのは、2 番目の「最大リスク」です。ここが曖昧なまま進むと、必要支援や退院先候補の判断も曖昧になります。
| 順番 | 議題 | 確認すること | 出すアウトプット |
|---|---|---|---|
| 1 | 現状(できること) | 移動・移乗・トイレの介助量、歩行補助具 | 「何がどこまでできるか」短文 |
| 2 | 最大リスク(1 つ) | 最も危ない場面(いつ・どこで・なぜ) | 最大リスクの 1 文 |
| 3 | 安全条件(できる条件) | 手すり、見守り、動線、用具、声かけの条件 | 「条件がそろえば可能」 |
| 4 | 退院先候補(複数) | 自宅/施設/転院の候補と必要条件 | 候補と条件の対応表 |
| 5 | 必要支援(優先順位) | サービス、福祉用具、住宅改修、家族支援 | 優先 ToDo 上位 3 つ |
| 6 | 役割分担(誰が動く) | 確認担当、連絡担当、書類担当 | 担当一覧(部署・役割) |
| 7 | 日程(検証の順番) | 家屋調査、試験外泊、退院日、サービス開始 | 日程と検証ポイント |
| 8 | 合意事項(今日決める) | 今日の結論、宿題、次回確認 | 合意メモ(担当・期限) |
議事メモ:全文ではなく「決定・担当・期限」で残す
議事メモの目的は、きれいな議事録を作ることではなく、次に動ける状態を作ることです。全文記録より、決定・担当・期限を固定して残す方が実務では機能します。
結論が出ない議題でも、追加確認事項と期限が決まれば停滞は防げます。迷ったときは、最大リスクと安全条件へ戻してください。
| 欄 | 書く内容 | 例(短文) |
|---|---|---|
| 最大リスク | 最も危ない場面を 1 文で残す | 「夜間トイレでふらつき、転倒リスク高」 |
| 安全条件 | 条件がそろえば可能な内容を残す | 「トイレ動線に手すり。夜間は見守り必須」 |
| 退院先候補 | 候補と必要条件を分ける | 「自宅:条件整えば可。施設:条件未充足時」 |
| 決定事項 | 今日決めたことを 1〜2 文で残す | 「家屋調査を実施し、自宅可否を判断」 |
| 担当 | 誰が動くかを部署・役割で残す | 「PT:家屋調査。MSW:サービス調整」 |
| 期限 | いつまでに確認するかを具体日で残す | 「1/20 実施、1/25 再カンファ」 |
家族説明 60 秒台本:最初に「今日決めたいこと」を言う
家族説明が長引くのは、情報を一度に詰め込みすぎるためです。最初の 15〜20 秒で「今日決めたいこと」を共有し、最大リスク→安全条件→次の一手の順で話すと合意形成が進みやすくなります。
言い回しは施設に合わせて調整し、順番だけ固定してください。
| パート | 言うこと(型) | 例文(短く) |
|---|---|---|
| 今日決めたいこと(20 秒) | 退院先候補と今日の確認事項 | 「自宅退院の可能性はありますが、まず安全条件をそろえる必要があります。今日は家屋調査と試験外泊を進めてよいか確認したいです」 |
| 最大リスク(15 秒) | 危ない場面を 1 つに絞る | 「一番危ないのは夜間トイレでの立ち上がりです」 |
| 安全条件(15 秒) | 条件がそろえば安全域が広がることを伝える | 「トイレ動線に手すりがあり、夜間に見守りができれば転倒リスクは下がります」 |
| 次の一手(10 秒) | 日程と担当を言い切る | 「来週家屋調査、再来週に試験外泊を設定して判断しましょう」 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
退院前カンファはいつ実施するのが良いですか?
退院先候補を複数並べられる段階が目安です。現状の介助量、最大リスク、家族・住環境の確認事項がそろっていれば、退院直前でなくても短時間で論点を整理できます。
結論が出ないときは、どこから立て直せばよいですか?
退院先の議論に戻る前に、最大リスクと安全条件へ戻します。退院直後に起こりやすい危険場面を 1 つに絞ると、必要支援と次の検証手順が決まりやすくなります。
家族説明で揉めたとき、何を優先して伝えるべきですか?
「今日決めたいこと」→「最大リスク」→「安全条件」→「次の一手」の順で短く伝えます。感情的な対立に見える場面でも、条件と日程に落とすと合意形成が進みやすくなります。
職種間で意見が割れた場合のまとめ方は?
意見の正誤を先に決めるのではなく、患者安全に直結する論点から優先順位をそろえます。議事メモには決定事項だけでなく、未決事項、担当、期限も残してください。
議事録はどこまで詳しく書くべきですか?
全文を細かく残すより、最大リスク、安全条件、退院先候補、決定事項、担当、期限を残すことを優先します。次に誰が何をするかが分かる記録であれば、短くても実務で使えます。
次の一手
退院前カンファは、退院支援全体の流れと準備チェックを合わせて整えると定着しやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省. 入退院支援に関する診療報酬・地域連携関連資料. 厚生労働省
- MSD Manual Consumer Version. Discharge From the Hospital. MSD Manual
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


