離床の定義は「レベル」と「記録粒度」を先に固定すると、算定と監査がブレません
同じ介入でも、「これは離床あり?なし?」の解釈がスタッフごとに違うと、算定の整合性が崩れ、摘要欄や診療録の説明も弱くなります。結論として、離床をレベル( 0〜4 )で定義し、記録の最小セット( 1 行テンプレ )を院内で統一すると、監査で突かれやすいポイント(“実際に何をしたか” が曖昧)を先に潰せます。
令和 8 年改定の議論では、離床を伴わずに 20 分以上の個別療法を行った場合の評価見直し(減算・算定上限など)が整理されており、今後は「離床の有無」を説明できる運用がより重要になります。 [oai_citation:1‡Japan Physical Therapy Association](https://www.japanpt.or.jp/pt/function/asset/pdf/20260213_relational_pt_c.pdf?utm_source=chatgpt.com)
※教育体制・標準化・記録文化は、算定トラブルの予防にも直結します。
なぜ今「離床の定義」が必要?監査で弱いのは “行為の説明” です
監査で困りやすいのは、点数や算定要件の暗記ではなく、「その日の介入が離床を伴ったこと(または伴わなかった理由)を、第三者が読んでも再現できる形で説明できないことです。離床の線引きが曖昧だと、同じ患者でも日によって扱いが揺れ、摘要欄の一貫性も崩れます。
そこで本記事は、医学的な “唯一の定義” を探すのではなく、院内で合意できる最小ルール(レベル定義・判定・記録粒度)をテンプレとして提示します。
離床レベル( 0〜4 )の定義テンプレ(院内ルールの叩き台)
まず「離床=どこから?」を言い争うより、ベッド上〜病棟 ADL までをレベル化して、介入の説明を揃えます。ここでのコツは、“端座位” を独立レベルにすることです(端座位は最も頻度が高く、揺れやすい)。
| レベル | 定義(行為) | 例(具体) | 記録の最小セット | よくある揺れ |
|---|---|---|---|---|
| 0 | ベッド上のみ(端座位なし) | 他動 ROM、呼吸練習、臥位での練習、体位変換、ベッド上 ADL 練習 | 体位、内容(何をしたか)、反応( SpO2 / HR など 1 つ) | ヘッドアップを「離床」と言う人がいる |
| 1 | 端座位(ベッド上で体幹を起こす) | 端座位保持、端座位で上肢課題、端座位でセルフケア練習 | 端座位(分)、介助量、支持物、バイタル 1 つ、酸素条件 | 長座位/ギャッジアップとの混同 |
| 2 | 立位(荷重・起立を含む) | 立位保持、起立練習、立位でのステップ、移乗の立ち上がり | 立位(分 or 回数)、介助量、補助具、血圧/症状、酸素条件 | “移乗の一瞬立った” をどう扱うか |
| 3 | 歩行(数歩以上の移動を含む) | 平地歩行、病棟内歩行、歩行器/杖歩行、介助歩行 | 距離/時間、介助量、補助具、 SpO2 / Borg、酸素条件 | “数歩のみ” を歩行に入れるか |
| 4 | 病棟 ADL(目的達成の移動を含む) | トイレ動作、病棟内の移動+セルフケア、病棟生活での反復 | 目的(トイレ等)、達成度、介助量、リスク対応、反応 | “訓練” と “病棟実施” の境界 |
監査に強い「離床あり/なし」判定ルール(テンプレ)
次に、算定・摘要欄の説明に耐えるための判定ルールを固定します。ここではシンプルに、レベル 1 以上(端座位以上)=離床ありを原則とし、例外は「医学的に移動困難で、ベッド上で長時間の個別療法が必要」などの説明を診療録+摘要欄に残せる場合に限定します(院内ルールがある場合はそれを優先)。 [oai_citation:2‡PT-OT-ST.NET](https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-8/department/4898?utm_source=chatgpt.com)
| 状況 | 判定(おすすめ) | 必ず残す説明 | よくある NG |
|---|---|---|---|
| 端座位以上を実施 | 離床あり(原則) | 実施レベル(端座位/立位/歩行)、時間 or 距離、介助量、酸素条件、反応 | 「離床した」だけで具体がない |
| ギャッジアップのみ | 原則:離床なし(レベル 0 ) | 体位(例:背上げ◯°)と介入内容(何分・何をしたか) | ギャッジ=離床と誤記 |
| 移乗で一瞬立った | 院内で統一(例:立位 30 秒以上をレベル 2 とする) | 基準(何秒以上)と介助量、目的(移乗) | 日によって判定が変わる |
| 医学的に移動困難でベッド上長時間 | 離床なし(例外) | 移動困難の医学的理由/長時間が必要な理由/訓練内容を診療録+摘要欄に残す(例外運用)。 [oai_citation:3‡PT-OT-ST.NET](https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-8/department/4898?utm_source=chatgpt.com) | 理由がなく「ベッド上 20 分」だけ |
記録 1 行テンプレ(監査で強い “粒度” に固定)
監査対策として効くのは、文章を長くすることではなく、必要な要素が欠けない 1 行です。以下を院内テンプレとして使うと、情報が揃います。
端座位(レベル 1 )
「端座位 ◯ 分(介助:◯、支持:◯)。酸素:(室内気/◯ L/ HFNC ◯ L ◯ %)。SpO2 ◯ → ◯、 HR ◯ → ◯。症状:(息切れ/めまい/なし)。」
立位(レベル 2 )
「立位 ◯ 分(介助:◯、補助具:◯)。BP ◯/◯ → ◯/◯、症状:(ふらつき/冷汗/なし)。酸素:◯。」
歩行(レベル 3 )
「歩行 ◯ m(介助:◯、補助具:◯)。SpO2 ◯、 Borg ◯。酸素:◯。中止基準:(該当なし/息切れ増悪で端座位へ)。」
よくある失敗:監査で弱くなる書き方
離床の定義を統一しても、記録が弱いと説明が通りません。現場で多い失敗は、①「離床した」だけ、②酸素条件が抜ける、③介助量が抜けるの 3 つです。とくに酸素は、SpO2 だけでは負荷が判断できないため、必ずセットで残します。
また、例外(移動困難でベッド上長時間)を使う場合は、理由と内容を診療録と摘要欄に残す運用が重要になります。 [oai_citation:4‡PT-OT-ST.NET](https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-8/department/4898?utm_source=chatgpt.com)
よくある質問(FAQ)
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端座位は「離床あり」にしてよい?
院内で統一するなら、端座位をレベル 1 として “離床あり” に含める運用が整理しやすいです。理由は、頻度が高く揺れやすいからです。大事なのは、端座位の定義(ベッド端で体幹を起こす等)と、記録粒度(時間・介助量・酸素条件)をセットで固定することです。
ギャッジアップは離床ですか?
一般にギャッジアップだけを離床として扱うと揺れやすいので、レベル 0(ベッド上)として整理し、端座位からレベル 1 として区別するのがおすすめです。院内で “離床” の定義を先に決めておくと迷いません。
移乗で一瞬立った場合は?
ここは院内で基準を決めるのが現実的です。例として「立位 30 秒以上」や「荷重練習を含む場合のみ」など、判定基準を文章で固定し、記録に “満たしたか” が残る形にします。
離床なしで長時間やる必要がある患者は?
移動困難などの医学的理由でベッド上の長時間介入が必要な場合は、例外運用になります。理由(移動困難の医学的理由、長時間が必要な理由)と訓練内容を診療録と摘要欄に残す運用が重要です。 [oai_citation:5‡PT-OT-ST.NET](https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-8/department/4898?utm_source=chatgpt.com)
次の一手:関連ルールも “セット” で揃える
- 離床前の安全確認:NEWS2 / MEWS の離床前スクリーニング
- 呼ぶ基準の統一:RRS / RRT の呼びどき(急変コール基準)
- 運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検(無料チェックシート):マイナビコメディカルの無料チェックシートを開く
※記録と合わせて、体制面も点検すると “揺れ” が減ります。
参考文献
- 日本理学療法士協会.令和 8 年度診療報酬改定 答申 理学療法士に関連する項目.2026 年 2 月 13 日.PDF [oai_citation:6‡Japan Physical Therapy Association](https://www.japanpt.or.jp/pt/function/asset/pdf/20260213_relational_pt_c.pdf?utm_source=chatgpt.com)
- 厚生労働省.中央社会保険医療協議会 総会(第 647 回)答申:個別改定項目について(総- 1 ).2026 年 2 月 13 日.PDF [oai_citation:7‡厚生労働省](https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf?utm_source=chatgpt.com)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


