RRS/RRT の呼びどき|PT の急変コール基準

臨床手技・プロトコル
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RRS / RRT は「急変コールの迷い」を減らすための仕組みです

急性期リハで怖いのは、患者の悪化に気づいても「どこまで様子見でよいか」「誰に、どう伝えるか」で迷い、初動が遅れることです。結論として、RRS / RRT は急変対応を特別な人だけに任せる仕組みではなく、呼ぶ基準・呼び方・呼んだ後の記録を標準化する仕組みです。

この記事では、PT がリハ中に RRS / RRT を呼ぶ目安、NEWS2 とのつなぎ方、SBAR の伝え方、記録の最小セットを整理します。RRS の全体制度や院内導入論は深掘りせず、現場で「いま呼ぶべきか」を判断するための実装に絞ります。

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関連:NEWS2 / MEWS の離床前スクリーニング

関連:離床中止の SBAR テンプレ

RRS / RRT で固定するのは「呼ぶ基準・呼び方・待つ間の行動」です

RRS / RRT の実用面は、専門チームの名称を覚えることではなく、迷う前に呼べる基準を持つことです。呼吸・循環・意識の変化、明らかな症状、数値だけでは説明しにくい違和感を、施設の起動基準に沿って早めに共有します。

日本集中治療医学会の RRS 運用指針では、施設ごとの起動基準を運営マニュアルに明示し、スタッフ教育やバイタルサイン測定、迅速な対応、事例のデータ収集とフィードバックを行うことが推奨されています。つまり、個人の判断力だけで頑張るのではなく、院内で同じ基準を使うことが重要です。

5 分フロー:安全確保 → 測定 → 判定 → SBAR → 記録

リハ中に異変を感じたら、まず介入を止めて安全確保を行い、呼吸数・SpO2・血圧・脈拍・意識をそろえます。そのうえで、院内の RRS / RRT 起動基準、または主治医・当直への相談基準に照らして判断します。

この順番を固定すると、焦っていても伝える材料がそろいます。とくに NEWS2 を使っている施設では、数値を NEWS2 / MEWS の離床前スクリーニング と同じ言葉で共有できるため、相談が通りやすくなります。

PTの急変対応5分フロー。異変に気づく、安全確保、測定、RRS・RRT判断、SBAR連絡、記録までの流れ
図:PT の急変対応 5 分フロー
表:RRS / RRT を呼ぶ目安(成人・病棟/リハ中の判断用)
状態 よくあるサイン 行動 SBARで伝えること 記録の最小セット
即起動 意識低下、呼吸困難の増悪、胸痛・冷汗、チアノーゼ、けいれん、明らかな出血など 離床は中止。安全確保、測定、RRS 起動。院内手順に沿って体位調整・酸素・吸引などを検討。 いつから、何が、どれだけ変化したか。現在値、酸素条件、実施した対応。 時刻、呼吸数、SpO2、酸素条件、血圧、脈拍、意識、症状、反応
準緊急 息切れ増悪、会話量低下、顔色不良、起立でふらつき強い、SpO2 低下が戻りにくいなど 負荷を落として再評価。端座位までに戻す、安静で推移を見る、変化量を添えて早めに相談。 前回との差、安静時と負荷時の変化、酸素・疼痛・薬剤など背景。 前回値と今回値を並べる。戻り方も記録する。
懸念でも相談 なんとなく変、いつもと違う、不安、会話量や反応性の低下など 数値が軽くても懸念を優先して相談。施設の「懸念起動」や相談ルールを確認する。 いつもと違うポイントを 1 行で伝える。例:眠気が強い、会話量が急に少ない、歩容が急変した。 主観所見、客観所見、直近の推移

NEWS2 は「点数」ではなく「次の行動」に変換します

NEWS2 を運用している施設では、単一項目 3、合計 5〜6、合計 7 以上を行動に変換すると判断が速くなります。ただし、NEWS2 はあくまで院内基準を補助する共通言語であり、最終判断は施設の手順を優先します。

表:NEWS2 の閾値とリハ場面での行動目安(成人・病棟想定)
NEWS2 離床の扱い 相談の型 記録の最小セット
0〜4 計画どおり。ただし違和感があれば変化量を確認。 通常共有。必要時は看護師・主治医へ報告。 スコア、酸素条件、離床レベル、介助量
単一 3 負荷を落として再評価。端座位までに戻す判断も含める。 赤の項目と変化量を添えて早めに相談。 赤項目、前回との差、介入後の戻り
5〜6 原則:中止〜延期。実施する場合も目的を最小化。 緊急レビュー相当としてエスカレーション。院内基準で RRS を検討。 症状、酸素条件、推移、相談先
7 以上 離床は中止。急変対応を優先。 救急対応として即連絡。院内基準に沿って RRS / RRT を起動。 直近の推移、対応内容、介入後反応

SBAR は「何が起きて、何をしてほしいか」を先に言います

急変時の連絡では、長い説明よりも結論が重要です。SBAR を使うと、状況、背景、評価、提案の順に整理でき、相手が変わっても伝わりやすくなります。

1 行テンプレ

離床中に呼吸苦が出現し、SpO2 が ◯%まで低下して戻りにくいです。酸素は ◯ L、呼吸数 ◯ 回/分、血圧 ◯/◯ mmHg、脈拍 ◯ 回/分、意識は ◯ です。離床は中止し安静で再評価しました。RRS または当直で確認をお願いします。」

現場の詰まりどころ:遅れる原因は「基準がない」より「材料が揃わない」ことです

RRS / RRT のコールが遅れる場面では、呼ぶ勇気だけでなく、伝える材料が不足していることが多いです。呼吸数、SpO2、酸素条件、血圧、脈拍、意識、前回との差を最初からセットにすると、相談しやすくなります。

表:RRS / RRT コールが遅れやすい原因と対策(PT 視点)
失敗 なぜ起きるか 対策 記録ポイント
様子見が長くなる 「まだ呼ぶほどではない」と考え、変化を共有するタイミングを逃す。 即起動、準緊急、懸念相談の 3 段階で判断する。 いつから、何が、どの程度変わったか。
数字が揃わない SpO2 だけを見て、呼吸数や意識、前回との差が抜ける。 呼吸数、SpO2、血圧、脈拍、意識を最低限セットにする。 前回値と今回値を並べる。
酸素条件が抜ける SpO2 の数値だけで判断し、酸素デバイスや設定値を伝え忘れる。 室内気、酸素 ◯ L、HFNC ◯ L ◯%までセットで伝える。 酸素デバイス、流量、FiO2、変更後の反応。

判断に迷う場面が続く場合、個人の努力だけで抱え込まず、院内の教育体制・相談先・記録フォーマットも見直す必要があります。

急変対応や離床判断を学び続ける環境も、臨床の安全性に関わります。
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よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

RRS / RRT は数値が悪いときだけ呼ぶものですか?

いいえ。施設によっては「何らかの懸念」も起動・相談の対象になります。数値が軽くても、会話量低下、傾眠、顔色不良、歩容の急変など、いつもと違う変化があれば早めに共有します。

離床中に迷ったら、まず何を測ればよいですか?

呼吸数、SpO2、酸素条件、血圧、脈拍、意識をそろえます。さらに前回との差と、安静に戻した後の反応を加えると、相談先が判断しやすくなります。

NEWS2 がない施設でも使えますか?

使えます。NEWS2 は共通言語の一つですが、核になるのは「変化に気づく」「基準で判断する」「SBAR で伝える」「記録する」ことです。院内の MEWS や独自基準に置き換えてください。

呼んだ後、PT は何をして待てばよいですか?

安全確保、体位調整、再測定、推移の記録を行います。可能であれば「何をしたら、どう変化したか」を 1 行で説明できるようにしておくと、到着したチームが判断しやすくなります。

RRS / RRT とコードブルーは同じですか?

同じではありません。コードブルーは心停止などの緊急事態で使われることが多く、RRS / RRT はその前段階の悪化を早く拾い、重症化を防ぐ目的で運用されます。ただし名称や運用は施設ごとに異なるため、院内ルールを確認してください。

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参考文献

  1. 日本集中治療医学会 RRS 運用指針作成ワーキンググループ.委員会報告 Rapid Response System 運用指針.日本集中治療医学会雑誌.2025;32:R15.PDF
  2. Royal College of Physicians.National Early Warning Score(NEWS)2:Standardising the assessment of acute-illness severity in the NHS.2017.PDF
  3. NICE.National Early Warning Score systems that alert to deterioration in adult patients in hospital(MIB205).2020.Web
  4. Maharaj R, Raffaele I, Wendon J.Rapid response systems: a systematic review and meta-analysis.Crit Care.2015;19:254.doi:10.1186/s13054-015-0973-yPubMed
  5. Hillman K, Chen J, Cretikos M, et al.Introduction of the medical emergency team(MET)system: a cluster-randomised controlled trial.Lancet.2005;365(9477):2091-2097.doi:10.1016/S0140-6736(05)66733-5PubMed

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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