急性期脳卒中の高頻度リハとは| 48 時間以内離床と 14 日設計の実務
急性期脳卒中の高頻度リハは、「早ければ早いほどよい」と考える記事ではありません。この記事で整理したいのは、発症後 24 時間以内の高用量離床 と、 48 時間以内に離床を開始して 14 日間を短く・頻回に積む設計 を分けて考えることです。急性期では、開始時期だけでなく、1 回あたりの長さ、1 日の回数、中止と再開の基準までそろえて初めて“回る運用”になります。
急性期リハは「知識」より先に、「評価 → 介入 → 再評価」の型をそろえると現場で回りやすくなります。
PT キャリアガイドを見る本記事は、急性期脳卒中の高頻度リハを、 48 時間以内離床 × 14 日設計 の視点で整理する総論です。脳卒中リハの全体像は 脳卒中ハブ で先に俯瞰しておくと、本記事の位置づけがつかみやすくなります。ここでは「いつ始めるか」「どの患者で考えるか」「どう短く頻回に積むか」「中止後にどう戻すか」に絞って、明日から使える形に落とします。
まずの結論| 48 時間以内に始めて、 14 日間を短く頻回に積む
まず結論からいうと、急性期脳卒中の高頻度リハは、発症後 24 時間以内に長時間・高用量で離床を押し進めること を意味しません。むしろ現場で有用なのは、全身状態と神経症状をみながら 24〜48 時間で離床を始め、 1 回を長くしすぎず、 1 日の接触回数を増やす という考え方です。これなら、安全管理と機能回復のバランスを取りやすくなります。
また、「高頻度」は時間の総量だけで決まるわけではありません。急性期では、いつ始めるか と同じくらい、どのくらいの回数で回すか、止める条件と戻す条件を先に決めているか が重要です。 1 回を長くして崩すより、短く反復して反応を確かめながら進めた方が、病棟運用では再現性が高くなります。
どんな患者で考えるか
この記事の中心対象は、急性期脳卒中のうち、離床の安全性を確認しながら、早期に立位・歩行へつなげたい患者 です。特に、国内の 2025 年研究は、テント上病変 と 保存的治療例 を中心に検討しており、この条件では、 48 時間以内の立位開始と 14 日間の頻回リハが、歩行自立度の改善に結びつく可能性が示されました。したがって、現場でも「まず誰に当てはめやすいか」をこの条件に寄せて読むと、解釈がぶれにくくなります。
一方で、急性期は“始めること”自体が目的ではありません。神経症状が揺れている、頭蓋内圧亢進が疑われる、循環動態が安定しない、離床で症状が悪化する、といった場面では、同じ土俵で量を積むべきではありません。特に脳出血は、急性期リハ推奨でも虚血性脳卒中以上に慎重な離床 が求められており、症例の見極めが欠かせません。
| 場面 | 見たいポイント | 実務での初手 |
|---|---|---|
| 虚血性脳卒中で全身状態が安定 | 離床で神経症状が悪化しない、循環動態が大きく崩れない | 24〜48 時間で座位・立位開始を検討し、短時間から反応を見る |
| テント上病変・保存的治療例 | 国内研究で中心対象となった群に近いか | 14 日間の頻回設計を考えやすい |
| 脳出血 | 症状変動、血圧、画像上の安定性、頭痛や悪心の有無 | 虚血性脳卒中より慎重に、 24〜48 時間帯で段階的に進める |
| 症状変動・頭蓋内圧亢進を疑う | 意識、頭痛、血圧変動、神経症状の増悪 | 量を積む前に原因対応を優先し、再評価後に戻す |
48 時間以内離床をどう考えるか
急性期脳卒中でいちばん誤解されやすいのは、「 24 時間以内」と「 24〜48 時間以内」を同じ意味で扱うこと です。日本脳卒中学会の急性期リハ推奨では、離床開始は発症後 24〜48 時間 が妥当と整理されています。軽症や非高齢の虚血性脳卒中では、 1 回の時間を短くし頻度を増やす前提で 24 時間以内も検討可能とされていますが、これは“誰にでも 24 時間以内で進める”という意味ではありません。
AVERT の読み方でも同じです。AVERT は、 24 時間以内の very early mobilization で 3 か月後の良好転帰が少なかったことから、「早期離床そのものが悪い」と誤読されがちです。しかし実務的には、早すぎる開始と高用量を一緒にしない、頻度と 1 回量を分けて考える、この 2 点が大切です。つまり現場で押さえるべきは、「開始時期を守る」だけでなく、「長くやりすぎない」ことです。
| 考え方 | 実務での意味 | 押さえたいポイント |
|---|---|---|
| 24 時間以内の高用量 | very early mobilization を長め・多めに行う | AVERT では良好転帰を減らす可能性が示され、慎重に考える |
| 24〜48 時間での離床開始 | 座位・立位・移乗・歩行を段階的に始める | 急性期リハ推奨で最も実務に乗せやすい開始帯 |
| 短時間 × 頻回 | 1 回を短くし、 1 日の接触回数を増やす | “高頻度”を安全に回すための実務的な設計 |
14 日設計の考え方
14 日設計の本質は、急性期の最初の 2 週間を「毎回ゼロから考える」のではなく、日ごとの狙いをそろえて積み上げること です。国内の 2025 年研究でも、 48 時間以内の立位開始 と、発症後 14 日間の頻回なリハ がセットで検討されています。ここで重要なのは、“毎日長くやる”ことではなく、毎日同じ軸で観察し、短く頻回に反応を拾いながら前進する ことです。
また、急性期リハ推奨では、最適な訓練時間や頻度はまだ確定していない一方、 1 日の訓練時間を延ばすこと、訓練頻度を増やすこと は考慮できるとされています。さらに、 24〜48 時間で開始した小規模 RCT では、 1 日 2〜3 回 の頻度が ADL 改善と関連したと報告されています。つまり、急性期の現場では「何分やるか」だけでなく、「何回触れるか」を同時に管理する方が実務に合っています。
| 時期 | 主なねらい | 高頻度リハの見方 | 記録で残したいこと |
|---|---|---|---|
| 0〜2 日 | 離床の可否判定、反応確認、症状増悪の有無をみる | 短時間で座位・立位・移乗を試し、長くやりすぎない | 開始時刻、体位、症状変化、バイタル、神経症状 |
| 3〜7 日 | 立位の安定化、歩行導入、反復の土台づくり | 1 日の回数を意識し、 1 回ごとの質をそろえる | 歩行の可否、介助量、実働分数、離床後の疲労 |
| 8〜14 日 | 歩行・移動の再現性、病棟内活動量、退院先を見据えた設計 | 歩行や移乗を日内で反復し、条件固定で再評価する | FAC、移動手段、病棟生活での活動量、翌日への影響 |
評価から歩行練習へどうつなぐか
この新規記事の役割は、「急性期にいつ始めて、何回回すか」までを整理することです。歩行練習そのものの強度・反復・時間・頻度 を細かく決める段階では、脳卒中歩行練習の用量設定 に渡す方が、親子関係がきれいに保てます。つまり本記事では、歩行練習の細かな dose より前に、歩行練習へ入ってよい条件をそろえる ことを主役にします。
実務では、座位や立位の可否だけでなく、離床後に症状が悪化しないか、 1 日の中で繰り返せるか、翌日に疲労を引きずらないか を確認してから、歩行練習の量を積み上げます。急性期の歩行導入は「その場で歩けた」で終わらせず、次の回でも同条件で再現できるかまで見て初めて、用量設計へつながります。
中止基準と再開基準
高頻度リハほど、中止基準と再開基準を先に決める ことが大切です。開始時期だけ決めても、止めた後の戻し方が曖昧だと、担当者ごとに判断がぶれます。急性期では「今日は無理そう」で終わるのではなく、何が原因で止めたのか、どこまで戻ったら再開するのか を言語化しておくと、 14 日設計が崩れにくくなります。
中止と再開の具体運用は、離床の中止基準と再開基準 の記事で詳しく整理しています。本記事では、止めること自体は失敗ではなく、次回へつなぐ判断の一部 と捉えることだけ押さえてください。急性期の高頻度リハは、無理に通すことではなく、止めたあとに 1 段階低い負荷で戻せる設計 を持てるかどうかで差が出ます。
現場の詰まりどころ|よくある失敗
現場で最も多い失敗は、「 24 時間以内」と「 48 時間以内」を同じ意味で扱うこと です。ここを混同すると、AVERT の慎重なメッセージと、急性期リハ推奨の 24〜48 時間開始の考え方がごちゃまぜになります。また、「高頻度」を「 1 回を長くすること」と誤解すると、急性期の反応を見ながら回す設計から外れやすくなります。
もう 1 つは、歩行を始める条件 と 中止後に戻す条件 が記録されていないことです。急性期では、その日たまたま歩けたかどうかより、次回も同じ条件で再現できるか の方が大切です。だからこそ、症状、バイタル、神経症状、介助量、実働分数をそろえて残す必要があります。
| よくある失敗 | なぜ詰まるか | 修正ポイント |
|---|---|---|
| 24 時間以内と 48 時間以内を同じ意味で扱う | 研究のメッセージを読み違え、開始判断が雑になる | 「開始時期」と「 1 回量」を分けて考える |
| 高頻度 = 長時間と考える | 1 回が重くなり、翌日に崩れやすい | 短時間 × 頻回で日内反応をみる |
| 中止基準だけ決めて再開条件を決めない | 担当者ごとに戻し方が違い、 14 日設計が切れる | 再開時の条件と 1 段階下げる方法を固定する |
| 歩行ができたかだけ記録する | 用量設計へつながらず、次回の増量根拠がない | 介助量、実働分数、症状変化、翌日影響まで残す |
よくある質問
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24 時間以内に座位・立位まで進めてよいですか?
誰にでも勧める形ではありません。急性期リハ推奨では、離床開始は 24〜48 時間が妥当とされています。軽症や非高齢の虚血性脳卒中では、 1 回の時間を短くして頻度を増やす前提で 24 時間以内も検討できますが、全身状態と神経症状の安定が前提です。
脳出血でも同じように考えてよいですか?
同じようには考えません。脳出血は、虚血性脳卒中より慎重に離床を進める必要があります。急性期リハ推奨でも、脳出血では mobilization をより慎重に行い、 24〜48 時間帯での段階的開始が妥当とされています。
1 日何回くらいが現実的ですか?
最適回数は一律ではありませんが、急性期リハ推奨では、頻度を増やすことは考慮できるとされ、 24〜48 時間で開始した小規模 RCT では 1 日 2〜3 回が ADL 改善と関連しました。現場では「 1 回を長くする」より、「短く反復できるか」で決める方が安全です。
歩行練習の量はどこまでここで決めればよいですか?
本記事では、歩行練習に入る前の開始帯と頻度設計までで十分です。強度・反復・時間・頻度を具体的に積み上げる段階では、歩行練習の用量設定記事へつなげると、記録と増量のルールまで一気にそろえやすくなります。
次の一手
このテーマは、単独で完結させるより、脳卒中クラスターの中で読むと実務に落とし込みやすくなります。次は次の順でつなげるのがおすすめです。
- 脳卒中歩行練習の用量設定|強度・反復・時間・頻度をどう積むか
- 離床の中止基準と再開基準| STOP / RESTART をそろえる
- 脳卒中治療ガイドライン 2025 改訂ポイント| PT 実務テンプレ
- 脳卒中ハブ|評価 → 介入 → 退院前まで最短で整理
参考文献
- Kakuda W, Nakajima M, Oki K, et al. Evidence and Recommendations for Acute Stroke Rehabilitation from the Japan Stroke Society: Abridged Secondary Publication of the Japanese-language Version. Prog Rehabil Med. 2024;9:20240015. DOI / PubMed
- AVERT Trial Collaboration group. Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset ( AVERT ): a randomised controlled trial. Lancet. 2015;386(9988):46-55. DOI / PubMed
- Watanabe K, Takada Y, Yamamoto H. 急性期脳卒中患者における高頻度リハビリテーションの有効性および安全性―テント上病変ならびに保存的治療例を対象とした検討―. 理学療法学. 2025;52(5):267-275. J-STAGE
- Miyamoto S, Ogasawara K, Kuroda S, et al. Japan Stroke Society Guideline 2021 for the Treatment of Stroke. Int J Stroke. 2022;17(9):1039-1049. DOI / PMC
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

