退院前訪問指導料は「対象・時期・記録」を固定すると算定で迷いにくいです
退院前訪問指導料は、点数だけでなく、誰が対象か、いつ訪問するか、何を見てどう記録するかをそろえることで運用しやすくなります。本記事では、退院前訪問指導料の算定要件、1回算定と2回算定の違い、必要書類、訪問時の評価項目、PDF評価表の使い方を、現場で確認しやすい形で整理します。
退院前訪問指導料とは
退院前訪問指導料は、継続して1か月を超えて入院すると見込まれる患者に対して、円滑な退院のために患家を訪問し、退院後の在宅療養上の指導を行った場合に算定する項目です。
実務では、制度文を細かく覚えるより、自宅退院か、在宅で困る場面があるか、指導内容を診療録等に残せるかを先に確認すると整理しやすいです。療養病棟や回復期では、退院支援カンファレンスの時点で訪問目的を1行で固定しておくと、訪問後の記録が薄くなりにくくなります。
| 項目 | 要点 | 実務メモ |
|---|---|---|
| 区分 | B007 退院前訪問指導料 | 医科の医学管理等に位置づく項目です。 |
| 点数 | 580点 | 点数だけでなく、対象・時期・記録をセットで確認します。 |
| 対象 | 継続して1か月を超えて入院すると見込まれる患者 | 「長く入院した患者」ではなく、見込みの段階で考えます。 |
| 訪問先 | 患家 | 退院後の生活場面を想定して確認します。 |
| 算定回数 | 原則1入院1回、条件付きで2回 | 2回算定では、早期訪問と退院前の最終調整の役割を分けます。 |
| 算定日 | 退院日 | 訪問実施日ではなく、退院日に算定する点に注意します。 |
| 交通費 | 患家負担 | 事前説明の文言を院内でそろえておくと混乱しにくいです。 |
退院前訪問指導料の算定要件
算定要件は、対象・目的・記録の3つに分けると確認しやすくなります。対象が在宅復帰として整理できるか、退院後の療養上必要な指導に結びつくか、そして指導内容を診療録等に残せるかが重要です。
特に注意したいのは、家屋確認をした事実だけでは弱い点です。病状、家屋構造、介護力を踏まえて、誰に何を指導したかまで残すことで、退院前訪問指導としての意味が明確になります。
| 確認項目 | 見るポイント | 実務での置き換え |
|---|---|---|
| 退院先 | 自宅退院として整理できるか | 退院支援カンファレンスで行き先を確認します。 |
| 入院期間の見込み | 1か月超の入院見込みがあるか | 見込みの根拠をチーム内で共有します。 |
| 訪問目的 | 退院後の療養上の指導に結びつくか | 段差確認だけでなく、生活場面まで言語化します。 |
| 確認内容 | 病状・家屋構造・介護力を押さえられるか | 訪問前に見る項目をシート化しておくと抜けが減ります。 |
| 記録 | 指導内容の要点を残せるか | 診療録転記欄を先に作っておくと記載が薄くなりにくいです。 |
1回算定と2回算定の違い
退院前訪問指導料は、原則として1入院につき1回ですが、条件を満たす場合は2回分を退院日に算定できます。ポイントは、入院後14日以内の早期訪問と、在宅療養に向けた最終調整の再訪問が分かれていることです。
つまり、同じ内容を2回見たから2回算定できるのではありません。1回目で退院に向けた課題を早期に把握し、2回目で退院直前の環境・介護力・指導内容を最終調整する流れとして記録できるかが重要です。

| 項目 | 1回算定 | 2回算定 |
|---|---|---|
| 基本の考え方 | 退院前の訪問指導を1回実施 | 早期訪問と退院前の最終調整を分けて実施 |
| 時期 | 退院前に1回 | 1回目は入院後14日以内、2回目は退院前の最終調整 |
| 必要性 | 在宅療養上の指導が必要 | 早期訪問の必要性と再訪問の目的を説明できることが必要 |
| 記録 | 訪問内容と指導要点を残す | 2回の役割の違いが分かるように残す |
| 摘要欄 | 通常の記載で整理 | 各訪問指導年月日の記載が必要です。 |
必要書類は「院内で回る最小セット」で考えます
退院前訪問指導料で迷いやすいのは、「どの書類が必須なのか」です。現場では、決まった名称の様式を探すことより、算定根拠と指導内容が残る最小セットを院内でそろえることが重要です。
この記事のPDFは、公的な指定様式ではなく、退院前訪問指導を抜けなく回すための評価表兼記録シートとして使う設計です。訪問前の確認、訪問時の評価、帰院後の診療録転記を1枚でつなげるイメージです。
| 書類・記録 | 役割 | 最低限そろえたい内容 |
|---|---|---|
| 訪問前の依頼・指示が分かる記録 | 訪問の必要性をチームで共有する | 退院先、訪問目的、主な確認点、同行職種 |
| 評価表兼記録シート | 訪問時の確認を抜けなく行う | 家屋構造、介護力、動作、医療管理、指導内容 |
| 診療録等 | 算定根拠と指導内容の要点を残す | 訪問の必要性、確認結果、指導した内容、退院後の留意点 |
| 摘要欄メモ | 請求時の記載漏れを防ぐ | 2回算定時の各訪問指導年月日 |
退院前訪問で確認したい評価項目
退院前訪問では、家屋構造だけでなく、病状・介護力・生活動作・医療管理までつなげて確認する必要があります。段差があるかどうかだけでなく、その段差を誰が、どの時間帯に、どの介助量で対応できるかまで見ると、退院後の指導に落とし込みやすくなります。
新人PTでは、玄関・トイレ・浴室などの場所に目が向きやすい一方で、家族の介助力や夜間動線の確認が抜けることがあります。評価表を使う場合は、退院後すぐ困る場面を先に拾う構成にすると、記録にも家族説明にもつなげやすいです。
| 領域 | 見ること | メモの残し方 |
|---|---|---|
| 病状 | 退院時の全身状態、疲労しやすさ、注意点 | 在宅で中止・相談が必要な場面を書きます。 |
| 家屋構造 | 玄関段差、廊下幅、寝室、トイレ、浴室、階段 | 危険箇所だけでなく、どう調整するかまで残します。 |
| 生活動作 | 起居、移乗、歩行、階段、排泄、入浴 | 介助量と条件を短く固定すると共有しやすいです。 |
| 介護力 | 主介護者、日中独居、介助手技の理解、緊急時対応 | 「家族あり」ではなく、誰がどこまでできるかを書きます。 |
| 医療管理 | 服薬、酸素、吸引、経管栄養、褥瘡、認知面 | 退院後に抜けると危ない管理を先に固定します。 |
| サービス調整 | 訪問看護、通所、福祉用具、住宅改修の見込み | 「必要」だけで終わらず、誰につなぐかまで書きます。 |
退院前訪問指導 評価表兼記録シートのダウンロード
下のPDFは、退院前訪問指導の確認項目を1枚で整理しやすいA4シートです。訪問前の準備、訪問時の確認、帰院後の診療録転記をつなげやすいように、家屋構造・介護力・指導内容の欄を広めに取っています。
まずは印刷して1〜2症例で使い、院内で必要な欄だけ微調整すると定着しやすいです。最初から完璧な院内様式を目指すより、同じ視点で記録できることを優先してください。
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現場の詰まりどころ
退院前訪問指導料は、制度そのものよりも院内の運用差で詰まりやすい項目です。特に、誰が依頼するか、訪問目的をどこまで書くか、帰院後に誰が診療録へ転記するかが曖昧だと、担当者ごとに記録の粒度がばらつきます。
対策は、依頼時点で見る項目と記録先を固定することです。評価表があるだけでも、家屋だけ見て終わる、家族指導を書き忘れる、2回算定時の訪問日メモが残らないといったズレを減らしやすくなります。
| 詰まりどころ | 止まりやすい理由 | 先に固定したいこと |
|---|---|---|
| 訪問の目的が曖昧 | 家屋確認だけで終わりやすい | 退院後の危険場面と指導目的を依頼時に1行で書きます。 |
| 介護力の記録が薄い | 「家族あり」で止まりやすい | 誰が、いつ、どこまで介助できるかまで書きます。 |
| 2回算定の根拠が弱い | 2回の役割の違いが残らない | 早期訪問と最終調整の目的を分けて記録します。 |
| 診療録への転記が後回し | 訪問直後の記憶に頼ってしまう | シート内に転記欄を作って、帰院後すぐ埋めます。 |
よくある失敗
退院前訪問指導料で見られやすいのは、派手なミスよりも基本項目の抜けです。特に、訪問した事実は残っていても、指導内容や介護力の記録が薄いと、後から確認したときに算定根拠が分かりにくくなります。
| 失敗 | なぜまずいか | 直し方 |
|---|---|---|
| 患家の家屋構造を十分に確認していない | 在宅療養上の指導が具体化しにくくなります。 | 玄関、寝室、トイレ、浴室、動線を最低セットで固定します。 |
| 介護力の確認が浅い | 退院後に実行できない指導になりやすいです。 | 介助者の人数、時間帯、介助手技の理解を分けて書きます。 |
| 指導内容の要点が抽象的 | 診療録に残っても算定根拠として弱くなります。 | 「何を、誰に、どう説明したか」を短く具体化します。 |
| 2回算定時の摘要欄メモがない | 請求時に訪問日が抜けやすくなります。 | 評価表の下欄に訪問日メモを置いておきます。 |
| 他の退院支援項目との整理が曖昧 | 請求区分の整理がぶれやすいです。 | 退院前訪問指導料と関連項目を院内で一覧化します。 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
退院前訪問指導料は誰が行けますか?
医師だけでなく、医師の指示を受けた保健師、看護師、理学療法士、作業療法士等が関わる形でも整理されています。実務では、誰が訪問し、誰がどの部分を確認し、どこに記録を残すかを院内でそろえておくと運用が安定します。
2回算定は、必要ならいつでもできますか?
いつでも2回算定できるわけではありません。入院後14日以内に退院に向けた訪問指導の必要性を認めて1回目を行い、その後に在宅療養に向けた最終調整として2回目を行う流れが必要です。2回目だけ理由を後付けすると整理しにくくなります。
自宅以外へ退院する場合も算定できますか?
退院前訪問指導料は、退院して家庭に復帰する患者を対象として整理されています。施設入所などの場合は扱いが変わるため、退院先を先に確認し、院内の医事課や請求担当者とすり合わせることが大切です。
評価表は国の指定様式がありますか?
現場でまず必要なのは、決まった名称の様式を探すことより、算定根拠と指導内容を一貫して残せることです。本記事のPDFは、家屋確認、介護力確認、指導内容、摘要メモを1枚で回しやすくするための院内運用シートとして作っています。
退院時共同指導料や入院時訪問指導加算との関係はどう考えますか?
同じ退院支援の流れで出てきやすい項目です。特に2回算定や同日の整理では、院内ルールが曖昧だと混乱しやすくなります。請求前に、関連項目との関係を医事課と確認しておくと安心です。
次の一手
退院前訪問指導料は、単独の書類テーマに見えて、実際には退院支援の運用設計とつながっています。まずはこの記事のPDFで確認項目を固定し、そのうえで制度・書類・評価の流れをつなげて読むと、現場で使いやすくなります。
制度・書類・会議体をまとめて見直したい場合は 制度・実務ハブ、評価から退院支援へつなげる考え方を整理したい場合は FIMとBIで退院支援を決める5ステップ を続けて確認してください。
参考文献
- 1. 厚生労働省. 診療報酬改定に向けた入院・外来医療等の調査・評価分科会資料. 退院前訪問指導料580点、算定要件、2回算定の考え方. 公式PDF
- 2. 厚生労働省. 入院医療等の調査・評価分科会資料. 退院前訪問指導料の概要、病状・家屋構造・介護力、職種別の関与. 公式PDF
- 3. 厚生労働省. 保険診療確認事項リスト(医科)令和6年度改定. 指導又は指示内容の要点の診療録等記載. 公式PDF
- 4. 厚生労働省. 診療報酬請求書等の記載要領等の一部改正について. 公式PDF
- 5. 厚生労働省. 退院前訪問指導料を2回算定した場合の摘要欄記載. 公式PDF
- 6. 厚生労働省. 入院医療等の調査・評価分科会資料. 医療介護連携に係る主な診療報酬上の評価、様式の有無. 公式PDF
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

