退院前訪問指導料と退院時共同指導料 2 は「家を見に行く」か「共同してつなぐ」かで分けると整理しやすいです
退院支援の場面では、退院前訪問指導料と退院時共同指導料 2 が似た位置に見えるため、現場で混同されやすいです。ただし、評価している中身は同じではありません。退院前訪問指導料は患家を訪問して在宅療養を具体化する点数であり、退院時共同指導料 2 は入院側と在宅側が共同で説明・情報共有してつなぐ点数です。
本記事では、両者の違いを「対象」「場所」「誰が関わるか」「 1 回・ 2 回算定」「文書共有」「同日整理」の順で比較します。退院前訪問指導料そのものの要件や評価表 PDF を先に確認したい方は、退院前訪問指導料の算定要件と必要書類【評価表 PDF 付き】を先に読むとつながりやすいです。
理学療法士の働き方や職場選びも整理しておきたい方へ
制度や記録の運用は、個人の工夫だけでは安定しないことがあります。教育体制や相談しやすさも含めて見直したいときは、先に全体像を整理しておくと動きやすくなります。
先に結論|訪問が必要なら退院前訪問指導料、共同説明と文書共有が主役なら退院時共同指導料 2 です
最短で整理すると、家屋・動線・介護力を見に行かないと退院後の生活が決めにくいケースでは退院前訪問指導料が中心になります。一方、在宅側の医療機関や訪問看護、薬局、介護支援専門員等と一緒に退院後の療養をつなぐ説明が必要なケースでは、退院時共同指導料 2 の方が主役になりやすいです。
つまり、両者の違いは「似た退院支援の点数」ではなく、何をしに行く評価かで考えるとぶれにくくなります。退院前訪問指導料は “ 家を見て在宅療養を具体化する ” 、退院時共同指導料 2 は “ 関係者と共同して説明し、文書で引き継ぐ ” と覚えておくと実務で迷いにくいです。
| 比較項目 | 退院前訪問指導料 | 退院時共同指導料 2 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 患家を訪問し、在宅療養を具体化する | 入院側と在宅側が共同で説明し、文書でつなぐ |
| 区分・点数 | B007・580 点 | B005・400 点 |
| 実施場所 | 患家 | 入院中の保険医療機関が中心 |
| 見る・行うこと | 家屋構造、介護力、生活動線、在宅での療養上の指導 | 退院後の説明、共同指導、文書での情報提供 |
| 関与職種 | 医師のほか、看護師等、PT / OT / ST 等が関わる | 医師、看護師等、薬剤師、管理栄養士、PT / OT / ST、社会福祉士等 |
| 算定回数 | 原則 1 入院 1 回、条件付きで 2 回 | 原則 1 入院 1 回、一定の疾病等では 2 回 |
| 加算・補足 | 交通費は患家負担 | 医師同士の共同で 300 点加算、 3 者以上で多機関共同指導加算あり |
| 実務のコア | 訪問時の評価と診療録記載 | 共同説明と文書共有 |
退院前訪問指導料が向く場面
退院前訪問指導料が向くのは、病棟内の評価だけでは退院後の生活が決めきれない場面です。たとえば、玄関段差、寝室位置、トイレまでの動線、ベッド周囲の移乗スペース、家族の介助量など、現地を見ないと具体化しにくい要素が多いときは、退院前訪問指導料の役割が大きくなります。
また、この点数は単なる見学ではなく、退院後の在宅での療養上の指導まで含めて成立します。家屋を見て終わりではなく、「どの動作が危ないか」「どこをどう調整するか」「家族へ何を説明したか」まで言葉にして残すと、算定根拠と実務がつながりやすくなります。
| 場面 | 迷いやすい点 | 退院前訪問指導料が向く理由 |
|---|---|---|
| 家屋評価が必要 | 段差や動線が病棟で再現しにくい | 患家を訪問して現地確認できるためです。 |
| 介護力が読みにくい | 家族の介助量や時間帯が曖昧 | 家族指導と在宅での実行可能性まで確認しやすいです。 |
| 福祉用具や住宅調整が必要 | ベッド、手すり、動線調整の優先順位が定まらない | 現地を見て「何を先に整えるか」を決めやすいです。 |
| 早期から退院準備が必要 | 入院後すぐに在宅復帰の課題が見えている | 必要性があれば入院後早期と退院前の 2 回整理も可能です。 |
退院時共同指導料 2 が向く場面
退院時共同指導料 2 が向くのは、退院後に関わる医療職や支援者と共同して説明し、文書で情報を渡すことが主役になる場面です。退院後の在宅療養を担う医療機関、訪問看護ステーション、薬局、歯科、介護支援専門員などと、入院側が同じ場で説明内容をそろえたいときに相性がよいです。
この点数は、誰か 1 人が退院説明をしただけでは弱く、共同指導と文書共有が中心になります。特に、退院後に継続する医療処置や薬剤管理、栄養、リハ、家族への説明内容を、退院前に食い違いなくそろえたいときに使いやすいです。
| 場面 | 迷いやすい点 | 退院時共同指導料 2 が向く理由 |
|---|---|---|
| 在宅側との連携が主役 | 退院後に誰が何を引き継ぐかを明確にしたい | 共同説明と文書共有が中心になるためです。 |
| 複数職種が関与する | 薬、栄養、訪問看護、リハ、介護の説明が分かれやすい | 多職種でそろえて伝えやすいです。 |
| 医師同士の共同説明が必要 | 在宅主治医との役割分担を明確にしたい | 医師共同なら加算の整理があります。 |
| 関係者が多い | 医療・介護・薬局・歯科をまとめてつなぎたい | 多機関共同指導加算の考え方が役立ちます。 |
使い分けは「現地確認が主役か」「共同説明が主役か」で決めます
実務でいちばん迷いにくいのは、主役になる行為を先に決めることです。退院前訪問指導料は “ 現地確認と在宅療養上の指導 ” が主役で、退院時共同指導料 2 は “ 在宅側との共同説明と文書共有 ” が主役です。似た退院支援でも、評価している仕事の中心が違います。
迷ったときは、まず「家を見に行かないと決めきれないか」を見て、次に「在宅側と同じ場で説明しないとつながらないか」を見ます。この 2 段で判断すると、点数の名前ではなく業務内容で整理できるため、院内でのブレが減ります。
| 判断ポイント | 優先しやすい項目 | 考え方 |
|---|---|---|
| 患家に行く必要がある | 退院前訪問指導料 | 家屋構造や介護力を現地で確認する必要があるためです。 |
| 在宅側と説明をそろえる必要がある | 退院時共同指導料 2 | 共同説明と文書共有が主役になるためです。 |
| 家屋評価より情報共有が主役 | 退院時共同指導料 2 | 連携先への引き継ぎ精度を上げたい場面に合います。 |
| 家屋評価と家族指導が主役 | 退院前訪問指導料 | 在宅での生活場面を具体化する評価だからです。 |
同日整理で迷いやすいポイント
比較記事で見落としやすいのが、周辺の退院支援項目との整理です。特に、退院時リハビリテーション指導料では、同一日に退院時共同指導料 2 の注 1 により、入院中の保険医療機関の PT / OT / ST が指導等を行った場合は別算定できない整理があります。つまり、同じ日に PT / OT / ST の関与をどう位置づけるかは、実務では先に決めておいた方が安全です。
また、退院時共同指導料 2 は、入退院支援加算を算定する患者では、退院支援計画を策定し、患者へ文書提供し、在宅療養担当医療機関と共有していることが前提になります。共同指導の場だけ整っていても、文書共有までそろっていないと運用が不安定になりやすいです。
| 論点 | 見落としやすい点 | 先に決めたいこと |
|---|---|---|
| PT / OT / ST の関与 | 退院時リハビリテーション指導料との整理がぶれやすい | 同日にどの点数で評価するかを先に固定します。 |
| 退院時共同指導料 2 の文書共有 | 説明はしたが共有文書が弱い | 説明内容と共有先をテンプレ化します。 |
| 退院前訪問指導料の記録 | 家屋確認だけで終わりやすい | 療養上の指導内容まで診療録に残します。 |
よくある失敗
この比較で起こりやすい失敗は、点数名で覚えてしまい、評価している行為の違いを見失うことです。退院前訪問指導料は現地確認を伴う指導、退院時共同指導料 2 は関係者との共同説明と文書共有、という役割を崩さないことが大切です。
もうひとつの失敗は、実施した内容は十分でも、記録や共有が弱くなることです。退院前訪問指導料では診療録記載、退院時共同指導料 2 では共同説明と文書共有の置き場所を先に決めておくと、運用がかなり安定します。
| 失敗 | なぜまずいか | 対策 |
|---|---|---|
| 家屋確認をしていないのに退院前訪問指導料で考える | 評価の中心がずれやすいです。 | 現地確認が必要かを最初に決めます。 |
| 共同説明がないのに退院時共同指導料 2 と整理する | 文書共有の要件とつながりません。 | 在宅側と共同した説明かを確認します。 |
| 退院前訪問指導料で家屋確認だけして終わる | 在宅療養上の指導が弱くなります。 | 家族指導と退院後の注意点まで残します。 |
| 退院時共同指導料 2 で共有文書が薄い | 共同説明の中身が伝わりにくくなります。 | 共有先と説明要点をテンプレ化します。 |
| 同日の他項目との整理が曖昧 | 請求時の判断がぶれやすいです。 | 同日算定の院内一覧を 1 枚作ります。 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
退院前訪問指導料と退院時共同指導料 2 は、どちらか一方だけですか?
まずは、何を主役に評価するかで整理すると分かりやすいです。患家を訪問して在宅療養上の指導を行うなら退院前訪問指導料、在宅療養担当医療機関等と共同で説明し文書共有するなら退院時共同指導料 2 が中心になります。名前が似ていても、評価の中心は同じではありません。
退院時共同指導料 2 は、誰が入れますか?
現行の整理では、医師、看護師等に加え、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士なども共同指導の評価対象に含まれています。関与職種が多いほど、誰が何を説明したかの整理が大切です。
退院前訪問指導料は、2 回算定できますか?
原則は 1 入院 1 回ですが、入院後早期に退院前訪問指導の必要があると認められる場合は 2 回算定できます。実務では、 1 回目と 2 回目の役割の違いを記録で分けておくと整理しやすいです。
退院時共同指導料 2 でも 2 回算定できますか?
一定の疾病等の患者については、入院中 2 回に限り算定できる整理があります。通常の全例で 2 回という考え方ではないため、対象患者の線引きを先に確認した方が安全です。
多機関共同指導加算は、どんなときに考えますか?
入院中の保険医療機関側が、在宅療養担当医療機関、歯科、薬局、訪問看護、介護支援専門員、相談支援専門員などのうち 3 者以上と共同して指導した場合に整理します。関係者が多い症例で使い分けを考えやすい加算です。
次の一手
この比較記事は、似た退院支援項目を切り分けるための入口です。次は、実際の運用に落とす記事をつなげると理解が深まります。
退院前訪問指導料そのものの要件と評価表を確認したい方は 退院前訪問指導料の算定要件と必要書類【評価表 PDF 付き】、退院時リハビリテーション指導料との同日整理まで見たい方は 退院時リハ指導料【2026改定】図解・記録シート付、退院支援体制と個別指導の違いまで広げたい方は 入退院支援加算と介護支援等連携指導料の違い【比較】 を続けて読むのがおすすめです。
参考情報
- 厚生労働省. 別表第一 医科診療報酬点数表. B005 退院時共同指導料 2、B007 退院前訪問指導料. 公式 PDF
- 厚生労働省. とりまとめの構成. 退院時共同指導料 2 の概要、多機関共同指導加算、共同指導の評価対象職種、退院前訪問指導料の概要. 公式 PDF
- 厚生労働省. 保険診療確認事項リスト(医科)令和 6 年度改定. 退院前訪問指導料の診療録記載. 公式 PDF
- 厚生労働省. 「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について. 退院時共同指導料 2・退院前訪問指導料の摘要欄記載. 公式 PDF
- 厚生労働省. 事務連絡 令和 8 年 4 月 1 日 疑義解釈資料の送付について(その 1). 退院前訪問指導の実施割合における 2 回実施時の考え方. 公式 PDF
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


