令和 8 年改定案|退院時リハ指導料の要件見直しを現場運用で読む
退院時リハビリテーション指導料は、退院後の生活で起きやすい「つまずき」を先回りし、患者・家族が実行できる行動に落とし込むための評価です。制度が動く局面ほど、暗記よりも「誰に・何を・どこまで」を院内でそろえることが重要です。
本記事は、令和 8 年改定案で示された方向性を踏まえ、対象患者の線引き・指導の最小セット・記録の型を実務向けに整理します。全体像は 令和 8 年改定案|リハビリ領域まとめ(ハブ) を参照してください。
先に全体像をつかむと、各論の判断がぶれにくくなります。
令和 8 年改定リハ領域の全体像を見る結論:対象の線引きと指導の最小セットを固定すると回る
今回の改定案では、退院時リハビリテーション指導料について「対象患者の要件見直し」が示されています。現場では、①対象の線引きを先に決める ②指導内容を最小セット化する ③記録を短い定型にそろえる、の順で整えると運用が安定します。
説明を長くするより、実行される内容に絞ることが重要です。チームで同じ判断軸と記録フォーマットを共有すると、退院調整・引き継ぎ・確認作業が軽くなります。
改定案で何が示されたか(退院時リハ指導料の論点)
中医協資料では、退院時リハビリテーション指導料について「目的に合う患者への指導を推進する観点から、対象患者の要件を見直す」方向が示されています。現時点は議論の整理(案)段階ですが、対象判定の厳密化を想定した準備が必要です。
つまり、退院前の運用は「誰でも実施」ではなく、対象根拠が説明できる設計へ寄せる必要があります。
| 論点 | 示された方向 | 現場への影響 | 先に決めること |
|---|---|---|---|
| 対象患者 | 目的に合う患者への指導を推進するため、要件見直し | 対象の広げすぎ・根拠不足が起点で算定ブレが起きやすい | 院内の対象判定ルールを 1 枚化 |
| 指導内容 | 退院後の生活機能回復に資する指導を重視 | 説明量より実行可能性が問われる | 最小セット(安全・負荷・継続先)を固定 |
| 算定連携 | 関連点数との運用整合が必要 | 誰が記録し、誰が確認するか曖昧だと混乱する | 入力・確認フローを明文化 |
対象患者の線引き:取りこぼしと広げすぎを同時に防ぐ
対象判定は病名や ADL だけで決めると、過不足が生まれやすくなります。実務では「退院後の再現性」「支援体制」「リスク」の 3 軸を使い、同じ基準で判定できる形にそろえるのが有効です。
とくに制度変更期は、会計・病棟・リハ部門で判断がずれるため、判定理由を短文で残せる設計にしておくと運用が安定します。
| ステップ | 判定軸 | 具体例 | 記録に残す 1 行 |
|---|---|---|---|
| ① 退院後の再現性 | 病棟でできた動作を在宅で再現できるか | 入浴・段差・屋外歩行・服薬管理 | 「退院後の再現に課題あり」 |
| ② 支援体制 | 家族・サービスで補完できるか | 独居、介助者不在、導入前 | 「支援者不在/役割未確定」 |
| ③ リスク | 再転倒・再入院につながる因子の有無 | 転倒歴、起立性低血圧、低栄養、嚥下 | 「再入院リスク因子あり」 |
| ④ 共有可能性 | 多職種で同じ説明ができるか | 看護・MSW・家族へ同内容で説明 | 「共有文面で説明済み」 |
指導内容は最小セットで固定する(長文化しない)
退院時指導は情報量を増やすほど実行率が下がります。まずは「明日からできる行動」に絞り、説明をシンプルにするほうが結果につながります。
最小セットは、①安全な動作 ②負荷の目安 ③継続先の 3 項目です。毎回そろえるだけで、退院後の行動変容と引き継ぎの質が安定します。
| 項目 | 伝える内容 | 提示形式 | 1 行例 |
|---|---|---|---|
| 安全な動作 | 転倒しやすい場面と回避行動 | 具体場面 + 行動指示 | 「浴室立位は手すり使用、立位開始前に 3 呼吸」 |
| 負荷の目安 | やりすぎ・不足を避ける基準 | 数値 1 つ + 主観 1 つ | 「歩行 10 分 × 2 回、息切れは “ややきつい” まで」 |
| 継続先 | 外来・訪問・通所の導線 | 時期 + 窓口 | 「退院後 1 週で外来フォロー予定」 |
記録は 3 行テンプレで統一する
監査・引き継ぎで強い記録は、「なぜ対象か」「何を指導したか」「どこにつなぐか」が短く読める形です。長文よりも、判定と行動が追える記録が有効です。
部署内で 3 行テンプレを共通化しておくと、入力のばらつきが減り、是正も速くなります。
| 行 | 記載内容 | 例文 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 1 行目 | 対象理由(再現性・支援・リスク) | 「独居で転倒歴あり、退院後再現に課題」 | 対象根拠の明確化 |
| 2 行目 | 指導内容(具体行動) | 「立位前 3 呼吸、屋外歩行は杖と休息を併用」 | 行動変容の促進 |
| 3 行目 | 継続先(次の導線) | 「外来予約済み、家族へ段差対応を共有」 | 退院後の接続 |
現場の詰まりどころ/よくある失敗
制度変更時は、対象判定・指導内容・記録方法の 3 点で詰まりやすくなります。先に「NG → OK」を共有すると、運用の立ち上がりが速くなります。
| 論点 | NG | OK | 最短の直し方 |
|---|---|---|---|
| 対象判定 | 「とりあえず実施」で根拠が残らない | 3 軸(再現性・支援・リスク)で判定 | 判定シートを 1 枚化して周知 |
| 指導内容 | 情報過多で実行されない | 最小セット 3 項目に固定 | 配布文面を共通テンプレ化 |
| 記録 | 長文で要点が埋もれる | 3 行テンプレで統一 | 定型文登録して入力時間短縮 |
| 日程 | やること | 担当 | 成果物 |
|---|---|---|---|
| Day 1 | 対象判定ルールを合意 | リハ責任者 + 病棟 | 判定シート |
| Day 2-3 | 最小セット文面を統一 | PT / OT / ST | 説明テンプレ |
| Day 4-5 | 3 行記録テンプレを実装 | 記録担当 + 会計連携 | 定型文 |
| Day 6-7 | 5 症例で試行し是正 | チーム全体 | 運用版 v1.0 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. これは確定情報ですか?
A. 現時点は「議論の整理(案)」段階です。最終的な点数・細目は今後の通知で確定します。ただし、対象患者の要件見直しという方向性は示されているため、院内運用の準備は先に進める価値があります。
Q2. 対象患者の判定でいちばんぶれにくい方法は?
A. 病名や ADL 単独ではなく、再現性・支援体制・リスクの 3 軸で判定し、1 行で根拠を残す方法が実務的です。取りこぼしと広げすぎを同時に防げます。
Q3. 退院時共同指導料 2 との関係はどう整理すべきですか?
A. 現場では「誰が何を説明し、どの記録に残すか」を先に分担しておくのが実装上の要点です。点数確定後に同日運用を見直せるよう、まずは入力・確認フローを明文化してください。
Q4. 記録負担が増えないか不安です
A. 長文化をやめて 3 行テンプレに統一すると、むしろ確認時間が減ります。定型文登録まで行うと、入力負担を抑えたまま質を担保できます。
次の一手(この順で進める)
まずは全体像を確認し、次に実装手順をそろえると、改定対応の手戻りを減らせます。
運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


